うろーおにうろー
裁判記録(9)
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裁判記録
○天照大御神と天照皇大神の差違。
○ここでは、天照皇大神は《てんしやうかうたひじん》と読んで、《あまてらすすめおほかみ》とは読んでいない。
○ここは王仁三郎が混乱してわかりにくい個所です。
原文はカタカナ書き。カタカナはひらがなに改めた。
また、読点を適宜句読点に改め、なるべく短い段落となるように改行した。意味のまとまりごとに標題を付加した。
至聖殿の国霊石
午後
(
ごご
)
三時三十六分開廷
裁判長
王仁三郎
(
おにさぶらう
)、
此処
(
ここ
)
にね……
神様
(
かみさま
)
、
是
(
これ
)
は
一体
(
いつたい
)
なんです。
(石塊の紋付を着て
冠
(
かんむり
)
を
被
(
かぶ
)
れるを示す)
答
それはね、何か石ですか。私は知りまへぬのですがな。見たことがありまへぬ。
問
至聖
(
しせい
)
殿
(
でん
)
の奥に入つて
居
(
を
)
つたのですがね。
之
(
これ
)
にはな、曜の紋が付いて
居
(
を
)
る。出口家の紋が付いて
居
(
を
)
るよ。
答
石ですか
是
(
これ
)
は……ちよつと触らして下さい。
問
至聖
(
しせい
)
殿
(
でん
)
の中に入つて
居
(
を
)
つたのです、
之
(
これ
)
を御
祀
(
まつり)
して
居
(
を
)
つた訳かね。
答
木は
腐
(
くさる
)
る
惧
(
をそれ
)
がありまするから、石ならば腐らない。
それは
大本
(
おほもと
)
の
金竜海
(
きんりうかい
)
かどつかに上つた石です。
それで、
国霊
(
くにたま
)
にしたのです。
結局
(
けつきよく
)
それで、
此
(
こ
)
の石と寄せて頭にしたらしい。
此
(
こ
)
の石の上つたのを私は聞いて
居
(
を
)
ります。
問
紋付を着て
居
(
を
)
るね、
是
(
これ
)
は
至聖
(
しせい
)
殿
(
でん
)
の一番
貴重
(
きちよう
)
な所に……。
答
是
(
これ
)
は池の底から出たのです。
綾部
(
あやべ
)
の池から出たから、
丹波
(
たんば
)
の
国霊
(
くにたま
)
の神として
祀
(
まつ
)
つて
居
(
を
)
つたのです。
問
是
(
これ
)
は
至聖
(
しせい
)
殿
(
でん
)
の奥にあつたから、
是
(
これ
)
は一番尊い
神様
(
かみさま
)
ぢやないのか。
答
違
(
ちが
)
ひます。
是
(
これ
)
は
至聖
(
しせい
)
殿
(
でん
)
を
守護
(
しゆご
)
して
居
(
を
)
る神です。
問
ミロク
大祭
(
たいさい
)
も
此
(
こ
)
の前でやつた位だらう、
此
(
こ
)
の
神様
(
かみさま
)
の前であつたのだらう。
答
それはあつたのですけれども、こんなものを
祀
(
まつ
)
つたら悪いのですか。
私悪いと思ひまへぬがね。
問
いや悪いとか……。
答
此
(
こ
)
の石が出たと
云
(
い
)
ふことは知つて
居
(
を
)
りましても、誰かが
祀
(
まつ
)
つて
呉
(
く
)
れたのです。
問
国霊
(
くにたま
)
ですね。
答
さうです。
天照皇大神と天照大御神
問
此処
(
ここ
)
で一つ
訊
(
き
)
きますがね、
此
(
こ
)
の
天照皇大神
(
あまてらすめおほかみ
)
と
云
(
い
)
ふ
神様
(
かみさま
)
は
如何
(
いか
)
なる
神格
(
しんかく
)
、
及
(
およ
)
び、
神業
(
しんげう
)
を
為
(
な
)
さるヽ
神様
(
かみさま
)
ですか。
答
それは、
我
(
わが
)
が
皇室
(
くわうしつ
)
の
御先祖
(
ごせんぞ
)
様であつて、宇宙を総統してござる
神様
(
かみさま
)
で、宇宙の
主宰
(
しゆさい
)
神です。
詰
(
つま
)
り
天之御中主神
(
あめのみなかぬし
)
が言ふやうに霊です。そして、霊の力が
高御産霊
(
たかみむすび
)
と
云
(
い
)
ふ一つの
体
(
たひ
)
で、
霊力
(
れいりよく
)
と
体力
(
たいりよく
)
とを、
即
(
すなは
)
ち、
信仰
(
しんかう
)
と
云
(
い
)
ふのです。
高御産霊
(
たかみむすび
)
と
神産霊
(
かみむすび
)
との霊が寄つて、それが御
完成
(
くわんせい
)
して
顕現
(
けんげん
)
されたのが天照皇大神であります。それが
所謂
(
いはゆる
)
世界の
神様
(
かみさま
)
であります。
問
能く判りました。
さうすると、
天之御中主命
(
あめのみなかぬしのみこと
)
が
顕現
(
けんげん
)
されたものが天照皇大神と……さう
云
(
い
)
ふ訳ですな。
答
それはどつかに書いてあると存じます。
問
判りました。
答
我
(
わが
)
が
皇室
(
くわうしつ
)
はそれの御
延長
(
えんちやう
)
ですからそれで世界を
統一
(
とういつ
)
為
(
な
)
さる
資格
(
しかく
)
がある上言ふのです、さう言ふことを
神道
(
しんだう
)
家は言ふのです、
我々
(
われわれ
)
も教はつて
居
(
を
)
る──。
問
天照大御神
(
あまてらすおほみかみ
)
と天照皇大神とは、
御神格
(
ごしんかく
)
並に
御神業
(
ごしんげふ
)
に
於
(
おい
)
て
差異
(
さゐ
)
ありますか。
答
あります。
問
天照大御神
(
あまてらすおほみかみ
)
と天照皇大神と……。
答
天照大御神
(
あまてらすおほみかみ
)
と天照皇大神とは同じ方ではあります。同じ
神様
(
かみさま
)
でありますが、
此
(
こ
)
の間申しましたやうに、あの
天照
(
あまてらす
)
皇
(
すめ
)
大神様
(
おほかみさま
)
は、
譬
(
たと
)
へて言ひますならば内閣総理大臣、ああ天皇陛下に
譬
(
たと
)
へると恐多いから内閣総理大臣を出しますが、内閣総理大臣公爵伊藤博文と言ふのと、それから公爵伊藤博文と言ふだけ位違ふのです。責任がそれだけ違ふのです。
同じ方でも……公爵伊藤博文でも
国家
(
こくか
)
の
為
(
ため
)
に
尽
(
つく
)
して
居
(
を
)
りますから、
普通
(
ふつう
)
の人とは思ひませぬから、
国家
(
こくか
)
の
為
(
ため
)
に
尽
(
つく
)
して
居
(
を
)
る人やと
云
(
い
)
ふことが判ります。
詰
(
つま
)
りそれ位違ふと言ふのです。
それで、御
伊勢
(
いせ
)
様には
天子様
(
てんしさま
)
の御
宗廟
(
そうびやう
)
として
祀
(
まつ
)
つて
居
(
を
)
るから天照皇大神、延喜式の
祝詞
(
のりと
)
にもさう書いてある。
天津
(
あまつ
)
神社
(
じんじや
)
でも北京
神社
(
じんじや
)
でも皆
天照大御神
(
あまてらすおほみかみ
)
様が
祀
(
まつ
)
つてある。
是
(
これ
)
は
新聞
(
しんぶん
)
で
御覧
(
ごらん
)
になつたと思ひますが同じ神でちよつと……。
問
此
(
こ
)
の
大本
(
おほもと
)
に
於
(
おい
)
ては
天照大御神
(
あまてらすおほみかみ
)
は
天界
(
てんかい
)
に
於
(
お
)
ける
主宰
(
しゆさい
)
神と……。
答
其
(
そ
)
の時に……昔、さうであつたのです。
問
主宰
(
しゆさい
)
神と説いて
居
(
を
)
るのぢやないですか。
答
それは
古事記
(
こじき
)
にありまして、
伊邪那岐
(
いざなぎ
)
尊の
御神勅
(
ごしんちよく
)
が
其
(
そ
)
の時にさうなつて
居
(
を
)
つたと
云
(
い
)
ふ……。
それで、
是
(
これ
)
は
神代
(
じんだひ
)
史を説く上に
於
(
おい
)
て
其
(
そ
)
の時のことを説いたのでありまして、
今日
(
こんにち
)
はさうぢやありませぬ。
今日
(
こんにち
)
はさうぢやない。
其
(
そ
)
の時の
或
(
あ
)
る
神代
(
じんだひ
)
史の
評論
(
ひやうろん
)
を書いたのです。
其
(
そ
)
の時には、
天照大御神
(
あまてらすおほみかみ
)
は
高天原
(
たかあまはら
)
、
素盞鳴
(
すさのおを
)
命が
大海原
(
おほうなばら
)
。
併
(
しか
)
し、
素盞鳴
(
すさのおを
)
命が力がなくて
悪神
(
あくがみ
)
が出てしようがない、泣いてばかり
居
(
を
)
りました。
さうして、
天照大御神
(
あまてらすおほみかみ
)
が心配されて、「お前は
此処
(
ここ
)
に
居
(
を
)
る
資格
(
しかく
)
がないから、母の
居
(
を
)
る
黄泉
(
よみ
)
の国に行け」と
仰
(
おつ
)
しやつた。
問
それはあとから
訊
(
き
)
きますがね。
天照大御神
(
あまてらすおほみかみ
)
は、さうすると、
天界
(
てんかい
)
のみの
主宰
(
しゆさい
)
神と
云
(
い
)
ふことは、今はさうぢやないと
云
(
い
)
ふことか。
答
今はさうぢやないと
云
(
い
)
ふことです。
古事記
(
こじき
)
の
説明
(
せつめい
)
の時はさうだつたのです。
今日
(
こんにち
)
は、現に、
天津
(
あまつ
)
神社
(
じんじや
)
にも行つて
居
(
を
)
らしやるでせう。
奉天
(
ほうてん
)
に
祀
(
まつ
)
つてありまつしやらう。
問
今はさうぢやないと、今は
地上
(
ちじやう
)
も
主宰
(
しゆさい
)
して
居
(
を
)
ると、
斯
(
か
)
う言ふのだな。
答
其
(
そ
)
の時の
古事記
(
こじき
)
の
神勅
(
しんちよく
)
の段の
説明
(
せつめい
)
をした時にはさうやつたのです。けれども、
今日
(
こんにち
)
はもう変つて
居
(
を
)
ります。
問
さうすると
天照大御神
(
あまてらすおほみかみ
)
と
皇大神
(
すめおほかみ
)
とはどう
云
(
い
)
ふ風に違ふのか。
答
それはなぜ違ふかと
云
(
い
)
ふと、天皇陛下が直接に御参りになる。宮様が
宮司
(
ぐうじ
)
になつて
居
(
を
)
らはつしやり、皇族様が……御
伊勢
(
いせ
)
様はそれだけ
資格
(
しかく
)
が上なんです。天照皇大神様はー外の
神様
(
かみさま
)
は
官幣
(
くわんぺい
)
大社
(
たいしや
)
でも、
中社
(
ちうしや
)
でも、
天照
(
あまてらす
)
大御神
(
おほみかみ
)
様が
祀
(
まつ
)
つてある。御
伊勢
(
いせ
)
様だけが皇大神として
祀
(
まつ
)
つてある。
それで、
矢張
(
やつぱ
)
り、
伊勢
(
いせ
)
神宮となると
違
(
ちが
)
ひます。
刑法
(
けいほふ
)
でも
伊勢
(
いせ
)
神宮は……それから外の
神社
(
じんじや
)
と比べて不敬なことでもあればな、
刑法
(
けいほふ
)
の罪にしても重くなつて
居
(
を
)
ります。
伊勢
(
いせ
)
は別に罪が重うなります。
それだけ、
矢張
(
やつぱ
)
り尊重されて
居
(
を
)
る。
それから、
何
(
いづれ
)
も
斯
(
か
)
うなる。熱田の宮もさうなる。御
伊勢
(
いせ
)
様と同じ扱ひに
今度
(
こんど
)
なつたのです。
問
ああ、あなたの主張は判りましたがね。天照皇大神と
云
(
い
)
ふのは
天之御中主命
(
あめのみなかぬしのみこと
)
の
極徳
(
きよくとく
)
の
発揮
(
はつき
)
された神であつて、
天照大御神
(
あまてらすおほみかみ
)
様が
天界
(
てんかい
)
のみの
主宰
(
しゆさい
)
神として、
神格
(
しんかく
)
、
神業
(
しんげう
)
に
於
(
おい
)
て
大変
(
たいへん
)
な差があると
云
(
い
)
ふことを……。
答
それは前に、
一遍
(
いつぺん
)
評論
(
ひやうろん
)
として、
言霊学
(
げんれいがく
)
の
見地
(
けんち
)
から説いたのです。
伊勢
(
いせ
)
に
祀
(
まつ
)
つてあるのと
外
(
ほか
)
のとは違ふと
云
(
い
)
ふ意味で、
言霊学
(
げんれいがく
)
で説いた。
是
(
これ
)
は
言霊学
(
げんれいがく
)
の
見地
(
けんち
)
から説いたので、
今日
(
こんにち
)
それを
大本
(
おほもと
)
の
教義
(
けうぎ
)
として
居
(
を
)
るのではありませぬ。
是
(
これ
)
は
言霊学
(
げんれいがく
)
上から見た所の
天照大御神
(
あまてらすおほみかみ
)
様の
皇
(
ヽ
)
と
云
(
い
)
ふ字が入つて
居
(
を
)
るだけで違ふのです。
同じ方でも、
詰
(
つま
)
り、公爵伊藤博文に総理大臣と
云
(
い
)
ふのが入つて
居
(
を
)
るのと同じなんです。
皇
(
ヽ
)
と
云
(
い
)
ふことは、
統
(
す
)
べると
云
(
い
)
ふことです。
霊界物語の四十七巻の天照皇大神と天照大御神
問
此処
(
ここ
)
で
霊界物語
(
れいかいものがたり
)
の四十七巻に
斯
(
か
)
う
云
(
い
)
ふことが書いてあるが、
「
大国常立尊
(
おほくにとこたちのみこと
)
の
御神徳
(
ごしんとく
)
の完全に
発揮
(
はつき
)
されたのが天照皇大神と
称
(
たた
)
へ
奉
(
まつ
)
るのであります」
答
それも同じことです。
問
一番
終
(
しま
)
ひに、「天照皇大神と
天照大御神
(
あまてらすおほみかみ
)
様とは、
其
(
そ
)
の
位置
(
ゐち
)
に
於
(
おい
)
て、
神格
(
しんかく
)
に
於
(
おい
)
て、
諸種
(
しよしゆ
)
の
神業
(
しんげう
)
に
於
(
おい
)
て、
大変
(
たいへん
)
な
差異
(
さゐ
)
差等があることを考へねばなりませぬ」と
云
(
い
)
ふことを書いて
居
(
を
)
りますが。
答
それはさうです、
此
(
こ
)
の間申した通り──。
問
天照大御神
(
あまてらすおほみかみ
)
様
以上
(
いじやう
)
に皇
大神様
(
おほかみさま
)
は上に来とるやうに……。
答
さうです、上なんです、それは上なんです。
それから、
大国常立尊
(
おほくにとこたちのみこと
)
はんは、
又
(
また
)
の
御名
(
みな
)
は
天之御中主命
(
あめのみなかぬしのみこと
)
と書いてあるのであります、
大国常立尊
(
おほくにとこたちのみこと
)
と
天之御中主命
(
あめのみなかぬしのみこと
)
とは同じものなんです。日本書紀の方には
国常立尊
(
くにとこたちのみこと
)
、
又
(
また
)
は
天之御中主命
(
あめのみなかぬしのみこと
)
と書いて
居
(
を
)
る。
問
さうすると、
王仁三郎
(
おにさぶらう
)
は家に御
祀
(
まつ
)
りして
居
(
を
)
る
神様
(
かみさま
)
はどう
云
(
い
)
ふ
神様
(
かみさま
)
と
称
(
しよう
)
するのか、言ふのか。
答
それは、天照皇大神様……。
問
天照大御神
(
あまてらすおほみかみ
)
様ぢやないのか。
答
皇大神です、外にありますのが
天照大御神
(
あまてらすおほみかみ
)
。
問
併
(
しか
)
しながら皇大神と
云
(
い
)
ふのは
大本
(
おほもと
)
に
於
(
おい
)
てのみさう言うて
居
(
を
)
るのだと主張するのだな。
答
いや、さうぢやありまへぬ
大本
(
おほもと
)
皇大神
(
すめおほかみ
)
が……。
問
名前はどうでも
宜
(
よ
)
いがね。
それで、御
伊勢
(
いせ
)
さんは天照皇大神、
大本
(
おほもと
)
で
称
(
しよう
)
して
居
(
を
)
るのは
大本
(
おほもと
)
皇大神
(
すめおほかみ
)
。天照皇大神は
大本
(
おほもと
)
ばかりぢやない、世界
全部
(
ぜんぶ
)
です、先の答は……。
答
それは、私が
一緒
(
いつしよ
)
くたにしてしまつたのです。
それは御判りになつとると思つて
居
(
を
)
つたのです。
合点
(
がつてん
)
して
居
(
を
)
つたのです。
問
大本
(
おほもと
)
皇大神
(
すめおほかみ
)
は天照皇大神と
繰返
(
くりかへ
)
して
居
(
を
)
りますがね。
答
さう御
訊
(
き
)
きになつたのを、私がそれを
誤解
(
ごかい
)
したのです。
天照皇大神様は
大本
(
おほもと
)
の、みぢやない、日本
全国
(
ぜんこく
)
に
於
(
おい
)
て
称
(
たた
)
へて
居
(
を
)
る。
大本
(
おほもと
)
皇大神
(
すめおほかみ
)
が
大本
(
おほもと
)
信者
(
しんじや
)
が
称
(
たた
)
へて
居
(
を
)
る
神様
(
かみさま
)
です。
問
それ
以外
(
いぐわい
)
の
神様
(
かみさま
)
は、
大本
(
おほもと
)
皇大神
(
すめおほかみ
)
と
称
(
たた
)
へてやつて
居
(
を
)
るのだと
斯
(
か
)
う
云
(
い
)
ふのだな。
答
さうです。
国常立尊退隠及再現、豊雲野尊の退隠及再現
問
其
(
そ
)
の次は
大本
(
おほもと
)
に
於
(
おい
)
ては
立替立直
(
たてかへたてなほし
)
、ミロク
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
を必要とする理由。
即
(
すなは
)
ち、
大本
(
おほもと
)
の
根本
(
こんぽん
)
理論として
国常立尊
(
くにとこたちのみこと
)
の
退隠
(
たゐゐん
)
、
及
(
およ
)
び再現、並に、
豊雲野尊
(
とよくもぬのみこと
)
の
退隠
(
たゐゐん
)
再現のことを説いて
居
(
を
)
るのではありませぬか。
答
それも説いて
居
(
を
)
りませう。説いて
居
(
を
)
りましやろ。
問
まつしやろぢや困る。
答
どこにあると
訊
(
き
)
いて
貰
(
もら
)
ふても判らぬのです。どこの方にあると
云
(
い
)
ふことを
訊
(
き
)
かれても、私は覚えて
居
(
を
)
りまへぬ。
今日
(
こんにち
)
は
国常立尊
(
くにとこたちのみこと
)
は
霊界
(
れいかい
)
ですつかり現はれて
活動
(
くわつどう
)
をやつて
居
(
を
)
るのです。
問
其
(
そ
)
の次、
此
(
こ
)
の
国常立尊
(
くにとこたちのみこと
)
の
退隠
(
たゐゐん
)
及
(
およ
)
び再現の理論はだね。
答
はあ。
問
天之巻
(
てんのまき
)
、
火之巻
(
ひのまき
)
の
各所
(
かくしよ
)
にも
断片
(
だんぺん
)
的に記載してあるが、
教祖
(
けうそ
)
の
筆先
(
ふでさき
)
と
云
(
い
)
ふものは……
教祖
(
けうそ
)
の
筆先
(
ふでさき
)
以外
(
いぐわい
)
のものであつて
纏
(
まとま
)
つて
掲載
(
けいさい
)
してある所の
大正
(
たいしやう
)
七年の二月
神霊界
(
しんれいかい
)
、「
太古
(
たいこ
)
の神の
因縁
(
いんねん
)
」
霊界物語
(
れいかいものがたり
)
の……判るでせう、
霊界物語
(
れいかいものがたり
)
の一篇の「
国祖
(
こくそ
)
御隠退
(
ごいんたい
)
の御
因縁
(
いんねん
)
」
霊界物語
(
れいかいものがたり
)
四十七篇総則。
是等
(
これら
)
の、今言うたやうなものに、
此
(
こ
)
の
国常立尊
(
くにとこたちのみこと
)
の
退隠
(
たゐゐん
)
再現のことが説かれて
居
(
を
)
るのですか。
答
それは言つてあると思ひます。
問
こつちの言ふたことが判つたかね。
答
ちよつと頭がぐら/\して判らぬ。
問
国常立尊
(
くにとこたちのみこと
)
の
退隠
(
たゐゐん
)
再現の理論です。
答
それは判りました。
問
段々
(
だんだん
)
訊
(
き
)
きますが、
天之巻
(
てんのまき
)
にも
火之巻
(
ひのまき
)
にも
断片
(
だんぺん
)
的には書いて
居
(
を
)
りますがね。
纏
(
まとま
)
つて書いたものとしては、「
霊界
(
れいかい
)
の情勢」、それから「
国祖
(
こくそ
)
御隠退
(
ごいんたい
)
の御
因縁
(
いんねん
)
」、「
盤古大神
(
ばんこだいじん
)
塩長彦命」、
霊界物語
(
れいかいものがたり
)
の総説、
此処
(
ここ
)
の中に書いてあるのですね。
さうですか。
答
さうと思ひます。
教祖
(
けうそ
)
が書いたのはちよこ/\
断片
(
だんぺん
)
的に書いてあります。
私は、
此
(
こ
)
の間申したやうに、どんな文献を見ても判りまへぬ。
艮
(
うしとら
)
の
金神
(
こんじん
)
、
坤
(
ひつじさる
)
の
金神
(
こんじん
)
、さうして、
是
(
これ
)
は
神様
(
かみさま
)
のことで……私が
修養
(
しうやう
)
の
結果
(
けつくわ
)
神様
(
かみさま
)
に
書
(
かか
)
して
貰
(
もら
)
うて、
此
(
こ
)
の「太古の神の
因縁
(
いんねん
)
」とか
云
(
い
)
ふことを、
神様
(
かみさま
)
に知らして
貰
(
もら
)
うて書いた。
是
(
これ
)
は、直の書いた
断片
(
だんぺん
)
的のことは、私の頭にヒントを得て
居
(
を
)
つたかも知れぬが、
併
(
しか
)
しあれでも判りまへぬから、
神様
(
かみさま
)
に
御願
(
おねがひ
)
をして、さうして
神様
(
かみさま
)
に
之
(
これ
)
を知らして
貰
(
もら
)
ふことになつた。
問
「太古の神の
因縁
(
いんねん
)
」とか
霊界物語
(
れいかいものがたり
)
……。
答
書物
(
しよもつ
)
にないのです。外に
書物
(
しよもつ
)
の参考にすべきものがないのです。
問
此
(
こ
)
の
天之巻
(
てんのまき
)
、
火之巻
(
ひのまき
)
に書いてあるがね。
答
いや太古の
因縁
(
いんねん
)
とか
云
(
い
)
ふことが外の文献にはないのです。それでさう
云
(
い
)
ふことを……。
問
それぢや書いてあることは読まぬでも
宜
(
よろ
)
しいか。
答
なんですか今の所は。
問
霊界
(
れいかい
)
の情勢とかそんなことは読まぬでも判つて
居
(
を
)
ると思ひますがね。
答
此
(
こ
)
の間予審で厭程読んで聴かされましたわ。
問
是
(
これ
)
は四十七篇の総則、判るだらう。
(書類を示す)
答
はあ。
問
盤古大神
(
ばんこだいじん
)
。
答
予審ですつかり読んで目の中に入つて
居
(
を
)
る。
問
自分で書いたものだからか。
答
自分はしやべつただけで読んだことはありませぬ。
印刷は予審で初めて見た位です。割とは
上手
(
じやうづ
)
に書いてあるな。わしが書いて
居
(
を
)
るのぢやないから。
神様
(
かみさま
)
の御力で書かれて
居
(
を
)
るものと思ひましたけれども、割とは細かいことが書いてあると
云
(
い
)
ふことが判りました。
問
見せて
貰
(
もら
)
はぬでも
宜
(
よ
)
いか。
答
判つて
居
(
を
)
りますから。
暇が
(
ひま
)
要つて
敵
(
かな
)
ひまへぬ。
問
是
(
これ
)
は私も読んで見たのだが、
其
(
そ
)
の
大本
(
おほもと
)
の
国常立尊
(
くにとこたちのみこと
)
の
退隠
(
たゐゐん
)
再現の
根本
(
こんぽん
)
理論として説く所の要旨と
云
(
い
)
ふものは、
此
(
こ
)
の予審終結
決定
(
けつてい
)
の
大本
(
おほもと
)
教義
(
けうぎ
)
(1)と書いてある所になりやせぬかね。
答
大本
(
おほもと
)
教義
(
けうぎ
)
の要旨と
云
(
い
)
ふのはどう
云
(
い
)
ふ訳ですか。
問
要旨と
云
(
い
)
ふのは、書いてある
趣旨
(
しゆし
)
は
之
(
これ
)
を能く読んで見ると
国常立尊
(
くにとこたちのみこと
)
の隠退再現の理論と
云
(
い
)
ふものが
此処
(
ここ
)
に書いてあるね。
決定
(
けつてい
)
の(1)として書いてあることになりはせぬかと
云
(
い
)
ふのだね。
答
決定
(
けつてい
)
の(1)にどう
云
(
い
)
ふことが書いてあるのですか。どんなことが書いてあるのですか。予審
決定
(
けつてい
)
は読んで
居
(
を
)
りませぬ。
問
大分
(
だいぶん
)
国常立尊
(
くにとこたちのみこと
)
の隠退再現のことが書いてあるのです、
斯
(
か
)
くなりはせぬかと
云
(
い
)
ふのです。
答
其
(
それ
)
がどうと
仰
(
おつ
)
しやるのですか。
問
(1)と書いてあるでせう、三枚目の中頃──
此処
(
ここ
)
に
色々
(
いろいろ
)
なことが書いてありませう。
同じやうに、
之
(
これ
)
に書いてある所を
能
(
よ
)
く読んで見るとぢやね、
此
(
こ
)
の
教義
(
けうぎ
)
として説いて
居
(
を
)
る所は、
決定
(
けつてい
)
(1)のやうなことになりはせぬかと
云
(
い
)
ふのです。
まあ、
是
(
これ
)
は準備
手続
(
てつづき
)
の時に、「
霊界
(
れいかい
)
のことである、
盤古大神
(
ばんこだいじん
)
即
(
すなは
)
ち
瓊々杵尊
(
ににぎのみこと
)
は否認する。
即
(
すなは
)
ち、
或
(
あるひ
)
は、
王仁三郎
(
おにさぶらう
)
が日本の統治者になることは否認する。それ
以外
(
いぐわい
)
のことは
其
(
そ
)
の通り」だと……。
答
違
(
ちが
)
ひを言へと
仰
(
おつ
)
しやるのですか。
問
違ふことは違ふと言つて
貰
(
もら
)
ひたい。
答
是
(
これ
)
は
神様
(
かみさま
)
が言はれたのです。
是
(
これ
)
は善いとか悪いとか言ふ権利はありませぬ。
是
(
これ
)
は
神様
(
かみさま
)
が書いた説ですから私は
是
(
これ
)
は違ふとか違はぬとか
云
(
い
)
ふやうなことはないと思ひます。
清瀬弁護人
被告に
注意
(
ちうい
)
したいのですが、ちよつと出口さん、
此
(
こ
)
の先刻来
聴
(
き
)
いて
居
(
を
)
りますとですね、あなたが興奮せられて御答を御急ぎになる
結果
(
けつくわ
)
、裁判長の話が、
又
(
また
)
余程
(
よほど
)
、それでですな、同じことを
繰返
(
くりかへ
)
すことになるから、
能
(
よ
)
く
落着
(
おちつ
)
いて、
明日
(
あす
)
もあることですから、裁判長の問のすつかり済んでから御答へ願ひたい。
それからして、今、あなたが
御覧
(
ごらん
)
になつたものは
神様
(
かみさま
)
が書いたことぢやない、予審判事が書いたものですから……。
答
さうですか。
清瀬弁護人
非常
(
ひじやう
)
に大切なことだから、ちよつと時間を拝借してゆつくり目を通して
御答
(
をこた
)
へなさい。
答
さうすると
是
(
これ
)
はなんですか……。
清瀬弁護人
それから「
天之御中主命
(
あめのみなかぬしのみこと
)
……」より
其
(
そ
)
の次の「
伊邪那岐
(
いざなぎ
)
尊の
神勅
(
しんちよく
)
に
依
(
よ
)
り」
迄
(
まで
)
ですね、
其処
(
そこ
)
迄ちよつと二枚ばかりありますから……それをあなた
一遍
(
いつぺん
)
も読まぬと
仰
(
おつ
)
しやるから、読んですつかり眼を通して……私はあなたの
仰
(
おつ
)
しやる所はピントが合はぬやうに思ひますから──それは
神様
(
かみさま
)
が
仰
(
お
)
つしやつたことではないのですよ。
高山弁護人
時間がなんですから、
此
(
こ
)
の次にしたら
如何
(
いか
)
ですか。
答
一つ/\言ふてもなんですから、ミロク
菩薩
(
ぼさつ
)
と
云
(
い
)
ふのは、ミロク
菩薩
(
ぼさつ
)
は
是
(
これ
)
は
違
(
ちが
)
ひますわ。
是
(
これ
)
は
宣伝使
(
せんでんし
)
と
云
(
い
)
ふやうなもので、ミロクの
神様
(
かみさま
)
は
是
(
これ
)
は
天之御中主命
(
あめのみなかぬしのみこと
)
ですけれども……。
問
大分
(
だいぶん
)
疲
(
つか
)
れたでせう。
今日
(
けふ
)
は
是
(
これ
)
だけにしませうか。
答
どうも頭がくしや/\として
居
(
を
)
る。
問
今日
(
けふ
)
は
是
(
これ
)
だけにしませう。
宜
(
よ
)
いか、
其
(
そ
)
の
決定
(
けつてい
)
は準備
手続
(
てつづき
)
で一時間も……。
答
さうですか、こんな無茶なことを……私
是
(
これ
)
は初めてだと思ひます。
大分
(
だいぶん
)
今朝から喋つて
居
(
を
)
りましたから、頭が悪うなつて……。
問
では、
今日
(
けふ
)
は
是
(
これ
)
だけにしませう。
清瀬弁護人 ちよつと
御待
(
おま
)
ち下さい。
明日
(
あす
)
はそれを読んで来てゆつくり御答へ願ひたい。
問
此
(
こ
)
の前の準備の時は……。
答
読むとムツとして来るので、
堪
(
たま
)
らぬので読まなんだ。
清瀬弁護人
腹が立つた位は
抑
(
おさへ
)
へてしつかりやらぬといけませぬよ。
問
まあ、
今日
(
けふ
)
は
是
(
これ
)
だけにして置きます。
それから、ちよつと
御相談
(
ごさうだん
)
ですが、明日はですね、八時半頃から開きたいと思ひますが
如何
(
いかが
)
ですか。
前田弁護人
暑い
折柄
(
をりから
)
ですから、
午後
(
ごご
)
になつて来ると
相当
(
さうたう
)
に
草臥
(
くたび
)
れるのですな。
それで、朝八時半頃から開いて
戴
(
いただ
)
きたいのです。
裁判長
さうすれば、正八時半とします。駈引はありませぬよ。では、八時半から──
今日
(
けふ
)
は
是
(
これ
)
だけにして置きます。
今の点は
能
(
よ
)
く考へて置いて下さい。
午後四時七分閉廷
前
次