論考資料 玉依姫


霊界物語以外

神の国 1926/09 伊都能売

 観音経にある五観五音なるものは、一切衆生と親子一如の意義を表現するもので、五音とは、妙音、観世音、梵音、海潮音、勝彼世間音のことであり、五観とは真観、清浄観、広大智慧観、悲観慈観のことである、
 今之を神道の神名に対照すれば、

五音

観音即 木の花姫神
一名 伊都能売神
妙音  市杵嶋姫命 瑞の御魂
観世音  木花咲耶姫命
梵音 多紀理姫命 
海潮音  玉依姫命
勝波世間音 多紀津姫命

五観

   豊
豊受大神
   受
国常立尊  天神の祖 厳の御魂
 
天照大神 地神の祖

厳之御魂                  

厳之御魂 真観 正哉我勝々速日天忍穂耳命
清浄観 天之菩日命
広大智慧観 天忍穂耳命
悲観 天津彦根命
慈観 活津彦根命

 厳の御魂五柱、瑞の御魂三柱(又は五柱)活動力を総称して、伊都能売の御魂と奉称するのである。而して伊都能売は即ち、観音にして木の花姫の顕現である。天地宇宙の間に、斯の神より外に何ものも無いと云つても良い位である。或る時は天神となり、地神と現じ、八百萬の天使と変じ、千変萬化五六七の活動を為し玉ひ、宇内を光被し、開発し、整理し、天国霊国に日月神と化現し玉ふは、皆伊都能売神の大神格の活動である。

神霊界 1917/12/01 いろは神歌

○わた津見の神の宮居に鎮まりし、玉依姫の現はれて、綾の高天に上り坐し、御供の神も数多く、集い来まして斯度の、神世の経綸助けむと、金竜界の島々に、今は潜みて時津風、松の神代と成る迄は、水分の神志那津彦巌の神や地震の、荒々しくも荒れの神、一度に開く竜神の、伊都の雄猛び弥猛く、天地四方の国々も、海山河野の生物も、震い慄のき地に附きて、眼も鼻も耳口も、何と詮方泣声も、轟き渡る皇神の、言葉の霊の限り無く、鳴り渡る時選まれし、日本心の身魂のみ、次の神代の御柱と、栄誉と共に残るなり。

神霊界 1919/05/01 皇道我観(五)

人皇第一代神武天皇を、神日本磐余彦天皇と称す。彦波劔武鵜鵜草葺不合尊の第四の御子なり。御母を玉依姫とまをす。我国の太古は神も人も皆私心私情無ければ、必ず兄を以て、世を継ぐ事を為さず、唯その徳の優れるものを選ぶが故に、皇兄五瀬命、稲飯命、三毛野命を置て立て太子となりたまふ。天皇生れながらにして明達、意志確如まします。長となり給ひて、日向国吾田の邑吾平津姫を娶りて妃となす。手研耳命を生たまふ。御年四十五歳に成り玉ひし時、其兄五瀬命等と御子手研耳命と、高千穂の宮に在し坐して、相議たまふは、『此日向国は辺僻にして、王化を普く天下に及ぼすに便宜ならず。何れの地に遷りてか、大業を成就せむ。昔我天神高皇産尊と大日霊尊此豊葦原の瑞穂国を、我天孫彦火々瓊々杵尊に授け給へり。是に於て瓊々杵尊、天の磐座を離れ五百重の雲を排開き、御前を駈足して、此土に戻止たまひしが、運は鴻荒に属ひ、時は草昧に鐘りぬれば、唯その屯蒙たるまゝの淳素なる風俗に随ひ、唯専一に正直の道を養ひ玉ひて、此西の偏に在りて世を治め玉ひ、我皇祖皇宗いづれも神聖にましまして、慶を積み量を重ねて、多くの年所を歴たること、天祖の斯国に降跡たまひてより以来、今に逮りて二千四百七拾余歳なれども、遼遠なる地は猶いまだ王沢に霑はず、村に長あり邑に君あり、恣に彊界を分ちて相互に凌ぎ轢るもの多くして治まり難し』アゝ是れ二千六百年以前の世界の現象なり。即ち現代に於ける世界列強が、各国を侵略割拠し、各自彊界を分ち用ひ、相凌轢せるの状態と古今相等し。是れ天下無道、無明の証徴にして、皇国の天職、皇道大発揚の必要時機ならずや。畏れ多くも日本神国天皇が、万世一系の皇統を享有し玉ふ所以は、豊葦原瑞穂国なる世界を統治経綸し給ふ天職を帯び玉ふ故なる事、是れ国史に炳として日月の如く、記し賜ふ所なり。畏くも神聖にして、天壌無窮の皇運を保ち給ふところ、敢て古今の差別ある事なし。夫れ豊葦原の瑞穂国とは人類の生活し得て、以て国家社会を組織し得る、全世界の総称にして、大日本皇国は、是れ豊葦原の中津国、即ち世界の中心枢軸なり。醒めよ我同胞、自覚せよ其天職を。

神霊界 1919/08/15 随筆

 第一に御三体の大神を教祖様が御唱へになりました。御三体の神名は、
  高皇産霊大神……伊邪那岐大神……日之大神。
壱 天之御中主大神……撞榊向津姫尊……天照皇大神。
  神皇産霊大神……伊邪那美大神……月之大神。
 以上三列九柱を御三体の大神様と、教祖が奉称されました。天に在します大神様なれど、今度の二度目の世の立替に就て、地上の高天原ヘ御降臨遊ばして大国常立の命様の御神業の御手伝を遊ばすのであります。
 明治二十五年正月元朝寅の刻に、始めて教祖に神憑あらせられたのは、艮の金神大国常立尊様でありました。次に竜宮の乙姫玉依姫命が神憑せられ、次に禁闕要の大神(正勝金木神)澄世理姫尊が御憑りになつたので、最初の間は教祖様が、
   丑寅之大金神大国常立尊。
弐  禁闕要之大神……澄世理姫尊。
   竜宮之乙姫神……玉依比売尊。
 以上の三柱の神を祭つて居られましたが、漸次に出現神が次の如く現はれたのであります。
   雨之神……天之水分神……国之水分神。
   風之神……科戸彦神……科戸姫神。
   岩之神……岩長姫神……岩戸別神。
   荒之神……大雷男之神……別雷男之神。
   地震之神……武雷之神……経津主神。
   万の金神。並に大本塩釜大神。
 以上の神々も祭られたのであります。
 明治三十一年正月より、
   坤之大金神……豊雲野之尊。
   木花咲耶姫尊……弥仙山祭神。
   彦火火出美尊……同上。
四  豊受姫大神……伊勢外宮。
   稚姫岐美尊……伊勢烏の宮。
   大国主大神……出雲大社。
 次に明治三十三年四月八日より以後。
   大島大神……丹後冠島。
   小島大神……全沓島。
五  元伊勢神宮……丹後加佐郡。
   一宮神社……丹波福知山町。
   神島大神……播州牛島。


霊界物語

物語01-4-35 1921/10 霊主体従子 一輪の秘密

して、まづこの竜宮ケ嶋に渡りたまうた。しかして竜宮ケ嶋には厳の御魂なる潮満の珠を、大宮柱太敷立て納めたまひ、また瑞の御魂なる潮干の珠とともに、この宮殿に納めたまうた。この潮満の珠の又の名を豊玉姫神といひ、潮干の珠の又の名を玉依姫神といふ。かくて潮満の珠は紅色を帯び、潮干の珠は純白色である。

物語01-4-36 1921/10 霊主体従子 一輪の仕組

国常立尊は邪神のために、三個の神宝を奪取せられむことを遠く慮りたまひ、周到なる注意のもとにこれを竜宮島および鬼門島に秘したまうた。そして尚も注意を加へられ大八洲彦命、金勝要神、海原彦神、国の御柱神、豊玉姫神、玉依姫神たちにも極秘にして、その三個の珠の体のみを両島に納めておき、肝腎の珠の精霊をシナイ山の山頂へ、何神にも知らしめずして秘し置かれた。これは大神の深甚なる水も洩らさぬ御経綸であつて、一厘の仕組とあるのはこのことを指したまへる神示である。

物語07-4-21 1922/02 霊主体従午 飲めぬ酒

この島は潮満、潮干の玉を秘めかくされ、豊玉姫神、玉依姫神これを守護し給ひつつありしが、世界大洪水以前に、ウラル彦の率ゆる軍勢の為に玉は占領され、二柱の女神は遠く東に逃れて、天の真名井の冠島、沓島に隠れたまひし因縁深き嶋なりける。

物語08-1-4 1922/02 霊主体従未 烏の妻

『高天原を知ろし食す 天の御柱大神の
 神勅畏み天の下 四方の国々隈もなく
 神の教を宣べ伝ふ 闇夜を照らす宣伝使
 日の出神の鹿島立ち 神の御ため国のため
 世人を救ふそのために 潮の八百路の八塩路の
 潮を分けつつ進み行く 吾は尊き神の御子
 瑞の教を謹みて 聴く諸人の真心を
 憫みたまへ天津神 救はせたまへ国津神
 科戸の神や水分の 正しき神は何事ぞ
 波路も高く竜神の 底の藻屑と鳴門灘
 渦巻きわたる海原も 御国を思ふ真心の
 道に通ひし宣伝使 吾が言霊は天地に
 充てる誠の神の声 大海原を知ろし食す
 海原彦や豊玉姫の 神の命は今いづく
 神に祀れる玉依姫の 神の命はいま何処
 雨風繁く波高く この諸人を脅かす
 大綿津見の枉神を 伊吹きに祓へ吹き祓へ
 伊吹き祓ふの力無く 吾が言霊の聞えずば
 吾はこれより天地の 神に代りて三五の
 言挙げなさむ綿津神 科戸の彦や科戸姫
 疾く凪ぎ渡れ静まれよ とく凪ぎ渡れ静まれよ』

物語24-4-15 1922/07 如意宝珠亥 諏訪湖

 紺碧の湖面はたちまち十字形に波割れて、湖底は判然と現はれたり。ほとんど黄金の板を敷き詰めたるごとく、一塊の砂礫もなければ、塵芥もなく、藻草もない。あだかも黄金の鍋に水を盛りたる如き、清潔にして燦爛たる光輝を放ち、目も眩むばかりの荘厳麗美さなりき。波の割れ間よりかすかに見ゆる金殿玉楼の棟実に床しく、胸躍り魂飛び魄散るがごとく、赤珊瑚樹は林のごとくにして立ち並みゐる。珊瑚樹の大木の下を潜つて、しづしづと現はれ来たる玉の顔容月の眉、梅の花か海棠か、ただしは牡丹の咲き初めし、婀娜な姿にまがふべらなる数多の女神、黄金色の衣を身に纏ひ、黄金造りの竜の冠を戴きながら、長柄の唐団扇を笏杖の代はりに左手に突きつつ、右手に玉盃を抱え、天火水地結の五色の玉を、おのおの五人のことさら崇高なる女神に抱かせながら、玉依姫命はしづしづと湖を上がり、五人が前に現はれたまひて、言葉静かに宣りたまふ。
『汝は初稚姫、玉能姫、玉治別、信徒の久助、お民の五柱、よくも艱難を凌ぎ辛苦に堪へ、神国成就のためにはるばる此処に来たりしこと感賞するにあまりあり。しかしながら汝初稚姫は大神よりの特別の思召しをもつて、金剛不壊の如意宝珠の神業に参加せしめられ、また玉能姫は紫の宝玉の御用を仰せつけられ、今や三五教こぞつて羨望の的となりをれり。玉治別外二人は未だかくのごとき重大なる神業には奉仕せざれども、汝らが至誠至実の行ひに賞で、竜宮の神宝たる五種の宝を汝ら五人に授くれば、汝らなほもこの上に心身を清らかにし、錦の宮に捧持し帰り、教主言依別命にお渡し申すべし。いま汝に授くるは易けれど、未だ一つ洲の宣伝を終へざれば、しばらく吾らが手に預かりおかむ。華々しき功名手柄を現はし、重大なる神業を神より命ぜらるるは尤もなりと、一般人より承認さるるまで誠を尽くせ。この一つ洲はネルソン山を区域として東西に別れ、東部は三五教の宣伝使黄竜姫守護しをれども、未だ西部に宣伝する身魂なし。汝ら五人は此処に七日七夜の御禊を修し、この洲を宣伝して普く世人を救ひ、大蛇の霊を善道に蘇へらせ、かつ黄竜姫、梅子姫、蜈蚣姫その他一同の者を心の底より汝の誠に帰順せしめたる上にて、改めて汝の手に渡さむ。初稚姫には紫の玉、玉治別には青色の玉、玉能姫には紅色の玉、久助には水色、お民には黄色の玉を相渡すべし。されどこの神業を仕損じなば、今の妾の誓ひは取消すべければ、忍耐に忍耐を重ねて、人群万類愛善を命の綱と頼み、かりそめにも妬み、そねみ、怒りの心を発するな。妾はこれにて暫く竜の宮居に帰り時を待たむ。いざさらば……』
と言ひ残し、あまたの侍女神を随へ、たちまち巨大なる竜体となりて、一度にドツと飛び込みたまへば、十字形に割れたる湖面は元のごとくに治まり、山岳のごとき浪は立ち狂ひ、巨大の水柱は天に沖するかとばかり思はれた。

物語24-4-16 1922/07 如意宝珠亥 慈愛の涙

七十五声の言霊に       因みて澄める諏訪の湖
皇大神が三千歳の       遠き神代の昔より
ミロク神政の暁に       厳の御霊と現はして
神の御国を固めむと      諏訪の湖底深く
秘め給ひたる珍宝       竜の宮居の司神
玉依姫に言依さし       三千世界の梅の花
五弁の身魂一時に       開く常磐の松の代を
待たせ給ひし畏さよ      浪立ち分けて現れませる
玉をあざむく姫神は      五ツの玉を手に持たし
教の御子の五柱        前に実物現はせて
往後を戒め神業の       完成したる暁に
手渡しせむと厳かに      誓ひ給ひし言の葉を
五人の御子は畏みて      夢寐にも忘れず千早振る
神の誠を心とし        羊の如くおとなしく
如何なる敵にも刃向かはず   善一筋の三五の
至誠の道を立て通し      人に譲るの徳性を
培ひ育てし健気さよ      玉治別や玉能姫
一しほ賢しき初稚姫の     神の命の三御魂
久助、お民の五人連れ     諏訪の湖伏し拝み
七日七夜の禊して       身も魂も浄めつつ
大野ケ原をエチエチと     金砂銀砂を敷き詰めし
道芝イソイソ進み行く。    向かふの方より馳せ来たる
大の男が十五人        出会がしらに一行を
目がけて拳を固めつつ     ところかまはず打ち据ゑて
一同息も絶えだえに      無念の涙くひしばり
笑顔を作り言ひけらく     『心きたなき吾々は
金砂銀砂の敷き詰めし     清き大地を進みつつ
心に恥ぢらふをりからに    いづくの方か知らねども
吾らが身魂を清めむと     心も厚き皇神の
恵みの拳を隈もなく      汚き身体に加へまし
有難涙に咽びます       あ丶諸人よ諸人よ
汝は吾らの身魂をば      研かせたまふ御恵の
深くまします真人よ      あ丶有難し有難し
これより心を改めて      足らはぬ吾らの行ひを
補ひ奉り三五の        神の教の司とし
天地の神や諸人に       恥ぢらふ事のなきまでに
身魂を研き奉るべし      あ丶惟神惟神
恵みの鞭を嬉しみて      皇大神の御教を
四方の国々宣べ伝へ      世人のために真心を
尽くさむ栞にいたします    山より高き父の恩
海より深き母の恩       恵は尽きぬ父母の
吾が子を愛はる真心に     優りて尊き御恵み
謹み感謝し奉る        朝日は照るとも曇るとも
月は盈つとも虧くるとも    たとへ大地は沈むとも
吾らの命は失するとも     神の恵みのこの鞭の
その有難さ何時までも     忘るることはあらざらめ
汝は普通の人ならじ      諏訪の湖水に現れませる
皇大神の御心を        持ちて現れます神ならむ
謹み感謝し奉る        あ丶惟神惟神
御霊幸倍ましませよ      この世を造りし神直日
心も広き大直日        ただ何事も人の世は
直日に見直し聞直し      身の過ちは宣直す
三五教の吾々は        いかなることも惟神
すべて善意に解釈し      ただ一言も恨まずに
情けの鞭を嬉しみて      厚く感謝し奉る
水も洩らさぬ皇神の      尊き仕組の今の鞭
受けたるこの身今日よりは   心の駒に鞭うちて
時々兆す悪念を        山の尾の上に追ひ散らし
河の瀬ごとに追ひ払ひ     大慈大悲の大神の
大御心に報ふべし       進めよ進めよいざ進め
忍の山に逸早く        剣の山も何のその
たとへ火の中水の底      神の大道のためならば
などか厭はむ敷島の      大和心をふりおこし
国治立の御前に        奇しき功績を立て奉り
目出たく神代にかへり言    申さむ吉き日を楽しまむ
あ丶惟神惟神         御霊幸はひましませよ』

物語25-3-10 1922/07 海洋万里子 開悟の花

心の色も清公が        チヤンキー(長吉)モンキー(茂吉)始めとし
アイル、テーナの五人連れ   黄金花咲く海中の
竜宮洲の中心地        玉野ケ原を打ち渡り
酷暑の光受けながら      涼風香る諏訪の湖
祠の前に端坐して       天津祝詞を奏上し
浮世の衣を脱ぎ捨てつ     生まれ赤子の真裸体
後をも先をもみづ御霊     五つの御霊はもろともに
身を躍らして飛び込めば    千尋の底よりなほ深き
罪の凝固の清公を       先頭に立てて各自は
歩むに連れて摺鉢の      深き水底に身を沈め
一度は息も絶れたるが     金銀珠玉を鏤めし
目無堅間の神船に       棹さし来たる神人に
救ひ上げられ常磐木の     天を封じて立ちならぶ
雄島の岸に救はれぬ      そもそも此島は竜宮の
神に仕ふる百神の       金と銀との蛇と変じ
あるひは蜈蚣と化りかはり   澆季末法の世の中を
救ひ助けて神の代を      建てむがために朝夕に
三寒三熱かぎりなき      苦痛を嘗めて世を救ふ
諸善竜神の修業場       三五教の宣伝使
生まれ赤子になりかはり    心の色も清公が
喉をめがけて這ひ込みし    黄金の蛇は何者ぞ
玉依姫の分け御霊       玉永姫の化身にて
竜宮洲を清めむと       名も清公の体を借り
アイル、テーナやチヤンキーを 蜈蚣の島に投げやりて
現界幽界の境なる       苦しき修業を事依さし
水晶身魂に磨き上げ      罪も穢も軽衣
錦の船に運ばれて       竜の宮居に進みゆく
雄島の岸に残されし      一人の男モンキーは
四人の姿を見送りて      善悪邪正の判断に
迷ふをりしも金銀の      浪掻き分けて浮かびくる
青緑毛の大亀は        忽ちモンキーが足許に
のたりのたりと這ひ上がり   山上めがけて這ひ出せば
ここにモンキーは遅れじと   亀の後をば追ひながら
大樹の枝に駈け登り      亀ともろとも高所より
たちまち地上に顛落し     大切の頭を打ちながら
神の御息を両の手の      掌に吹きかけ疵所をば
つるりつるりと撫でつれば   疵はたちまち癒えにける
緑毛の亀は足早に       雲を霞と駈けいだす
吾遅れじとモンキーは     汀に進む折柄に
緑毛の亀はたちまちに     身を躍らして水中に
ザンブとばかり飛びこみぬ   モンキー後より後れじと
またもや水中に飛びこめば   手足も疲れ身も弱り
息も絶えむとするところ    緑毛の亀は何ゆゑか
湖面に姿を浮かべつつ     手足を休めて振り返り
モンキーの来たるを待ちゐたる やうやく亀に縋りつき
両手に甲を抱へつつ      命からがら従いて行く
亀はすぐさま水中を      潜りて深き海底に
一たん息を休めつつ      再び湖面に浮き上がり
たちまち変じて船となる    命かぎりのモンキーは
初めて蘇生したるごと     心も勇み気も勇み
救ひの船に身を任せ      善悪邪正の判断に
心の闇を照らしつつ      船のまにまに浪の上
朱欄碧瓦の竜宮の       高楼めがけて惟神
神のまにまに進みゆく。

物語25-4-15 1922/07 海洋万里子 改心の実

ジヤンナの郷に三五の     神を祀りし友彦が
館に一行夜を明かし      一日二夜を逗留し
タイヤ、ブースをはじめとし  あまたの土人に皇神の
誠の道を説き諭し       鎮魂やバプテスマ
一人も残らず施して      昼なほ暗き森林の
小径を伝ひ郷人に       賑々しくも送られて
やうやくセムの谷間に     辿りきたれる折柄に
黄竜姫は皇神の        珍の命の霊借りて
送りきたりし郷人に      厚く言葉をかけながら
東と西に別れつつ       露の枕も数多く
重ねて此処に玉野原      金銀輝く途の上
勇み進んで諏訪の湖の     辺にやうやう安着し
祠の前に端坐して       一行五人が安穏に
訪ねきたりし神恩を      感謝しをはり清鮮の
湖水に身をば浸しつつ     七日七夜の魂洗ひ
椰子樹の蔭に身を潜め     夜明けを待てるをりからに
樹上に聞こゆる羽ばたきの   音に驚き眺むれば
雪をあざむく白翼の      パツと開いた大鳥の
空を封じて数多く       西北指して飛んでゆく
一行五人は空中を       仰ぎ見つむる折りもあれ
黄金の翼に乗せられて     こなたに向かつて飛びきたる
四五の神人悠々と       湖水を目がけて降りく,る
その光景の崇高さに      五人は思はず手を合はせ
祝詞を唱へつ眺めゐる     黄金の鳥に乗せられし
男女五人の神人は       波の上をばスレスレに
北に向かつて進みゆく     これぞ玉治別宣使
初稚姫や玉能姫        久助お民の五人連れ
神の御言を畏みて       貴の教を隈もなく
伝へ導く神の業        何怜に委曲に宣りをはせ
玉依姫の御使の        黄金色の霊鳥に
救はれ御空を翔けりつつ    帰りきたれる生神の
通力得たる姿なり       あ丶惟神惟神
神の教の尊さよ。
翼を一文字に拡げた金色の霊鳥は、神の使の八咫烏である。玉治別一行を乗せた五羽の八咫烏は、日光に照り輝きて中空にキラリキラリと光を投げながら、地上までも金光を反射させ、諏訪の湖辺に飛びきたり、紺碧の波の上をすべつて際限もなき湖水を、北へ北へと進みゆく。

物語25-4-16 1922/07 海洋万里子 真如の玉

高座の白木の扉を左右に引き開け、現はれ出でし崇高無比の女神は、五人の侍女に天火水地結の五色の玉を持たせて梅子姫の前に現はれ給ひ、前に立てる侍女の手より、自ら紫の玉を手に取り上げ、初稚姫に渡し給ふ。初稚姫は恭しく拝受し、これを宝座に控へたる梅子姫の手に献る。梅子姫は莞爾として押し戴き給ふ時、金襴の守袋を一人の侍女来たりて献る。梅子姫はこれを受け取り直ちに玉を納め、そのまま首に掛け胸の辺りに垂れさせられ、合掌して暗祈黙祷し給ふた。梅子姫の姿は刻々に聖さと麗しさを増し、全身玉のごとくにかがやく。
次に玉依姫は侍女の持てる赤色の玉を取り、玉能姫に相渡すを玉能姫は押し戴き、蜈蚣姫の手に恭しく渡す。次に玉依姫は侍女の持てる青色の宝玉を取り、これを玉治別に授け給ふ。玉治別は押し戴き直ちに黄竜姫に渡し、次に侍女の持てる白色の玉を取り久助に渡し給へば、久助は恭しく拝戴し友彦の手に渡す。また侍女の持てる黄色の玉を玉依姫みづからお民に渡し給へば、お民は押し戴きテールス姫に渡す。おのおの一個の玉に対し金襴の袋は添へられた。さうしてこの玉の授受には玉依姫神をはじめ、一同無言の間に厳粛に行はれける。
玉依姫は一同に目礼し、奥殿に侍女を伴なひ、一言も発せず悠々として神姿を隠し給ふ。梅子姫外一同も無言のまま竜宮の侍神に送られ、第一、第二、第三の門を潜り諏訪の湖辺に着く。
このとき金の翼を拡げたる八咫烏十数羽飛び来たり、梅子姫、黄竜姫、蜈蚣姫、友彦、テールス姫、玉治別、初稚姫、玉能姫、久助、お民の十柱を乗せ、天空高く輝きながら万里の波濤を越えて、つひに由良の聖地に無事帰還せり。

物語25-5-17 1922/07 海洋万里子 森の囁

駒彦『玉の所在は竜宮洲の諏訪の湖、玉依姫命さまが、モウ時節が到来したから、身魂の立派な守護神に渡したい渡したいとおつしやるので、玉照姫様の御命令により、言依別神様から、東助さまや国依別さまに……お前、受け取りにいつてこんか……といつて御命令が下つたさうです。私も御用に行きたいのだが、怪体の悪い、留守番を命ぜられ、指を啣へて人の手柄を遠いところから傍観してゐるのだ。本当に羨ましいことだワイな』

物語26-1-1 1922/07 海洋万里丑 麻邇の玉

三千世界の梅の花       一度に開く五大洲
豊葦原の瑞穂国        中にも分けて神恩の
恵みあまねき中津国      メソポタミヤの楽園と
ならびて清き自転倒の     大和島根は磯輪垣の
秀妻国と称へられ       七五三の波清く
風穏かな神守の        島に名高き真秀良場や
青垣山をめぐらせる      霊山会場の蓮華台
この世を清むる三つ御魂    四尾の峰の山麓に
国治立大神は         厳の御霊を分け給ひ
国武彦と現はれて       五六七の神世の来たるまで
無限の力を隠しつつ      花咲く春を松の世の
磯固く築きかため       空澄み渡る玉照彦の
神の命や玉照姫の       神の命を日月の
神の使になぞらへて      金剛不壊の如意宝珠
黄金の玉や紫の        稀代の宝玉集めまし
豊国主の分霊         言霊別の魂の裔
言依別を教主とし       錦の宮に千木高く
下津岩根に宮柱        太知り建てて伊都能売の
幽玄微妙の神策を       仕組み給ひし雄々しさよ
言依別や玉能姫        初稚姫の三つ御魂
ひそかに神の宣勅       頸に受けて永久に
玉の在処を秘めかくし     三つの御玉の出現を
遠き未来に待ち給ふ      神素盞嗚大神の
深遠微妙の御経綸       梅子の姫を竜宮の
宝の洲に遣はして       黄竜姫を楯となし
天火水地と結びたる      青赤白黄紫の
五つの玉を諏訪湖の      玉依姫の御手より
初稚姫や玉能姫        玉治別を始めとし
久助お民の五つ身魂      研き澄まして水晶の
輝きわたる宝玉を       授け給へば五柱
心を清め身を浄め       おし戴いて梅子姫
黄竜姫や蜈蚣姫        テールス姫や友彦の
研き澄ました神司       無言のままに手に渡し
玉依姫の御前を        しづしづ立ちて三つの門
くぐりて帰る諏訪湖の     金波ただよふ磯端に
帰りて湖面に合掌し      感謝のをりから中空を
照らして下る八咫鳥      黄金の翼をうち拡げ
十曜の紋の十人連       背に乗せつつ久方の
天津御空を勇ましく      雲霧分けて下りくる
自転倒島の中心地       綾の高天の空近く
帰り来たるぞ目出たけれ    言依別は神界の
知らせによりて杢助や     その他あまたの神司
八尋の殿に招き寄せ      五つの玉の中空を
翔けりて下る瑞祥を      祝ぎ奉り歓迎の
準備をなさむと遠近に     派遣しおきたる神司
使を馳せて一所に       集めて事の詳細を
包み隠さず示しける      一つ洲より中空を
掠めて聖地に降りくる     十の身魂を迎へむと
数多の人々引きつれて     由良の港へすくすくと
列を正して出で向かふ     あ丶惟神惟神
御霊幸はへましませよ。

物語26-1-2 1922/07 海洋万里丑 真心の花(一)

 天火水地結の竜宮の麻邇の玉の無事、秋山彦館に安着せし歓喜と、感謝をかねたる荘厳なる祭典は無事終了し、直会の宴は盛んに開かれ、いよいよ五個の神宝は聖地を指してにぎにぎしく由良がを遡り送らるることとなつた。それについては一同由良の港の川口に出て御禊祓を修し、ふたたび神前に立ち帰り祭典を行ひ、美はしき神輿を造り、これに納めて聖地へ、水に逆らひ、金銀色の帆に風を孕ませ上ることとなつた。
 ここに一同は玉の安着を祝するため、おのおの立つて歌をうたひ舞ふこととなつた。まづ第一に秋山彦は立つて、神素盞嗚尊、国武彦命に一礼し、許可をえて、金扇を両手に拡げ、宣伝使服を身にまとひ、悠々として座敷の中央に歌ひ舞ひはじめた。
『年てふ年は多けれど     月てふ月は多けれど
生日足日は沢なれど      今日はいかなる吉日ぞや
九月八日の秋の空       四方の山々紅葉して
錦織りなす佐保姫の      機の仕組も目のあたり
綾の高天に宮柱        太しり建てて永久に
鎮まりいます国治立の     厳の命や豊国姫の
瑞の命の生御魂        国武彦や言依別の
貴の命と現はれて       裏と表の神界の
仕組もここにほのみえて    天火水地と結びたる
竜宮洲の麻邇の玉       おのが館に入りましぬ
あ丶惟神惟神         御霊幸はへましまして
一度ならずも二度も      二ろの御霊の神柱
神素盞嗚大神の        大御恵のいや深く
吾が館にとまりましまして   深遠無量の御経綸
心の色は紅葉姫        唐紅の大和魂
輝き初めし今日の空      あ丶有難し有難し
恵は深き由良の海       清き流れの川口に
百の罪咎浄めつつ       貴の玉筥いや清く
五つの御玉を納めたる     新つの御船に身を任せ
心も涼しき神風に       黄金の真帆を掲げつつ
聖地に送る尊さよ       三千世界の梅の花
一度に開く常磐木の      松の神世も近づきて
海の内外の極みなく      瑞の御霊の御恵の
堅磐常磐に照り渡る      瑞祥は思ひ知られけり
あ丶惟神惟神         御霊幸はへましまして
波斯の国よりはるばると    降りきませる素盞嗚の
瑞の御霊の大御神       四尾の山に奥深く
隠れて時を待ち給ふ      国武彦の御前に
心の幕も秋山彦の       賤の男が真心を
こめて祝ぎ奉る        あ丶惟神惟神
御霊幸はへましませよ』
紅葉姫はまたもや立ち上がり、
『月日の駒はいと早く     思ひ返せば満三年
辛酉の菊月の         八日に吾が館に出でましし
神素盞嗚大神の        尊き御影を拝してゆ
心も赤き紅葉姫        誠のかぎり身をつくし
仕へ奉りし甲斐ありて     天地に充つる喜びは
又もや廻り甲子の       九月八日の今日の空
嬉しき便り菊月の       薫り床しきこの祭典
金剛不壊の如意宝珠      古き神代の昔より
波に漂ふ沓島の        巌の中に秘めおける
神秘の鍵をあづかりし     秋山彦の表口
黄金の鍵を高姫に       まんまと盗みいだされて
一同心をいらちしが      やうやく島に馳せついて
危ふきところを発見し     高姫さまを伴なひて
吾が館に帰りきたるをり    たちまち腹に呑み込みて
雲を霞と逃げられし      その古事を思ひ出し
またもや麻邇のこの宝珠    無事に聖地に御安着
遊ばすまでは村肝の      心をくばり気をくばり
送らせ給へよ人々よ      朝な夕なに高姫が
玉に心を抜かれつつ      隙ゆく駒の隙あらば
またもや腹に呑みこみて    如何なる事をしでかすか
計り知られぬ一大事      あ丶惟神惟神
御霊幸はへましまして     神素盞嗚大神が
天地を救ひ助けむと      配らせたまふ真心を
よく汲みとりて仕へませ    初稚姫や玉能姫
玉治別やそのほかの      百の司の御前に
紅葉の姫が老婆心       わずかに披瀝したてまつる
あ、惟神惟神         御霊幸はへましませよ』
と歌ひをはり舞ひ納めた。初稚姫はまたもや立ちあがつて金扇をひ
ろげ、歌ひかつ自ら舞ふ。
『遠き神代のその昔      日の大神の御水火より
生れ出でませる稚姫君の    神の命は天が下
四方の国々安国と       いと平らけく治めむと
心をつくし身をつくし     神の御業に朝夕に
仕へたまひし折りもあれ    八十の曲津の醜魂に
とり挫がれて妹と背の     道を誤り大神の
御教に触れて底の国      身魂を隠し給ひつつ
天より高く咲く花も      地獄の釜のこげ起こし
百の悩みを身にうけて     いよいよ心を立直し
時を待ちつつ時置師の     神の化身の杢助が
妻のお杉が腹を借り      初稚姫と現はれて
国武彦と現れませる      国治立大神の
尊き神業に仕へむと      心を配る幼年の
年端もゆかぬ身ながらも    言依別命より
尊き神業命ぜられ       三千世界の神宝
金剛不壊の如意宝珠      千代に八千代に永久に
動かぬ松の幹の根に      隠し奉りて開けわたる
天の岩戸も五六七の世     開かむための御経綸
深き心を白浪の        高姫司や黒姫が
玉の在処を探らむと      現界幽界の瀬戸の海
太平洋の荒浪を        乗り越え乗り越え竜宮の
一つの洲に上陸し       隠せし場所を探らむと
焦ちたまふぞ悲しけれ     玉治別や玉能姫
神の司と諸共に        高姫さまを気遣ひて
荒浪猛る海原を        見えつ隠れつ漕ぎわたり
御身の上を守りつつ      妾も同じ竜宮の
一つの洲へ上陸し       人跡絶えし荒野原
山を踏み越え谷渉り      黄金の波を湛へたる
玉依姫の隠れ場所       諏訪の湖水に辿り着き
神の御旨をあななひて     三五教の御教を
彼方こなたと布きひろめ    弘めをはつて八咫烏
黄金の翼に乗せられて     朝日輝き夕日照る
竜の宮居にいまします     玉依姫命より
天火水地を統べ結ぶ      紫色の麻邇の玉
無言のままに拝受して     梅子の姫の御前に
捧げ奉りし嬉しさよ      仰げば高し天の原
雲霧分けて自転倒島の     秀妻の国の中心地
外の囲ひときこえたる     由良の港の人子の司
秋山彦が御館         降りきたりし嬉しさよ
あ丶惟神惟神         御霊幸はへましまして
十曜の紋の十人連れ      空前絶後の神業に
仕へ奉りし嬉しさを      吾ら一人のものとせず
高姫司や黒姫の        神の使の御前に
この喜びをかきわけて     手を携へて天地の
尊き道に仕へなば       三五教の大空は
月日も清く明らかに      厳と瑞との神界の
機織りあげて綾錦       輝く宮に永久に
仕へて互ひに歓ぎつつ     教の栄えをみるならむ
あ丶惟神惟神         御霊幸はへましまして
初稚姫が真心を        うまらにつばらに聞こし召せ
神素盞嗚大御神        国治立大神の
分の御霊の御前に       畏み畏み願ぎまつる
畏み畏み祈ぎまつる』
梅子姫は立ち上がり、歌ひ舞ひはじめた。
『父大神の神言もて      顕恩城に現れませる
バラモン教の神司       鬼雲彦やそのほかの
捻け曲れる人々を       誠の神の大道に
言向和す神業に        八人乙女は身をやつし
エデンの河をうち渡り     いろいろ雑多と気を配り
あらむかぎりのベストをば   つくせしことも水の泡
太玉命の神司         顕恩城を主宰して
教を開きたまひつつ      われら姉妹めいめいは
顕恩城を後にして       あなたこなたと三五の
道を伝ふるをりからに     バラモン教の醜人に
情け容赦も荒浪の       寄る辺渚の捨小舟
波に漂ひ竜宮の        宝の洲に上陸し
小糸の姫を守り立てて     五十子の姫や今子姫
宇豆姫ともなひ地恩郷     光を隠し黄竜姫の
貴の命を表とし        影身に添ひて大神の
尊き御教を説き示し      心配りし甲斐ありて
身魂も清き小糸姫       バラモン教の醜道を
弊履のごとく脱ぎすてて    誠の道に服従ひし
その嬉しさは如何ばかり    高山彦や黒姫も
心をつくし身をつくし     三五教の御教に
尽くしたまへど村肝の     心にかかる執着の
雲晴れやらず黄金の      玉の在処に魂抜かれ
教の道を外にして       朝な夕なに気をいらつ
そのみ心の憐れさよ      時しもあれや三五の
神の教の宣伝使        初稚姫や玉能姫
玉治別ともろともに      浪路を分けてきたります
神の柱の高姫が        地恩の城にきたりまし
高山彦や黒姫を        ひそかに誘ひ一つ洲
後にみすてて波の上      南洋諸島を隈もなく
探し索めて瀬戸海の      淡路の島の司神
東助館に出でまして      玉の在処を疑ひつ
再度山の山麓に        国依別を訪ねつつ
執着心はまだ晴れず      彼方こなたと彷徨ひて
玉の在処を索めます      その御心ぞ可憐らしき
地恩の城を後にして      黄竜姫や蜈蚣姫
テールス姫や友彦を      伴なひ山の尾うち渉り
深き谷間を潜り抜け      ネルソン山を後にして
ジヤンナの郷やイールの郷   玉野ケ原を踏み越えて
金砂銀砂の輝きし       諏訪の湖水の手前まで
やうやう進むをりからに    紺青の波をたたへたる
波上を駈ける金銀の      八咫鳥やアンボリー
取りつく島もなきをりに    黄竜姫を先頭に
初めて悟る神の道       心の空はたちまちに
転迷開悟の花咲きて      朱欄碧瓦の竜宮城
玉依姫の御館         奥の一間に参入し
一行五人の五つ身魂      初稚姫の一行と
ものをも言はずしづしづと   玉依姫の御前に
月の形の座を占めて      月光輝く麻邇の玉
心も色も紫の         色映えわたる初稚姫の
貴の命はしとやかに      わが手に渡したまひけり
初稚姫の真心は        雪より清く紅葉の
色にも優る御姿        妾はたちまち感じいり
無言のままに受け取りて    黄金の翼を拡げたる
八咫烏に助けられ       やうやくここに着きにけり
あ丶惟神惟神         神の御心汲みとりて
三五教に仕へたる       神の司の高姫や
高山彦や黒姫や        竜国別や鷹依姫の
貴の命ともろともに      玉依姫の賜はりし
麻邇の宝珠の神業に      仕へまほしきわが願ひ
うまらにつばらに聞こし召せ  三五教を守ります
国治立大御神         豊国姫大神の
御前に畏み願ぎまつる     あ丶惟神惟神
御霊幸はへましませよ』
と歌ひ終はり、悠々としてわが席に帰りたまふた。

物語26-1-3 1922/07 海洋万里丑 真心の花(二)

 玉治別は立ち上がり、銀扇を拡げて歌ひ舞ひはじめた。
『吾は玉治別司        天と地との三五の
誠を諭す神使         宇都山郷に現はれて
樵の業や野良仕事       名も田吾作の賤の男が
天の真浦の宣伝使       松鷹彦に三五の
誠の道を教へられ       国依別ともろともに
三国ケ嶽にバラモンの     教の館を構へたる
ここにあれます蜈蚣姫     三五教の大道に
救はむものと老木の      茂る山路をうち渉り
岩窟の中に乗りこみて     お玉の方に廻り会ひ
蜈蚣の姫の秘蔵せる      黄金の玉を発見し
綾の高天原へ持ち帰り     意気揚々と宣伝の
使となりて遠近を       さまよひ歩くそのうちに
バラモン教のその一派     鷹依姫の神司
高春山に居を構へ       体主霊従の御教を
四方に開くと聞きしより    国依別や竜国別の
貴の命ともろともに      心の駒に鞭うちて
進むをりしも津田の湖     敵の捕手に囲まれて
生命危ふきをりからに     杢助司や初稚姫の
貴の命に助けられ       高春山に立ち向かひ
廻り会ふたる天の森      竜国別と鬼娘
ヤツサモツサの問答も     神の恵みの御光に
煙と消えていさぎよく     神の御稜威を伏し拝み
鷹依姫の割拠せる       岩窟の中に立ち入りて
高姫、黒姫両人を       救ひ出だして鷹依の
姫の命はたちまちに      アルプス教を解散し
三五教の大道に        仕へまつりて綾錦
高天原に連れ帰り       黄金の玉の紛失に
思はぬ濡衣かぶせられ     泣く泣く立つて和田の原
はるばる越えてどことなく   黄金の玉のありかをば
探らむために親と子が     海の彼方に出でましぬ
あ丶惟神惟神         神の恵みの幸はひて
一日も早く片時も       とく速けく親と子が
在処を知らせたまへよと    玉治別の朝宵に
祈る心ぞ悲しけれ       金剛不壊の如意宝珠
紫色の宝玉の         在処探ねて高姫が
またもや神都を後にして    海の内外の区別なく
探ねてまはる気の毒さ     神の仕組を打ち明けて
当所も知らぬ玉探し      諦めさせむと玉能姫
初稚姫ともろともに      屋根無し小舟に身を任せ
遠き浪路を打ち渡り      高姫一行の危難をば
救ひ守りつ竜宮洲       到りてみれば高姫は
高山彦や黒姫と        暗に紛れていち早く
後白浪となり果てぬ      あ丶惟神惟神
御霊幸はへましまして     高姫一行が執着の
心の雲を晴らせかし      一日も早く真心に
かへらせ給へと太祝詞     となふる声も湿りがち
玉治別は是非もなく      初稚姫ともろともに
ネルソン山の高嶺をば     西に渉りて山深み
谷底潜り種々と        百の艱難に出会ひつつ
神の恵を力とし        誠の道を杖として
石の枕に星の夜具       猛獣哮ける大野原
夜を日についで進みつつ    虎狼や大蛇まで
わが一二五の言霊に      言向和し玉野原
一眸千里の草分けて      諏訪の湖辺に辿り着き
社の前に額づきて       善言美詞の太祝詞
汗に穢れし身体を       清き湖水に禊ぎつつ
拍手の声は中天に       轟きわたる折柄に
浪を十字に引き分けて     現はれたまふ百の神
天火水地と結びつつ      五づの身魂の御宝
携へきたる女神たち      吾ら一行に立ち向かひ
竜宮海の麻邇の玉       汝ら五人に授けむと
いと厳かに宣らせつつ     身魂を研けと言ひすてて
後白浪と消え給ふ       初稚姫や玉能姫
玉治別は伏し拝み       諏訪の湖あとにして
西北指して進みつつ      幾度となく皇神の
深き試錬に遇ひながら     さしもに広き竜宮洲
神の使の霊鳥に        救はれ無事に国人を
言向和し神業を        ほぼ了へまつる折柄に
神の使の八咫烏        黄金の翼拡げつつ
吾ら一行五つ身魂       その背に乗せて玉依姫
貴の命の在れませる      竜の宮居に送りけり
あ丶惟神惟神         御霊の幸を蒙りて
吾ら五人は皇神の       教の道に尽くすより
外に一つの望みなし      執着心の雲晴れて
輝き渡る日月は        心の空に永久に
鎮まりいます心地して     不言実行の神の業
竜の館に仕へつつ       時の到るを待つうちに
梅子の姫を始めとし      黄竜姫や蜈蚣姫
テールス姫や友彦が      黄金の舟に浮かびつつ
黄金の門を潜りぬけ      現はれ来ます嬉しさに
互ひに見合はす顔と顔     嬉し涙はせきあへず
言葉をかくる術もなく     無言のままに奥殿に
進むをりから玉依姫の     神の命は悠々と
青人草を救へよと       露の滴る青の玉
ものをも言はず玉治別の    神の司の掌に
授け給ひし嬉しさを      喜び畏み村肝の
心の魂の照るままに      黄竜姫の双の手に
やうやく渡し胸を撫で     不言実行の一端に
仕へまつりし折柄に      玉依姫は奥深く
御神姿隠し給ひけり      吾ら一同勇み立ち
三の御門を潜りぬけ      黄金の浪の漂へる
諏訪の湖辺に来て見れば    たちまち飛び来る八咫烏
吾らを乗せて白雲の      御空を高く翔け上り
翼の音も勇ましく       やうやく当館に帰りけり
あ丶惟神惟神         御霊幸はへましまして
三五教の御教は        堅磐常磐に松の世の
ミロク神政の基礎と      仕へまつりて天地の
百の神たち百人を       浦安国の心安く
守らせ給へ惟神        神の命の御前に
玉治別が真心を        開いて細さに願ぎまつる
神素盞嗚大神や        国治立の御分魂
国武彦大神よ         三五教はいふもさら
島の八十島八十の国      青雲棚引くその限り
天地百の生物に        平安と栄光と歓喜を
与へたまへと願ぎまつる    あ丶惟神惟神
御霊幸はへましませよ』

物語26-1-4 1922/07 海洋万里丑 真心の花(三)

玉能姫は立ち上がりて、玉の無事到着を祝するために歌ひ舞ひ始めた。
『埴安彦や埴安姫       神の命の開かれし
三五教の神の教        四方に伝ふる宣伝使
玉能の姫の名を負ひて     綾の聖地に仕へつつ
言依別の神言もて       三つの宝の神業に
仕へ奉りて朝夕に       心を配るわが身魂
豊国姫の常久に        鎮まりいます比沼真奈井
神の霊地にほど近き      丹波村の平助が
娘のお節の身の果ては     三五教の神司
青葉繁れる若彦の       妻の命と選まれて
袂を別つ北南         生田の森の神館
謹み守る折柄に        高姫さまの玉探し
瀬戸の荒浪打ち渡り      家島の山の奥深く
迷ひ入ります心根を      思ひ参らせ樟船を
新たに造りて磯端に      繋ぎて帰るその後に
懸らせ給ふ木の花姫の     神の御言を畏みて
又もや船に身を任せ      初稚姫や玉治別の
神の司ともろともに      心の暗を明石潟
波も高砂浦近く        飾磨の海を乗り越えて
小豆ケ島や大島や       馬関の瀬戸を後にして
大島越えてアンボイナ     南洋一の竜宮に
高姫さまや蜈蚣姫       その他の人々救ひつつ
波を隔てて帰り来る      又もや吾が身に神懸り
御言のままに樟船を      大海原に浮かべつつ
大海中に漂へる        魔島に近く漕ぎ寄せて
高姫一行救ひ上げ       夜を日に次いで限りなき
島を縫ひつつ沓島の      ニユージーランドの玉の森
ここに一先づ息休め      あまたの土人に送られて
波に漂ふ海中の        竜宮洲のタカ港
目出たく船を乗り棄てて    初稚姫や玉治別の
神の命ともろともに      蜈蚣の姫を送りつつ
地恩の郷の傍に        袂を別ち峰伝ひ
ネルソン山を後にして     ジヤンナの郷に友彦が
館を訪ね西北を        目当に行方も白雲の
玉野ケ原に着きにける     酷暑の空に焼きつかれ
椰子樹の蔭に一夜を      憩ふをりしも羽撃きの
激しき音に目を覚まし     諏訪の湖辺に佇みて
尊き神の神勅を        畏み仕へ奉りつつ
百の試煉に遭ひながら     神の助けの八咫鳥
背に跨りて悠々と       再び帰る諏訪の湖
眼下に眺めて玉依姫の     神の命の隠れます
竜の宮居に参上り       常世の春を楽しみつ
心を洗ふ折柄に        梅子の姫を始めとし
黄竜姫や蜈蚣姫        テールス姫や友彦の
五つの御魂の悠々と      訪ね来たりし嬉しさに
胸轟かし出で迎へ       玉依姫の神言もて
奥殿近く導きつ        三日月形に座を占めて
暫く時を待つほどに      玉依姫の現れまして
賤しき妾の前に立ち      心も赤き麻邇の玉
ものをも言はずわが御手に   授け給ひし尊さを
私せじと心づき        年波高き蜈蚣姫
神の司の玉の手に       渡して帰る三つの門
浜辺に出でし時も時      空照り渡る金翼の
八咫烏に乗せられて      世も久方の天の原
雲霧分けて自転倒の      神の鎮まる竜の島
綾の聖地の外囲ひ       由良の港に名も高き
人子の司秋山彦の       貴の命の庭先に
悠々降り来たりけり      あ丶惟神惟神
神の御稜威のいや高く     恵の露の霑ひて
瑞の御魂の御神業       仕へ給ひし玉能姫
わが身に余る光栄を      担ひてまたも竜宮の
麻邇の玉まで拝戴し      五六七神政の一端に
仕へ奉りし嬉しさよ      バラモン教に身を委ね
大江の山に現れませし     鬼雲彦の副棟梁
鬼熊別の妻神と        現はれまして鬼ケ城
厳の砦を構へつつ       神の教を遠近に
伝へ給ひし女丈夫も      三五教の皇神の
教の水に清められ       今は尊き宣伝使
蜈蚣の姫の御光        普く四方に輝きぬ
心も赤き赤玉の        光ますます照りはえて
神の御稜威は四方の国     伊照り透らひ隈もなく
蜈蚣の姫の功績は       自転倒島は言ふもさら
国のことごと雷の       轟くごとく鳴り渡り
神の御楯と常久に       仕へ奉らせ給ふらむ
あ丶惟神惟神         御霊幸はへましまして
千代も八千代も変はりなく   誠の道に仕へませ
拙き身魂の玉能姫       心を籠めて皇神の
貴の御前に願ぎ奉る      あ丶惟神惟神
御霊幸はへましませよ』
と歌ひ終はつて座に着いた。
 蜈蚣姫はくの字に曲つた腰を揺すりながら、銀扇を開き満面に喜びの色をたたへ、中央の席に現はれて自ら歌ひ自ら舞ふた。
『メソポタミヤの楽園地    顕恩郷を立ち出でて
鬼雲彦ともろともに      自転倒島の中心地
大江の山にバラモンの     教の庭を開きつつ
三嶽の山や鬼ケ城       山の尾の上や川の瀬の
あまたの神を寄せ集へ     神の教を開きつつ
大国彦大神に         百の犠牲奉り
大神慮を慰めつ        教の花を遠近に
世に芳ばしく伝へむと     心をいらつをりからに
瑞の御魂と現れませる     神素盞嗚大神に
仕へ奉れる神司        心も清き大丈夫に
大江の城や鬼ケ城       追ひ払はれて鬼雲の
彦の命と鬼熊別は       伊吹の山を乗り越えて
ふたたび波斯の野を横ぎり   埃及さして帰りまし
後に残りし蜈蚣姫       この頽勢をどこまでも
翻さむと近江路や       丹波若狭の境なる
三国ケ嶽に立て籠り      体主霊従と知りながら
時の勢ひ已むを得ず      醜の御業を継続し
国依別や玉治別の       神の司に退はれて
ふたたび開く魔谷ケ岳     小豆ケ島に名も高き
国城山に身を転じ       教を開き黄金の
玉の在処を探ねつつ      月日を送る山の上
思ひがけなき三五の      神の司の高姫や
友彦その他に廻り会ひ     小糸の姫の行末を
探ねがてらの玉探し      名は太平の洋なれど
荒浪猛る和田の原       生死の境に浮沈して
数多の島を横ぎりつつ     高姫一行ともろともに
一つ洲なる地恩城       黄竜姫に面会し
始めて覚るわが娘       ヤツと一息つくうちに
現はれ来たる蜃気楼      梅子の姫を始めとし
黄竜姫や友彦や        テールス姫ともろともに
遠き山野をうち渉り      神の経綸の秘密郷
波も輝く諏訪の湖       梅子の姫の神勅に
初めて開く胸の中       君と臣とに麻柱の
誠を悟り勇ましく       天津祝詞を奏上し
歓ぎ喜ぶ一行は        黄金の船に迎へられ
竜の宮居に参上り       四辺まばゆき神社
光り輝き出で給ふ       玉依姫の御前に
進みし時の嬉しさよ      玉依姫の御手より
麻邇の赤玉受け取りし     玉能の姫の真心は
玉と光を争ひつ        顔色黒く腹黒き
いやしき蜈蚣の姫の前     玉の御手をさし伸べて
麻邇珠の玉をわが御手に    渡し給ひし健気さよ
思へば思へば恥づかしき    執着心の曲鬼に
取りひしがれし老の身の    開悟の花は咲き出でぬ
梅子の姫に従ひて       一同館を立ち出づる
荘厳無比の三つの門      潜るや間もなく金翼の
八咫鳥に助けられ       一潟千里の勢ひに
心の色も秋山彦の       神の命の庭先に
紅葉彩る今日の空       悠々降り着きにけり
あ丶惟神惟神         御霊幸はへましまして
今まで犯せし親と子が     深き罪とが宣直し
見直しまして三五の      神の司の片端に
列ねたまへよ瑞御魂      神素盞嗚大御神
国治立大神の         御分霊の御前に
霊魂を洗ひ身を清め      心の色も赤玉の
曇り晴らして願ぎ奉る     朝日は照るとも曇るとも
月は盈つとも虧くるとも    たとへ大地は沈むとも
教の君の御前に        汚き心ふた心
孫子の末に至るまで      夢にも持たじと皇神の
御前に誓ひ奉る        あ丶惟神惟神
御霊幸はへ給へかし』
と歌ひをはつた。
 久助は数多の人々を憚りながら、声ひそかに歌ひ始めた。
『バラモン教の神司      蜈蚣の姫の御教を
此上なく尊み敬ひて      妻のお民と諸共に
大国彦大神に         仕へ奉りて村肝の
心の雲を明石潟        浪を渡りて瀬戸の海
堅磐常磐に浮かびたる     小豆ケ島に名も高き
国城山の岩窟に        心を清め身を潔め
教の道を歩むをり       三五教の宣伝使
高姫さまや貫州の       教司の出でまして
神の大道を宣り給ふ      時しもあれやその昔
吾ら夫婦を虐げし       バラモン教の友彦が
この場に現はれ来たるより   ハツと見合はす顔と顔
心の曇り晴れやらぬ      吾ら夫婦は友彦に
掴みかかつて恨み言      口をきはめて罵りし
おのが心の恥づかしさ     蜈蚣の姫や高姫の
後に従ひ瀬戸の海       国城山を後に見て
馬関の海峡うち渡り      神の恵みの大島や
南洋一の竜宮島        波のまにまに漂ひて
ニユージーランドの沓島に   月日を重ねて辿り着き
又もや竜宮の一つ洲      タカの港に船繋ぎ
焦げつくやうな炎天を     蜈蚣の姫に従ひて
全島一の高原地        青垣山を廻らせる
風さへ清き地恩城       広き馬場に立ち向かひ
群集にまぎれて城の側     峰をつたひてネルソンの
山の絶頂に登りつめ      四方を見晴らす折柄に
空前絶後の旋風        吹き散らされて谷の底
名も恐ろしき曲津神      大蛇にまかれて玉の緒の
息も絶えむとする時に     神の恵の著く
三五教の宣伝使        玉治別の神司
その場に現はれましまして   吾ら夫婦を救ひまし
初稚姫や玉能姫        いよいよ揃ふ五つ御霊
人跡絶えし谷道を       辿り辿りて日を重ね
虎狼や鬼大蛇         醜の曲津の猛び声
胸を躍らせ肝冷し       神の恵を力とし
誠の道を杖として       一望千里の玉野原
金銀輝く砂道を        汗をダラダラ滝津瀬の
落つるがごとく搾りつつ    神の経綸の秘密郷
諏訪の湖辺に着きにける    初稚姫を始めとし
一行五人は玉依姫の      神の命の神勅を
畏み麻柱ひ奉りつつ      教司に従ひて
竜宮洲を廻り終へ       神の救ひの八咫烏
黄金の翼に助けられ      金波銀波の漂へる
諏訪の湖水に翔け戻り     黄金の門をかい潜り
玉依姫の潜みます       竜の宮居の奥深く
仕へ奉りて時を待つ      時しもあれや瑞御霊
神素盞嗚大神の        貴の御子と生れませる
梅子の姫をはじめとし     黄竜姫や蜈蚣姫
テールス姫や友彦の      神の使の宣伝使
面に笑を浮べつつ       しづしづ進み来たります
その御姿を拝してゆ      心の駒は勇み立ち
嬉し涙はあふれける      奥殿深く進み入り
奥の一間に座を占めて     月の形の簾の内
十曜の紋の十人連       三日月形に並びゐる
高座の扉を押し開けて     四辺まばゆき玉依の
姫の命の御姿         玉の肌も細やかに
雪より白き白玉を       明石の郷の久助が
両手に授け給ひつつ      笑ませ給へる崇高さよ
おしいただいて久助は     神の教の友彦の
玉の御手に差し渡し      ヤツと胸をば撫で下ろし
感謝の涙に咽ぶをり      玉依姫大神は
吾ら一同に目礼し       ものをも言はず元の座に
玉の戸閉ぢて入り給ふ     あ丶惟神惟神
夢ではないかと勇み立ち    心も輝くをりからに
梅子の姫は悠々と       御首に宝珠をかけながら
早くもこの場を立ち給ふ    一同御後に従ひて
光まばゆき三つの門      潜り出づれば諏訪の湖
朝日に照りて金銀の      波もことさら爽かに
天国浄土の有様も       かくやあらむと思ふをり
御空を照らして降り来る    八咫烏の一行に
梅子の姫を初めとし      吾ら十人の生身魂
列を正して中空を       夢のごとくに翔け廻り
名さへ目出たき磯輪垣の    秀妻国の中心地
由良の港に名も高き      秋山彦の庭先に
黄金の鳩の降るごと      天降り来たりし嬉しさよ
あ丶惟神惟神         御霊幸はへましまして
三五教の御教を        四方の国々隈もなく
教へ導き皇神の        尊き経綸の万分一
尽くさせたまへ天津神     国津神たち八百万
別けて尊き三五の       神の教の司神
国治立大神や         豊国姫の御前に
明石の郷の久助が       心も清く願ぎ奉る
あ丶惟神惟神         御霊幸はへましませよ』
と歌ひをはつて元の席に着いた。

物語26-1-5 1922/07 海洋万里丑 真心の花(四)

 友彦宣伝使は立ち上がつて銀扇を開き、自ら歌ひ自ら踊りくるふた。その歌、
『バラモン教の神司      鬼雲彦の副柱
鬼熊別の家の子と       仕へ奉りし友彦は
花見の宴の帰りがけ      エデンの川を渡らむと
宴会の酒に酔ひ潰れ      諸人騒ぎ立ち廻る
頃しも主の愛娘        小糸の姫は過ちて
ザンブとばかり川の瀬に    落ち込みたまふと見るよりも
身を躍らして川中に      生命を的にもぐりこみ
溺れながらも救ひ上げ     鬼熊別の御夫婦に
此上なきものと愛せられ    抜擢されてバラモンの
珍の教の神司         仕へ奉るを幸ひに
深窓に育ちし小糸姫      隙間の風にもあてられぬ
一人の乙女を友彦が      舌の剣にチヨロまかし
手に手をとつてエデン川    流れ流れて錫蘭の
島にやうやう辿りつき     山奥深く身をひそめ
小糸の姫を女王とし      吾は僕の神となり
この世を誑かりゐたりしが   持つて生まれた酒好きの
乱暴狼藉末つひに       小糸の姫に棄てられて
怨みは深き錫蘭の海      土人の船に身を任せ
印度の国まで漕ぎ渡り     難行苦行の数尽くし
またもや流れて自転倒の    敦賀の海に上陸し
夜を日についで丹波路の    宇都山郷に身をひそめ
鳥なき郷の蝙蝠を       気取りてここにバラモンの
教司となりすまし       郷の老若男女をば
言葉たくみに説きつけて    教を開く折柄に
天の真浦の宣伝使       現はれ来たりいと清き
その言霊にまくられて     雲を霞と逃げて行く
山城、大和、紀伊、和泉    浪速の里に舞ひ込みて
数多の男女を誑らかし     心も暗き身ながらも
神を表に標榜し        明石の里の久助が
家に到りて曲事の       限りを尽くし磯端に
繋ぎし船を横奪し       力限りに漕ぎ渡る
浪の淡路の一つ島       残る隈なく遍歴し
そのいやはてに東助が     不在を嗅ぎつけうまうまと
館に招き入れられて      お百合の方を前におき
憑依もせない神がかり     うまうまやつて九分九厘
たちまち尻尾を掴まれて    進退谷まるをりからに
死んだと思ふた東助が     清、武、鶴の三人を
伴なひ此処に帰り来る     南無三宝と気をいらち
少時の猶予と暇どらせ     廁の中に忍び入り
思案の果ては跨げ穴      潜りてこの家を逃れ出で
沖に繋ぎし屋根無しの     小舟に身をば任せつつ
生命からがら瀬戸の海     力限りに漕ぎ出せば
いかなる風の吹き廻し     小豆ケ島へつけられて
風凪ぎ渡るその間       この浮島をめぐらむと
脚に任せて国城の       山の砦に行て見れば
思ひがけなき蜈蚣姫      三五教の高姫や
明石の里の久助に       出会つた時の苦しさは
この地の底に穴あらば     消えも入りたき心地して
心悩ますをりからに      またもや来たる東助が
捕手の男に縛られて      一旦淡路の洲本まで
連れ帰られし苦しさよ     地獄で仏の東助が
情けの言葉にほだされて    ヤツと胸をば撫で下ろし
清、鶴、武の三人と      船を操り高姫が
危ふき身の上守らむと     南洋大小の島嶼に
後を探ねて周航し       蜈蚣の姫や初稚姫の
神の命にめぐりあひ      海洋万里の浪の上
月日を重ねて漸うに      一つの洲に安着し
タカの港を後にみて      地恩の郷に行きみれば
女王と名乗る黄竜姫の     神の命は小糸姫
過ぎし昔を憶ひ出し      心を悩ますをりからに
地恩の城の下人に       追ひまくられて城外の
林の中に放棄され       百の艱難を忍びつつ
山の尾伝ひ峰越えて      百里二百里いつしかに
果実に飢ゑをしのぎつつ    ネルソン山の頂上に
登りて息を休めつつ      四辺の景色をうち眺め
心を養ふをりもあれ      たちまち起こる山腹の
黒白もわかぬ黒雲に      包まれ咫尺も弁へず
心痛むるをりからに      レコード破りの烈風に
吹き捲られて中天に      空中飛行を演じつつ
数多の峰の彼方なる      ジヤンナの郷に顛落し
息も絶えなむその時に     ジヤンナイ教の人々に
ヤツと生命を助けられ     鼻の赤きを幸ひに
数多の人にオーレンス     サーチライスと敬はれ
テールス姫に思はれて     ここにメシヤとなりすまし
言葉も通はぬ郷人に      出まかせ言葉を列べつつ
崇拝させてゐたりしが     妻の命に実情を
残る隈なくうち明けて     夫婦はここに気を合はせ
地恩の城に立ち向かひ     黄竜姫に昔日の
無礼を謝せば快く       昔の怨みをうち忘れ
東と西と携へて        竜宮洲を治めむと
宣らせ給ひし嬉しさよ     黄竜姫の計らひに
地恩の城の馬場にて      園遊会を開かれし
時しもあれやネルソンの    山の尾高く蜃気楼
現はれきたり友彦は      猿田彦司と相成りて
一行五人蓑笠の        軽き身装を装ひつつ
ジヤンナの郷にたち寄りて   教の御子に送られつ
山川渡りやうやうに      玉野ケ原に安着し
ここに身魂を清めつつ     梅子の姫に罪科を
宣直されて潔く        喜び勇むをりからに
湖を辷つて駈けきたる     黄金の船を眺むれば
地恩の城に現はれて      左守司と仕へたる
清公さまを始めとし      チヤンキー、モンキーほか二人
無言のままに船の上      此方に向かつて麾く
梅子の姫を始めとし      一行船に飛び乗りて
真帆を孕みし浪の上      風に吹かれて辷り行く
妙音菩薩の音楽や       浪の鼓に送られて
玉依姫の在れませる      竜の宮居の側近く
御船を横たへ十柱の      教の御子は悠々と
黄金の門を潜りつつ      心いそいそ進むをり
初稚姫や玉能姫        玉治別の一行に
思はぬところに迎へられ    またも十二の姫神に
前後左右を守られて      玉依姫の常久に
鎮まりいます水館       奥の広間に招ぜられ
畏み仕へ奉るをり       上座の玉の扉おし開き
近侍の女神に五色の      玉を持たせて悠々と
現はれ給ひし崇高さよ     心も清き白玉の
麻邇の宝珠のその光      明石の郷の久助に
手づから授け給ひつつ     無言のままに微笑して
その場に立たせ給ひける    久助玉を頂きて
教の道の友彦が        手に渡しつつ悠々と
元の座につき畏まる      心穢れし友彦も
案に相違のこの始末      うら恥づかしく思へども
神の恵の露の玉        潤ふ顔に伏し拝み
侍女の賜ひし錦襴の      袋に深く秘めながら
首に確と結びつけ       神の恵を感謝しつ
涙に暮るる時もあれ      梅子の姫は座を立ちて
悠々この場を出で給ふ     十曜の紋に因みたる
神の十柱宣伝使        竜の館を立ち出でて
八咫烏の背に乗り       雲霧分けて浪の上
渡りてやうやく秋山彦の    貴の命の庭園に
降りきたれる嬉しさよ     あ丶惟神惟神
仁慈無限の大神の       御霊幸はへましまして
罪科深き友彦を        見捨てたまはず竜宮の
麻邇の玉をば授けられ     神政成就の神業に
加へ給ひし有難さ       これより心取り直し
身魂を浄め夢の間も      神の恵を忘れずに
真心つくして仕へなむ     錦の宮に常久に
鎮まりいます天地の      元の御祖の大御神
瑞の御魂の大御神       力なき身を憐れみて
三千世界の神業を       過ちなしにすくすくに
仕へさせませ友彦が      心のかぎり身のかぎり
力のかぎり真心を       捧げて祈り奉る
あ丶惟神惟神         御霊幸はへましませよ』
お民は、またもや立ち上がつて祝意を表し、歌ひ舞ふ。
『この世を造りし大神の    五六七の神世の御仕組
三つの御玉は永久に      自転倒島に納まりて
神の御稜威も弥顕著に     輝くをりしも竜宮の
五つの宝麻邇宝珠       神の御稜威に現はれて
大和島根に恙なく       寄らせ給ひし尊さよ
三と五との睦び合ひ      三五の月の御教は
八洲の国に隈もなく      照り渡るらむ皇神の
経綸の糸にあやつられ     誠あかしの郷人と
生まれ出でたる久助が     妻のお民は如何にして
かかる尊き神業に       仕へ得たるか尊くも
皇大神の御恵         有難涙に咽びつつ
神の仕組の永久に       末ひろびろと開く世を
松の神世と仰ぎつつ      明石の浜の松原に
打ち寄せきたる清砂の     数かぎりなき神徳を
尊み畏み喜びて        皇大神の御前に
心の限り身の限り       御稜威を称へ終へ奉る
あ丶惟神惟神         御霊幸はへましまして
玉依姫の賜ひたる       黄金色なす麻邇の珠
四方の国々テールス姫の    神の命の厳身魂
輝きわたれ永久に       あ丶惟神惟神
御霊幸はへましませよ』
と歌ひ終つた。
 テールス姫は立ち上がり、またも祝歌をうたひ始めた。
『大海原に漂へる       黄金花咲く竜宮の
一つ洲にて名も高き      ネルソン山の山つづき
ジヤンナの郷に現はれて    ジヤンナイ教を開きたる
テールス姫は三五の      道の司の友彦に
尊き道を伝へられ       鬼をも欺く郷人に
誠の道を宣り了へて      地恩の城に名も高き
黄竜姫の御前に        夫の命ともろともに
現はれ出でて村肝の      心の底を語り合ひ
力を協せ竜宮の        一つの洲を治めむと
語らふをりしも中天に     現はれ出でし蜃気楼
諏訪の湖水は竜宮の      麻邇の宝を取りもたし
数多の女神いそいそと     いそしみ給ふその姿
はるかに拝み奉り       梅子の姫ともろともに
一行五人うち揃ひ       虎狼や獅子大蛇
曲神猛ぶ山道を        神の御稜威に助けられ
月日を重ねて竜宮の      浪さへ清き諏訪の湖
竜の宮居に参ゐ上り      四辺まばゆき金殿に
優しき侍女に導かれ      玉依姫の御前に
進みし時の嬉しさよ      玉依姫のお手づから
黄金の玉を取り出だし     お民の方に授けられ
ほほゑみ給ふをりからに    お民の方は慎みて
受け取り直ちにわが前に    持ち出でまして快く
渡し給ひし美はしさ      あ丶惟神惟神
神の教を悟りたる       誠の人の心根は
かくも美はしものなるか    恥づかしさよと思ひつつ
おしいただいて錦襴の     袋に納め神恩を
感謝し奉るをりからに     神素盞嗚大神の
貴の御子と生まれたる     梅子の姫は悠々と
この場を立つて門外に     歩みを運ばせ給ふより
妾も御後に引き添ふて     黄金の海のほとりまで
帰りきたれる折りもをり    はばたき高く黄金の
翼ひろげて飛び下る      八咫烏に乗せられて
自転倒島に恙なく       降りきたりし尊さよ
あ丶惟神惟神         神の恵みは目の当たり
仁慈無限の大神の       開き給ひし三五の
教の道に身を任せ       心のかぎり永久に
生命のかぎり仕ふべし     神素盞嗚大御神
国武彦の大御神        お民の方を始めとし
この一行の神人の       御前に感謝し奉り
貴の御玉の恙なく       還りましたる祝言を
喜び歌ひ奉る         あ丶惟神惟神
御霊幸はへましませよ』
と歌ひ終はつて座についた。

物語26-2-6 1922/07 海洋万里丑 大神宣

 素盞嗚尊は儼然として立ち上がり、荘重なる口調をもつて歌は
せ給ふた。
『豊葦原の国中に       八岐大蛇や醜狐
曲鬼とものはびこりて     山の尾の上や川の瀬を
醜の魔風に汚しつつ      天の下なる民草を
苦しめ悩ますこの惨状を    見るに見かねて瑞御魂
神素盞嗚と現はれて      八十の猛の神司
八人乙女や貴の子を      四方に遣はし三五の
神の教を宣べ伝へ       山川草木鳥獣
虫族までも言霊の       清き御水火に助けむと
ウブスナ山の斎苑館      後に残して八洲国
彷徨ふ折りしも自転倒の    大和島根の中心地
綾の高天の聖域に       この世の根元と現れませる
国治立大神の         国武彦と世を忍び
隠れいますぞ尊けれ      この世を救ふ厳御霊
瑞の御霊と相ならび      天地の神に三五の
教を開き天が下        四方の木草にいたるまで
安息と生命を永久に      賜はむために朝夕を
心配らせ給ひつつ       三つの御玉の神宝
高天原に永久に        鎮まりまして又もはや
現はれ給ふ麻邇の玉      五づの御玉と照り映えて
三五の月の影清く       埴安彦や埴安姫の
神の命と現れませる      神の御霊も今ここに
いよいよ清く玉照彦の     貴の命や玉照姫の
貴の命の御前に        納まる世とはなりにけり
瑞の御霊と現れませる     三五教の神司
言霊幸はふ言依別の      神の命は皇神の
錦の機の経綸を        心の底に秘めおきて
松の神世の来たるまで     浮きつ沈みつ世を忍び
深遠微妙の神策を       堅磐常磐にたてませよ
神素盞嗚の我が身魂      八洲の国に蟠まる
八岐大蛇を言向けて      高天原を治しめす
天照します大神の       御許に到り復命
仕へまつらむそれまでは    蠑蠣蚯蚓と身を潜め
木の葉の下をかいくぐり    花咲く春を待ちつつも
完全に委曲に松の世の     尊き仕組を成し遂げむ
国武彦大神よ         汝が命も今しばし
深山の奥の時鳥        姿隠して長年の
憂目を忍びやがて来む     松の神世の神政を
心静かに待たせまし      竜宮城より現はれし
五つの麻邇のこの玉は     綾の聖地に永久に
鎮まりまして桶伏の      山に匂へる蓮華台
天火水地と結びたる      薫りも高き梅の花
木の花姫の生御魂       三十三相に身を現じ
世人あまねく救はむと     流す涙は和知の川
流れ流れて由良の海      救ひの船に帆をあげて
尽くす誠の一つ洲       秋山彦の真心や
言依別が犠牲の        清き心を永久に
五六七の神世の礎と      神の定めし厳御魂
実に尊さの限りなり      あ丶惟神惟神
御霊幸はへましまして     国治立大神の
厳の御霊はいま暫し      四尾の山の奥深く
国武彦と現はれて       草の片葉に身を隠し
錦の宮にあれませる      玉照彦や姫神を
表に立てて言依別の      神の命を司とし
深遠微妙の神界の       仕組の業に仕へませ
朝日は照るとも曇るとも    月は盈つとも虧くるとも
たとへ大地は沈むとも     厳と瑞とのこの仕組
千代も八千代も永久に     変はらざらまし天地の
初発し時ゆ定まりし      万古不易の真理なり
万古不易の真理なり      この世を造りし神直日
心も広き大直日        ただ何事も神直日
大直日にと見直して      天地百の神人を
救はむための我が聖苦     思ひは同じ国治立の
神の尊の御心         深くも察し奉る
深くも感謝し奉る』
と歌ひをはり、一同に微笑を与へて、奥の間に姿をかくさせ給ふた。
 国武彦命は神素盞嗚尊の御後姿を見送り、手を合はせ感謝の意を表し、終はつて一同の前に立ち、やや悲調を帯びた声音を張り上げ歌ひ給ふた。
『天の下なる国土を      汗と涙の滝水に
造り固めて清めたる      豊葦原の国の祖
国治立の厳御霊        御稜威も高き貴の宮
高天原に現はれて       百の神たち人草の
守らむ道を宣り伝へ      神の祭を詳細に
布き拡めたる元津祖      天足の彦や胞場姫の
捻け曲れる身魂より      生まれ出でたる曲身魂
八岐大蛇や醜狐        醜女探女や曲鬼の
怪しの雲に包まれて      さも美はしき国土も
汚れ果てたる泥水の      溢れ漂ふ世となりぬ
醜の曲霊に憑かれたる     常世の彦や常世姫
千五百万の神々の       罪や穢を身に負ひて
木の花姫の守ります      天教山の火口より
身を躍らして荒金の      地の底まで身を忍び
根底の国を隈もなく      さまよひ巡り村肝の
心を尽くし身をつくし     造り固めて天教の
山の火口に再現し       野立の彦と名を変へて
あまねく国内を駈け巡り    豊国姫の神御霊
野立の姫と現はれて      ヒマラヤ山を本拠とし
身を忍びつつ四方の国     夫婦の水火を合はせつつ
世界隈なく検めて       再び来たる松の世の
その礎を固めむと       自転倒島の中心地
綾の高天と聞こえたる     桶伏山の片ほとり
この世を洗ふ瑞御霊      四尾の山に身を忍び
五つの御霊の経綸を      仕へまつらむその為に
日の大神の神言もて      天の石座相放れ
下津磐根に降り来て      国武彦となりすまし
神素盞嗚大神の        御供の神と現はれぬ
この世を思ふ真心の      清き思ひは仇ならず
現幽神を照り透す       金剛不壊の如意宝珠
黄金の玉や紫の        貴の宝は逸早く
自転倒島に集まりて      三千世界を統べ守る
その礎はいや固く       国常立となりにけり
またもや嬉しき五つ御玉    波に漂ふ竜宮の
一つ洲なる秘密郷       金波漂ふ諏訪の湖
底ひも深く秘めおきし     五つの御霊と称へたる
青赤白黄紫の         光まばゆき麻邇の玉
梅子の姫や黄竜姫       蜈蚣の姫や友彦や
テールス姫の御使に      持たせ給ひてはるばると
黄金翼の八咫烏        天津御空を輝かし
雲路を別けて自転倒の     松生ひ茂る神の島
綾の聖地に程近き       恵も深き由良の海
その川口に聳り立つ      秋山彦の神館
心の色は綾錦         空照りわたる紅葉姫
夫婦の水火も相生の      松葉茂れる庭先に
十曜の紋の十人連       しづしづ帰り降り来る
その御姿の尊さよ       いよいよここに五つ御玉
国武彦も永久に        隠れてこの世を守りゆく
玉依姫のおくりたる      麻邇の宝珠は手に入りぬ
あ丶惟神惟神         時は待たねばならぬもの
時ほど尊きものはなし     この世を造り固めたる
元の誠の祖神も        時を得ざれば世に落ちて
苦しみ深き丹波路の      草葉の影に身を凌ぎ
雨の晨や雪の宵        尾の上を渡る風にさへ
心を苦しめ身を痛め      天地のためにわが力
尽くさむ由も泣くばかり    胸もはり裂く時鳥
八千八声の血を吐きて     時の来たるを待つうちに
今日は如何なる吉日ぞや    神世の姿甲子の
九月八日の秋の庭       御空は高く風は澄み
人の心も涼やかに       日本晴れのわが思ひ
瑞と厳との睦び合ひ      八洲の国を照らすてふ
三五の月の御教の       元を固むる瑞祥は
この世の開けし初めより    まだ新玉のあが心
あ丶惟神惟神         天津御空の若宮に
鎮まりいます日の神の     御前に慎み畏みて
国治立の御分霊        国武彦の隠れ神
はるかに感謝し奉る      千座の置戸を身に負ひて
この世を救ふ生神の      瑞の御霊と現れませる
神素盞嗚大神の        仁慈無限の御心を
喜び敬ひ奉り         言依別の神司
この行先の神業に       又もや千座の置戸負ひ
あれの身魂と諸共に      三柱揃ふ三つ身魂
濁り果てたる現世を      洗ひ清むる神業に
仕へまつらせ天地の      百の神たち人草の
救ひのために真心を      千々に砕きて筑紫潟
深き思ひは竜の海       忍び忍びに神業を
仕へまつりて松の世の     五六七の神の神政を
心を清め身を浄め       指折り数へ待ち暮す
あが三柱の神心        完全に委曲に聞し召し
天津御空の若宮に       堅磐常磐に現れませる
日の大神の御前に       重ねて敬ひ願ぎまつる
あ丶惟神惟神         御霊幸はへましませよ』
と歌ひをはり給ひ、一同に軽く目礼し、そのまま御姿は白煙となりてその場に消えさせ給ふた。一同はハツと驚き、直ちに拍手し天津祝詞を奏上し、御神慮の尊さを思ひ浮かべて、感涙に咽ぶのであつた。

物語26-2-9 1922/07 海洋万里丑 生言霊

 言依別命は立ち上がり、金扇を開いて自ら舞ひ自ら歌ひ給ふた。
『この世を造り固めたる    国治立大神と
御水火を合はせ永久に     世界を守り給ひたる
豊国姫の御分霊        助け幸はひ生かすてふ
言霊別の天使         醜の猛びに是非もなく
根底の国に潜みまし      少彦名と現はれて
常世の国の天地を       守り給ひし勇ましさ
言霊別の御分霊        皇大神の御言もて
ふたたびこの世に出現し    三五教の神司
言依別神となり        天地の神の御教を
神のまにまに伝へ行く     四尾の山に隠れます
国武彦の御言もて       錦の宮に仕へます
玉照彦や玉照の        姫の命ともろともに
五六七神政の礎を       朝な夕なに村肝の
心を配り身を尽くし      金剛不壊の如意宝珠
黄金の玉や紫の        珍の神宝を永久に
神のまにまに埋めおき     三千世界の梅の花
一度に開く折りを待つ     時しもあれや素盞嗚の
瑞の御魂の大御神       黄金の洲の秘密郷
金波ひらめく諏訪の湖     玉依姫の常久に
守り給ひし麻邇の珠      いよいよここに現はれて
五づの御魂の功績は      ますます高く輝きぬ
三と五との玉の道       三五の月の御教は
二度目の天の岩屋戸を     完全に委細に押し開き
常世の闇を打ち晴らし     天にます神八百万
地にます神八百万       百の人草草も木も
禽獣や虫族の         生命のはしに至るまで
洩らさず残さず救ひ上げ    上下歓ぎて睦び合ふ
誠の神世を建て給ふ      珍の礎定まりぬ
あ丶惟神惟神         御霊幸はへましませよ。

物語26-3-11 1922/07 海洋万里丑 言の波

四尾の山に奥深く       この世を忍び給ひつつ
神世をここに待ち給ふ     国武彦の御身魂
煙のごとくあらはれて     紅葉かがやく秋山の
館に隠れ給ひつつ       遠き昔の初めより
黄金の洲の秘密郷       諏訪の湖水の底深く
かくれて神世を待ち給ふ    玉依姫の厳御魂
麻邇の宝珠は恙なく      八咫烏に送られて
天津御空を潔く        秀妻の国の中心地
外の囲ひと聞こえたる     由良の港に鳩のごと
降り給ひて神の世の      礎固くつき給ふ

物語26-3-12 1922/07 海洋万里丑 秋の色

松の神世の礎は        目出たく立ちて足曳の
山と山との奥深く       紅葉踏みわけ鳴く鹿の
声爽かに佐保姫の       錦織りなす秋の空
雲井の空もいと高く      和知の流は淙々と
言霊鼓打ちながら       神世を祝ふ尊さよ
天地開けし始めより      金竜銀竜二柱
海月のごとく漂へる      泥の海原煉り固め
海と陸とも立別けて      山川草木生ましつつ
完全に委曲に現世を      開き給ひし国治立の
神の命に引き添ふて      豊国姫大御神
厳と瑞との三五の       錦の機を織らせつつ
いと安らけく平らけく     神世を開き給ふをり
エデンの園に現はれし     天足の彦や胞場姫の
体主霊従の醜業に       魂は乱れて日に月に
弱り果てたるその隙を     八岐大蛇や醜狐
曲鬼どもが忍び入り      常世の国の天地を
曇らせ乱す常世彦       常世の姫の二柱
塩長彦を推戴し        豊葦原の瑞穂国
醜の魔の手に握らむと     心を尽くし身を尽くし
権謀術数限りなく       醜の荒びを不知火の
地上に生れし百神は      仁慈無限の大御神
国治立大神の         開き給ひし神政に
向かつて醜の鉾を向け     常世の彦を謀主とし
力限りに攻め来たり      天地暗澹曲津霊の
荒ぶる世とは成り果てぬ    国治立大神は
天津御空の神国の       日の若宮に登りまし
大海原に瀰れる        醜の雄猛び詳細に
詔らせ給ひて天の下      百の罪咎残りなく
償ひ玉ひて天教の       山の火口に身を投げて
世人のために根の国や     底の国まで遍歴し
野立の彦と名を変へて     忍び忍びに世の中を
守らせ給ふ尊さよ       豊国姫も夫神の
後を慕ふて波の上       阿波の鳴門の底深く
沈みたまひて根の国や     底の国まで到りまし
野立の姫と身を変じ      ふたたび地上に現はれて
夫婦の水火を合はせつつ    仁慈無限の御心に
百の神人救はむと       黄金山下に現はれて
埴安彦や埴安姫の       瑞の命の御経綸
種々雑多と身を変じ      珍の都を後にして
波に浮かべる神の島      自転倒島の中心地
青山四方に繞らせる      下津岩根の霊場に
尊き御姿隠しつつ       この世の曲を払はむと
百千万の苦しみを       忍びたまひて松の世の
安けき神世を待ちたまふ    桶伏山の蓮華台
橄欖山になぞらへし      四尾の峰の山麓に
国武彦と身を変じ       言依別と現はれて
綾の錦の貴機を        織らせたまへる時もあれ
青雲山より送り来し      黄金の玉を始めとし
国治立大神の         沓になります沖の島
秘めおかれたる貴宝      金剛不壊の如意宝珠
またもや聖地に現はれて    神徳日々に栄え行く
高春山にアルプスの      教を楯に籠りたる
鷹依姫が守れりし       紫色の宝玉も
神のまにまに集まりて     高天原の御宝
霊力体の三つ御霊       ここに揃ひて神界の
尊き経綸の開け口       天地の神も勇み立ち
百千万の民草も        厳の恵みに浴しつつ
神の立てたる三五の      教は日々に栄えゆく
錦の宮はキラキラと      旭に輝く美はしさ
またも竜宮の一つ洲      諏訪の湖底深く
秘めおかれたる麻邇の玉    玉依姫の計らひに
目出たく聖地に納まりて    神徳輝く四尾の
峰も黄金の色添ひて      機の仕組も明らかに
現はれたりと言依別の     瑞の命をはじめとし
錦の宮に並びたる       八尋の殿に集まれる
信徒たちも勇み立ち      老若男女の別ちなく
綾の聖地に堵列して      玉を迎ふる勇ましさ
あ丶惟神惟神         尊き神の御計らひ
麻邇の宝珠は恙なく      清く正しき人々に
前後左右を守られて      八尋の殿に造られし
宝座にこそは入り給ふ     かかる例は久方の
天の岩戸の開けてゆ      今に至るもあら尊と
世界を治むる神国の      瑞兆とこそ知られけり
あ丶惟神惟神         御霊幸はへましませよ。

物語26-4-16 1922/07 海洋万里丑 三五玉

金剛不壊の如意宝珠      黄金の玉や紫の
三つの御玉の御神業      あらましここに述べておく
天津御神の永久に       現幽神の三界を
永遠無窮に治めます      天壌無窮の神宝は
金剛不壊の宝珠なり      経済学の根本を
岩より固くつきかため     地上の世界を円満に
融通按配治めゆく       金銀無為の政策を
実行いたすは黄金の      厳の宝珠の永久に
変はらぬ神の仕組なり     また紫の宝玉は
天下万民ことごとく      神の御稜威に悦服し
神人和合のその基礎を     永遠無窮に守ります
神の定めし神宝ぞ       そもそも三つの御宝は
天津御神や国津神       天国浄土の政治をば
豊葦原の瑞穂国        五つの洲に隈もなく
神の助けと諸共に       伊照り透らし万民を
安息せしむる神業に      最大必要の宝なり
あ丶惟神惟神         深遠微妙の神界の
万世不磨の御経綸       太き御稜威も高熊の
山に隠せし黄金の       晨を告ぐる鶏や
波問に浮かぶ神島の      常磐の松の根底に
かくし給ひし珍宝       金剛不壊の如意宝珠
天火水地と結びたる      紫色の神宝も
いよいよこの世に現はれて   光を放つ神の世は
さまで遠くはあらざらめ    この世を造りし大神の
水も漏らさぬ御仕組      竜宮城の乙姫が
玉の御手より賜ひたる     浦島太郎の玉手函
それに優りて尊きは      三つの御玉の光なり
あ丶惟神惟神         御霊幸はへましまして
一日も早く片時も       とく速けく世のために
現はれまして艮の       果てに隠れし元津神
坤なる姫神の         経と緯との水火合はせ
神世安らけく平らけく     治め給はむ時はいつ
待つ間の永き鶴の首      亀の齢の神の世を
渇仰翹望なしながら      静かに待つぞ楽しけれ
波に漂ふ一つ洲        黄金花咲く竜宮の
秘密の郷と聞こえたる     果物豊かな玉野原
一眸千里のその中に      青垣山を三方に
いと美はしく繞らせる     金波漂ふ諏訪の湖
玉依姫の永久に        水底深く鎮まりて
守り給ひし麻邇の玉      天火水地と結びたる
青赤白黄紫の         玉の功績を述べつれば
世界統治の礎を        堅磐常磐につきかため
天の下をば安国と       治むる王者の身魂こそ
紫玉の功績ぞ         王者に仕へ民治め
中執臣と勤しみて       世界を治むる大臣の
稜威の活動そのものは     心も赤き赤玉の
天地自然の功績ぞ       国魂神と現はれて
百の民草治めゆく       小さき臣の活動は
臣の位の水御玉        上を敬ひ下を撫で
臣の位をよく尽くし      上は無窮の大君に
下は天下の民草に       心のかぎり身を尽くし
誠を尽くす活動は       水の位の白玉の
天地確定の功績ぞ       神を敬ひ大君を
尊び奉り耕しの        道に勤しみ工業や
世界物質の流通に       ひたすら仕ふる商人の
誠の道を固めゆく       天地自然の功績は
土に因みし黄金の       稜威の御玉の天職ぞ
さはさりながら今の世は    心の赤き赤玉も
それに次ぐべき白玉も     黄色の玉もことごとく
光なきまで曇り果て      何の用なき団子玉
天火水地を按配し       この神玉の活用を
円満清朗自由自在       照らして守るは紫の
神の結の玉ぞかし       紫色の麻邇の玉
今や微光を放ちつつ      心の色も丹波の
綾の聖地にチクチクと     その片光を現はして
常世の暗を隈もなく      照らさせ給ふ光彩は
厳の御霊の神司        瑞の御霊の神柱
経と緯との御玉もて      世界十字に踏みならし
一二三四五つ六つ       七八つ九つ十たらり
百千万の神人の        救ひのために千万の
悩みを忍び出で給ふ      あ丶惟神惟神
御霊幸はへましまして     誠の神の御教に
服従ひきたる信徒よ      綾の高天に古くより
仕へ奉りし神司        変性女子の瑞御霊
またもや副守が発動して    訳のわからぬ気焔吐く
みなみな一同注意して     審神をせなくちやならないぞ
近くに侍る盲信者       甲乙丙丁戊のやうに
迎合盲従はならないぞ     気をつけ召されと鼻高が
少しの学識鼻にかけ      いろいろ雑多の小理屈を
並べて神の経綸を       紛乱せむと企みつつ
副守の悪霊に駆使されて    空前絶後の神業に
外れる人も偶にある      同じ教の信徒は
神の心を汲みとりて      互ひに気をつけ助け合ひ
慢心鉄道の終点に       行き詰りたるアフン駅
何のエキなき醜態を      暴露させないその間に
世人を思ふ真心の       凝り固まりし瑞月が
ここに一言述べておく     あ丶惟神惟神
御霊幸はへましませよ     朝日は照るとも曇るとも
月は盈つとも虧くるとも    たとへ大地は沈むとも
誠の力は世を救ふ       誠を知らぬ智恵学者
この物語見るならば      軽侮の念を起こすあり
脱線文章と笑ふあり      卑近の俗語を列ねたる
半狂乱の悪戯と        初からこなす人もある
冷笑悪罵は初めから      百も承知の瑞月が
神の御言を畏みて       三五教の真相を
学と知識の評釈で       取違ひたる過ちを
直日に見直し聞直し      宣直させて神界の
誠の道を知らさむと      悪罵熱嘲顧みず
口の車の転ぶまに       筆者の筆のつづくだけ
繰返しゆく小田巻の      いと長々と記しおく。

物語27-2-4 1922/07 海洋万里寅 教主殿

高姫・黒姫にとっての竜宮の乙姫と玉依姫

高姫『過去現在未来一貫の真理、そんな好い気なことを思つてゐらつしやるから、不調法ができますのだ。エ、しかし大した……あなた方に不調法はできてをらないから、まづ安心だが、しかし三五教は肝腎要の日の出神の生宮は誰、竜宮の乙姫すなはち玉依姫の生宮は誰だといふことが分からなければ、どこまでも御神業は成就いたしませぬぞ。それが分からねば駄目ですから、今後は私の言ふことを聞きますかな』
玉治別『モシ英子姫様、決して何事も高姫さまが系統だと言つて、一々迎合盲従はできませぬぞ。老婆心ながら一寸一言申し上げておきます』
英子姫『ハイ有難うございます』
高姫『コレ田吾、お前の出る幕とは違ひますぞ。日の出神が命令する。この場を速やかに退席なされ』
玉治別『ここは言依別様の御館、ご主人側より退席せよと仰せになるまでは、一寸も動きませぬ。吾々は神様の因縁はチツとも存じませぬ。ただ言依別の教主に盲従いな明従してをるのですから、お気の毒ながら貴女の要求には応じかねます。なにぶん頻々として註文が殺到してゐる、今が日の出の店でございますから、アハ丶丶』
高姫『コレ黒姫さま、高山彦さま、お前さまは借つてきた狆のやうに、何を怖ぢ怖ぢしてるのだ。日ごろの鬱憤……イヤイヤ蘊蓄を吐露して、お前さまの真心を皆さまの前に披瀝し、諒解を得ておかねば今後の目的……いや神業が完全に勤まりますまい』
黒姫『あまり貴女の……とつかけ引つかけ、流暢なご弁舌で、私が一言半句も申し上げる余地がなかつたのでございます』
高姫『ア丶さうだつたか、オホ丶丶丶。あんまり話に実が入つて気がつきませなんだ。そんなら黒姫さま、発言権を貴女にお渡しいたします』
黒姫『ハイ有難うございます。私としては別にこれといふ意見もございませぬが、ただ皆様にご了解を願つておきたいのは、竜宮の乙姫様すなはち玉依姫様の肉のお宮は、黒姫だといふことを心の底よりご了解願ひたいのでございます』

物語38-3-14 1922/10 舎身活躍丑 沓島

(ここでは竜宮の乙姫と玉依姫は別の神のようだ)

綾部で組み立てて持つてきた神祠をといて、柱一本づつ舟人が縄で縛る、四方と福島がひきあげる。やうやく百尺ばかりもある高所の二畳敷ほどの平面の岩の上を鎮祭所となし、一時間あまりもかかつて、やうやく神祠を建て上げ、艮の大金神国常立尊、竜宮の乙姫、豊玉姫神、玉依姫神を始め、天地八百万の神等を奉斎し、山野河海の珍物を供へをはり、教祖は恭しく祠前に静坐して、声音朗らかに天下泰平、神軍大勝利の祈願の祝詞を奏上される。


竜宮の乙姫

竜宮の乙姫単独で出るところは少ない。黒姫などが竜宮の乙姫の生宮というように出る。

物語07-4-23 1922/02 霊主体従午 色良い男

『何うも立派な宝が浮いたね。一つ俺も欲しかつた。彼れ一つ有つたら、一生涯親子兄弟が「呑めよ騒げよ一寸先は暗よ」と云つて、ウラル彦さまのやうに暮されるのに、一つ位くれたつて好ささうなものだに、竜宮の乙姫といふ餓鬼や、よつぽど慾な奴ぢやナア』
『慾な奴は皆、竜宮の乙姫見たやうな奴だと云はうがな、慾有る奴ぢやから偉いのだ。ヨク無い奴は即ち悪いのだよ。よくよく思案をしてみれば、金が仇の世の中か』

物語33-4-19 1922/09 海洋万里申 報告祭

竹公『そんなところは俺が覚える必要がないのだ。各自に心相応に取れる教だから、俺はおれで取るところがあるのだ。貴様も貴様で、気に入つた筆先の文句があるだらう』
安公『さうだなア、俺だつて嫌ひなところもあれば好きなところもある。……艮の金神現はれて……といふ声を聞くと丶にはかに頭が痛くなりやがるなり……竜宮の乙姫が日の出神と現はれるぞよ……といふ文句になつて来ると、ますます気分が悪くなつて逃げて帰りたくなつてしまふワ。さうだと思ふと……世におちぶれた者を侮ることはならぬぞよ、結構なお方が世におとしてあるぞよ、誠の人間ほど苦労が永いぞよ、神は上下運否のなきやうに致すぞよ……といふ点になると、なかなか気に入るね。かういふところを聞かされると、虎公なぞは頭の痛い口だらう。それだから、その人々の心に取れる筆先だと神様がおつしやるのだ』

(中略)

竹公『もうゴテゴテいふな、今日は目出たい日だから、俺はともかく筆先に有難いことがあるのだ。……難儀な者を助ける精神にならぬと、神の気かんに叶はぬぞよ……といふところがある。その筆先のおかげで、猫寅が今までの執着心をスツパリ捨ててしまつて俺に現金で百両も、沢山借金がある上に、くれるやうな善の心に立ち返りなされたぞよ。竜宮の乙姫殿は、誠に慾の深い神でありたなれど、このたび艮の金神さまが表に現はれ遊ばして、三千世界をお構ひ遊ばすについて、乙姫さまも、これでは可かぬと御合点を遊ばし、今まで海の底にためておいた宝を、残らず艮の金神様にお渡し申して、今度の御用の片腕にお成りなされたぞよ。人民もその通り、慾にためてをりて万劫末代吾の物だときばりてをりても、天地の物はみな神の物であるから、神に返さねばならぬぞよ。上下運否のなき世にいたして、世界の人民を安心させるぞよ。早く改心いたした者ほど結構になるぞよ……といふお筆先は俺たちにとつては天来の大福音だ。猫寅でさへも竜宮の乙姫さまになりかけたのだからなア。ウツフ丶丶丶、ボロイボロイ、こんなボロイことが世にあらうか。それだから信心の味が分からぬといふのだ』

物語34-1-4 1922/09 海洋万里酉 歌垣

黒姫の話題であるが竜宮の乙姫について述べている

『黙つてゐなさい、子供の口出しするところぢやありませぬ。黒姫には勿体なくも、竜宮の乙姫様が、ご守護遊ばしてござるのだから、天地の間に恐るべきものは、国治立命様ただ一方ばかりだ。その他の神々はみな枝神さまだ。その国治立命様の片腕になつてお働き遊ばす竜宮の乙姫様の……ヘン生宮でござりますぞ。何ぼ暗いと言つても、あまり見違ひをしてもらひますまいかい……なア竜宮の乙姫様』
『ヘーン、永らく竜宮の乙姫さまを聞きませなんだが、一体どこへ行つてござつたのですか』
黒姫『竜宮の乙姫様の肉体はすなはち黒姫だ。黒姫の霊はすなはち竜宮の乙姫様だ。それが分からぬやうなことで、三五教の信者と言へますか』
芳公『私はまた、竜宮の乙姫様はモツト立派なお方で、その御神力の億万分の一ほど黒姫様に霊が憑つてゐるのだと思ふてゐるのだが、黒姫様の霊が全部竜宮の乙姫と聞いては、もはや乙姫様を尊敬する気がなくなつてしまつた。何だ阿呆らしい。こんなことなら、はるばる可愛い女房子を棄ててここまで従いて来るのだなかつたになア。孫公はあんな目にあはされてくたばるし、黒姫さまの箔はサツパリ剥げるし、岩窟の中からは怪体な声がするし、夜はおひおひと更けてくる。ア丶これほどガツカリしたことがあらうか、……なア房公、夜が明けたら、お前と二人孫公の坐つてる所へ往ついて助け起こし、三人は元の聖地へ帰らうぢやないか。本当に馬鹿らしい目にあふたものだ』
『コレコレ両人、お前はこの黒姫をまだ諒解してゐないのだなア。千変万化、変幻出没きはまりなき竜宮の乙姫様の御神力を御存じないのだなア。そもそも竜宮の乙姫様は、一朝時を得れば、天地の間に蟠り、風雨雷電を起こし、地震をゆらし、大国治立尊の御神業の片腕にお立ち遊ばすのだ。今日は乙姫殿の蟄伏時代だ。時到らざれば、蠑蠣、蚯蚓と身を潜めて、あらゆる天下の辛酸を嘗め、救世済民の神業に奉仕してゐるのだよ

物語52-2-8 1923/02 真善愛美卯 巡拝

これは小北山のウラナイ教に祭られている祠

『そのやうに慢心ばかりするでないよ
乙女に馬鹿にされた身ながら
要の神貴の御前にこんなこと
囀る奴は鰥鳥かも
さア行かう大神様に恥づかしい
女なんぞと言ふ面でなし
アハ丶丶丶』
と笑ひながら玉依姫(竜宮の乙女)様を祭つたる祠の前に進みよつた。
イク『いろいろの宝をためて海の底に
隠し給ひし慾な神様』
サール『馬鹿いふな乙姫様は今は早
物質慾に離れた神よ』
『これはしたり失礼なことを言ひました
聞直しませ乙姫の神』
『神様は宝を以て人々に
与へ給へどお前には例外』
『例外か又案外か知らねども
宝なくては世に立つを得ず』
『物質の宝求めて何になる
朽ちぬ宝を霊につめよ』
『馬鹿いふな水晶玉も物質よ
されど暗夜を照らしましける
金なくて何のおのれが人間かと
世の人々は相手にもせず
それゆゑにおれは金銀財宝を
むげには捨てぬ冥加者ぞや』
『イクの奴イク地の足らぬ証拠には
宝々と憧れゐるも
神様は何ほど宝あるとても
貧乏面にくれるものかは
サア行かう目の正月をするよりも
宝忘れて宝拾ひに
俺のいふ宝といふは金銀や
水晶でない教の宝よ』


海原彦

物語01-4-35 1921/10 霊主体従子 一輪の秘密

国常立尊は冠島の国魂の神に命じて、この神宝を永遠に守護せしめたまうた。この島の国魂の御名を海原彦といひ、又の御名を綿津見神といふ。つぎに沓島に渡りたまひて真澄の珠を永遠に納めたまひ、国の御柱神をして之を守護せしめられた。国の御柱神は鬼門ケ島の国魂の又の御名である。

物語01-4-36 1921/10 霊主体従子 一輪の仕組

一方竜宮島の海原彦も、鬼門島の国の御柱神も、かかる魔軍に計画あらむとは露だも知らず、八尋殿に枕を高く眠らせたまふ時しも、海上にどつとおこる鬨の声、群鳥の噪ぐ羽音に夢を破られ、竜燈を点じ手に高く振翳して海上はるかに見渡したまへば、魔軍の戦艦は幾百千とも限りなく軍容を整へ、舳艪相啣み攻めよせきたるその猛勢は、到底筆舌のよく尽すところではなかつた。

物語02-1-7 1921/11 霊主体従丑 天地の合せ鏡

稚桜姫命一行は無事帰還された。さうしてこの玉を竜宮島の海に深く秘めおかれた。さきに木花姫命より大足彦に賜はりしは国の真澄の鏡である。天地揃ふて合せ鏡という神示は、この二個の神鏡の意である。また五個の神玉は海原彦命、国の御柱神二神の守護さるることなつた。

物語05-7-45 1922/01 霊主体従辰 魂脱問答

竜宮島とやらには、天の真澄の珠とか潮満潮干の珠とかいふ宝が昔から隠してあるとかで、ウラル山のウラル彦の手下の奴らがその珠を奪らうとして.沢山の舟を拵へよつて、闇がり紛れに攻め付けよつたさうだ。さうすると沓島の大海原彦神とやらが、海原とか向腹とかを立ててその真澄の珠で敵を悩まさうとした。しかしその珠は何にもならず、たうとう敵に取られてしまつたさうだよ。そして冠島一名竜宮島には潮満潮干の珠が隠してあつたさうだ。

物語07-3-17 1922/02 霊主体従午 亀の背

夜は漸くに明け離れ、東海の浪を割つて昇る朝暾の光は、さしもに広き海原を忽ち金色の浪に彩り、向ふに見ゆる島影は、ニウジーランドの一つ島、大海原彦の鎮まりゐます、真澄の玉の納まりし、国治立大神の穿たせ玉ひし沓嶋。浪の間に間に浮きつ沈みつする様は、荘厳身に迫るの思ひあり。

 

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