常世彦と常世姫

1.常世彦と常世姫

2.初代常世彦・常世姫

3.第二代常世彦・常世姫

4.ウラル彦・ウラル姫の子供


1.常世彦と常世姫

物語では、邪神に憑依される重要な神として常世彦常世姫がある。通常は悪役として登場する。

常世彦の初出 第1巻29章 

物語01-4-29 1921/10 霊主体従子 天津神の神算鬼謀

大八洲彦命は少数の神軍とともに、広大無辺な原野に現はれた。そして一隊を引率れ、東へ東へと進軍された。その果しもない原野には身を没するばかりの種々の草が茫々と繁つてゐる。その刹那、諸方より火の手があがつた。しかも風は非常に強烈な旋風である。天の一方を望めば、常世彦が現はれ軍扇をもつて数多の魔軍を指揮してゐる。

常世姫の初出 第1巻21章

物語01-3-21 1921/10 霊主体従子 大地の修理固成

このたびの地変によつて、地上の蒼生はほとんど全滅して、そのさまあたかもノアの洪水当時に彷彿たるものであつた。そこで大神は、諸々の神々および人間をお生みになる必要を生じたまひ、まづ稚姫君命は、天稚彦といふ夫神をおもちになり、真道知彦、青森知木彦、天地要彦、常世姫、黄金竜姫、合陀琉姫、要耶麻姫、言解姫の三男五女の神人をお生みになつた。この天稚彦といふのは、古事記にある天若彦とは全然別の神である。

霊界物語の主なストーリーが1巻の23章から始まるから、常世姫の21章はその前、常世彦の29章も早くから出てくることになる。

その後、色々と子孫の系統が変わり、名前も変わるが、15巻くらいまではよく登場する。


2.初代常世彦・常世姫

初代は1巻から4巻まで登場する。

常世彦は盤古大神の子供、常世姫は稚桜姫(出口直)の娘である。常世姫は、王仁三郎を妨害した、出口久に擬せられていると考えられている。

物語02-0-2 1921/11 霊主体従丑 総説

 八王大神常世彦は、盤古大神の水火より出生したる神にして、常世の国に霊魂を留め、常世姫稚桜姫命の娘にして、八王大神の妃となり、八王大神の霊に感合し、つひには八王大神以上の悪辣なる手段を用ゐ、世界を我意のままに統轄せむとし、車輪の暴動を継続しつつ、その霊はなほ現代にいたるも常世の国にとどまつて、体主霊従的世界経綸の策を計画してをる。

この後、第4巻までは、悪役として大きな活躍をする。


3.第二代常世彦・常世姫

第二代が生まれるところが物語では不思議な場面であり、名前がいろいろ変わるのでつかみにくくなっている。

常世彦・常世姫の息子と娘は、常世姫が青梅を食べて生まれたとある。息子の高月彦12ヶ月、娘の初花姫16ヶ月の妊娠期間であった。この二人が生まれたとき常世彦・常世姫は邪神には影響されていなかった。

物語04-6-38 1921/12 霊主体従卯 隙行く駒

 ここに八頭八尾の大蛇の霊は、潜心万難を排し、黄金橋下を泳ぎわたり、潜かに竜宮海を占領し、竜宮海の竜王となりて海底に潜み、時のいたるを待ちつつありける。されど流石の八頭八尾の大蛇も、天使長の身魂を犯すこと容易ならず、常世姫は依然として竜宮城の主宰となりゐたり。常世姫の身体には、一大異状を来し、俄に庭園の青を侍女にもぎとらせ、好みてこれを食するにいたりける。
 この梅を沢山食するとともに、腹部は日に月に膨張し、十二ケ月を経て玉のごとき男子を産み落したれば、父母二神司はおほいに悦び、掌中の玉と愛で、蝶よ花よと慈しみ、その成長を引伸ばすやうに待ち居たり。ややありてふたたび常世姫は、梅の実を好むに至り、以前のごとく腹部は日に月に膨張し、十六ケ月を経て玉のごとき女子を生みける。ここにおいて男子には高月彦と命名し、女子には初花姫と命名し右と左に月花を飾つたるごとく、楽しみつつ二児の成長を待ちける。高月彦は長ずるにおよんて智、仁、勇の三徳を完全に発揮し、初花姫は親愛兼備の徳を称へられける。

上と同じ章で、八頭八尾の大蛇の変化で高月彦と同じ姿形をした神が現われて、本物と区別がつかなくなり、一緒に暮らすことになる。また、常世姫が無花果を食べて邪神の五月姫を生む。(同章)

 あるとき常世姫は、侍女を随へて橄欖山に遊び、無花果を取つて楽しみゐたりしが、その中に優れて色美はしく、大なる無花果の実がただ一個、時を得顔に熟しゐたり。常世姫は一目見るより、その無花果を頻りに食ひたくなりければ、侍女に命じてその無花果をむしり取らしめ、その場に端坐し、四方の景色を眺めながら、美味さうに食ひ終りぬ。
 俄に常世姫は腹痛を発して苦悶し始めたるに、侍女は驚いてこれを助け起し、竜宮城内に救け帰りしが、陣痛はなはだしく、玉のごとき女子を生み落したり。女児の顔は初花姫に似るも似たり、瓜二つなりければ、父母二神司は五月姫と命名し、これを愛育したり。追々成長してこれまた姉の初花姫と背丈、容色すべてが瓜二つとなりける。

二人の邪神は、常世彦・常世姫の後継となろうとする。しかし、高月彦の「惟神霊幸倍坐世」の言葉に、邪神の正体を暴かれてしまい逃げ出す。

ところが、高月彦、初花姫共に気を緩めた途端に、八頭八尾の大蛇、金毛九尾の悪狐に憑依されてしまう。

その後、常世彦・常世姫が帰幽したため、高月彦、初花姫は後継として常世彦・常世姫となった。

非常に分かりにくい話であるが、高月彦、初花姫は、から生まれているので正神であったということだろうか。イチジクから生まれた五月姫は邪神である。

常世彦・常世姫の性交によって生まれた子供ではないこと(他の神も性交によっては生まれていないかも知れないが)、梅からは正神で、イチジクは邪神であること。ちょっと、解せない話ではある。

なお、無花果は聖書によると、アダム・イブが裸であることに気づいて、陰部を隠したのはイチジクの葉だったという説があり、アダム・イブが食べた木の実もイチジクとされていたことがあるらしい。

霊界物語では無花果は何箇所か出てくるが、隠された意味を持っているところはないと思われる。


その後、常世彦・常世姫は第5巻17章で、ウラル彦、ウラル姫と名前を変える。

物語05-3-17 1922/01 霊主体従辰 勢力二分

 ここに八王大神常世彦は、常世神王と類似せるわが神名を改称するの必要に迫られ、ウラル姫と改めた。そして盤古大神を盤古神王と改称し、常世神王にたいして対抗する事となつた。各山各地の八王神は残らず命を廃し、神と称することとなり、八頭は依然として命名を称へ、八王八頭の名称を全部撤廃してしまつた。これは八頭八尾の大蛇の名と言霊上間違ひやすきを慮つたからである。されど数多の神人は従来の称呼に慣れて、依然として八王八頭と称へてゐた。国祖御隠退の後は、常世神王の一派と盤古神王一派は東西に分れ、日夜権勢争奪に余念なく、各地の八王八頭はその去就に迷ひ、万寿山、南高山を除くのほか、あるひは西にあるひは東に随従して、たがひに嫉視反目、紛糾混乱はますます劇しくなつた。

また、このウラル彦、ウラル姫の宗教は大中教で、常世神王(大自在天大国彦)の宗教がウラル教となっているので注意が必要であろう。


4.ウラル彦・ウラル姫の子供

第二代の常世彦と常世姫は兄弟であるはずだ。同父の兄弟であるかは本文ではわかりにくいが、二人とも常世姫から生まれたものであることは間違いない。

5巻の冒頭第1章では、その常世彦と常世姫に男子常治彦とその妹玉春姫が生まれる。本文では近親結婚については何も触れられていない。また、5巻までの時代で、結婚とかの概念があり、兄弟の結婚が問題視されていたかも不明だ。

日本の古代からの慣習によると、同父異母の結婚は認められているが、同母の結婚はタブーとされているのではなかろうか。

現に、これ以後の巻で、私の覚えている、近親結婚(相姦)については、国依別の前身の宗彦とその妹、これは、お互い知らずに一緒になっていた。また、第79巻の艶男と麗子もセックスはしていなかったが愛し合って結婚したいと考えていた。この二つについては、きちんと説明があるように思う。

常世彦と常世姫についてだけ、何も触れていないのは不思議だ。

さて、この子供の常治彦玉春姫は5巻の1章で登場し、18章以降は出てこない。影がうすいのだ。

そして、後の方の巻では、ウラル彦の跡継ぎとして常暗彦が登場する。

ウラル彦、ウラル姫は、三五教に圧力をかけられ最後にはバラモン教に襲われ常世の国へ逃げる。

物語41-1-7 1922/11 舎身活躍辰 忍術使

 小亜細亜の神都エルサレムの都に近き黄金山下に埴安彦、埴安姫の神顕現して、三五教を開き給ひしより、八岐の大蛇や醜狐の邪神は、正神界の経綸に極力対抗せむと、常世彦、常世姫の子なるウラル彦、ウラル姫に憑依し、三五教の神柱国治立命に対抗せむと盤古神王塩長彦を担ぎ上げ、茲にウラル教を開設し、天下を攪乱しつつありしが、三五教の宣伝神の常住不断の舎身的活動に敵し得ず、ウラル山、コーカス山、アーメニヤを棄てて常世の国に渡り、ロツキー山、常世城等にて今度は大自在天大国彦命及び大国別命を神柱とし、再びバラモン教を開設して、三五教を殲滅せむと計画し、エヂプトに渡り、イホの都に於て、バラモン教の基礎を漸く固むる折しも、又もや三五教の宣伝使に追つ立てられ、メソポタミヤに逃げ行きて、ここに再び基礎を確立し、勢漸く盛ならむとする時、神素盞嗚尊の遣はし給ふ宣伝使太玉命に神退ひに退はれ、当時の大教主兼大棟梁たる鬼雲彦は黒雲に乗じて自転倒島の中心地大江山に本拠を構へ、鬼熊別と共に大飛躍を試みむとする時、又もや三五教の宣伝使の言霊に畏縮して、フサの国を越え、やうやく月の国のハルナの都にバラモンの基礎を固め、鬼雲彦は大黒主と改名して印度七千余ケ国の刹帝利を大部分味方につけ、その威勢は日月の如く輝き渡りつつあつた。

然るにウラル彦、ウラル姫の初発に開きたる盤古神王を主斎神とするウラル教の教徒は、四方八方より何時となく集まり来りて、ウラル彦の落胤なる常暗彦を推戴し、デカタン高原の東北方にあたるカルマタ国に、ウラル教の本城を構へ、本家分家の説を主張し、ウラル教は常暗彦の父ウラル彦の最初に開き給ひし教であり、バラモン教は常世国に於て、第二回目に開かれし教なれば、教祖は同神である。只主斎神が違つてゐるのみだ。ウラル教は如何してもバラモン教を従へねば神慮に叶はない。先づバラモン教を帰順せしめ、一団となつて神力を四方に発揮し、次いで三五教を殲滅せむものと、ウラル教の幹部は息まきつつあつたのである。

八岐の大蛇は、ウラル彦、ウラル姫から乗り換えて、常世の国でバラモン教を開かせた。その、バラモン教が、ウラル彦、ウラル姫襲う。二人は、常世の国に逃げ出す。

物語44-1-2 1922/12 舎身活躍未 月の影

『兄上様がアーメニヤの神都より宣伝使となつて竜宮の一つ島へ渡られた後、バラモン教の一派に襲はれ刹帝利、浄行を始め毘舎、首陀の四族は四方に散乱し目も当てられぬ大惨事が突発しました。大宜津姫様がコーカス山から敗亡の体で逃げ帰つて来られてから間もない疲弊の瘡の癒え切らない所だから、忽ち神都は防禦力を失ひ常世の国へウラル彦ウラル姫様一族は其姿を隠し玉ひ諸司百官庶民の住宅は焼き亡ぼされ、ウラル河の辺りに武士の館が少し許り残されたのみ。離々たる原上の草、累々たる白骨叢に纒はれて、ありし昔の都の俤も見えず蓮府槐門の貴勝を初め毘舎の族に至るまでウラル河に身を投じて水屑となつたものも沢山にあり、中には遠国に落ち延び田夫野人の賤しきに身を寄せ或は山奥の片田舎に忍び隠れて桑門竹扉に詫住居する貴勝の身の果敢なさ。夜の衣は薄くして暁の霜冷たく朝餉の煙も絶えて首陽に死する人も少からず。その中にも私は父母兄弟に生別れ、死別れの憂目に会ひ、広い天下を当所もなく漂流する内バラモン教の片彦に見出だされ、心ならずも兄様の所在を探るを唯一の目的として今日まで日を送つて参りました。アヽ有難き大神様の御引合せ、コンナ嬉しい事は厶りませぬ』

また、物語の重要な登場人物の一人、高姫は、ウラル彦、ウラル姫の娘だったのだ。

物語33-4-22 1922/09 海洋万里申 高宮姫

三五教の宣伝使        厳の御霊の系統で
日の出神の生宮と       今まで固執してきたが
思へば思へば恐ろしい     誠の素性を明すれば
コーカス山に現れませる    ウラルの彦ウラル姫
二人の中に生まれたる     われは高宮姫命

常治彦玉春姫常暗彦高姫と同一人物かどうかは手がかりはない。

常世姫小北山ウラナイ教の祭神として後の巻で登場する。



第1版 2005/09/12
第1.1版(一部修正)2014/12/31

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