うろーおにうろー

裁判記録(7)

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裁判記録

○ミロク神政の定義
○浅野正恭なんかは、六、六、六を三つ合せてミロクと言つて居る。
○予言の本に出てくる、海底に電信局ができるという場面がある。

原文はカタカナ書き。カタカナはひらがなに改めた。
また、読点を適宜句読点に改め、なるべく短い段落となるように改行した。意味のまとまりごとに標題を付加した。

思想 ミロク神政の成就

 午後(ごご)二時三十分開廷

裁判長 それぢや王仁三郎(おにさぶらう)引続(ひきつづ)いて(たづ)ねるが、腰を()けて()いて()つて(よろ)しい。

 大本(おほもと)所謂(いはゆる)ミロク神政(しんせい)成就(じやうじゆ)と云ふことは如何(いか)なることを──言ふのですか。

 それは、神様(かみさま)の教が愈々(いよいよ)公然と天下(てんか)に布教出来(でき)るやうになることをミロク神政(しんせい)成就(じやうじゆ)と言ふたのです。

 さうして(また)一方には……。

 ちよつと……神様(かみさま)の教が何だ。

 神様(かみさま)の教が公然と許されるやうになつた(あかつき)がミロク神政(しんせい)成就(じやうじゆ)したことになる。

 それで私の(つま)り……。

 もう少し敷衍(ふゑん)して──ちよつとまだ解り難い。神様(かみさま)の教が──。

 (つま)(これ)神と云ふものは愛の神様(かみさま)です。

 ミロクと云ふことは浅野正恭なんかは、六、六、六を三つ合せてミロクと言つて居りますけれども、ミロクと云ふことは、印度(いんど)ではマイトレーヤと()ひ、蒙古(もうこ)ではアイダリプロハラ、支那(しな)では弥勒(みろく)()ひ、(つま)りミロクと云ふことは愛、神は愛なり、仁愛(みろく)と云ふことをミロクと訳した。

 ()神様(かみさま)の教が天下(てんか)に拡まつて来たら、所謂(いはゆる)日本の神様(かみさま)の教が拡まつて来たら、私は日本の神様(かみさま)の教を()つて、総て宗教界も云々(うんぬん)と云ふやうに言つて居りますけれども、本当は日本の総ての天津神(あまつかみ)八百万(やほよろづ)神様(かみさま)は皆愛の神様(かみさま)です。


 仏法(ぶつぽふ)で言ふと、皆総ての神様(かみさま)観音様(くわんのんさま)と言つて()る所もありますし、弥勒(みろく)さんと言うて()(ごと)くに、こちらではミロクの神と云ふことを一方では八百万(やほよろづ)の神を一緒(いつしよ)にして大本(おほもと)(すめ)大神(おほかみ)(しよう)して()る。それでそれがミロクさんです。

 ミロクさんと云ふのは愛の神さん、特定(とくてい)の神ぢやありませぬ。

 ミロクの世となると人も全部(ぜんぶ)がミロクになると云ふのが、(これ)が愛の世の中です。愛の教が立つて行くのがミロク神政(しんせい)成就(じやうじゆ)で、それで(これ)が公然と……。

 愛の神様(かみさま)の教が立つて行くことを言ふのか。

 (みな)がそれを信ずるやうになつて、始めてミロクの世が完成(くわんせい)したのだ。

 世界一般の人が教を信ずるやうになつて来てミロクの世が樹立(じゆりつ)したことになるのです。

 現界(げんかい)のことか、霊界(れいかい)のことか。

 それは精神界(せひしんかい)のことですとも、教の方ですから──。

 みろく神政(しんせい)成就(じやうじゆ)()ふことは精神界(せひしんかい)のことを言ふのですか。

 宗教界のことを……。

 現界(げんかい)のことは関係せずにか。

 現界(げんかい)のことは何も関係がありませぬ。

 (もと)より、弥勒(みろく)()ふ名がある程だから、現界(げんかい)の人ぢやありませぬ。

 そこで、ちよつと矛盾(むじゆん)を来すのだが、準備手続(てつづき)()ける被告人の答へた時は、()()ふことになつて()つたがねー。

 「みろく神政(しんせい)成就(じやうじゆ)()ふのは、天界(てんかい)(おい)ては日本の神が世界を統一(とういつ)すること。現界(げんかい)(おい)ては日本の天皇陛下が世界を統一(とういつ)し給ふことを言ふのだ」と言ふて()るが……。

 それもさうです。総てのことにミロクが掛かつて()るのだから──。

 現界(げんかい)のことを言ふのか。

 現界(げんかい)のことやなしに、総て精神的(せひしんてき)のことが本です。

 さうぼかしては困る。

 日本の天皇陛下の御稜威(みいづ)各国(かくこく)の人に行亘(ゆきわた)り、精神的(せひしんてき)行亘(ゆきわた)つたのがミロクの世であり、(てん)神様(かみさま)が総てを統一(とういつ)されたのがミロク神政(しんせい)成就(じやうじゆ)です──()()ふ意味です。

 現界(げんかい)のことを言ふのか、先づ第一にそれを(たづ)ねます。

 現界(げんかい)のことは言はない。

 ()の前の準備手続(てつづき)に言うて()るぢやないか。

 現界(げんかい)で言へば、天皇陛下が統一(とういつ)されることであり、霊界(れいかい)で言へば霊界(れいかい)神様(かみさま)が──日本の神様(かみさま)統一(とういつ)されることである。

 それで今支那(しな)戦争(せんさう)でもロシアとやりかけて()ることでも、(これ)は皆世界統一(とういつ)のミロク神政(しんせい)成就(じやうじゆ)の橋()けなんです。初まりなんです。

 私はさう信じて()る。

 一番……それぢや、一番初めの答は霊界(れいかい)のことを言うのだね。現界(げんかい)で言へば、日本の天皇陛下が世界を統一(とういつ)し給ふことを言ふのだと()ふことは、(たとへ)だな。

 (しか)し、(おも)ふに、中心点(ちうしんてん)仁愛(みろく)の神──霊界(れいかい)の神の教が行はれることになるのがミロク神政(しんせい)成就(じやうじゆ)と言ふのだな。

 (これ)言葉(ことば)を換へて言へば、()うなると言ふのだね。

 日本の天皇陛下は仁愛(みろく)の方です。

 総て今度(こんど)戦争(せんさう)仁愛(みろく)から起つて()る。

 (つか)れて頭がごてくしてしまつて、頭が判らなくなつちやつた。腹下りをして()るものですから、さつぱり頭がわやになつてしまうて(と水を飲む)……あのね、矢張(やつぱ)り公認教になることもミロク神政(しんせい)成就(じやうじゆ)なんです。

 一つの階段だね。

 はい、大きくあつても小さくあつても皆ミロク神政(しんせい)です。

 五十六億七千万年後でなければミロク様は出ないのだ。

 それを待望して()るのですから。

 実際問題(もんだい)として、公認教となることも矢張(やつぱ)りミロク神政(しんせい)成就(じやうじゆ)……。

 ミロクの教をするのですから、ミロクの神政(しんせい)をなさるのですから、国土(こくど)成就(じやうじゆ)()ふやうなちよつとしたことでも成就(じやうじゆ)で、大きなことでも成就(じやうじゆ)大本(おほもと)が公認教になるのもミロク神政(しんせい)成就(じやうじゆ)。愛の神様(かみさま)の教が成就(じやうじゆ)した……(これ)(ただ)大本(おほもと)だけの成就(じやうじゆ)ですけれども。

 大本(おほもと)だけのミロク神政(しんせい)成就(じやうじゆ)だね。

 世界が成就(じやうじゆ)になるのはまだ/\です。

 もつと大きな所に眼を着けて()るのだらう。

 小さく大本(おほもと)だけに付て言へば……。

 所が()決定(けつてい)の──予審終結決定(けつてい)趣旨(しゆし)()りますと、「ミロク神政(しんせい)成就(じやうじゆ)()ふのは、(わが)が日本に関する限りに(おい)て、王仁三郎(おにさぶらう)(かしこ)多くも日本の現御皇統(くわうとう)を廃し(まつ)り、日本の独裁君主(くんしゆ)になると()ふことを言うて()る」やうに書いて()るね。

 そんな(をそれ)多いことは申しませぬ。御書きになつたのです。御書きになつて判を捺させられたのです。

 (しか)しさう()趣旨(しゆし)になつて()るのだがね。

 それでも、私は申しませぬ、首が千切(ちぎ)れても、そんなことは申しませぬ。

 違ふのだね。

 はい。

 それから、さうすると……

 誰々が()う言うて()るから、()うぢやろと言つて御書きになつたのですわ。

 (ここ)王仁三郎(おにさぶらう)全集の第一巻の三百四十九頁に皇道(こうだう)維新(ゐしん)に就て」()ふことを書いたのがあるね。

 それから、証拠(しようこ)品第五百七十九号、大正(たいしやう)六年三月発行(はつかう)神霊界(しんれいかい)に「大正(たいしやう)維新(ゐしん)に就て」と()ふことを書いた所があるね。

 それから、証拠(しようこ)品の千九百七十二号に皇道(こうだう)維新(ゐしん)経綸(けいりん)と書いたものがある。

 それから、証第四千二百二十七号、瑞祥(ずゐしやう)新聞(しんぶん)の昭和八年の皇道(こうだう)大本(おほもと)の目的を説いた本がありますね。

 (これ)は何れも、「皇道(こうだう)大本(おほもと)の内容は良いものだ」、全部(ぜんぶ)大体(だいたい)同じやうなことが書いてある。

 何れも(これ)を読んで見ると趣旨(しゆし)は変つて()らぬやうに思ふが、特に一番新しい部分(ぶぶん)には皇道(こうだう)大本(おほもと)の目的をはつきり書いて()るから、(これ)一遍(いつぺん)()いて見たい。

 皇道(こうだう)大本(おほもと)の目的は……。

 私が書いて()りますか。

()の時記録(きろく)を示す)

 大部書いて()るね。

 ミロク神政(しんせい)成就(じやうじゆ)のことに付て。

 (これ)()の通りに決つて()ります。

 (これ)は、「天皇陛下が()うなさると()ふことが皇道(こうだう)大本(おほもと)の目的である」と()ふことが書いてある。

 (これ)は私はちよつとも悪いことぢやないと思ひます。

 後に書いてあるのは同じ内容を……。


争点 王仁三郎は天津日嗣か

 そこで()くのだが、「(かしこ)くも天下(てんか)統治の天職(てんしよく)惟神(かむながら)に具有し給ふ天津(あまつ)日嗣(ひつぎ)天皇の御稜威(みいづ)()(まつ)るのである」と()ふことが書いてありますね。

 ()天津(あまつ)日嗣と()ふのは誰を指すのか。

 現天皇陛下です。

 天照大神(あまてらすおほかみ)の御延長(えんちやう)ですから──それを高橋はんは私のことを言ふのだらうと言つて()かないのです。

 (ほか)でもさう言はれたが、こんな無茶なことはありまへぬ。

 それで、(わが)が国は(つま)大家族(たいかぞく)制度(せいど)です。一君万民(ばんみん)の国です。

 此処(ここ)に書いてある天津(あまつ)日嗣(ひつぎ)天皇と()ふ、(これ)は誰を指すかと()ふことに付ては、大正(たいしやう)六年の十二月、神霊界(しんれいかい)六の十二頁、それから火之巻(ひのまき)の四百十三頁、それから天之巻(てんのまき)の六十五頁に書いてある。

 是等(これら)のことを総括(そうくわつ)して(たづ)ねるが、()しさう()ふことになつて()るとすれば、王仁三郎(おにさぶらう)(つき)大神(おほかみ)霊代(たましろ)だと()ふことになれば、天津(あまつ)日嗣(ひつぎ)()ふのは矢張(やつぱ)王仁三郎(おにさぶらう)を指すことになりはしませぬか。

 そんなことはありませぬ。

 ならぬか。

 なりませぬ。()く調べて見て下さい。

 大本(おほもと)のことを言うて()るのですから、国の本を言つて()るのです。

 ()の中にある主・師・親と()ふことは、日本の天皇様は主であり師であり親であると()ふことは、大石凝(おほいしごり)先生の説です、天津神(あまつかみ)()ふことは……(つき)()ふことは天照大神(あまてらすおほかみ)精霊(せいれい)です。天之御中主尊も天之神(てんのかみ)(また)(つき)の神とも略して()るのです。

 それから皇道(こうだう)大本(おほもと)信条(しんでう)の昭和八年のあれに()ると、第三条に、「我等(われら)皇孫命(すめみまのみこと)天照皇大神の御神勅(ごしんちよく)()り、豊葦原(とよあしはら)中津国(なかつくに)天壌無窮(てんじやうむきう)の宝祚を樹立(じゆりつ)し給ひ、世界統一(とういつ)基礎(きそ)確立(かくりつ)し給へることを信奉(しんぱう)す」とあり、それから、第四条には、「我等(われら)は皇上陛下が万世一系(ばんせいつけい)皇統(くわうとう)継承(けいしよう)せられ惟神(かむながら)に主・師・親の三徳を具へて世界を知ろし召さる、至尊(しそん)至貴(しき)現人神(あらひとがみ)(まし)ますことを信奉す。」()()ふことになつて()りますね。

 さうです。

 さう()ふことに()ると天津(あまつ)日嗣(ひつぎ)()ふことは王仁三郎(おにさぶらう)を指すことにならないかね。

 そんなことはありませぬ。頭でそんなことを考へるだけでも、口で言ふだけでも、(また)思ふだけでも、(をそれ)多いぢやありませぬか。

 我々(われわれ)国民(こくみん)の一人です。(くさ)つても国民(こくみん)です。そんなことは思ひもしませぬ。(これ)を証明するには本があります。けれども、私はさう思はれるのは悲しい。

 別に思つて()る訳ぢやない。

 さう()ふやうに思はれたから、(くさ)れ事件を起されたのです。「日嗣(ひつぎ)とか()ふことは御前(をまえ)のことを言ふたのぢや」と、無理(むり)に判を捺させられて私は困つてしまひました。

 (をそれ)多いことを言はれたので私は……。

 金輪王(こんりんわう)()ふのは誰を言ふたのだ。

 (これ)仏法(ぶつぽふ)の中の金輪王(こんりんわう)()ふのです。

 金輪王(こんりんわう)()ふ俳名を使つたことはありませぬか。

 ありませぬ、私はペンネームは沢山(たくさん)ありますが、金輪王(こんりんわう)なんと()ふのはありませぬ。

 さうか。

 さう()ふ俳名を書いたものは、私は知りまへぬが、書くのを止める訳にいかしませぬ。

 さうすると(これ)はどうなるのだね。

 天之巻(てんのまき)の五頁に、()いかい、「綾部(あやべ)よくなりて末で都と(いた)すぞよ。福知山(ふくちやま)舞鶴(まひづる)は外囲ひ、十里四方(よも)は宮の内。綾部(あやべ)最中(まんなか)になりて金輪王(こんりんわう)で世を治めるぞよ」(これ)はどう()ふ訳だ。

 それは神都(しんと)の意味であつて、あそこは都になりさうな所ではない。狭い所で竿竹が山から山に掛かるやうな所で、あそこが都になると()ふことはない。

 私が行つた時分(じぶん)には、教祖(けうそ)が書いた()時分(じぶん)には家がなかつた。今は二千戸(くらゐ)になつた。それが神の都になつたのであると()ふことで、それで神の都になると()ふことを言つたのです。


予言 地下の町

 天之巻(てんのまき)の四頁に、「東京は○○になるぞよ」、「長くは続かぬぞよ」と()ふのがあるが、(これ)は判らぬね。

 薄野(すすきの)になると()ふことは、今日(けふ)の総て政治家(せいぢか)でも言うて()ることぢやないかと思ひます。

 私は空襲なんかで、昭和五十年になつたならば、東京はすつくり薄原(すすきはら)になつて、()の地下に町が出来(でき)る、地下にすつくりなつてしまひます。

 それは、地下に住居(ぢうきよ)出来(でき)て、飛行(ひかう)機が来ても判らないやうに、ちやんと国防(こくばう)上さうなる。段々(だんだん)世の中の科学(くわがく)が進んで来る。

 「長くは続かぬぞよ」と()ふのは……。

 四十年も先へ行けばさうなる、と()ふのです。

 「長く続かぬぞよ」と()ふことは亡びるやうに思はれるが。

 今の陸上(りくじやう)の東京は続かないけれども、四十年も先へ行けばもう総て科学(くわがく)は進んで来て、海の中へ(まで)電信(でんしん)局が出来(でき)ます。海底(かいてい)(まで)──私はそれを予言(よげん)して置きます。見て()りますから。

 見た……。

 霊界(れいかい)で見た。海の中迄行つたことを見たのであります。

 (これ)は私は決して(うそ)ぢやないと思ひます。

 若い人があつたら、それを覚えて置いて(もら)ふたら判ります。


争点 金輪王

 金輪王(こんりんわう)()ふことは、(これ)は……。

 金神(こんじん)が治めると()ふことです。

 予審に書いてあることは矛盾(むじゆん)するから()かなければならぬ。

 弁解を()かなければならぬことがあるから()くが、五十三回の五問答に(おい)て、「昭和十年の十月初め頃、瑞祥閣(ずゐしやうかく)(おい)て、東尾と桜井重雄(さくらゐしげお)に対して、自分が金輪王(こんりんわう)となつて世界を統治する者であると()ふことを話したことがあるやうに思ひます」と()ふやうに……。

 「言うたやろ」と(おつ)しやるから、さう言はなければ、どう言ふたつてあかしまへぬが……。

()の時、証拠(しようこ)を示す)

 ()金輪王(こんりんわう)()ふ額は……。

 (これ)は龍田と()ふ人が書いて来たのです。筆先(ふでさき)金輪王(こんりんわう)()ふことが書いてあるから書いて来たのでせう。

 ()の人は米一粒に百人一首(ひやくにんいつしゆ)の歌を書く人です。

 もう一つだけ……沢山(たくさん)ありますが、天之巻(てんのまき)の二百十三頁の「誰にも解らん大望(たいもう)な言ふに言はれず、説くに説かれん水火(かみ)経綸(けいりん)であるから」とあるが、(これ)はどうだ。

 「説くに説かれん」と()ふことは、言葉(ことば)で書けない、意味が言はれない、意味が余り深くて人間の言葉(ことば)で現す言葉(ことば)がないと()ふ所が多い。それを大袈裟に書いたのです。

 火水(かみ)()ふのは、生きて()ると()ふことですから、総て世の中は火と水で出来(でき)()ると()ふことです。

 難しくて言はれぬと、()()ふのですね。

 まあ、言うたら、坊主(ばうず)の頭みたいなものです。

 それで、今、矛盾(むじゆん)せぬかと()ふて(たづ)ねたことも、(これ)(ちが)ひますと()ふ訳だな。

第十四回の一問答で本職が(たづ)ねたやうなことを答へて()るね。

 どう()ふことを……。

 「日本の君主(くんしゆ)になるのが大本(おほもと)の目的である」と()ふことが書いてあるやうだが。

 そんなことは申しまへぬ。勝手(かつて)にそんなことばかり言はれたのです。


争点 立替立直(1)

 それぢや、次の問題(もんだい)(はい)ります。

 大本(おほもと)所謂(いはゆる)立替立直(たてかへたてなほし)()ふのはどう()ふ意味ですか。

 大本(おほもと)立替立直(たてかへたてなほし)()ふのは、世の中のことが革新する、改まつて行くと()ふことが立替立直(たてかへたてなほし)

 家の立替立直(たてかへたてなほし)()ふことは所帯の持直しを言ふ。

 立替立直(たてかへたてなほし)の大きなことは世界のことであり、小さく言へば家で、日本で言へば今日(けふ)()ぐにも自由経済(けいざい)が統制経済(けいざい)になつたのも、(これ)(つま)り言うたら立替立直(たてかへたてなほし)になつたのです。

 (あるひ)国民(こくみん)精神総動員と()うて皆に自分の勝手(かつて)にならぬやうに、自由にならぬやうになつた。

 国家(こくか)(ため)全体(ぜんたい)となつて、陛下の為、(あるひ)国家(こくか)(ため)に、皆国民(こくみん)が一つになつて行かうと()ふ、(これ)立替立直(たてかへたてなほし)なんです。

 それは実例を挙げて答へたやうだが、(まと)めて言ひますと、立替立直(たてかへたてなほし)大本(おほもと)で言つて()るのは、体主霊従(たいしゆれいじゆう)の現在の世の中を破壊(はくわい)して、霊主体従(れいしゆたいじゆう)の世の中になすことを立替立直(たてかへたてなほし)()ふのぢやないか。

 破壊(はくわい)するのぢやありませぬ。改めさせるのです。

 破壊(はくわい)ぢやない……。

 体主霊従(たいしゆれいじゆう)の世の中を改めさせ良くさせて、霊主体従(れいしゆたいじゆう)の世の中にすると()ふのです。一口に言へば、英国(あた)りの体主霊従(たいしゆれいじゆう)です。

 支那(しな)へ行つても、利益(りえき)(ため)ばかり考へてやつて()ります。我好(われよ)しです。

 (しか)し、日本はさうぢやありませぬ。日本は支那人(しなじん)を助けてやつて、東洋(とうやう)平和の(ため)にやつてやる。霊主体従(れいしゆたいじゆう)です。

 よし、さうすると──。

 日本のやり方は立替立直(たてかへたてなほし)のやり方です。