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高橋証人 裁判記録

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高橋証人 裁判記録

○出口京太郎「巨人 出口王仁三郎」P.417
「大本関係の動産は国がただ同然の値段で売り払うは、土地は坪8銭で町に買い取らせるわ、という状態だ。」
に関して、それを売り払う手続きをしたのが、高橋警部で、無理やり王仁三郎に印を押させた様子が書かれています。
○このやり取りの中で、スミが神懸かりして、奇声を発して、それを王仁三郎がなだめる様子が、冷静な記録として書かれています。
(此時(このとき)出口スミ「天皇陛下様の御前(ごぜん)ではないか」と云(い)ひ奇声を発し暫(しば)し止まず)
 これを考える時、高橋警部の属する国と、天皇陛下の国とは違うのか?という疑問がわいてきます。
 また、この緊迫したやりとりでの、スミの奇声、王仁三郎の神懸りから、王仁三郎もスミも天皇陛下を心から尊敬している気持ちが感じとれます。そして、神懸りがほんとうにあったように感じられます。
 

裁判長 高橋誠治ですか

高橋誠治証人 さうでございます

中略(ちうりやく)

富沢弁護人 私は御遠慮(ごゑんりよ)申上(まをしあげ)げて警官(けいくわん)方に一口も御聞(おきき)して()らないのです、()の証人に対して特に、御願(おねがひ)したい事があるのです、それは考へて頂くことぢやなく直ぐ御分りになることです、それをどうぞ御願(おねがひ)したいと思ひます、先づ王仁三郎(おにさぶらう)氏の実印を証人が保管して()つたかどうかと()ふことです。

裁判長 どうぢや、王仁三郎(おにさぶらう)の実印を保管して()つたか。

 そんなものは保管して()りませぬ。

裁判長 保管して()つた事実(じじつ)なしと──。

富沢弁護人 さうですか、全然(ぜんぜん)保管して()りませぬか、今してないと()ふことぢやない前にしたことが全然(ぜんぜん)ないのですか。

裁判長 前に保管した事はなかつたか。

 私は保管して()りませぬ、(その)当時(たうじ)も。

裁判長 元から一遍も預つたことない?

 預つたことありませぬ。

富沢弁護人 それで王仁三郎(おにさぶらう)所有(しよいう)の土地を売却するに当つた事情(じじやう)(くは)しく御()きしたいのです。

裁判長 どうです王仁三郎(おにさぶらう)の土地を売却するに当つた事情(じじやう)──。

 先に御(うかが)(いた)しますが、(これ)矢張(やつぱ)り何で御座(ござ)いますか、直接治安維持(ゐぢ)法違反事件と……。

裁判長 関係ないけれ共、言ふたら()いだらう、どう()趣旨(しゆし)()かれたのか、私共の判断(はんだん)出来(でき)かねる所が沢山(たくさん)あるから判つて()ることがあつたら要領(えうりやう)よく()つて御覧(ごらん)なさい。

 土地をどうです。

裁判長 土地を王仁三郎(おにさぶらう)が売却したのですか、売却に至つた事情(じじやう)──。

 売却するに至つた事情(じじやう)ですか。

裁判長 関係して()つたら()ふて御覧(ごらん)、どう()ふ事で売る様になつたか、関係したことを。

 私は王仁三郎(おにさぶらう)(たし)かさう()ふ話をした様に思ひますね。

裁判長 さう()ふ話と()ふのは何う()ふの。

 土地を亀岡(かめをか)綾部町(あやべちやう)に売却すると()ふ風な。

裁判長 亀岡(かめをか)……。

 亀岡(かめをか)綾部町(あやべちやう)に売却すると()ふ様なことを……。

裁判長 売却せよと()ふたのかどうなんだ。

 それは、はつきり記憶(きおく)ありませぬがね。

富沢弁護人 考へることぢやないぢやないか。

裁判長 王仁三郎(おにさぶらう)に売る様に話したのか証人が──。

 売れとは申しませぬね、どうもはつきり言葉(ことば)を覚へませぬ。

裁判長 関係して()らぬのか、関係したのか。

 何か一度私が判を調べた関係上ですね、(その)委任状か何かを私が持つて()つたやうな気が(いた)しますけれ共、委任状でしたかな、どうもはつきり覚えませぬがそう()ふ話をした事はありまするが。

裁判長 委任状はつきり覚へぬ。

 出口王仁三郎(おにさぶらう)からもう総てを捜査した最後(さいご)ですね記憶(きおく)ありませぬが、総てを私は清算(いた)しますと──もう之て総てを清算するから土地も何も要りませぬ、建物(たてもの)も要りませぬ、と()ふことを()ひましてですね、さうして(これ)の処分ですね、全部(ぜんぶ)何か誰かに任すと()ふ様なことを()つたように思ひますが。

裁判長 誰に?

 中村純也でしたかな。

出口王仁三郎 違ふ(と絶叫す)。

 任すと()ふようなことを()つたような気がしました、任すと()ふ様に()ひました、(これ)はあまり事件と本件と関係がない様に思ひますから。

裁判長 そんな関係があるか、ないか分らぬ、分るなら()つて(もら)ひたひと弁護人が()くのですから。

林弁護人 本件と密接な関係があるのですから、それで富沢弁護人が()くのです、証人が関係ないと判断(はんだん)されちや困る。

富沢弁護人 私共は暴行脅迫のみが人権蹂躙(じうりん)ぢやないと思ひます、()()ふことも人権蹂躍の一原因を成すから御聞(おきき)きするのです。

林弁護人 速記には考へる時間も()れて置いて下さい、それで()のあとはどうなんださつぱり分らぬ。

富沢弁護人 大きい声で御願(おねがひ)(いた)します。

(四、五十秒考へる)

 大分(だいぶん)前のことですから、はつきり(いた)しませぬが、総てを整理するから()()ふ風にして置けと何か内容ははつきり分りませぬが総てを財産(ざいさん)も総てを整理するから。

裁判長 財産(ざいさん)を整理するから。

 中村純也かに委任すると()ふ風なことを()つた(その)取次(とりつぎ)をした様に思ひますね。

裁判長 誰に?

 中村純也に。

裁判長 中村純也に、純也と()ふと純一か。

 純一ですか。

富沢弁護人 あなたが王仁三郎(おにさぶらう)氏の頭を()して無理(むり)く委任状を書かした様な事情(じじやう)はありませぬか。

 左様(さやう)なことはありませぬ。

富沢弁護人 さうすると其時(そのとき)に純也、(あるひ)は中村に会はして(もら)つたならば……それぢや会はしてやるから判をつけ、それから(なほ)其時(そのとき)()の委任状に判をついたならば外の被告を全部(ぜんぶ)許してやる、それだから判をつけ、──そして判をつかせられたと()ふ事を()つて()りますがそう()ふ事を御存(ごぞん)じありませぬか。

裁判長 どうです。

 そんなことはありませぬ。

富沢弁護人 それからそこで王仁三郎(おにさぶらう)氏は中村が許されたと思つてさうして中村の自宅の方へ取消(とりけ)通知(つうち)を出した何ぞ計らん許されてないで警察に()つたので一日(ちが)ひで届けてしまつたと()事実(じじつ)があるのですがそれも御存(ごぞん)じありませぬか。

裁判長 どうぢや、高橋、考へちやいかぬぞ。

 私はそんな事は──()の外にさうした何ですね、出口王仁三郎(おにさぶらう)と中村純也との間の取次(とりつぎ)を委任状か何か取次(とりつぎ)をしたと思ひますが、そんな後のことは何も知りませぬ。

富沢弁護人 それで今、王仁三郎(おにさぶらう)氏が自分を清算しやうと()ふ、所謂(いはゆる)清算と()ふ事は……。

 清算と()ふ意味は。

裁判長 あとから整理と()つて()つたね。

 ()の気持をなんですね、()()う事件を起したのだから()()ふことはもう大本教(おほもとけう)ももう解散(かいさん)してしまうて、さうして建物(たてもの)(つぶ)して(しま)ふてと()ふ様な意味ですね(この)清算と()ふ意味は──。

富沢弁護人 さうすると賃貸(ちんかし)価格(かかく)の値段を以て中村に委任状を書くことを(たの)んでやつたのですか。

 賃貸(ちんかし)価格(かかく)とか何とか()ふことは、はつきり私は分りませぬが。

富沢弁護人 分りませぬぢやない、委任状に書かれて()るぢやありませぬか、御取次(おとりつ)になつた委任状を私も見て知つて()ります、(しか)もあなたが無理(むり)に書かしたと()ふじやありませぬか。

(しばら)く熟考)

 細いことはどうも、はつきり記憶(きおく)ありませぬが、(その)委任状に誰か判をつきましたか、王仁三郎(おにさぶらう)氏の判を中村が持つて()りましたか──。

富沢弁護人 本当のことを()ふて下さい。

 判はそれは誰が持つて()つたのでせう。

富沢弁護人 中村か?

 中村か誰か知りませぬけれ共。

富沢弁護人 知りませぬつて中村以外(いぐわい)にそれに関与したものがありますか。

裁判長 本人はどうですか、判は持つて()ませぬか。

 (その)点は記憶(きおく)ありませぬが、判を()したのは王仁三郎(おにさぶらう)()したのであるから。

富沢弁護人 王仁三郎(おにさぶらう)()したと()ふのですか、松江に旅行するのに実印を持つて行くものがありますか、とぼけないで下さい、それは(よろ)しうございます、分らなければIそれから、スミに対してはどう()ふ事をおやりになりました。

 スミと()ふのは出口スミですか。

富沢弁護人 そうです、スミの不動産に付て如何(いか)なる処置をなしたるや。

 スミの事は私は何も存じませぬが。

富沢弁護人 存じませぬ、あなたは一向(いつこう)関係しない?

 はあ。

富沢弁護人 それでは無論(むろん)御存(ごぞん)知な事でせうが、スミの委任状の文句(もんく)と、王仁三郎(おにさぶらう)氏の委任状の文句(もんく)の違ふこともあなた御承知(しようち)ございませぬね。

 そんなこともはつきり存じませぬ。

富沢弁護人 登記はどなたがおやりになつたのですか。

 左様(さやう)なことは私は分りませぬ。

富沢弁護人 待つて下さい、王仁三郎(おにさぶらう)氏の委任状に()つて中村がいろ/\の書類を造り──中村は牢に入つてヰるのですよ、──出口家のもの(あるひ)信者(しんじや)方々(はうばう)が動いたものは一人もありませぬよ──。

裁判長 登記に関係したのか、せぬのか。

 登記に私は関係せぬ……。

富沢弁護人 関係しなくても登記の書類はどうしたのですか。

 見ませぬ、そんなものは──。

富沢弁護人 見ない訳がない、どうも現にして()るのだ、中村が(この)証人に()つて委任状を造つて渡して()ると()ふことを()ふて()るのです。

 私は中村の意を取〔り〕ついで其後(そのご)のことは一切分りませぬ.、

富沢弁護人
 さうしますと、それからもう一つ(うかが)ひますが、スミの方には全然(ぜんぜん)やつて()らなかつたのですね。

 待つて下さいよ、はつきり記憶(きおく)ありませぬ。

富沢弁護人 さうすると之も記憶(きおく)ないのなら御()きしても仕方(しかた)ないのですが、(これ)王仁三郎(おにさぶらう)氏も中村氏も出して()らないのです、(これ)は登記書類が付いて()るのです、(これ)はどう()ふことでせうか。

 そんな事は私は分りませぬ。

富沢弁護人
 それではちよつと中村に其事(そのこと)件を御()きを願度いと思ひます。

裁判長 中村(その)点に付て取次(とりつぎ)いで(もら)つたことはないか。

中村純一 高橋警部さんは()うして見ますと当時(たうじ)のことが……(胸をさすり(なが)ら目に涙を浮ぶ)

裁判長 どうしたの。

中村純一 感慨(かんがい)を思ひ浮べるのですが、王仁三郎(おにさぶらう)の実印を持つて来いと()ふ命令を受けたように思つて()ります、()の高橋警部さんから──それから時期(じき)は一つ時であつたか存じませぬが、出口スミの実印を携帯せよと()ふ事でありまして、当時(たうじ)(すで)に中立売警察に()つたのでありますが、拘置さし(なが)ら本部の警官(けいくわん)の方が附添ふて、度々(たびたび)亀岡(かめをか)へ出て()ります、綾部(あやべ)にも参つて()ります、それで実印を携帯(いた)しまして、それは京都警察本部の警務課の豊原道也課長の前で()の高橋警部さんが、それでは(これ)が出口王仁三郎(おにさぶらう)の実印であると申上(まをしあげ)げて渡したのは夜分(やぶん)でございます、(これ)は私の当時(たうじ)の日誌に()れて置いたと思ひます、然し私はしよつちゆ(ふところ)にあると()ふ訳ぢやないので許された日誌に書いて係官の方に一応検閲を願つて、それから金庫に預つたのですから大抵(たいてい)の重要なことであるから日記にあると思ひますが、右の様な次第(しだい)で、王仁三郎(おにさぶらう)の実印と出口スミの実印は私が携帯して御命令(ごめいれい)のまゝに警務課の課長さんの前で御渡(おわた)しして其儘(そのまま)警察に帰つて休んだのですから、高橋さんに実印の保管を願つたことになつております、それから(これ)は検事局との関係が(また)そこに出てくるのですがまあ今日(こんにち)大分(だいぶん)覚えて()りまして鈴木(すずき)検事さんが御呼出になりまして、それで外の事を御(たづ)ねになつた後に、ちよつと話が前後(まへうしろ)しますが申上(まをしあげ)げます、いや話ではない、向ふさんの方の仕事が前後(まへうしろ)しておかしいと思つたのですが、鈴木(すずき)検事さんの前に出ましたら、王仁三郎(おにさぶらう)は委任を取消(とりけ)したさうだねと(おつ)しやつたからそんなことはありませぬ、()申上(まをしあげ)げたのであります、おかしいことがあるものだな──と思つたのでありますが、(これ)はちよつと取消(とりけ)しますが、実印を……。

裁判長 順序に()へ〔ひ〕なさい。

中村純一 はあ、順序に申上(まをしあげ)げます、少し途中(とちう)におかしいことがあつたのでありますが、実印を只今(ただいま)申上(まをしあげ)げた様な順序で警部さんに御渡(おわた)ししたのです、それで用事(ようじ)が済んだものでありますから、警官(けいくわん)の方が帯行して中立売警察署に帰つた訳です、そして翌日か、翌々日か出口スミはちよつと後になつて()りますが、(また)()のあとの判を同じく大切な私の預りの荷物の中に()れてそれで中立の警察の金庫の中にしばらく蔵ひ置きを願つて()つたのです、それで実印をお渡ししてから何時(いつ)か分りませぬが、出口王仁三郎(おにさぶらう)から今富沢弁護人の(あふ)せになるとこゝの委任状なるものが私共に(まは)つて来たのであります、出口王仁三郎(おにさぶらう)から()の不動産を賃貸(ちんかし)価格(かかく)亀岡(かめをか)綾部(あやべ)当町役場に譲渡す〔る〕こと、()()ふことのまあ委任状が参つた、(これ)証拠(しようこ)があるのでございますから、それで私は(その)委任状を見た時に(ちつと)人間的(にんげんてき)に考へた時には想像(さうざう)の付かない委任状であつた訳でありますから、()の間の法廷でも、ちよつと憤慨(ふんがい)()言葉(ことば)はなそですが、非常(ひじやう)憤慨(ふんがい)的でもあり(また)非常識(ひじやうしき)的でもあり、多少()会計(くわいけい)の関係から申しまして()亀岡(かめをか)綾部(あやべ)の当町の不動産と()ふものは先づ金銭(きんせん)的に見ても大変(たいへん)なものでありますが私常識から申上(まをしあげ)げても、(これ)は出口王仁三郎(おにさぶらう)名儀、出口スミ名儀にはなつて()りまするけれ共が、()本質(ほんしつ)とか(その)内容と()ふものから、(これ)を考へるならばそれは法律上の手続(てつづ)は経て()らぬけれ共が立派な(これ)は準財団法人であつて()の財団法人を出口王仁三郎(おにさぶらう)、出口スミ両人(りやうにん)が委任状一本で(これ)を整理さすと()ふようなことは、全体(ぜんたい)信者(しんじや)に対して什う()申訳(まをしわけ)けをするであらうかと()ふようなことは(ちつと)もそれは自分の常識が働いて来るとかなわぬ感じを其時(そのとき)に持つた訳であります、(これ)過日(くわじつ)申上(まをしあげ)げました通りに勢の赴くところはどこ迄も圧倒(あつたふ)して来るものだなあと思つて、それは(あふ)せになる(まま)()の委任を私は受(だく)したのであります、それで()の受諾をして、然し整理をすると()ふてますけれども、いつ何日(いつ)にどうせい、と()ふ事は書いてないのでございますから私は委任状()のまゝ私の保管の方に其儘(そのまま)預つてあつたのです、所が鈴木(すずき)検事さんにちよつと呼出を受けまして、それは外の関係でちよつと御(たづ)ねになつた時に中村、王仁三郎(おにさぶらう)がお前に委任して()ることの委任を取消(とりけ)したそうだね、何も知りませぬ、さうか知らぬかと(あふ)せになつたのです、それからおかしい事を御(たづ)ねになるものだなあ、と思つて()つたのです、所がそれは検事局の二階であります、検事局の二階で検事さんの前でありますが、中立売警察の特高を出た時に、中村、王仁三郎(おにさぶらう)から手紙が来て()ると(あふ)せになつたのです、さうですかね、それは初めて王仁三郎(おにさぶらう)氏から(もら)つた手紙であります、(その)手紙の宛所は南桑田郡(みなみくはだぐん)亀岡町(かめをかちやう)中村純也殿と書いて参つたのでございます。

 それで(その)封縅には符箋が付いて()る、(その)符箋は亀岡(かめをか)()らないから、つまり宛先に転送を受けて特高課で私受取(うけと)つたのであります、それでそれを開封(かいふう)したのであります、開封(かいふう)して見た(ところ)王仁三郎(おにさぶらう)氏の手紙の内容は、過日(くわじつ)不動産の処分に関する委任をしたがあれは(おれ)本心(ほんしん)でないから、あとから分ることであるから一切(いつさい)取消(とりけ)してくれと()取消(とりけ)しのつまり委任に対する取消(とりけし)の手紙が来たのであります、ところが私は其時(そのとき)に驚いたのてあります、其手(そのて)紙の着いた前日(ぜんじつ)に中立売警察の官舎の二階で亀岡(かめをか)綾部(あやべ)両聖地(りやうせいち)の土地譲渡登記の書面を私に整へさせられた訳であります、其処(そこ)へ手紙が来たものだから前から何とした事だらうと思ふて、それから直く様()の見た時刻と見た場所は……それからそれを見て(もら)はねやならぬ、警部補さんに直ぐ其手(そのて)紙を見て頂きまして何月何日何時特高課に(おい)て、それは城さんと()ふ警部補でございます、城警部補の前で(その)書面を開封(かいふう)すると城さんでございます、城さんと()ふ方に一応承諾(しようだく)を経てさうして私は()王仁三郎(おにさぶらう)氏の手紙を(もら)ふた時に前からのさう()経緯(いきさつ)がありますからさうすれば立つても(すわ)つても()られぬ感じがしたのであります。

 それで(その)手紙が()し私が亀岡(かめをか)受取(うけと)つたとか(あるひ)は特高課からさう()ふ様に手渡(てわた)して受けることが一日早いならば()の登記をせずに済むのである、王仁三郎(おにさぶらう)氏に対しても(また)全体(ぜんたい)大本(おほもと)関係の方に対してもなんとしたことだらうと思つて私はそれは実に当惑(たうわく)したのであります、其事(そのこと)は高橋警部さんにもよく事情(じじやう)を申し上げまして面会(めんくわい)出来(でき)たのでありますから()事情(じじやう)前後(まへうしろ)を一つ御伝達(でんたつ)願度いことを(よろ)しく御願(おねがひ)ひしますと言ふ事を私申出(まをしで)()ると思つて()つたのでございます今も其事(そのこと)を考へると実に胸一ぱいにございます、大抵(たいてい)許された事は同誌にもきつぱり書いてあります、(その)手紙(およ)、委任状取消(とりけ)関係のことは前田弁護人(およ)富沢弁護人に私交付(いた)しておる訳であります、そして私は会計(くわいけい)の仕事なんかして()るのでありますが、多少動産の譲渡関係に付ては心得(こころえ)があるのでありますが、過日(くわじつ)ちよつと申上(まをしあげ)げた通り有夫の婦であります、有夫の婦は夫の承諾(しようだく)を得なくては土地所有(しよいう)権の移転は出来(でき)ぬのであります、私は御当人からの委任状が来たのでありますが其時(そのとき)に果して出口王仁三郎(おにさぶらう)とおスミさんは何所(どこ)協議(けふぎ)をなすつたであらうかと()ふことも私の胸には浮んで()つたのであります、そして其事(そのこと)に就て富沢弁護人から度々(たびたび)(その)承諾(しようだく)書があるかと(あふ)せになつたのでありますが私どうも(その)当時(たうじ)のことを、はつきりせぬのですから取締の関係に(おい)てはそれは()の有夫の婦は夫の承諾(しようだく)書がなければ所有(しよいう)権の移転は出来(でき)ぬと思ひますと()ふ事だけ申上(まをしあげ)げたのでありますが、只今(ただいま)(うかが)ふと(その)承諾(しようだく)書が付いて()つたと()ふことになつて()るのでありますが、王仁三郎(おにさぶらう)氏も刑務所に拘留してあります、(また)スミさんも刑務所二拘留してあるのですから、まさかスミさんが御主人(ごしゆじん)に向つて綾部(あやべ)の土地を売りますぞ、綾部(あやべ)の土地を綾部(あやべ)の町役場に譲渡(いた)しますでと云様なことを考へると一層(いつそう)私の胸には(たま)らぬ苦が起るのです、昂奮しますから、此辺(ここら)でこらえていただきたいと思ひます。

裁判長 今の事実(じじつ)高橋、()うだどうだ。

 私は先に申上(まをしあげ)げた以外(いぐわい)には何も関係して()りませぬので()の判を今中村は預つたとか何とか()ふようなことを()はれましたがどうも其辺(そのへん)はつきり記憶(きおく)ありませぬから──。

裁判長 中村に持つて来いと命じて中村を綾部(あやべ)亀岡(かめをか)に帰さしてだね、さうして警務の警部の前でお前預つたと()ふのはどうです。

 判を預つた……。

裁判長 判を預つたかと、()ふことは()いて()るぢやないか、具体的(ぐたいてき)説明(せつめい)を聞いてお前から持つて来いと()はれて向ふに持つて来て警務課の警部の前でお前に渡したと()()ふのです、どうです。

 預つたか知れませぬ、私どうもはつきり記憶(きおく)ありませぬが。

富沢弁護人 預つたのですな。

裁判長 さう()ふことをね、さう()ふ様なことを()ふと、預つたら預つたで()いぢやないか。

此時(このとき)出口スミ「天皇陛下様の御前(ごぜん)ではないか」と()ひ奇声を発し(しば)し止まず)

出口スミ 済まぬことでございます。

此時(このとき)(なほ)も出口スミ奇声を発し止まず)

出口王仁三郎(おにさぶらう) これこれ(と()へ〔ひ〕ながら出口スミを(なだ)む)

裁判長 今の預つたら預つたで()いぢやないか。

 預つた様に思ひます。

裁判長 そこで預つて富沢弁護人が(たづ)ねたやうな(この)王仁三郎(おにさぶらう)をして判を捺さした顛末(てんまつ)に就て関係して()るのぢやないですか。

 (その)委任状に王仁三郎(おにさぶらう)が判を()すときに私は立会(たちあ)つたのです。

裁判長 (その)委任状を中村純也に渡したのか。

 さうです、取次(とりつぎ)いだのですね。

裁判長 (その)点に関して王仁三郎(おにさぶらう)は──先程(さきほど)は清算して云々(うんぬん)と言ふて()つたが、お前さんの方から無理(むり)に進めたような事実(じじつ)はないか、──それからね、(その)中村からだね顛末(てんまつ)をだねよく事情(じじやう)取次(とりつぎ)いだ一日の差で……(その)事実(じじつ)をお前さんに中村から()はれて中村から王仁三郎(おにさぶらう)伝達(でんたつ)方を(たの)まれた事実(じじつ)はありますか。

 あります、そうして中村に取次(とりつぎ)いだ訳ですね。

裁判長 中村から……。

 それから承諾(しようだく)書を(また)取次(とりつぎ)ぎます。

裁判長 中村がでせう、委任状に()つてまあ其時(そのとき)手紙が来て一日の差で登記を済ました、其後(そのご)に手紙が来た、王仁三郎(おにさぶらう)承諾(しようだく)の意見に基いたのぢやないと()ふことが分つた訳だね、それを中村が王仁三郎(おにさぶらう)()つて()れと()伝達(でんたつ)を受けたことはないかと()ふのだ。

 (その)伝達(でんたつ)は受けたことはありませぬ。

裁判長 ないですか。

 ありませぬ。

富沢弁護人 それから中村にもう一点委任状が(まは)つて来たと()言葉(ことば)を使ひましたが(まは)つて来たと()ふのは誰か持つて来たと()ふのですか登記書類は中村が誰に渡したのでせう。

中村純一 私は登記書類は中立売警察署の官舎のに階で夜分(やぶん)遅く迄かかつてやつたと思つて()りますが、当時(たうじ)はまだ老眼を使用して()らなかつたので眼が未だ見えて()つたのです、夜中に墨は目に応ひますがそれが不思議に応へずに書いたことをよく目眼鏡(めがね)(もら)つたように思つたのです。()の書面の作成中には保安課長長岡文男さんと()ふ方がありました、それから亀岡(かめをか)警察署長の木下定雄さんが立会(たちあ)ふて()られました、さうして私に登記所の代書士が御造りになつたものを持つて参りまして書(はい)れるのでありますから、どゆとどこに判を()して書入れると符箋が付いて()りますから大体(だいたい)そんなことに付ては経験を持つて()りますから、さうして書面を整へて保安課長と警察署長とに交付したように思つて()ります。

裁判長 それからおスミさんの方は全然(ぜんぜん)証人は関係しないと()ふことを()つて()りますが。

中村純一 そんなことはありませぬ、()のことに関しては今富沢弁護人の(あふ)せになるように王仁三郎(おにさぶらう)氏、スミは顔を合したものでもありませぬ、どこに()るやら一切(いつさい)皆目分らぬ、高橋警部さんの手を経由しなくては何ものも来る訳ぢやないのです、受諾するに付ては承諾(しようだく)書を書かなければならぬ、()承諾(しようだく)書なんかの原稿(げんかう)は高橋さんの方から(まは)つたのでありまして私はそれは書いて()りますが、承諾(しようだく)書では私の書いた字であります、けれ共原稿(げんかう)矢張(やつぱ)(その)原稿(げんかう)()つて私が……。

富沢弁護人 おスミさんの委任状の原稿(げんかう)(その)証人が書いて()れたのですか。

 (ちが)ひます、それは今の承諾(しようだく)書の関係で御座(ござ)います、委任状の関係は私はございませぬ。

富沢弁護人 承諾(しようだく)書はあなた御書きになつたのですか。

 承諾(しようだく)書は(これ)請求(せいきう)がありますから承諾(しようだく)書を書いて()れと……。

富沢弁護人 それは王仁三郎(おにさぶらう)氏からあなたが委任を受けて()つたのですか、無論(むろん)それは順序の上に(かみ)自分に委任状を先づ持つて御出(おい)でになつてですね、王仁三郎(おにさぶらう)氏がお前に委任したとI()つて(その)承諾(しようだく)書を作成して()れと(あふ)せになることに()つて──。

中村純一 私は(その)原稿(げんかう)に基いて承諾(しようだく)書を(いた)しました。

富沢弁護人 さうすると王仁三郎(おにさぶらう)氏から、あなたが承諾(しようだく)書に判を()すことも許されて()つたのですね、承諾(しようだく)書に。

中村純一 承諾(しようだく)書の関係はですね、委任状を私が……。

富沢弁護人 委任状と()ふのは王仁三郎(おにさぶらう)氏の私有財産(ざいさん)を移転するの委任状であつて、それなら債券の譲渡に同意することとは意味は違ふぢやないですか。

中村純一 それはさうです、先刻申上(まをしあげ)げて置きました。

富沢弁護人 それでどうなつたの。

裁判長 (その)点の顛末(てんまつ)()きたいと()ふのだ。

中村純一 それは王仁三郎(おにさぶらう)氏のよりはおスミさんの方が後になつて()ります、後になつて()りますが、手続(てつづ)関係は同じ様になつて()ります、委任状を私に御取次(おとりつ)になつて承諾(しようだく)書を書けと()ふから(その)原稿(げんかう)に基いて承諾(しようだく)書を書いた訳であります、勿論(もちろん)それは真実(しんじつ)委任されて()るものであることは問ふ迄もない事であります。

富沢弁護人 ()(この)証人に一遍御()き願度いのですが、最初(さいしよ)判を預つたことはない、終には判を預つた、如何(いか)なる法規によつて預つたのか、実印を預つた訳ですね……警察官吏(くわんり)個人(こじん)の実印を預る権限を持つて()らないと思ふのであります。

足立弁護人 一寸(ちよつと)(その)証言は。

中村純一 ちよつと順序で(この)証人に聞くのですが()の登記関係に就て一つ残つて()るのですが、ひよつとしたら、王仁三郎(おにさぶらう)からかと思ひますから、穴太(あなを)王仁三郎(おにさぶらう)生地(せいち)があるのです、三ケ所あるのです、それで(その)穴太(あなを)の方は代書人の関係で(その)書面が(おく)れたのであります、それでありますから()(おく)れて()ります間に只今(ただいま)申上(まをしあげ)げたように王仁三郎(おにさぶらう)氏の取消(とりけし)の手紙が私の手許(てもと)に参つたものでありますから、穴太(あなを)王仁三郎(おにさぶらう)生地(きぢ)(とう)は登記を其儘(そのまま)にしております、だから決して王仁三郎(おにさぶらう)氏に()つてと()ふことは……。

富沢弁護人 ちよつともう一遍御()きを願度いのです、大本(おほもと)建物(たてもの)を売却するときに証人が立会(たちあ)つたかどうか。

裁判長 どうだ高橋。

 売却の際に立会(たちあ)つたかと(おつ)しやるのですね、行つたこともありますけれ共ずつと()りませぬでした、一日か見に行つたと思ふ、立会(たちあ)ふとか、立会(たちあ)はないとか……見にゆきました。

富沢弁護人 建物(たてもの)の柱を三つにも四つにも切りそれから瓦はトラツクで以て引摺(ひきずり)(こは)したと()ふ事ですがさう()ふ事をあなたが御命令(ごめいれい)になつたのですか。

 いや、()んな事は命令(いた)しませぬ。

富沢弁護人 さうすると誰方(どなた)御命令(ごめいれい)なさつたか、御存(ごぞん)知ございませぬか、警官(けいくわん)勝手(かつて)に──あなた方の部下が勝手(かつて)()さつたと()ふ事になるのですか。

 それは判りませぬ、誰が命令なさつたかどうか──そんな事があつたのですか。

富沢弁護人 そんな(しら)ばくれなくとも()いぢやありませんか。

裁判長 それぢや判を預つたと()ふのはどうしたの。

 其辺(そのへん)はつきり記憶(きおく)ありませぬけれ共、夫れを其時(そのとき)持つて行つて何んです、まあ本人は(その)場で持つて()る、矢張(やつぱ)りそれなれば中村が判を持つて()つたのかも知れませぬね、さうして私が預つて(をつ)王仁三郎(おにさぶらう)に渡して王仁三郎(おにさぶらう)()したと。

裁判長 (その)判はどうなつたの。

 (その)判は結局(けつきよく)返したのでございませう、返したのでございませうね、返して置くでございませうね。

裁判長 お前さんの方から。

 はあ、私の方から(その)書類が(ちが)ひましたから。

足立弁護人 最後(さいご)の所で同じ事項を各警察官の証人に御尋(おたづ)ねいたしますが今日(こんにち)も清瀬弁護人からも御問ひになりましたが、(なほ)後日(ごじつ)(ため)にもう一度明かなる御証言を(うかが)つて置きたいと思ひます、それは此事(このこと)件検挙として準備以上(いじやう)かも知れませぬが内務属の古賀強、(しか)して(これ)には永野事務官が大本事件(おほもとじけん)真相(しんさう)と題するパンフレツトそれに基いて本件の検挙をなしたと()事実(じじつ)はありませぬか。

裁判長 高橋、今ね大本(おほもと)真相(しんさう)と書いたパンフレツトのやうなもの、それによつて検挙に着手(ちやくしゆ)したようなことはないか。

 その様なものて着手(ちやくしゆ)した様な事はございませぬ。

此時(このとき)出口王仁三郎(おにさぶらう)奇声を発して(しば)し止まず)

裁判長 王仁三郎(おにさぶらう)どうしたの。

富沢弁護人 神感りであります。

 パンフレツトはあつたように思ひますがね、内容ははつきり覚へませぬがそれはずつと後に初めに夫んなものを配られたのでなしにずつと後にさあ何時(いつ)頃でございましたでせうか、私の見たのははつきりしませぬが四月か五月頃ではなかつたかと思ひますが、見た様に思ひます。

裁判長 見た様に思ふのは何時(いつ)頃です。

 四月か五月。

裁判長 十一年。

 十一年です。

裁判長 検挙後ですね。

 検挙後です。

足立弁護人 検挙後十一年四月頃もう変りありませぬね、一生涯(しやうがい)──見たような気もする、(しか)()れに基いて京都府の警察官が集つて相談し京都へ永野がわざ/\出て来て説明(せつめい)したと、さう()事実(じじつ)はないですか。

裁判長 夫れに基いてやつたと()ふ事はないか。

 絶対にありませぬ。

足立弁護人 ありましたね、より念を()して置きます後日(ごじつ)言を(ひるがえ)さない様にして頂きたい。

裁判長 永野内務次官の話のことですか、話のあつた事も御(たづ)ねになるのですか。

足立弁護人 何ですか。

裁判長 永野事務官の……。

足立弁護人 検挙の話ですか、話も──。

裁判長 どうです。

 それに付ての話ですか、それに付ての話はありませぬ。

足立弁護人 之以上(いじやう)要りませぬ。

裁判長 さうすると弁護人側に何かありますならば──何が証人に聞いて(もら)ひたい事があれば……高木どうですか。

高木鉄男 私今の話によりますと事件の内容本質(ほんしつ)に付て何か話したように聞きまして御座(ござ)いますが、さう()ふことは一切(いつさい)ないやうでございます、予審訊問(じんもん)()ひますか、今何か言ひましたが、其時(そのとき)私が言ふ事で(だま)つて聞かれた、三日間か四日間(だま)つて聞かれたのです、其時(そのとき)には何故(なぜ)大本(おほもと)に入つたか、私の入信(にふしん)経路(けいろ)大本(おほもと)()んなものだと()ふ様な話があつたのです、ですから信ずる(まま)を思ふ存分に宜く(だま)つて聞いて()ると()(くらゐ)に私は(はなは)だ話下手(へた)でありますから、神懸(かむがか)りの話をして見たり、御蔭(おかげ)話、それから満洲(まんしう)紅卍字会(こうまんじくわい)の関係を話したり、種々(しゆじゆ)の事を話したのです、それで私は()()ふ事を拘引されて()るか知りませぬ、事件の事にふれたと()ふ様な事は一言(いちごん)もありませぬ、向ふからさう()ふ事に付て質問を受けた事実(じじつ)もないのです、(なほ)(その)自由な供述を(いた)しましたのは、高橋さんが()られぬやうになつて、小川(をがは)さんになつても何日(いつ)か続いた様に思ひます、だから何等(なんら)此事(このこと)件関係に付ては聞かれた事もなければ無論(むろん)()かれぬから()ひもしませず、(ただ)大本(おほもと)へどうして入信(にふしん)したか……。

裁判長 さう()ふ事に高木が()ふて()りますが()うです。

高木鉄男 場所は中立売でございました、五条ぢやありませぬ。

裁判長 大本(おほもと)根本(こんぽん)目的とか結社(けつしや)とかさう()根本(こんぽん)のことについては御(たづ)ねもなかつたと()()ふて()るがどうです。

 (あるひ)はに、三日の事は私も先に申しました通りだからして余り深い事をさう聞きませぬのだと思ひます、それはさつき申した様に思ひますが……。

高木鉄男 (だま)つてふん/\と聞いて()られました、だから何も先刻言はれたようなことは一遍もありませぬ、だから高橋さんから(なぐ)られもしなかつたのです、(また)殴る様な話もありませぬでした。

裁判長 だから高木の()ふ通りか、根本(こんぽん)問題(もんだい)に付て。

高木鉄男 其時(そのとき)には夫んな問題(もんだい)に付て何もありませぬ。

 国体(こくたい)変革と()ふ様な点に付ては何もいたしませぬでした。

裁判長 さうしますと王仁三郎(おにさぶらう)(この)証人に聞いて貰度いことがあれば……。

王仁三郎(おにさぶらう)  (この)証人の()ふ事を聞いて()りますと初めから全部(ぜんぶ)(うそ)でございます、そして一々(いちいち)申上(まをしあげ)げると暇が(ひま)要つて皆さんに御迷惑(ごめいわく)()けますけれ共此前(このまへ)に申しましたように全部(ぜんぶ)(うそ)御座(ござ)いまして(この)人の(おつ)しやることは……さうして一番後の問題(もんだい)地所(ぢしよ)のことも(この)人が私の印形を(にぎ)つて()つて渡さずに委任状も自分が原稿(げんかう)を書いて来て()の通り書けと()つて無理(むり)に書かされて、さうして押す時だけは私に持たして()れまして私が()しましたけれ共それを(また)引つたくつて自分のポケツトに()れてしまひました、(この)人の(おつ)しやることは皆(ちが)ひます、中村をいなしてやる私の家の留守が困つて()るから整理をする様に中村は会計(くわいけい)だからいなしてやると(おつ)しやつた、そんなら()()ふ物を売つたりするのは、スミに相談がなければいかぬから、スミと中村と三人一緒(いつしよ)にして()れと()つたら会はしてやるから押せと言はれて(だま)されてやつた、(この)人は(うそ)をつかはりました、さうして印形を()さしたのであります、私は何十(なんじふ)万円と()ふ金が(かか)つて()る地面です、私の名儀にはなつて()るけれ共全部(ぜんぶ)信者(しんじや)のものでありまして、私の自由にならぬので無理(むり)に脅迫的に印形を捺さしたのでございますから、私は其時(そのとき)はもう悲痛(ひつう)の極みでありまして泣くにも泣けぬでありましたりが(また)(めう)な顔をして()ると、どつかれるから、にこにこと笑ふ様な顔をして判を()したのであります、女房(にようばう)と中村が会つてに人が相談して綾部(あやべ)に帰つて中村家内(かない)はまだこつちに来て()ると思はなかつた、郷里(きやうり)()ると思つて(をつ)た中村が相談してさうして皆の信者(しんじや)に相談した結果(けつくわ)なら滅多(めつた)に売る気遣(きづか)ひはないと思つて()りましたけれ共念の()めに()しも売つたら困ると思つて手紙を出しました、すると中村は亀岡(かめをか)に帰つて()ない、帰らしてやると()つたから、帰つたと思つた、手紙を出したら(うそ)やつたのです、帰つて()らなんだ記念(きねん)館宛に出した……。

裁判長 此点(このてん)に就て。

王仁三郎(おにさぶらう) それから。

裁判長 ごちや/\になるから、お前の方から下書きを書いて()()ふ様に書けと書かして判を()して無理(むり)に書かれた。

王仁三郎(おにさぶらう) 私はよう書きまへぬ。

裁判長 中村をあつちへ帰してやると()ふ事を()つてさうして、あれした様なことはありますか、中村に手紙を王仁三郎(おにさぶらう)亀岡(かめをか)に出して()るぢやないか。

 中村に会はすと()つたことはありませぬ。

裁判長 中村に手紙を出して()るぢやないか。

 中村が何処(いづこ)()ると()ふ事に就て私は()ふて()りませぬから……。裁判長王仁三郎(おにさぶらう)の言ふ事も本当らしく思はれるが、現に亀岡(かめをか)に手紙を出して()るぢやありませぬか。

 それは被疑者が何所(どこ)()るかと()ふ事は一切(いつさい)申しませぬから……。

裁判長 いなしてやると()つたから判を()したのだと言つて()るが(これ)はどうだ。

 中村をいなしてやると()つたようなことはありませぬ。

王仁三郎(おにさぶらう)進み出て証人の顔を覗く)

裁判長 王仁三郎(おにさぶらう)

王仁三郎(おにさぶらう) ()んな顔して()ふかいな、残念で()られまへぬ。

以下(いか)略〕

大本(おほもと)教団(けうだん)所蔵)