王仁三郎若かりし日の歌

狭依彦が大好きな王仁三郎の一側面です。

■女の歌

王仁三郎はいったい何人の女と関係したのだろうか?
これらの歌を読むと、この時代、貧乏だったけど、明るい青春を送っていたように思うのですが。
今の、私たちが忘れてしまったものがあるような気がします。

ここにあげたものはすべて『回顧歌集』 真如の光 昭和5年8月~昭和6年2月からのものです。

初恋  十七八歳の頃
うちつけにいふ言葉さへ口籠り恋には弱きわれなりしかな
君恋ふといひよどみつつ高らかに歌を唄ひて軒端をさまよふ
思ふ人の軒端にべつたり出逢ひつつものをもいはず惜しくわかれし
労働の汗臭き肌をはぢらひて君恋ふるとはいひかねにける

プロの家に生れたる身は若き日も人恋ふるさへためらひにけり
                    
*プロ プロレタリアートの略

 
観音堂  二十三四歳の頃
穴太寺観音堂の法会の夜こころ合ひたる女とかたる
何となく胸をののきて一言も吾が言の葉は出でざりにけり
手を握り互に目と目をそらしつつ面はほてりぬ息ははづみぬ
女の名寝言にいひし翌朝父はほほゑみもらへと語る
 
毛布 二十三四歳の頃

ストーリーになっています。
ある女と恋仲になり、屋外でHをするために下に敷く毛布をもらった。
その毛布を使って、他の女とHをしていたら、毛布をくれた女が闖入してきた。
女は毛布を持ち去った。寒い日、稲の番をする小屋に泊り込んでいたら、
女がやってきて、「寒いだろうから毛布を返す」という。
そこでまた燃え上がった。

物ごころさとりはじめて夜遊びに赤毛布肩にかけて出でたり
毛布裏に小砂利や木の葉の付着せるを翌朝見出でて顔赤めつつ
二人坐す夜辻に人の気配しておどろき毛布捨ててて逃げたり
梟の鳴く音憎しとたたずめば木下陰より細い手が出る
怪物が出たかとこはごは近よれば毛布要らぬかと女の苦笑ひ
箸豆なあなたの心なほるまで毛布あづかりおくと女の声
種種と言ひ訳すれどあざ笑ひ首を左右にふりつつすすり泣く
この毛布わたしが上げた真心と泣きつつ怒れる是非もなき夜半
晩秋  二十三四歳の頃
晩秋の霜おく夜半の稲の番は火をたかずして忍べざりけり
霜の夜の寒さ思ひてあづかりし毛布を返しに来しと女の言ふ
真夜中に眼さませば番小屋の外にひそ泣く女のこゑあり
眠き目をこすり藁戸をひらき見れば毛布抱へて女立ち居り
ひとたびはうらみし女の心情にわれも涙に袖ぬらしたる
一夜さを泣き明しつつ藁小屋の屋根におく霜も消ゆる熱さよ
済まなかつたと詑ぶれば女も涙してすまぬはわたしと膝の上に泣く
秋の夜の霜おく野辺の番小屋も一夜の夢は安かりにけり
是からは外に御心うつつ世の仇花手折りそと女の愧ぢて言ふ
今日よりは君一人をたよりぞと深く契りし野辺の朝明け
いやなれば花として見む蕃椒と駄句れば膝にかみ付き女の泣く
嘘だ嘘だ是はおだてだ真実にとられちや困ると千弁万護す
中なかに油断のならぬ男子よと笑みを残して女はかへりたり
青春の血に燃ゆる身も将来をおもんぱかりて二世は契らず
二世契る細し女なきを喞ちつつ吾若き日は空しく暮れたり
吾わかき時より神の守りけむいまだ女難にかかりしこと無し
 
養子  二十五六歳の頃

王仁三郎は2ヶ月くらい養子にゆくのですが、その発端となる歌。
いちばん下の歌、これ作ったの50歳代後半ですよ。

白梅の月にかをれる夜なりしよ思はぬ人と木蔭にたたずむ
ぽつかりと月に浮き出し白い顔わが目に花のごとくうつれる
心臓の皷動はげしくをさまらず面ほてりつつしばし默しぬ
ただ二人默したたずむ足もとにどろ足の犬きたりとびつく
飛びつきし犬に彼女はおどろきてあつと叫びて抱きつきたり
鼻先にぷんとにほひて体臭の忘らえがたき身とはなりぬる
 
寝巻  二十六七歳の頃

OH!Noという感じです。
自由なりし、明治?

稗田野の歌舞の師匠の家に入り牛乳くさらして顧客におこらる
その夜は歌舞の師匠の家にとまり寝巻の袖に尿かけらる
歳はまだ十五の歌舞の師匠さんに尿かけられ憎しと思はず
火の如く顔あからめて歌舞の師匠部屋の小隅にうつむきてをり
小便にぬれし寝巻を帰り路の小川にそつと投げ捨てにけり
 

■女以外

若き日の女以外の歌を紹介します。

私は、こんな歌を作る王仁三郎が大好きです。

ここにあげたものはすべて『回顧歌集』 真如の光 昭和5年8月~昭和6年2月からのものです

同胞  二十一二歳の頃

妹が生れた時の歌です。
このまなざし、これに私は引かれたのです。

よい年をしていつまでも子を孕む両親見れば阿呆らしと友いふ
その頃にわが母上も孕みましぬ案じて夜な夜な宮詣でせし
わが母の安産祈ると友聞いて君は馬鹿よとののしり笑ふ
一人でも兄弟ふゆればいいぢやないかと友に語ればフフンとうそぶく
貧乏の上塗りしてもかまはない子を産む元気の親が嬉しい
百夜を宮に詣でてつつがなく妹君子うまれ落ちたり
妹の産声ききて何んとなく心づよさを吾感じたり
 
麦蒔 ニ十三四歳の頃

醤油の一気飲みをして病気になる話です。
このエピソードも王仁三郎を象徴していると思います。

一円の懸賞づきにて醤油五合飲みくらべせし友のつどひて
眼をつぶり顔をしかめて五合の醤油をやつと飲み干しにけり
咽喉かわき耐へがたきまま里川の流水がぶがぶ鯨飲なしたり
冷水を幾許飲んでも咽喉かわく苦しき腹は布袋となりぬ
布袋腹にはかにいたみ雪隠に一日数十度かよひつめたり
一円の懸賞とりて農繁の秋半月を病床にくるしむ

第1版 2003年頃
第1版(校正) 2015/01/01


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