論考資料 黄金水の十二の玉


霊界物語

物語01-5-38 1921/10 霊主体従子 黄金水の精 

天の真奈井の清泉はにはかに金色と変じ、その水の精は、十二個の美しき玉となつて中空に舞ひ上り、種々の色と変じ、ふたたび地上に降下した。このとき眼ざとくも田依彦、玉彦、芳彦、神彦、鶴若、亀彦、高倉、杉生彦、高杉別、森高彦、猿彦、時彦の十二の神司は争うてこれを拾ひ、各自に珍蔵して天運循環の好期を待たむとした。
 この十二の玉はおのおの特徴を備へ、神変不可思議の神力を具有せるものである。

 ここに竹熊の一派は、危急を救はれし大神の厚恩を無視し、生来の野心をますます増長し、金殿に安置せる顕国の御玉を涜しくもらせ、無用の長物たらしめむとして四方の曲津神と語らひ、なほ懲りずまに計画を廻らしてゐた。この目的を達するには、その第一着手として黄金水の精より成り出でたる十二個の玉を手に入れねばならぬ。この玉をことごとく手に握れば、彼らの目的は達するものと深く信じたからである。ここにおいて竹熊は、将を射むとするものは先づその馬を射よとの戦法を応用せむとし、あらゆる方策を講じて竜宮城の従臣なる十二柱の神司を説き落し、あるひは討ち亡ぼして、その玉をいよいよ奪ひ取らむとした。この玉は十二個のうち、一個不足しても何の用をもなさないのである。

物語01-5-50 1921/10 霊主体従子 死海の出現

 竹熊、木常姫は全力を尽して前後左右より竜宮城を取り囲んだ。勇猛なる香川彦以下の神司は全力を挙げて之を撃退し、押し寄する敵の魔軍は或ひは傷つき或ひは倒れ、全軍の三分の一を失つた。時に探女あり、「天使大八洲彦命は、シオン山に在り」と密告した。竹熊、木常姫は時を移さず、黒雲を起し風を呼び、シオン山の空をめがけて驀地に攻め寄せた。
 この時、大八洲彦命は天明彦命より賜はりし頭槌の玉を一つ取りだし、竹熊の魔軍にむかつて空中高く投げ打ちたまへば、その玉は爆発して数万の黄竜となり、竹熊に前後左右より迫つた。この空中の戦ひに竹熊は通力を失ひ、真贋十二個の玉とともに無惨にも地上へ墜落し、たちまち黒竜と変じ、地上に打ち倒れた。しばらくあつて竹熊は起上がり、ふたたび魔軍を起して防戦せむとする折しも、天上より金勝要神、未姫命の二柱の女神は、天の逆鉾を竹熊が頭上目がけて投げ下したまうた。一個は竹熊の頭にあたり一個は背にあたり、その場に倒れ黒血を吐き、ここに敢なき終焉を告げた。
 竹熊の血は溢れて湖水となつた。これを死海といふ。竹熊の霊魂はその後死海の怨霊となつた。死海の水は苦くして、からく粘着性を帯ぶるは、天の逆鉾の精気と血【のり】の精の結晶である。竹熊の霊はふたたび化して棒振彦となり、天使大八洲彦命を執念深く幾度も悩ました。竹熊部下の悪霊もまた此の湖水の邪鬼となつた。そしてその怨霊は世界に拡まり、後世に至るまで、種々の祟りをなすにいたつた。その方法は淵、河、池、海などに人を誘ひ、死神となつてとり憑き溺死せしめるのである。故にこの湖水を禊身の神業をもつて清めざれば、世界に溺死人の跡は絶たぬであらう。
 シオン山の後方の天より襲ひきたる最も猛烈なる木常姫の魔軍に対して、大八洲彦命は第二の頭槌の玉を空中に投げ捨てたまへば、たちまち爆裂し、木常姫の一軍は神威におそれ狼狽の極、死海の周囲に屹立せる禿山の山上に墜落し、岬角に傷つき、最後を遂げた。木常姫の霊はふたたび変じて高虎姫となり、棒振彦とともに、大八洲彦命を絶対的に悩まさむとした一切の径路は、おひおひ述ぶるところによつて判明する。
 竹熊の所持せる十個の玉と、二個の偽玉は一旦死海に沈み、歳月を経ておひおひに雲気となつて舞ひ上り、世界の各地に墜落し邪気を散布し、あらゆる生物を困ましめたのである。さしもの黄金水より出でたる十個の宝玉も、竹熊の血に汚されて悪霊と変じ、諸国に散乱して種々の悪事を現出せしむる悪玉と変化したのである。この玉の散布せる地は最も国魂の悪き国土である。

物語02-1-5 1921/11 霊主体従丑 黒死病の由来

偽美山彦、国照姫は死海に沈みたる黒玉を爆発せしめ、山の周囲に邪気を発生せしめた。この邪気は億兆無数の病魔神と変じ、神国別命の神軍に一々憑依して大熱を発せしめた。神軍はのこらず、この病魔に冒されて地上に倒れ、中には死滅する者も多数に現はれてきた。この病魔は漸次に四散して世界の各所に拡がり、つひにペストの病菌となつた。

物語02-6-39 1921/11 霊主体従丑 太白星の玉

生代姫命は、
『そは実に気の毒のいたりなり。われは十二の白鳥を遣はし、黄金水の宝に優れる貴重なる国玉を汝に与へむ。汝が敵に奪はれたる玉は今や死海に落ち沈めり。されどこの玉はもはや汚されて神業に用ふるの資格なし。されば、われ新に十二の玉を汝に与へむ。この玉を持ちて竜宮城に帰還し、功績を挙げよ』
と言葉をはるや、忽然としてその神姿は隠れ、白気となりて太白星中に帰還された。たちまち鳩のごとき白鳥天より降るをみとめ雀躍抃舞した。されど鶴若は、わが身一つにして十二の白鳥の後を追ふはもつとも難事中の難事なり、いかがはせむと案じ煩ふをりしも、天上より声ありて、
『汝は天空もつとも高く昇り詰め、玉の行方を仔細に見届けよ』
といふ神の言葉が聞えてきた。
 鶴若はその声を聞くとともに天上より引つけらるるごとき心地して、力のかぎり昇り詰めた。このとき十二の白鳥は諸方に飛散してゐたが、たちまち各地に降下するよと見る間に白き光となり、地上より天に冲して紅霓のごとく輝いた。
 鶴若はその光を目あてに降つた。見れば白鳥は一個の赤玉と化してゐる。鶴若は急いでこれを腹の中に呑み込んだ。また次の白気の輝くところに行つた。今度はそれは白玉と化してゐた。これまた前のごとく口より腹に呑み込んだが、かくして順次に赤、青、黒、紫、黄等の十二色の玉をことごとく腹に呑み込んだ。鶴若は、身も重く、やむをえず低空を飛翔して、やうやく芙蓉山の中腹に帰ることをえた。

物語21-4-18 1922/05 如意宝珠申 解決

お初『サア、これからは高姫さまだ。お前さまはウラナイ教を樹てて、素盞鳴尊様に反対をしてをつた時、秋山彦の館に立ち入り、冠島の宝庫の鍵を盗み出し、如意宝珠の玉を奪ひ取つて呑み込んだその罪で、こんな岩窟へ長らく閉じこめられ、苦しんだのですよ。何ほど負けぬ気になつて空元気を出してもやつぱり辛かつたでせう。いま妾の前にその玉を吐き出しなさい。さうして又、昔竹熊といふ悪神がをつて、八尋殿へ竜宮城の使神を招待し、芳彦の持つて居つた紫の玉を取つたが、竹熊の終焉と共に死海へ落ち込んだ十個の玉の中で、この玉ばかりは汚されず、中空に飛んで自転倒島へ落ちてきた玉ですよ。それをこの鷹依姫が手に入れて、それを御神体としてアルプス教を樹ててをつたのだが、その玉をお前さまはまた呑み込んでしまつたぢやないか。腹の中に何ほど玉があるといつても、さういふ悪い心で呑み込んだのだから、少しも光が出ない。サア私がここで出して上げよう。如意宝珠の玉は素盞鳴神様にお返し申し、紫の玉は鷹依姫さまに返してお上げなさいませ』


黄金水の十二の玉の後日談

残りの一個に別の十一個が加わり十二の玉となる

物語05-5-33 1922/01 霊主体従辰 暗夜の光明

 一行は先を争うて暗中摸索、島に駈上つた。山頂には一道の光明暗を縫うてサーチライトのごとく、細く長く海面を照らしてゐる。この島は地中海の一孤島にして牛島といひ、また神島、炮烙島と称へられた。現今にてはサルヂニア島と云ふ。またこの海を一名瀬戸の海と云ふ。
 かつて黄金水の霊より現はれ出でたる十二個の玉のうち、十個までは邪神竹熊一派のために、反間苦肉の策に乗ぜられ、竜宮城の神人が、その持玉を各自争奪されたる時、注意深き高杉別は、従者の杉高に命じ、その一個たる瑠璃光色の玉を、窃にこの島の頂上なる岩石を打ち破り、深くこれを秘蔵せしめ、その上に標示の松を植ゑ、杉高をして固くこれを守らしめつつあつた。
 しかるに天教山の爆発に際し、天空より光を放つて十一個の美はしき光輝を発せる宝玉、この瀬戸の海に落下し、あまたの海神は海底深くこれを探り求めて杉高に奉り、今やこの一つ島には十二個の宝玉が揃うたのである。かかる不思議の現象は、全く杉高がこの孤島に苦節を守り、天地の神命を遵守し、雨の朝、雪の夕にも目を離さず、心を弛めず、厳格に保護せしその誠敬の心に、国祖大神は感じ給ひて、ここに十一個の玉を下し、都合十二個の宝玉を揃へさせ、もつて高杉別および杉高の至誠を憫れませ給うたからである。これより杉高は高杉別と共に、この玉を捧持して天地改造の大神業に奉仕し、芳名を万代に伝へた。この事実は後日詳しく述ぶることにする。
 咫尺を弁ぜざる暗黒の夜に、辛うじてこの島に打上げられたる神人らは、あたかも地獄にて仏に会ひしごとく、盲亀の浮木に取着きしがごとく、死者の冥府より甦りたるがごとく、枯木に花の開きしがごとく、三千年の西王母が園の桃花の咲きしごとき嬉しさと感謝の念に駆られ、祝部神が暗中に立ちて、
『三千世界云々』
の歌を謡ふ声を蛇蝎のごとく忌み嫌ひし神人も、ここに本守護神の霊威発動して、天女の音楽とも聞え、慈母の愛の声とも響いた。神人らは一斉に声を揃へて、祝部神の後をつけ、
『三千世界一度に開く梅の花云々』
と唱へ出した。
 祝部神は、これに力を得て、又もや面白き歌を謡ひ始めた。
『世は烏羽玉の暗深く 罪さへ深き現世の
 神の不覚をとりどりに 深くも思ひめぐらせば
 海底深く棲む鱶の 餌食となすも食ひ足らず
 邪曲を助くる神心 深く悟りて感謝せよ
 海より深き神の恩 恩になれては又もとの
 深き泥溝にと投げ込まれ 奈落の底の底深く
 不覚をとるな百の神 神の恵は目の当り
 辺り輝く瑠璃光の 光は神の姿ぞや
 光は神の姿ぞや 牛雲別も角を折り
 心の雲を吹き払ひ 心の岩戸を押別けて
 神の光を称へかし 牛雲別を始めとし
 百の神人諸共に 心の暗を照らせよや
 心の暗の戸開けなば 朝日眩ゆき日の光
 汝が頭上を照らすべし 朝日の直刺す一つ島
 夕日の輝く一つ松 常磐の松のその根本
 千代も動かぬ巌の根に 秘め置かれたる瑠璃光の
 玉の光にあやかりて 心の玉を磨くべし
 三千世界の珍宝 この神島に集まりて
 十二の卵を産み並べ 松も千歳の色深く
 枝葉は繁り幹太り 空に伸び行く杉高の
 功績をひらく目のあたり 高杉別の誠忠も
 共に現はれ北の島 蓬莱山も啻ならず
 この神島は昔より 神の隠せし宝島
 宝の島に救はれて 跣裸で帰るなよ
 神より朽ちぬ御宝を 腕もたわわに賜はりて
 叢雲繁き現世の 万のものを救ふべし
 われと思はむ神等は われに続けよ、いざ続け
 言触神の楽しさは 体主霊従の小慾に
 比べて見れば眼の埃 埃の慾に囚はれて
 眼も眩み村肝の 心曇らせ暗の夜に
 暗路を迷ふ海の上 心の波をなぎ立てて
 この世を造り始めたる 神の御息の風を吸ひ
 酸いも甘いも弁へて この世を救ふ神となれ
 神の力は目のあたり 辺り輝く瑠璃光の
 光は神の姿ぞや 光は神の姿ぞや
 東雲近き暗の空 やがて開くる常磐樹の
 松の根本に神集ひ 千代万代も動ぎなき
 堅磐常磐の松心 この松心神心
 神の心に皆復れ 神の心に皆復れ
 かへれよ復れ村肝の 心に潜む曲津神
 大蛇や金狐悪鬼共 国治立の大神の
 御息の気吹に吹払ひ 払ひ清めて神の世を
 待つぞ目出度き一つ松 心一つの一つ島
 心一つの一つ島 一二三四五六七八九十
 百千万の神人よ 百千万の神人よ
 それ今昇る東の 空見よ空には真円き
 鏡のやうな日が昇る 心の鏡明かに
 照らして耻づること勿れ ああ惟神々々
 みたま幸はひましませよ 三千世界の梅の花
 一度に開く松の世の 松に千歳の鶴巣喰ひ
 緑の亀は此島に 泳ぎ集ひて神の代を
 祝ふも目出度き今日の空 千秋万歳万々歳
 千秋万歳万々歳
 ヨイトサ、ヨーイトサ、ヨイヨイヨイトサツサツサ』
と祝部神の歌終ると共に、東天紅を潮して天の岩戸の開けし如く、日の大神は東の山の上に温顔を現はし、一つ島の神人らをして莞爾として覗かせ給うた。
 ここに牛雲別は、危機一髪の神の試練に逢ひ、翻然としてその非を悟り、断然酒を廃し、かつ三千世界の宣伝歌を親のごとくに欣仰し、寸時も口を絶たなかつた。牛雲別は祝部神に帰順し、祝彦と名を賜はり、杉高はまた杉高彦と改名し、ここに三柱は相携へて、大神の宣伝使となつた。
 しかして、この十二個の宝玉は、天の磐船に乗せ、玉若彦の神司をしてこれを守らしめ、地教山の高照姫命の御許に送り届けられた。惟神霊幸倍坐世。


紫の玉・霊界物語

紫の玉は二種類ある。竹熊の12の玉の一つと、天火水地結の玉のうちの一つ。

物語21-4-18 1922/05 如意宝珠申 解決

お初『サア、これからは高姫さまだ。お前さまはウラナイ教を樹てて、素盞嗚尊様に反対をしてをつた時、秋山彦の館に立ち入り、冠島の宝庫の鍵を盗み出し、如意宝珠の玉を奪ひ取つて呑み込んだその罪で、こんな岩窟へ長らく閉じこめられ、苦しんだのですよ。何ほど負けぬ気になつて空元気を出してもやつぱり辛かつたでせう。いま妾の前にその玉を吐き出しなさい。さうして又、昔竹熊といふ悪神がをつて、八尋殿へ竜宮城の使神を招待し、芳彦の持つて居つた紫の玉を取つたが、竹熊の終焉と共に死海へ落ち込んだ十個の玉の中で、この玉ばかりは汚されず、中空に飛んで自転倒島へ落ちてきた玉ですよ。それをこの鷹依姫が手に入れて、それを御神体としてアルプス教を樹ててをつたのだが、その玉をお前さまはまた呑み込んでしまつたぢやないか。腹の中に何ほど玉があるといつても、さういふ悪い心で呑み込んだのだから、少しも光が出ない。サア私がここで出して上げよう。如意宝珠の玉は素盞嗚神様にお返し申し、紫の玉は鷹依姫さまに返してお上げなさいませ』
『ハイ仕方がございませぬ、どうしたら呑み込んだ玉が出ませうかなア』
『心配はいりませぬ。私がいま楽に出してあげませう』
と云ひつつ、高姫の腰を一つエ丶と声かけ打つた機に、ポイと口から飛んで出たのは紫の玉である。もう一つ左の手で腰を打つた機に飛んで出たのが如意宝珠の玉であつた。高姫はグタリと疲れてその場に倒れる。
『高姫さまはかうみえても心配はいりませぬ、しばらく休息なされば元気は元の通りになります。サア竜国別さま、あなたは如意宝珠を大切に預かつて聖地へお帰りなさい。鷹依姫さま、紫の玉は貴女の持つてゐたものだ、どうか受け取つて下さい』
『私も最早改心いたしました以上は、玉の必要はございませぬ。どうぞこれを聖地へ献上いたしたうございます。私も白状を致しまするが、私にはたつた一人の伜がございました。その伜が極道者で近所の人に迷惑をかけたり、喧嘩をする、賭博はうつ、女にずぼる、妾が意見をすれば、「何、親顔をしてゴテゴテいふな」と撲りつける、しまひの果てには親をふり捨てて、何処ともなく姿を隠してしまひました。極道の子はなほ可愛とか申しまして、まして一人の天にも地にもかけ替へのない伜、も一度会ひたいことだと一生懸命に神様にお願ひいたし、たうとうバラモン教に入信し、つひにアルプス教を樹てる事になつたのでございます。妾のやうな不運なものは世界にございませぬ』

物語22-1-1 1922/05 如意宝珠酉 玉騒疑

 顕国玉の精より現はれ出でたる如意宝珠をはじめ、黄金の玉、紫の玉は、神界における三種の神宝として、最も貴重なる物とせられてゐる。この三つの玉を称して瑞の御霊といふ。この玉の納まる国は、豊葦原の瑞穂国を統一すべき神憲、惟神に備はつてゐるのである。

物語22-5-18 1922/05 如意宝珠酉 布引の滝

言依別命『この玉は金剛不壊の如意宝珠、初稚姫さまにお預け申す。これは紫の玉、玉能姫さまにお預け申す。も一つ黄金の玉、これは言依別がある霊山に埋蔵しておきます』
玉能姫『教主様は神島へはお渡りになりませぬか』
『三十余万年の未来において、この宝玉光を発する時、迎へに参ります。それまでは断じて渡りませぬ。サア四人の方、この峰伝ひに明石の海辺を通り、高砂の浦より、ひそかにお渡り下さい。これでお別れいたします』

物語22-5-19 1922/05 如意宝珠酉 山と海

玉能姫は紫の宝珠の函を取り上げ、恭しく頭上に捧げ、ついで三入の童女の手にわたした。童女はものをも言はず微笑を浮かべたまま、玉函と共に同じ岩穴に消えてしまつた。玉能姫は怪しんで穴を覗き見れば、童男、童女の姿は影もなく、只二つの玉函、微妙の音声を発し、鮮光孔内を照らしてゐる。
二人は恭しく天津祝詞を奏上し、ついで神言を唱へ、天の数歌を歌ひ、岩蓋をなし、その上にいま童女が捨ておきし、黄金の鍬を各自に取り上げ、土を厚くきせ、あたりの小松をその上に植ゑて、またもや祝詞を奏上し、悠々として山を下り行く。

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