論考資料 イザナミ(伊邪那美または伊弉冊)


霊界物語以外

史料集成Ⅲ 1938/08/11 思想 天津神と国津神

答 併し、此の時分の伊邪那岐、伊邪那美尊の時分は、地球やとか何とか書いてあるけれども、此の「古事記と云ふものは総て世界の予言書なり」と云ふて居る。
 私は之を世界の予言書と見做して居る。
 素盞嗚尊が八岐の大蛇を退治すると云ふことも、世界の悪魔を平げることを云ふのだと思つて、それを予言と信じて居ります。

神の国 1932/12 男女の道

 伊邪那岐、伊邪那美命が御子生みの神業に於て、先づ伊邪那美命より「あなにやしえー男」と言葉を掛け給うた。そして生れた神が蛭子の神で、神の中に入れられず、流し捨てられた。之は女は受動的、男は能動的の意味を教訓されたもので、女より先に男に声を掛けるものではない、(1){男に従ふべきものである。}今頃の女には、女より男に恋愛を申し込んだり、手紙を出したりするが、それは間違つて居て(2){天則違反である。}(3){若しさうしたことに依つて夫婦となり子供が出来ても良い子は出来ぬ。又女で、さうしたことを何とも思はぬ女であつたら、其腹から生れる子は蛭子の例によつても、罪を犯すやうな、所謂不幸な子が出来るものである。}故に天と云ふは男、地と云ふは女とされて、天地と文字迄その意味に使用され地天とは云はぬ。日月もその通りである。只陰陽の場合に、何故陽陰と云はぬかと思ふかも知れぬが、之は現界に於ては月の神の支配権内に包まれて、多分にその守護を受けるので、その意味で尊んだ言葉として陰陽と云ふのである。
footnote:
(1)天五版では削除。
(2)天五版では削除。
(3)天五版、八幡版では削除。

神の国 1932/12 蛭子の神

 エベス、大黒と云つて福の神とあがめて居るが、其エベスと云ふのは蛭子の神のことである。伊邪那岐、伊邪那美二神が、御子生みの神業の時に、伊邪那美命が先づ言葉を掛け給うた。其時に生れたのが蛭子の神で、之は天地顛倒の神業であつた為め、蛭のやうに骨なしで、グニヤグニヤであつた。故に御子の列に入れられず、葦舟に乗せ流し捨てられた。それが今の兵庫県西の宮に流れ着いたので、漁夫等が之を拾ひ祀つた。それで西の宮の蛭子と云ふ言葉が出た。しかしグニヤグニヤの神で蛭の様であつたので、現在、出雲の美保の関に祀つてある言代主命をも合せ祀つたのである。それが後に至つてエベスは言代主命と思はれる様になつた。

神の国 1933/02 亜細亜大陸と素尊の御職掌

 神典に云ふ葦原の国とは、スエズ運河以東の亜細亜大陸を云ふのである。ゆゑにその神典の意味から云ひ、また太古の歴史から云へば日本国である。三韓のことを「根の堅洲国」とも云ふ。新羅、高麗、百済、ミマナ等のことであるが、これには今の蒙古あたりは全部包含されて居たのである。
 また出雲の国に出雲朝廷と云ふものがあつて、凡てを統治されて居つたのである。一体この亜細亜即ち葦原は伊邪那美尊様が領有されて居たのであつて、黄泉国と云ふのは、印度、支那、トルキスタン、大平洋中の「ム」国等の全部を総称して居た。それが伊邪那美尊様がかくれ給うたのち素盞嗚尊様が継承されたのであつたので、その後は亜細亜は素盞嗚尊様の知し召し給ふ国となつたのである。素盞嗚と云ふ言霊は、世界と云ふ意味にもなる。また武勇の意味もあり、大海原といふ意義もある如く、その御神名が既に御職掌を表はして居る。それで素盞嗚尊様の御神業は亜細亜の大陸にある。併しながら日の本の国が立派に確立されなくてはいけない。自分が蒙古に入つたのも、また紅卍字会と握手したのも、皆意義のあることで、大神業の今後にあることを思ふべきである。
 『昭和』の雑誌に次のやうな歌を出して置いた。充分考へて見るべきである。
 亜細亜とは葦原の意義あし原は
  我が日の本の国名なりけり
 (1){満蒙支那神代の日本の領土なり
  とり返すべき時いたりつつ
 大蒙古は昔の日本の領地なり
  回復するは今人の義務}
 時は今我が国民は建国の
  皇謨により活動すべき秋
 和光同塵政策をとりし我が国は
  旗幟を鮮明にすべき時なり
footnote:
(1)この二首の歌は天三版、天五版、愛世版、八幡版では削除。

神霊界 1918/02/01 太古の神の因縁

高皇産霊之神言は霊系を主宰し玉ひ、其精霊体は神伊邪那岐之神言と顕現し玉ひ、神皇産霊之神言は体系を主宰し玉ひ、其精霊体は神伊邪那美之神言と顕現し玉ふ。三神即一神にして瑞の身魂、三ツの身魂の表現なり。斯世の御先祖にして撞の大神に坐します也。開祖の神諭には天の御三体の大神と称えあり、又ミロクの大神、ツキの大神とも称え奉り、又天の御先祖様と称え奉りあり。

神霊界 1919/08/01 随筆

天之御中主大神、天照大神、豊雲野大神、伊邪那岐大神、伊邪那美の大神等の傍訓に、ミロクの大神とあるは何如との質問が時々ありますが、総て皇典に現はれたる御神名は、皆神霊の活動の異名でありまして、ミロクは仁愛と云ふ事であり、世界万類を安けく平けく歓こばせ、万世不易の神国を成就せしめ玉ふ、神々の活動を差すのでありますから、大本の真正の役員信者にして、神政成就の為に身心を投じて居る人は、皆なミロクの神の活動者であります。又た国常立尊と申しても、国家を永遠に安立せしめ給ふ神と日ふ意義でありますから、真に大本の教を解して、其活動を為る人は即ち国常立尊である。神界にて指揮命令を下す為に、教祖に神憑あらせられた生神を、特に大国常立尊と奉称するのであります。斯く申すと、大本教は実際的に無神論の如うに聞こえませうが決してそうではない。大本教では、神は万物普遍の霊にして、人は天地経綸の司宰者なりと日ふのであるから、人は神と合一して、神の宮と成つて、神と同一の活動をするのであるから、人は神界の表現であるから、神か人か、人か神か、何れも同一の境地に入るのである。故に外教の如く、神は一神と日ふのは誤りである。八百万の神が存在する訳であります。

神霊界 1919/08/15 随筆

 第一に御三体の大神を教祖様が御唱へになりました。御三体の神名は、
  高皇産霊大神……伊邪那岐大神……日之大神。
壱 天之御中主大神……撞榊向津姫尊……天照皇大神。
  神皇産霊大神……伊邪那美大神……月之大神。
 以上三列九柱を御三体の大神様と、教祖が奉称されました。天に在します大神様なれど、今度の二度目の世の立替に就て、地上の高天原ヘ御降臨遊ばして大国常立の命様の御神業の御手伝を遊ばすのであります。

敷島新報 1916/05/01 三種の神器

●八咫勾瓊は御玉体なり、
 神聖なる皇祖の御遺訓皇典古事記に示し給ふ、日く速須佐之男命乞度天照大御神所纏左御美豆良八咫勾瓊五百津之美須麻琉珠而、奴那登母母由良爾振滌天之真名井而(一説近江批把湖)佐賀美爾迦美而、於吹棄気吹之狭霧成神名 止哉吾勝速日天之忍穂耳命これ畏多くも天佑を保有し玉ふ万世一系天津日嗣天皇の御皇宗の御基なり矣。謹み僅み伏而惟れは我天皇の御皇統は皇祖天之御中主神を初め奉り、別天神五柱国之常立神を初め奉り、神世七代伊邪那岐伊邪那美神の国土経営の御功業成就して、天下を治むる大権を天照大御神に授げ玉ひ夫より皇宗に言依賜ひて天降し玉ふ即ち畏くも現代今上陛下に至る迄御天職を司り給ふ為に末いよいよ益々栄えさ玉ふ御事誠に尊とく誠に惶こき極みなりかし。


霊界物語

物語01-3-22 1921/10 霊主体従子 国祖御退隠の御因縁

大国常立尊の御神力によりて、天地はここに剖判し、太陽、太陰、大地の分担神が定まつたことは、前述したとほりである。しかして太陽の霊界は伊邪那岐命これを司りたまひ、その現界は、天照大御神これを主宰したまふのである。次に太陰の霊界は、伊邪那美命これを司りたまひ、その現界は、月夜見之命これを主宰したまふ。大地の霊界は前述のごとくに大国常立命之を司りたまひ、その大海原は日之大神の命によりて須佐之男命これを主宰したまふ神定めとなつた。

そこで国常立尊はやむを得ず天に向つて救援をお請ひになつた。天では天照大御神、日の大神(伊邪那岐尊)、月の大神(伊邪那美尊)、この三体の大神が、地の高天原に御降臨あそばし給ひ、国常立尊の神政および幽政のお手伝ひを遊ばされることになつた。国常立尊は畏れ謹み、瑞の御舎を仕へまつりて、三体の大神を奉迎したまうた。然るところ、地上は国常立尊の御系統は非常に減少して勢力を失ひ、盤古大神および大自在天神の勢力はなはだ侮り難く、つひには国常立尊に対して、御退位をお迫り申すやうになつた。天の御三体の大神は、地上の暴悪なる神々にむかつて、あるひは宥め、或ひは訓し、天則に従ふべきことを懇に説きたまうた。されど、時節は悪神に有利にして、いはゆる……悪盛んにして天に勝つ……といふ状態に立ちいたつた。

物語02-0-1 1921/11 霊主体従丑 序文

一、第一巻より第四巻までは、まだ伊那那岐尊、伊邪那美尊二神の御降臨まします以前の物語であります。第四巻にいたつて始めて国祖の御隠退遊ばされるところになり、第六巻において、諾冊二尊が葦原中津国へ御降臨遊ばすところになるのであります。

物語04-9-49 1921/12 霊主体従卯 神示の宇宙(四)

また北斗星と云ふのは、北極星に近い星であつて、俗に之を七剣星、又は破軍星と称へられてゐる。この七剣星はまた天の瓊矛とも言ひ、伊邪那岐の神、伊邪那美の神が天の浮橋に立つて漂へる泥海の地の世界を、塩古淤呂古淤呂にかき鳴らしたまひし宇宙修理固成の神器である。今日も猶我国より見る大空の中北部に位置を占めて、太古の儘日、地、月の安定を保維して居る。

物語06-0-3 1922/01 霊主体従巳 総説

本巻は、いよいよ天津神の命により諾冊の二尊が、天照大御神の御魂の大御柱を中心に、天より降り、天の浮橋に立ちて、海月なす漂へる国を修理固成し玉ひ、現代の我日本国即ち豊葦原の瑞穂の中津国を胞衣となし、かつ神実として、地上のあらゆる世界を修理固成し玉うた神界経綸の大略を述べたものであります。それゆゑ舞台は、地球上一般の神人界に渉つた出来事であつて、区々たる極東我神国のみの神話を写したものでない事は勿論である。

総て太古の御神政は神祭を第一とし、次に神政を行ひ、国々に国魂神があり、国魂神は、その国々の神王、又は八王などと云つて八尋殿を建てられ、殿内の至聖処に祭壇を設け、造化三神を鎮祭し、神王および八王は、同殿同床にて神明に奉仕された。さうして神政は左守神又は右守神(或は八頭神とも云ふ)に神示を伝へ神政を司掌らしめ玉うたのであります。さうして国治立命御神政の時代は、天使長と云ふ聖職があつて、国祖の神慮を奉じ、各地の国魂たる八王神を統轄せしめつつあつたのが、諾冊二尊の、淤能碁呂嶋へ御降臨ありし後は、伊弉諾の大神、八尋殿を造りて、これに造化の三神を祭り玉ひ、同殿同床の制を布き、伊弉冊尊を、国の御柱神として、地上神政の主管者たらしめ玉うたのであります。しかるに地上の世界は、日に月に、体主霊従の邪気漲り、物質的文明の進歩と共に、地上神人の精神は、その反比例に悪化し、大蛇、鬼、悪狐の邪霊は天地に充満して有らゆる災害をなし、収拾すべからざるに立ち致つた。そこで神界の神人の最も下層社会より、所謂糞に成り坐すてふ埴安彦神が現はれて、大神の神政を輔佐し奉るべく、天地の洪徳を汎く世界に説示するために教を立て、宣伝使を天下に派遣さるる事となつたのである。

物語06-3-18 1922/01 霊主体従巳 天の瓊矛

(あらすじ)

 この大変乱で地軸が移動してしまった。大国治立尊は、伊邪那岐尊と伊邪那美尊に命じて、天の浮橋から天の瓊矛で泥海の地上を修理固成させた。この瓊矛は北極星のことで、北極星の力で月を助けて水を吸収させたということ。これで数年かかって洪水は引いた。
 野立彦命と野立姫命の犠牲的精神によってすべての叢生は救われたのだ。ただし、善神は楽に大峠を越え、悪神は非常な苦労をして越えたという違いはある。

(本文)

 この大変乱に天柱砕け、地軸裂け、宇宙大地の位置は、激動の為やや西南に傾斜し、随つて天上の星の位置も変更するの已むを得ざるに致りける。
 さて大地の西南に傾斜したるため、北極星および北斗星は、地上より見て、その位置を変ずるに至り、地球の北端なる我が国土の真上に、北極星あり、北斗星またその真上に在りしもの、この変動に依りて稍我が国より見て、東北に偏位するに致りける。
 また太陽の位置も、我が国土より見て稍北方に傾き、それ以後気候に寒暑の相違を来したるなり。
 ここに大国治立命は、この海月成す漂へる国を修理固成せしめむとし、日月界の主宰神たる伊邪那岐尊および伊邪那美尊に命じ、天の瓊矛を賜ひて天の浮橋に立たしめ、地上の海原を瓊矛を以つて掻きなさしめ給ひぬ。
 この瓊矛と云ふは、今の北斗星なり。北極星は宇宙の中空に位置を占め、月の呼吸を助け、地上の水を盛ンに吸引せしめたまふ。北斗星の尖端にあたる天教山は、次第に水量を減じ、漸次世界の山々は、日を追うて其の頂点を現はしにける。
 数年を経て洪水減じ、地上は復び元の陸地となり、矛の先より滴る雫凝りて、一つの島を成すといふは、この北斗星の切尖の真下に当る国土より、修理固成せられたるの謂なり。
 太陽は復び晃々として天に輝き、月は純白の光を地上に投げ、一切の草木は残らず蘇生し、而て地上総ての蒼生は、殆ど全滅せしと思ひきや、野立彦、野立姫二神の犠牲的仁慈の徳によりて、草の片葉に至るまで、残らず救はれ居たりける。

物語06-4-19 1922/01 霊主体従巳 祓戸四柱

(あらすじ)

大国治立尊の左守神の高皇産霊大御神と右守神の神皇産霊大神は、自分の精霊の撞の大大御神の神伊弉諾大神と神伊弉冊大神に天の瓊矛を授け、天の浮橋から泥海をかき回させた。これは泥海を乾燥させすべての汚濁を払ったということである。
 この時に、地上を乾燥させすべての汚物を払った神を伊吹戸主神、風雨で洗い清めた神を速秋津比売神、汚物を河で流した神を世織津比売神、汚物を根底の国に持ち去った神を速佐須良比売神という。この四神を祓戸神と称し、宇宙一切の新陳代謝の神界の大機関とされた。

(本文)

 天地の大変動により、大地は南西に傾斜し、其のため大空の大気に変動を起し、数多の神人が、唯一の武器として使用したる天磐樟船、鳥船も、宇宙の震動のため何の効力もなさざりき。その時もつとも役立ちしは神示の方舟のみにして、金銀銅の三橋より垂下する救ひの綱と、琴平別が亀と化して、泥海を泳ぎ、正しき神人を高山に運びて救助したるのみなりける。
 天上よりこの光景を眺めたる、大国治立命の左守神なる高皇産霊神、右守神なる神皇産霊神は、我が精霊たる撞の大御神、神伊弉諾の大神、神伊弉冊の大神に天の瓊矛を授け黄金橋なる天の浮橋に立たしめ玉ひて、海月の如く漂ひ騒ぐ滄溟を、潮許袁呂許袁呂に掻き鳴し玉ひ、日の大神の気吹によりて、宇宙に清鮮の息を起し、地上一切を乾燥し玉ひ、総ての汚穢塵埃を払ひ退けしめ玉ひぬ。この息よりなりませる神を伊吹戸主神と云ふ。

物語06-4-21 1922/01 霊主体従巳 真木柱

(あらすじ)

伊弉諾大神は天の御柱の神、伊弉冊大神は国の御柱の神、天照大神は撞の御柱の神という。伊弉諾大神と伊弉冊大神は撞の御柱の神を中心にして廻り合い国産みをした。最初は伊弉冊大神から歌いかけたので、淡島が生まれ、少名彦神を国魂とした。この島は逆転的神業のため御子の数に入らず、少名彦神は野立彦命を慕って幽界を探検した。

(本文)

伊弉諾大神の又の御名を、天の御柱の神といひ、伊弉冊大神の又の御名を、国の御柱の神といひ、天照大神の又の御名を、撞の御柱の神といふ。
 この三柱の神は、天教山の青木ケ原に出でまして、撞の御柱の神を真木柱とし、八尋殿を見立て給ひて、天津神祖の大神を祭り、月照彦神を斎主とし、足真彦、少名彦、弘子彦、高照姫、真澄姫、言霊姫、竜世姫、祝部、岩戸別その他諸々の神人たちを集へて、天津祝詞の太祝詞を詔らせ給へば、久方の天津御空も、大海原に漂ふ葦原の瑞穂の国も、清く明く澄み渡りて、祓戸四柱の神の千々の身魂の活力に復び美はしき神の御国は建てられたるなり。
 ここに伊弉諾神は撞の御柱を中に置き、左より此の御柱を行き廻り給ひ、伊弉冊神は右より廻り合ひ給ひて、ここに天地を造り固めなし給ひ、国生み、島生み、神生み、人生み、山河百の草木の神を生み成し給ふ善言美詞を謡はせ給ひける。

物語06-4-22 1922/01 霊主体従巳 神業無辺

(あらすじ)

 天の御柱の神(伊弉諾大神)は女性である伊弉冊大神から声をかけられたことに怒った。ニ神は天津神より「やりなおせ」との神勅を受け、再び撞の御柱をめぐり、今度は男性である伊弉諾大神より歌いかけた。また、最初に生まれた淡島は太平洋の中心に出現した島であるが、天地逆転の神業のため南極へ流れ不毛の島となった。淡島の国魂、言霊別命の再来である少名彦命は常世の国に長く留まり、その半分の身魂は根の国へおちてゆき幽界の救済に奉仕された。また、後世、ユダヤの地にキリストとして万民の贖罪主となった。

物語06-4-23 1922/01 霊主体従巳 万教同根

(あらすじ)

 伊弉冊大神の返歌。二神は柱を廻って八尋殿に帰り息を休めた。月照彦神、足真彦司、弘子彦司、祝部、岩戸別は野立彦命、野立姫命の御跡を慕って、神界現界の地上の神業を終え、大地の中心である根底の国へ行くために、天教山の噴火口に身を投じた。

物語06-4-24 1922/01 霊主体従巳 富士鳴戸

(あらすじ)

伊弉冊大神、伊弉諾大神の二神は撞の御柱をめぐって、美斗能麻具波比の神業-火と水との息を調節して、宇宙万有一切に対し、活生命を賦与すること-を行った。木花姫命のことを観世音菩薩、最勝妙如来、観自在天ともいう。

(本文)

二柱は茲に撞の御柱を廻り合ひ、八尋殿を見立て玉ひ、美斗能麻具波比の神業を開かせ玉ひぬ。美斗能麻具波比とは、火と水との息を調節して、宇宙万有一切に対し、活生命を賦与し玉ふ尊き神業なり。撞の御柱の根に清き水を湛へたまひぬ。これを天の真奈井と云ひまた後世琵琶湖と云ふ。撞の御柱のまたの御名を伊吹の御山と云ふ。天の御柱の神は九山八海の山を御柱とし、国の御柱の神は塩の八百路の八塩路の泡立つ海の鳴戸灘をもつて胞衣となし玉ひ、地の世界の守護を営ませ玉ふ。また鳴り鳴りて鳴りあまれる、九山八海の火燃輝のアオウエイの緒所と云はれて居るは不二山にして、また鳴り鳴りて鳴り合はざるは、阿波の鳴戸なり。『富士と鳴戸の経綸』と神諭に示し玉ふは、陰陽合致、採長補短の天地経綸の微妙なる御神業の現はれをいふなり。鳴戸は地球上面の海洋の水を地中に間断なく吸入しかつ撒布して地中の洞穴、天の岩戸の神業を輔佐し、九山八海の山は地球の火熱を地球の表面に噴出して、地中寒暑の調節を保ち水火交々相和して、大地全体の呼吸を永遠に営み居たまふなり。九山八海の山と云ふは蓮華台上の意味にして、九山八海のアオウエイと云ふは、高く九天に突出せる山の意味なり。而て富士の山と云ふは、火を噴く山と云ふ意義なり、フジの霊反しはヒなればなり。

物語06-5-29 1922/01 霊主体従巳 泣沢女

(あらすじ)

 伊邪那美命は地上の混乱に驚いて黄泉国へ逃げた。伊邪那岐命は悲しんで歌を読んだ。その後は、荒魂をふりおこして、天の香具山の鋼鉄を掘り、自分で十握の剣を沢山作って、「荒ぶる神共を武力をもって討ち罰めむ」と計られた。

(本文)

 神伊邪那岐の大御神 神伊邪那美の大神は
 清き正しき天地の 陽と陰との呼吸合せ
 スの言霊の幸ひに 天の御柱国柱
 生り出でまして山川や 草木の神まで生み了ほせ
 青人草や諸々の 呼吸あるものを生み満たせ
 栄ゆる神代を楽みて 喜び玉ふ間もあらず
 天津御空の星の如 浜の真砂の数多く
 青人草は生り成りて 鳴りも合はざる言霊の
 呼吸の穢れは天地や 四方の国々拡ごりつ
 清き正しき大御呼吸 濁りに濁り村雲の
 塞がる世とはなりにけり 開け行く世の常として
 天津御空に舞ひ狂ふ 天の磐樟船の神
 天の鳥船影暗く 御空を蔽ひ隠しつつ
 人の心は日に月に 曇り穢れて常闇の
 怪しき御代となり変り 金山彦の神出でて
 遠き近きの山奥に 鋼鉄を取りて武器を
 互に造り争ひつ 体主霊従の呼吸満ちて
 互に物を奪ひ合ふ 大宜津姫の世となりぬ
 野山に猛き獣の 彼方此方に荒れ狂ひ
 青人草の命をば 取りて餌食と為しければ
 ここに火の神現はれて 木草の繁る山や野を
 一度にどつと焼速男 世は迦々毘古となり変り
 山は火を噴き地は震ひ さも恐ろしき迦具槌の
 荒振世とはなりにけり 国の柱の大御神
 此有様を見そなはし 御魂の限りを尽しつつ
 力を揮はせ玉へども 猛き魔神の勢に
 虐げられてやむを得ず 黄泉御国に出でましぬ
 糞に成ります埴安彦の 神の命や埴安姫の
 神の命のいたはしく 世を治めむと為し玉ひ
 尿に成ります和久産霊 世を清め行く罔象女
 神の命は朝夕に 心を尽し身を尽し
 遂に生れます貴の御子 この世を救ふ豊受姫の
 神の命の世となりぬ 嗚呼奇なる神の業。
 伊邪那岐命は、伊邪那美命の黄泉国、すなはち地中地汐の世界に、地上の世界の混乱せるに驚き玉ひて逃げ帰り玉ひしを、いたく嘆きてその御跡を追懐し、御歌を詠ませ玉ひぬ。

物語06-5-30 1922/01 霊主体従巳 罔象神

(あらすじ)

 伊弉諾大神、伊弉冊大神は完全無欠の神国を樹立した。しかし、その後、葦原の瑞穂国には天の益人、日に月に生まれ増して、遂に優勝劣敗、弱肉強食の暗黒世界となった。国治立命の神政に対して、何十倍も悪くなったのだ。大山枠の神、小山枠の神、野槌の神、茅野姫の神が跋扈し、勢い強きものはさらに強く、力弱いものは生存さえかなわない世となった。
「人間の心はますます荒み、いかにして自己の生活を安全にせむかと、日夜色食の道にのみ孜々として心身を労し、遂には他を滅ぼしその目的を達せむために、人工をもって天の磐船を造り、あるいは鳥船を造り、敵をたおすために、各地の銅鉄の山を穿ちて種種の武器を製造し、働かずして物資を得むがために、またもや山を堀り、金銀を掘り出してこれを宝となし、物質との交換に便じ、あるひは火を利用して敵の山野家屋を焼き、暗夜の危険を恐れて燈火を点じ、種種の攻防の利器を製造して、互いの雌雄を争うに至れり。しかして衣食住はますます贅沢に流れ、神典にいはゆる大宜津姫命の贅沢きはまる社会を現出し、貧富の懸隔もっとも甚だしく、社会は実に修羅の現状を呈出するにいたりたり。」
 そこで、伊弉冊大神は女神として地上主宰のその任に堪えざるを慮り、黄泉国に隠れ入られることとなった。そのため、世は益々混乱状態となり、人々は救世主の出現を希望することとなった。ここに、最も虐げられた人々から生まれた埴安彦神、埴安姫神は、和久産霊という宣伝使を使い、水波廼女なる正しい人間を多く救った。しかし、その数は千中に一つにも足らないほどであった。また、伊弉諾大神、伊弉冊大神は各地の国魂に命じて武力で、曲津神を掃蕩しようとした。

物語06-8-49 1922/01 霊主体従巳 膝栗毛

(本文)

乙『飛ンで火に入る夏の虫かい。然しこのごろ余り悪神が覇張るので、彼方にも此方にもドエラい騒動がオツ初まつて、人民は塗炭とか炭団とかの、苦しみとか黒玉とかを嘗めて、眼を白黒玉にして、彼方にも此方にも泣いたり怒つたり悔んだりするので、御天道様は御機嫌をそこね、毎日日日雨が降り続いて、とうとう此の世の御大将国の御柱の神さまとか、伊邪那美命様とかいふ御方が、この世に愛想を御尽かし遊ばして黄泉国とか、塵芥の国とか何でも汚い国へ、御越し遊ばしたといふことだ。それに今日は御城主様の御誕生日で、たまたまの結構なお日和だ。御城主さまの御威徳は、天道様でも御感心遊ばして、こんな世界晴の結構なお日和さまだ。それに陰気な歌を謳ひよつて邪魔するものだから、罰は覿面、己の刀で己が首、馬鹿な奴もありや有るものだな』

物語07-5-25 1922/02 霊主体従午 建日別 偽のイザナミ

物語07-5-26 1922/02 霊主体従午 アオウエイ 偽のイザナミ

物語07-8-41 1922/02 霊主体従午 枯木の花

(本文)

人間の代になつてからは悪魔はますます天下を横行し、血腥い風は四方八方より吹き荒ンでくる。これに付いてもこの世を治め給ふ伊邪那岐大神の大御心使ひが思ひやられ、杖柱と思つてゐた伊邪那美命は、この世に愛想をつかし、火の神の為に夜見の国にお出ましになつたとかいふ事だ。

物語08-3-12 1922/02 霊主体従未 身代り

(あらすじ)

 日の出神がオド山津見(昔の醜国別)に案内させて城内に入ると女神は歓待した。竜宮城は伊弉冊命が竜宮城に来て黄泉国の穢れを一身に集めてしまったので大混乱している。日の出神は火の玉となって竜宮を照らすと、八種の雷や探女醜女、黄泉神が伊弉冊命を取りまいていた。ここへ、乙米姫命が現れて伊弉冊命の身代わりとなった。伊弉冊命は、日の出神に守られて常世国のロッキー山に移った。面那芸司は伊弉冊命を救うために、連日戦いつづけて、大声をあげていたのだった。それが異様な物音となって門の外に響いていたのだ。
 その後、海底の竜宮は、八種の雷の勢いすざまじく、黄泉比良坂の戦いの一因となった。

(本文)

 日の出神は、ただ一人茫然として怪しき物音に耳を澄ませ思案に暮るる折りしも、以前の門番の淤縢山津見はこの処に現はれ、
『貴下は大道別命に在さずや』
と顔を見つめゐる。日の出神は、
『貴下の御推察に違はず、吾は大道別命、今は日の出神の宣伝使なり。吾竜宮へ来りしは、黄金山の宣伝使、面那芸司竜宮に来れりと聞き、一時も早く彼を救はむがためなり。速かに乙米姫命にこの次第を奏上し、面那芸司を吾に渡されよ』
と言ひつつ、淤縢山津見の顔を見て、
『オー、貴下は大自在天大国彦の宰相、醜国別にあらざるか。貴下は聖地ヱルサレムの宮を毀ち、神罰立所に致つて帰幽し、根底の国に到れると聞く。然るにいま竜宮に金門を守るとは如何なる理由ありてぞ。詳細に物語られたし』
 醜国別は、
『御推量に違はず、吾は畏れおほくも大自在天の命を奉じ、聖地の宮を毀ちし大罪人なり。天地の法則に照され、根底の国に今や墜落せむとする時、大慈大悲の国治立尊は、侍者に命じ吾を海底の竜宮に救はせ給ひたり。吾らは其大恩に酬ゆるため、昼夜の区別なく竜宮城の門番となり、勤務する者なり。あゝ、神恩無量にして量る可からず、禽獣虫魚の末に至るまで、摂取不捨大慈大悲の神の御心、何時の世にかは酬い奉らむ』
と両眼に涙を湛へ、さめざめと泣き入る。日の出神は、
『汝が来歴は後にてゆるゆる承はらむ。一時も早く奥殿に案内せよ』
 醜国別は止むを得ず、力無き足を運ばせながら先に立ちて、奥深く進み入る。奥殿には数多の海神に取り囲まれて、中央の高座に、花顔柳眉の女神端然として控へ、日の出神を一目見るより、忽ち其の座を下り、満面笑を湛へて、先づ先づこれへと招待したり。日の出神は堂々と、何の憚る所も無く高座に着きける。女神は座を下つて遠来の労を謝し、且つ海底の種々の珍味を揃へて饗応せり。日の出神は、これらの珍味佳肴に目もくれず、女神に向ひ、(海底とは遠嶋の譬也)
『吾は神伊弉諾の大神の御子大道別命、今は日の出神の宣伝使、現、神、幽の三界に渉り、普く神人を救済すべき神の御使、今この海底に来りしも、海底深く沈める神人万有を救済せむがためなり。かの騒々しき物音は何ぞ、包み秘さず其の実情を我に披見せしめよ』
と儼然として述べ立てたまへば、女神は涙を湛へながら、
『実に有難き御仰せ、これには深き仔細あり、高天原に現はれ給ひし神伊弉冊命、黄泉国に出でましてより、黄泉国の穢れを此処に集め給ひ、今まで安楽郷と聞えたる海底の竜宮も、今は殆ど根底の国と成り果てたり。妾は最早これ以上申上ぐる権限を有せず、推量あれ』
と涙に咽びけり。
 日の出神は神言を奏上したまへば、忽ち四辺を照らす大火光、日の出神の身体より放射し、巨大なる火の玉となりて竜宮を照破せり。見れば母神の伊弉冊命を、八種の雷神取り囲み、その御頭には大雷、御胸には火の雷居り、御腹には黒雷、陰所には拆雷居り、左の手には若雷居り、右の手には土雷居り、左の足には鳴雷居り、右の足には伏雷居り命の身辺を悩ませ奉りつつありければ、日の出神は、火の玉となりて飛び廻りける。探女醜女、黄泉神の群は、蛆簇り轟きて目も当てられぬ惨状なり。かかる処へ乙米姫神現はれ来り、
『妾は神伊弉冊命の御身代りとなつて仕へ奉らむ、伊弉冊神は一時も早くこの場を逃れ日の出神に護られて、常世の国に身を逃れさせ給へ』
と云ふより早く、八種の雷の神の群に飛び入りぬ。八種の雷神、其他の醜神は、竜宮城の美神、乙米姫命に向つて、前後左右より武者振り附く。伊弉冊命に附着せる枉神は、一つ火の光に照されて残らず払拭されたり。面那芸司は伊弉冊命を救ふべく、必死の力を尽して戦ひつつありけれども力及ばず、連日連夜戦ひ続け、その声門外に溢れ居たりしなり。これにて竜宮の怪しき物音、阿鼻叫喚の声の出所も、漸くに氷解されにける。
 日の出神は神文を唱へたまへば、忽ち以前の大亀現はれ来り、門外に立ち塞がりぬ。日の出神は、伊弉冊命を守り、面那芸司および正鹿山津見、淤縢山津見と共に、八尋の亀に跨り海原の波を分けて、海面に浮き出で、常世の国に渡り、ロッキー山に伊弉冊命を送り奉りたり。
 其後の海底竜宮城は、体主霊従、弱肉強食の修羅場と化し、八種の雷神の荒びは日に月に激しくなり来り、遂には黄泉比良坂の戦ひを勃発するの已むなきに立到りける。

物語08-3-18 1922/02 霊主体従未 巴留の関守

(本文)

この巴留の国には常世神王の勢力侮り難く今また伊弉冊命様が何処からかお出になつて、ロッキー山にお鎮まりなされ、常世神王の勢力ますます旺盛となり、この巴留の国は鷹取別の御領地で、それはそれは大変厳しい制度を布かれ、他国の者は一人もこの国へ這入れない事になつて居ます。

物語08-4-24 1922/02 霊主体従未 盲目審神

(あらすじ)

 闇山津見は宣伝使に「ロッキー山に現れた伊弉冊命は本物かどうか」を尋ねた。オド山津見は「自分は命と途中まで一緒だったので本物だ」と言うが、蚊々虎が神がかりして、「偽者だ」と言う。オド山津見が審神をして、「蚊々虎は邪神の神がかりで、伊弉冊命は本物だ」と言明する。闇山津見もそれを信じた。しかし、本当はオド山津見の審神は間違っていた。

(本文)

『私は高天原に坐ましたる伊弉冊命が、黄泉の国へお出ましになつたと云ふ事を承はつて居ました。然るに此ごろ常世のロッキー山に伊弉冊命が現はれ給うたと云ふ事を巴留国の棟梁鷹取別より承はりました。二人の伊弉冊命がおありなさるとすれば、どちらが真実で御座いませうか。吾々はその去就に迷ひ、どうとかしてその真偽を究め度きたものと、日夜祈願をして居りました。然るに昨夜の夢に「明日は三五教の宣伝使がこの国へ来るから、五月姫を迎ひに遣はせ」とのお告げでありました。それ故今日は吾娘を町端れの国魂の森に群衆に紛れて入り込ませ、宣伝使のお出を待たせて居りましたところ、夢のお告げの通り、三五教の宣伝使に、お目に懸つたのも、全く御神示の動かぬところと深く信じます。この事について何卒御教示を願ひます』
『サア確かに吾々は竜宮城より伊弉冊命様のお供を致して参りましたが、途中で別れました。伊弉冊命様には日の出神と云ふ立派な生神と、面那芸司がお伴致して居る筈であります。ロッキー山に、これから行くと仰せになりましたから、それが真実の伊弉冊命様でありませう』
 蚊々虎の身体は俄に振動を始め、遂には口を切り、
『オヽヽ淤縢山津見、汝の申す事は違ふぞ違ふぞ。伊弉冊命様は、テヽヽ矢張り云はれぬ、云はれぬ。ロッキー山に現はれたのは、常世神王の妻大国姫の化け神だぞよ』
『汝は何れの曲津神ぞ、現に吾々は伊弉冊大神のお伴をして海上に別れたのだ。その時のお言葉に、これよりロッキー山に立籠ると仰せになつた。其方は吾を偽る邪神であらう』
 蚊々虎は手を振り揚げながら首を左右に振り、
『違ふ違ふ、サツパリ違ふ。ロッキー山の伊弉冊命は、大国姫だ。もつと確かり審神を致せ。此方を何れの神と思うて居るか。盲人の審神者、モーちつと霊眼を開いて、我が正体を見届けよ』
『如何に巧に述べ立つるとも、この審神者の眼を暗ます事は出来まい。外の事ならいざ知らず、伊弉冊大神の御事に就いては此方確に見届けてある。偽りを云ふな、退れ退れ』
『断じて退らぬ。汝の霊眼の開くるまで』
 淤縢山津見は一生懸命に両手を組み、霊縛を加へむとす。蚊々虎は大口開けて、
『ウワハヽヽー小癪な、やり居るワイ。ウワハヽヽー余り可笑うて腹の皮が捻れるワイ。ウワハヽヽー』
『闇山津見様、この神懸りは当にはなりませぬ。大変な大曲津が憑ついて居ます。あの通り笑ひ転けて、吾々を嘲弄いたす強太い悪神。コンナ奴の云ふ事は信じなくても宜しい。吾々は生た証拠人、伊弉冊大神は、この常世の国のロッキー山に確に居られます』
 蚊々虎は又もや大口開けて、
『アハヽヽ、あかぬ、あかぬ、淤縢山津見の盲の審神者イヽヽ如何に霊縛を加へても、ウヽヽ動かぬ動かぬ。煩いか倦厭したか。エエヽ偉さうに審神者面を提げて何の態、俺の正体が分らぬか。可笑しいぞ可笑しいぞ、ウワハヽヽ。カヽヽ可哀さうなものだ。キヽヽ気張つて気張つて汗泥になつて、両手を組んで、ウンウンと霊縛は何の態だ。クヽヽ苦労が足らぬぞ。コンナ審神者が苦しいやうな事で、どうして宣伝使がつとまるか。ケヽヽ怪しからぬ奴だ、見当は取れまい、権幕ばかりが強うても神には叶ふまいがな。コヽヽこれでもまだ我を張るか、困りはせぬか。サヽヽ審神者のなんのと、好くもほざいたものだ、サツパリ霊眼の利かぬ探り審神者だ、シヽヽ知らぬ事は知らぬと云へ、強太い奴だ。神の申す事を敵対うて、この神は邪神だの、当にならぬのとは、それや何の囈言だ。スヽヽ隅から隅まで気のつく審神者でないと、霊界の事は澄み切るやうには分らぬぞ。セヽヽ宣伝使面を提げて、盲審神者が俺を審神するなぞとは片腹痛い。ソヽヽそんな事で世界の人間が導かれるか』
『タヽヽ頼みます、もう分りました。怺へて下さい、併し貴神はお考へ違ひではありませぬか。現に私は伊弉冊大神様のお伴して御口づからロッキー山に行くと云ふ事を承はつたものですから、この事計りはどうしても真実に出来ませぬ』
『何ほど云うても訳の分らぬ宣伝使、神はこれからタヽヽ立ち去るぞよ』
 言葉終ると共に蚊々虎の肉体は、座敷に仰向様に打倒れたり。淤縢山津見は再び鎮魂を施し、神言を奏上し、而して淤縢山津見は、ロッキー山に伊弉冊神の隠れ居ます事を確に信じ闇山津見に固く、相違ない事を告げけり。闇山津見は厚く感謝してその夜は三五教の話に夜を明したり。
   附言
伊弉冊命の火の神を生みまして、黄泉国に至りましたるその御神慮は、黄泉国より葦原の瑞穂の国に向つて、荒び疎び来る曲津神達を黄泉国に封じて、地上に現はれ来らざるやう牽制的の御神策に出でさせられたるなり。それより黄泉神は海の竜宮に居所を変じ、再び葦原の瑞穂の国を攪乱せむとする形勢見えしより、又もや海の竜宮に伊弉冊大神は到らせたまひ、茲に牽制的経綸を行はせ給ひつつありける。乙米姫命を身代りとなして黄泉神を竜宮に封じ置き、自らは日の出神に迎へられて、ロッキー山に立籠るべく言挙げしたまひ、窃に日の出神、面那芸司とともに伊弉諾の大神の在ます天教山に帰りたまひぬ。されど世の神々も人々も、この水も漏らさぬ御経綸を夢にも知るものは無かりける。ロッキー山に現はれたる伊弉冊命はその実常世神王の妻大国姫に金狐の悪霊憑依して、神名を騙り、常世神王大国彦には八岐の大蛇の悪霊憑依し、表面は、日の出神と偽称しつつ、種々の作戦計画を進め、遂に黄泉比良坂の戦ひを起したるなり。故に黄泉比良坂に於て伊弉冊命の向ひ立たして事戸を渡したまうたる故事は、真の月界の守り神なる伊弉冊大神にあらず大国姫の化身なりしなり。

8-6-39から8-6-43 言霊解 伊邪那美の黄泉国の場面

物語09-1-5 1922/02 霊主体従申 海上の神姿

(あらすじ)

 三笠丸は数十艘の大船小船と行き合った。大船の舳先には、日の出神と伊邪那美神が立ち宣伝歌を歌っていた。三人の娘(松代姫・竹野姫・梅ケ香姫)は父の桃上彦に会えそうな予感を持った。
 船上では三人の若者が酒を飲んでいて、娘達の話を聞き反感を持つ。そうしている最中に、船が岩にぶつかり沈没の危機が訪れた。

(本文)

 数十艘の大船小船は真帆に風を孕んで、堂々と陣容を整へ進み来る。三笠丸は風に逆らひながら、櫂の音高く進み行く。向ふの大船には、気高き女神舷頭に立ちあらはれ、涼しき瞳滴るが如く、楚々たる容貌、窈窕たる姿、いづこともなく威厳に満ち東天を拝して何事か祈るものの如くなり。傍に眉秀で鼻筋通り、色飽くまで白く、筋骨たくましく、眼光炯々として人を射る大神人立ちゐたり。船中の人々は期せずして此の一神に眼を注ぐ。
『限りも知れぬ波の上 救ひの船をひきつれて
 黄泉の国におちいりし 百の身魂を救ひ上げ
 仰ぐも高き天教の 山にまします木の花姫の
 神の命の御教を あをみの原の底までも
 宣べ伝へゆく宣伝使 神伊邪那美の大神の
 御許に仕へ奉る 吾は日の出神司
 醜のあつまる黄泉島 黄泉軍を言向けて
 世は太平の波の上 皇大神に従ひて
 救ひの神と顕現し 善と悪とを立別る
 この世を造りし神直日 心もひろき大直日
 直日のみたまを楯となし 厳のみたまや瑞みたま
 並んで進む荒海の 波をも怖ぢぬ荒魂
 風も鎮まる和魂 世人を救ふ幸魂
 暗世を照す奇魂 茲に揃うて伊都能売の
 神の命の神業は 山より高く八千尋の
 海より深き仕組なり 海より深き仕組なり』
と歌ふ声も風にさへぎられて、終には波の音のみ聞えけり。照彦はこの歌に耳をすませ、頭を傾け、
『モシ松代姫様、今往きちがひました船の舷頭に立てる二人の神様は、恐れ多くも伊邪那美の大神様と、天下に名高き日の出神様でありませう。幽かに聞ゆる歌の心によつて、慥に頷かれます。伊邪那美の命様は、根の国、底の国へお出で遊ばし、最早や此の世に御姿を拝することの出来ないものと、私共は覚悟致してをりました。然るに思ひもかけぬ此の海原で、伊邪那美の神様にお目にかかるといふは、何とした有難い事でございませうか。あゝ実に、貴女様はお父上を探ねてお出で遊ばす船の上で、あの世へ一旦行つた神様が、再び此の世へ船に乗つて現はれ、何処かは知らぬが東を指してお出ましになつた事を思へば、お父上に御面会遊ばすのは決して絶望ではありませぬ。否お父上のみならず、母上も御無事でゐらつしやるかも分りませぬ。何と今日は目出度い事でございませう』
『あゝ、あの気高い御姿を妾は拝んだ時、何とも言へぬ崇高な感じがしました。又日の出神様とやらのお姿を拝した時は、何となくゆかしき感じがして、わが父上の所在を御存じの方のやうに思はれてなりませぬ。もしや父上は、あのお船にお乗り遊ばして御座るのではあるまいか。あゝ何となく恋しい船だ』

10-1-1から10-1-14 偽のイザナミ

常世の国では、大国彦を日の出神に、大国姫を伊弉冊神になぞらえ、鷹取別を常世神王の宰相として、広国別を常世神王と称していた。

物語10-1-15 1922/02 霊主体従酉 言霊別

(本文)

 国祖国治立命出現されし太初の世界は、風清く澄み、水清く、空青く、日月曇なく、星を満天に麗しく輝き、山青く、神人は何れも和楽と歓喜に満され、山野には諸々の木の実、蔓の実豊熟し、人草は之を自由自在に取りて食ひ、富めるもなく貧しきもなく、老もなく病もなく死を知らず、五風十雨の順序正しく、恰も黄金時代、天国楽園の天地なりき。然るに天足彦、胞場姫の体主霊従的邪念は、凝つて悪蛇となり、また悪鬼悪狐となり、その霊魂地上に横行濶歩して茲に妖邪の気満ち、貧富の懸隔を生じ、強者は弱者を虐げ、生存競争激烈となり、地上は遂に修羅の巷と化したるのみならず、神人多くその邪気に感染して利己主義を専らとし、遂には至仁至愛の大神の神政を壊滅せむとするに至りける。地上神人の邪気は、遂に世界の天変地妖を現出し、大洪水を起し、一旦地の世界は泥海と化し、数箇の高山の巓を残すのみ、惨状目も当てられぬ光景とはなりぬ。
 この時、高皇産霊神、神皇産霊神、大国治立神は顕国玉の神力を活用し、天の浮橋を現はし給ひて地上の神人を戒め、且つ一柱も残さず神の綱に救ひ給ひ、諾冊二神を地の高天原なる天教山に降して、海月なす漂へる国を、天の沼矛を以て修理固成せしめ給ひ、国生み島生み神を生み、再び黄金世界を地上に樹立せむとし給ひぬ。然るに又もや幾多の年月を経て地の世界は悪鬼、悪蛇、悪狐その他の妖魅の跳梁跋扈する暗黒世界と化し、優勝劣敗、弱肉強食の社会を出現し、大山杙、野椎、萱野姫、天の狭土、国の狭土、天の狭霧、国の狭霧、天の闇戸、国の闇戸、大戸惑子、大戸惑女、鳥の石楠船(一名天の鳥船)、大宜都姫、火の焼速男(一名火の迦々彦、火の迦具土)、金山彦、金山姫等の諸神の荒び給ふ世を現出したりける。
 一旦天地の大変動により新に建てられたる地上の世界は、又もや邪神の荒ぶる世となり、諸善神は天に帰り、或は地中に潜み、幽界に入りたまひて、陰の守護を遊ばさるる事となりしため、再び常世彦、常世姫の系統は、ウラル彦、ウラル姫と出現し、ウラル山を中心として割拠し、自ら盤古神王と偽称し、大国彦、大国姫の一派は邪神のためにその精魂を誑惑され、ロッキー山に立て籠り、自ら常世神王と称し、遂には伊弉冊命、日の出神と僣称し、天下の神政を私せむとする野望を懐くに至れり。
 茲に伊弉冊命は、この惨状を見るに忍びず、自ら邪神の根源地たる黄泉の国に出でまして邪神を帰順せしめ、万一帰順せしむるを得ざるまでも、地上の世界に荒び疎び来らざるやう、牽制運動のために、黄泉国に出でまし、次で海中の竜宮城に現はれ、種々の神策を施し給ひしが、一切の幽政を国治立命、稚桜姫命に委任し、海中の竜宮を乙米姫命に委任し、自らロッキー山に至らむと言挙し給ひて、窃に天教山に帰らせ給ひ、又もや地教山に身を忍びて、修理固成の神業に就かせ給ひつつありたるなり。
 天地の神人は、此周到なる御経綸を知らず、伊弉冊命は黄泉の国に下り給ひしものと固く信じ居たるに、伊弉冊命のロッキー山に現はれ給ふとの神勅を聞くや、得たり賢しとして元の大自在天にして後の常世神王となりし大国彦は、大国姫その他の部下と謀り、黄泉島を占領して、地上の権利を掌握せむとしたれば、大神は遂に前代未聞の黄泉比良坂の神戦鬼闘を開始さるるに致りたるなり。
 この戦は、善悪正邪の諸神人の勝敗の分るる所にして、所謂世界の大峠是なり。

10-1-16から10-1-23 偽のイザナミ

物語10-1-25 1922/02 霊主体従酉 木花開

(本文)

 天雲も伊行きはばかる遠近の 鮮岳清山抜き出でし
 天教山の真秀良場や 心もつくしの山の上
 地底の国より吐き出す 猛き火口に向ひたる
 天津日向のあをぎ原 穢き国に到りたる
 醜のけがれを清めむと 神伊邪那岐の大神は
 日の出神と諸共に 千五百軍を呼び集へ
 浅間の海に下り立ちて 御身の穢を払ひます
 大神業ぞ勇ましき 天の教を杖となし
 進む衝立船戸神 心の帯を固く締め
 曲言向けし神ながら 道之長乳歯彦の神
 国治立の大神の 御稜威の御裳になり出でし
 道の蘊奥を時置師 一度に開く木の花の
 散りては結ぶ大御衣 神の心も和豆良比能
 宇斯能御神や御褌に なります神は道俣神
 心の空も飽咋の 宇斯能御神と冠りに
 戴き奉り左手の手纏に 救ひの御手を曲神の
 穢れの上に奥疎神 四方の大海国原も
 神の心に奥津那芸佐毘古 奥津甲斐弁羅神
 神世幽界辺疎神 辺津那芸佐毘古
 辺津甲斐辺羅神 十二柱の神たちは
 黄泉の島へ出でまして この世の曲霊を照し給ふとき
 穢に生れし神ぞかし アヽ麗しく尊さの
 限り知られぬ神業よ 限り知られぬ神業よ。
 伊邪那美大神
『久方の天津御神の言霊の 伊吹の狭霧に黄泉島
 黄泉軍を言向けて 暗よりくらき烏羽玉の
 常夜の空も晴れ渡り 天と地とに冴え渡る
 日の出神の功績は この世の光となりぬべし
 三五の月に弥まさり 御魂も清き月照彦の
 神のみことの宣伝使 尊き御代に大足彦の
 神のみことの言霊別や 嶮しき国は平けく
 狭けき国は弘子の 神の伊吹に払はれて
 世の曲神も少彦名 神の光の高照姫や
 心も清き真澄姫 八咫の鏡の純世姫
 清き教も竜世姫 地教の山に現はれし
 神伊邪那美大神の 御稜威輝く瑞御魂
 世は望月の永遠に 円く治まる五六七の世
 天津御国も国原も 堅磐常磐に常立と
 開化くる御世ぞ楽しけれ 天津御神の御教は
 一度に開く木の花の 咲き匂ふなる天教山の
 嶺永遠に動揺なく 天津日嗣の何時までも
 変らざらまし神の御世 豊葦原の瑞穂国
 御稜威も高き厳御魂 この世の泥をことごとく
 洗ひ清むる瑞御魂 厳と瑞との二神柱は
 天に現はれ地に生れ 清き神世を経緯の
 錦の御旗織りなして 天津御空の星の如
 八洲の国の砂の如 天の益人生み生みて
 世を永久に永遠に 雲に抜き出た高砂の
 珍の島ケ根の尉と姥 千歳の松の弥茂り
 栄え尽きせぬ神の国 限りも知れぬ青雲の
 棚引く極み白雲の 向伏す限りたてよこの
 神の御稜威に治むべし 神の御稜威に治むべし』
と歌ひ終らせ、伊邪那美大神はあをぎが原の神殿深く御姿を隠し給ふ。
 木花姫命は満面に笑を湛へ、諸神の前に現はれ給ひて声音朗かに歌ひ給ふ。
『豊葦原の中国に 一輪清く芳ばしく
 匂へる白き梅の花 神世の昔廻り来て
 国治立の大神が 日に夜に心配らせし
 常夜の国も晴れ渡り 曲津軍も服従ひて
 一度に開く木の花の うましき御代となりにけり
 闇より暗き世の中を 天津御神の神言もて
 黄泉の島に天降り 醜の国原言向けて
 日の出神と現れし 天と地との大道別の
 神の命と勇ましく 事戸を渡し琴平別の
 厳の御魂の百引千引 岩をも射ぬく誠心を
 貫き徹す桑の弓 弓張月の空高く
 輝き渡る神々の 功は清し天教山の
 尾根に湧き出る言霊は 湖の鏡に映るなり
 移り替るは世の中の 習ひと聞けど兄の花姫や
 咲き匂ふなる春の日も 瞬く間に紅の
 色香も夏の若緑 涼しき風に送られて
 四方の山々錦織り 紅葉も散りて木枯の
 風吹き荒み雪霜の ふる言の葉にかへり見て
 心を配れ神々よ 心を配れ神々よ
 春の花咲く今日の日は 吾胸さへも開くなり
 吾胸さへもかをるなり かをりゆかしき神の道
 一度に開く梅の花 一度に開く梅の花
 一度に開く梅の花』
 日の出神は、神人らの総代として凱旋の歌を詠ませ給ひぬ。その歌、
『日の若宮に現れませる 神伊邪那岐の大神は
 妹伊邪那美の大神と 天津御神の神言もて
 天と地との中空に 架け渡されし浮橋に
 立たせ給ひて二柱 撞の御柱大神と
 天の瓊矛をさしおろし 溢れ漲る泥海を
 こをろこをろにかきなして 豊葦原の中津国
 筑紫の日向のたちばなの をどのあをぎが原の辺に
 天降りまし木の花姫の 神の命と諸共に
 この世の泥を清めつつ 珍の国生み島を生み
 万の神人生みまして 山川草木の神を任け
 大宮柱太知りて 鎮まり給ふ折からに
 天足の彦や胞場姫の 醜の魂より現れし
 八岐大蛇や鬼狐 荒ぶる神の訪に
 万の災群れ起り 常夜の暗となり果てし
 世を照さむと貴の御子 日の出神に事依さし
 大道別と名乗らせて 世界の枉をことごとに
 言向け和せと詔り給ふ 力も稜威もなき吾は
 恵みの深き木の花姫の 三十三相に身を変じ
 助け給ひし御恵みに 力添はりて四方の国
 荒振る曲を言向けて 黄泉の島の戦ひに
 神の御稜威を顕はせし その功績は木の花姫の
 神のみことの稜威ぞかし 厳の御魂や瑞御魂
 三五の月の御教に 世界隈なく晴れ渡り
 千尋の海の底深く 竜の宮居も烏羽玉の
 暗き根底の国までも 天津日かげの永遠に
 明し照さむ神の道 富士と鳴門のこの経綸
 富士と鳴門のこの経綸 弥永遠に永遠に
 神の大道を天地と 共に開かむ、いざさらば
 鎮まりませよ百の神 鎮まりいませ百の神
 桃上彦の貴の御子 堅磐常磐の松代姫
 心すぐなる竹野姫 色香目出たき梅ケ香姫の
 神の命の三柱は 意富加牟豆美の桃の実と
 この世に現れ厳御魂 瑞の御魂と何時までも
 三五の月の御教を 堅磐常磐に守り坐せ
 堅磐常磐に守り坐せ』
 この御歌に数多の神々は歓喜の声に満たされて、さしもに高き天教山も破るる許りの光景なりき。 木の花の鎮まり給ふこの峰は
  不二の三山と世に鳴り渡る

物語10-2-27 1922/02 霊主体従酉 言霊解(一)

(本文)

要するに伊邪那岐、伊邪那美二神は、地球を修理固成し、以て生成化々止まざるの御神徳を保有し、且之を発揮し、万有の根元を生み玉ふ大神である。併し一旦黄泉国の神と降らせ玉へる時の伊邪那美の大神は、終に一日に千人を殺さむ、と申し玉ふに立到つたのであります。更に日本言霊学の用より二神の神名を解釈すれば、伊邪那岐命は万有の基礎となり土台となり、大金剛力を発揮して修理固成の神業を成就し、天津神の心を奉体して大地を保ち、万能万徳兼備し◎の根元を定め、永遠無窮に活き徹し、天津御祖の真となり、善道に誘ふ火水様である。次に伊邪那美命は、三元を統べ体の根元を為し、身体地球の基台となり玉となりて暗黒界を照し玉ふ、太陰の活用ある神様であつて、月の大神様であり、瑞の御霊である。斯の如き尊貴円満仁慈の神も、黄泉国に神去ります時は、やむを得ずして体主霊従の神と化生し給ふのである。此処には御本文により男神のみの御活動と解釈し奉るのであります。

物語10-3-32 1922/02 霊主体従酉 土竜

(あらすじ)

 黄泉比良坂の戦いの後、伊邪那岐皇大神は日の国へ、神伊邪那美大神は月の御国へ帰り、速須佐之男大神は大海原の主宰神となった。
 また、伊都能売神である木之花姫、日の出神が現界、幽界、神界を守ったので、天地は良く治まり、ミロクの世になった。大国彦と大国姫は改心していた。
 しかし、年月が立つにしたがって、ウラル彦やウラル姫はアーメニヤに宮を構え、世を乱しはじめた。

(本文)

 海月なす漂ふ国を真細さに 固め成したる伊邪那岐の
 皇大神は日の国の 元津御座に帰りまし
 神伊邪那美の大神は 月の御国に帰りまし
 速須佐之男の大神は 大海原の主宰神と定め給ひて
 伊都能売の神の霊の木之花姫 日の出神に現界、幽界、神の界を
 守らせ給ひ天地は 良く治まりて日月は
 清く照り渡り風爽かに 雨の順序も程々に
 栄えミロクの御代となり 天津神等八百万
 国津神等八百万 百の民草千万の
 草木獣に至るまで 恵みの露に潤ひて
 歓ぎ喜ぶ其声は 高天原に鳴り響く
 芽出度き神世となりにけり 黄泉軍の戦争に
 八十の曲津は消え失せて 此世を造りし神直日
 心も広き大直日 直日に見直し聞き直し
 互に睦み親しみて 天の下には争闘も
 疾病も老も死も無くて 治まりけるも束の間の
 隙行く駒の此処彼処 荒振る神の曲津見は
 八岐大蛇や醜の鬼 醜の狐の曲業の
 おこり来りて千早振る 神の御国を撹き乱し
 世人の心漸くに あらぬ方にと傾きて
 乱れ騒ぐぞ由々しけれ 恵みも深き皇神の
 誠の光に照らされて 常世の国の自在天
 大国彦や大国姫の命は畏くも 魂の真柱樹て直し
 任のまにまに黄泉国 常世の国に留まりて
 四方の神人守れども 常世の彦や常世姫
 神の末裔なるウラル彦 ウラルの姫は懲りずまに
 盤古神王と詐りて ウラルの山の麓なる
 アーメニヤの野に都を構へ 探女醜女と諸々の
 八十の曲津を引寄せて 又もや此世を乱し行くこそ是非なけれ。

物語10-3-37 1922/02 霊主体従酉 祝宴

(本文)

  年てふ年は多けれど 月てふ月は多けれど
 日といふ日にちは多けれど 世界晴した今日の日は
 如何なる吉日の足日ぞや 曲津の神に呪はれて
 命も既になきところ あな有難や三五の
 神の教の宣伝使 石凝姥の神司
 梅ケ香姫の御恵み 神の御稜威の輝きて
 吾身はここにアルタイの 山より高き父の恩
 母の恩にも弥勝る 神の恵の露に濡れ
 湿り果てたる吾袖の 涙も乾く今日の空
 噫有難やありがたや 吾が父母と諸共に
 今より心を改めて 天教山に現れませる
 日の出神や木の花の 厳の御魂の御教と
 黄金山に現れませる 埴安彦や埴安姫の
 神の命の御教を 麻柱ひまつり祝ぎまつり
 地教の山に現れましし 神伊邪那美の大神の
 鎮まり給ふ月夜見の 円き身魂を洗ひつつ
 この世の暗を照すべし 

物語12-4-28 1922/03 霊主体従亥 三柱の貴子

(本文)

 私はもうお暇を頂いて、母の国に帰らうと仰せられたのであります。根の堅洲国と申すのは母神の伊邪那美命がおいでになつてゐる所であります。尤もこれまでの或る国学者達は根の堅洲国といふのは地下の国であると云つて居りますが、併し一番に此伊邪那美命は月読命と同じく月界に御出でになつたのでありますから、月界を根の堅洲国と言つたのであります。で須佐之男命は自分の力が足らないのである、不徳の致す所であるからして自ら身を引いて、根の堅洲の国へ行かうと仰有つて、一言も部下の神々の不心得や、其悪い行状を仰せられなかつた。如何にも男らしい潔白なお方で御座います。所が伊邪那岐命は非常に御立腹になつた。

物語15-3-12 1922/04 如意宝珠寅 一人旅

(あらすじ)

 素盞嗚尊は母伊弉冊命に会いに地教山に行く。鬼掴が山に登らせないので、その鬼掴を足で蹴り飛ばしてさらに進んだ。しかし、行く手は巨大な大蛇が道を塞いでいた。素盞嗚尊が思案にくれていると、伊弉冊命があらわれ、「あまたの神人の罪汚れを救うは汝の天賦の職責なれば、千座の置戸を負いてあまねく世界を遍歴し、あらゆる艱難辛苦をなめ、天地にわだかまる鬼、大蛇、悪狐、醜女、曲津見の心を清め、善を助け悪を和め、八岐大蛇を十握の剣をもって切りはふり、彼が所持せる叢雲の剣を得て天教山に坐す天照大神に奉るまでは」会えないと言う。
 鬼掴が素盞嗚尊に帰順した。実は、鬼掴は鬼雲彦の家来ではなく「高天原のある尊き神様より内命を受け、貴神の当山に登らせたまうを道にて遮断せよとの厳命をいただきしもの」であった。鬼掴は、「この度の天の岩戸の変は貴神の罪に非ず、罪はかえって天津神の方にあり、いづれの神も御心中御察し申し上げいる方々のみ」と、素盞嗚尊に同行することを申しでる。

(本文)

はれ給ひ、中に優れて高尚優美なる一柱の女神は、素盞嗚尊に向ひ、
『ヤヨ、愛らしき素盞嗚尊よ、妾は汝が母伊邪冊命なるぞ、汝が心の清き事は高天原に日月の如く照り輝けり。さりながら大八洲国になり出づる、数多の神人の罪汚れを救ふは汝の天賦の職責なれば、千座の置戸を負ひて洽く世界を遍歴し、所在艱難辛苦を嘗め、天地に蟠まる鬼、大蛇、悪狐、醜女、曲津見の心を清め、善を助け悪を和め、八岐の大蛇を十握の剣をもつて切りはふり、彼が所持せる叢雲の剣を得て天教山に坐し在す天照大神に奉るまでは、唯今限り妾は汝が母に非ず、汝又妾が子に非ず、片時も早く当山を去れよ、再び汝に会ふ事あらむ、曲津の猛び狂ふ葦原の国、随分心を配らせられよ』
と宣らせ給ふと見れば、姿は煙と消えて後には地教山の峰吹き渡る松風の音のみにして、道に障碍りたる大蛇の影も何時しか見えずなりぬ。
 素盞嗚尊は止むを得ず此処より踵をかへし、急坂を下らせたまへば、以前の男、鬼掴は大地に平伏し尊に向つて帰順の意を表し、
『私は実を申せば鬼雲彦の家来とは偽り、高天原の或尊き神様より内命を受け、貴神の当山に登らせたまふを道にて遮断せよとの厳命を頂きしもの、嗚呼併しながら此度の天の岩戸の変は貴神の罪に非ず、罪は却つて天津神の方にあり、何れの神も御心中御察し申上げ居る方々のみ。吾は之より心を改め貴神の境遇に満腔の同情を表し奉り労苦を共にせむと欲す、何卒々々世界万民の為に吾が願を許させ給へ』

物語22-1-1 1922/05 如意宝珠酉 玉騒疑

(本文)

 天と地との元津御祖、国治立大神は、醜の曲津の猛びによりて、是非なく豊国姫尊と共に独身神となりまして御身を隠したまひ、ここに大国治立尊の御子とまします神伊弉諾大神、神伊弉冊大神の一一柱、天津大神の御言を畏み、海月なす漂へる国を造り固め成さむとして、神勅を奉じ、天の浮橋に立ち、泥水漂ふ豊葦原の瑞穂国を、天の瓊矛をもつて、シオコヲロ、コヲロに掻き鳴したまひ、滴る矛の雫より成りしてふ自転倒島の天教山に下り立ち、天の御柱、国の御柱を搗き固め、撞の御柱を左右りより廻り会ひ、再び豊葦原の中津国を、神代の本津国に復さむと、木の花姫命、日の出神と言議りたまひて、心を協せ力を尽くし、神国成就のために竭したまひしが、天足彦、胞場姫の霊より現はれ出でたる醜の曲津見、ふたたび処を得て、縦横無尽に暴れ狂ひ、八百万の神人はまたも心捩けて、あらぬ方にと赴きつ、復び世は常闇となりにけり。
 ここに天照大御神、神素盞嗚大神は、伊弉諾命の御子と現れまして、天津神、国津神、八百万の神人に誠の道を説き諭し給ひしが、世は日に月に穢れゆきて、畔放ち溝埋め、樋放ち頻蒔き串差し、生剥ぎ逆剥ぎ、屎戸許々太久の罪、天地に充満し、生膚断、死膚断、白人胡久美、己が母犯せる罪、己が子犯せる罪、母と子と犯せる罪、子と母と犯せる罪、畜犯せる罪、昆虫の災、高津神の災、高津鳥の災、畜殪し蠱物せる罪、許々太久の罪出で来たり、世はますます暗黒の雲に閉され、黒白も分かずなりゆきたれば、素盞嗚大神は葦原国を治め給ふ術もなく、日夜に御心を砕かせ給ひ、泣き伊佐知給へば、ここに神伊弉諾命、天より降り給ひて、素盞嗚尊にその故由を問はせ給ひ、素盞嗚尊は地上の罪悪を一身に引き受け、部下の神々または八岐大蛇醜神の曲を隠し、吾が一柱の言心行悪しき為なりと答へ給へば、伊弉諾大神は怒らせ給ひ、
『ここに汝は海原を知食すべき資格なければ、母の国に臻りませ』と厳かに言宣り給へば、素盞嗚尊は姉の大神に事の由を委細に申し上げむと、高天原に上り給ふ。
 このとき、山川草木を守護せる神々驚きて動揺し、世はますます暗黒となりければ、姉大神は弟神に黒き心ありと言挙げし給ひ、ここに天の安河を中におき、天の真奈井に御禊して、厳之御魂、瑞之御魂の証明し給ひ、姉大神は変性男子の御霊、弟神は変性女子の御霊なることを宣り分け給ひぬ。
 素盞嗚尊に従ひませる八十猛の神々は大いに怒りて、
『吾が仕へ奉る素盞嗚大神は、清明無垢の瑞霊に坐しませり。然るに何を以て吾が大神に対し、黒き心ありと宣らせ給ひしか』と怒り狂ひて、つひに姉大神をして天の岩戸に隠れ給ふの已むなきに到らしめたのは、実に素盞嗚尊のために惜しむべきことである。
 ここに素盞嗚大神はいよいよ千座の置戸を負ひ給ひ、吾が治せる国を姉大神に奉り、高天原を下りて、葦原の中津国に騒れる曲津神を言向和し、八岐大蛇や醜狐、曲鬼、醜女、探女の霊を清め、誠の道に救ひ、完全無欠、至善至美なるミロクの神政を樹立せむとし、親ら漂浪の旅を続かせ給ふこととなつた。
 大洪水以前はエルサレムを中心として神業を開始し給ひしが、ここに国治立尊の分霊国武彦と現はれて、自転倒島に下りまし、神素盞嗚大神と共に五六七神政の基礎を築かせ給ふこととなつた。
 それより自転倒島は、いよいよ世界統一の神業地と定まつた。
 顕国玉の精より現はれ出でたる如意宝珠をはじめ、黄金の玉、紫の玉は、神界における三種の神宝として、最も貴重なる物とせられてゐる。この三つの玉を称して瑞の御霊といふ。この玉の納まる国は、豊葦原の瑞穂国を統一すべき神憲、惟神に備はつてゐるのである。
 ここに国治立尊は天教山を出入口となし、豊国姫神は鳴門を出入口として、地上の経綸に任じ給ひ、永く世に隠れて、五六七神政成就の時機を待たせ給ひぬ。素盞嗚尊はその分霊言霊別命を地中に隠し、少彦名命として神業に参加せしめ給ひしが、今また言依別命と現はして、三種の神宝を保護せしめ給ふこととなつた。
 言依別命の神業に依りて、三種の神宝は錦の宮に納まり、いよいよ神政成就に着手し給はむとする時、国治立尊と豊国姫尊の命に依り、未だ時機尚早なれば、三千世界一度に開く梅の花の春を待ちて三箇の神宝を世に現はすべしとありければ、言依別命は私かに神命を奉じて、自転倒島のある地点に深く隠したまひし御神業の由来を、本巻において口述せむとす。有形にして無形、無形にして有形、無声にして有声、有声にして無声なる神変不可思議の神宝なれば、凡眼をもつて見ること能はざるはもとよりなり。

物語47-0-2 1923/01 舎身活躍戌 総説

 最上天界すなはち高天原には、宇宙の造物主なる大国常立大神が、天地万有一切の総統権を具足して神臨したまふのであります。そして、大国常立大神の一の御名を、天之御中主大神と称へ奉り、無限絶対の神格を持し、霊力体の大原霊と現はれたまふのであります。この大神の御神徳の、完全に発揮されたのを天照皇大御神と称へ奉るのであります。
 そして霊の元祖たる高皇産霊大神は、一名神伊邪那岐大神、またの名は、日の大神と称へ奉り、体の元祖神皇産霊大神は、一名神伊邪那美大神、またの名は、月の大神と称へ奉るのは、この物語にてしばしば述べられてある通りであります。また高皇産霊大神は霊系にして、厳の御霊国常立大神と現はれたまひ体系の祖神なる神皇産霊大神は、瑞の御魂豊雲野大神、またの名は、豊国主大神と現はれたまうたのであります。この厳の御魂は、ふたたび天照大神と顕現したまひて、天界の主宰神とならせたまひました。ちなみに、天照皇大御神様と天照大神様とは、その位置において、神格において、所主の御神業において、大変な差等のあることを考へねばなりませぬ。また瑞の御魂は、神素盞嗚大神と顕はれたまひ、大海原の国を統御遊ばす、神代からの御神誓であることは、神典古事記、日本書紀等に由つて明白なる事実であります。

物語48-3-12 1923/01 舎身活躍亥 西王母

 言霊別命は二人を門内に待たせおき、悠々として奥深く入りたまうた。二人は門内に佇み、園内に繁茂せる果樹の美しきを眺めやり、舌うちしながら頭を傾け「アーア」と驚きに打たれ吐息を洩らしてゐる。しばらくすると、庭園の一方より目も眩むばかりの光を放ち、悠々と入り来たりたまふ妙齢の天女があつた。二人は思はずハツと大地にしやがみ敬礼を表した。この女神は西王母といつて、伊邪那美尊の御分身、坤の金神であつた。西王母といふも同身異名である。

物語65-5-26 1923/07 山河草木辰 七福神

弁天『妾は神代の昔のある歳、頃は弥生の己の巳日、二本竹の根節を揃へて、動ぎ出でたる嶋だといふので、竹生島と称へられる、裏の国の琵琶の湖に浮べる一つの嶋に、天降りました天女の中でも、最も勝れたナイスの乙女ですよ。自分から申しますと何んだか自慢するやうですが、神徳があまりあらたかなといふので、世人より妙音弁財天女と崇められ、妾-の身体は引ぱり凧のやうに日の下の国の四方に分霊を祭られてをります。先づ東の国では江の島、西の国では宮嶋に、今一躰は勿体なくも古、伊邪那岐尊、伊邪那美尊の二柱の神様が天の浮橋に渡らせたまひ、大海原に天降り、始めて開かれたる淤能碁呂嶋、その時、鶺鴒といふ小鳥に夫婦の道を教へられ、天照大神を生み給ふてより、また一名を日の出嶋と名付けられ、この国人に帰依せられ、福徳を授けしによつて、美人賢婦の標本として七福神の列に加はつたことは、十六福神さまも遠うの昔に御存知の筈。アナタも何時の間にやら福禄寿でなくて、モウロク(最う六)十三になりましたねー、ホ丶丶丶丶』

物語76-0-3 1933/12 天祥地瑞卯 日本所伝の天地開闢説

神代七代 
 天地が開け初めた時に、高天原に化り出でし神は、
 第一に 天之御中主神
 第二に 高皇産霊神
 第三に 神皇産霊神
 以上三柱神であつた。此の神々は皆配偶の無い独神であつて、其後御身を見えぬやうに隠し玉ふた。
 国土未だ定かに成り整はずして恰も脂の浮ける如く、海月の海水に浮けるが如き状態であつた時、芦の芽の如うに萌え出でて成らせ給うた神は、
 第四に 宇麻志阿斯訶備比古遅神
 第五に 天之常立神
である。此二柱神も亦同じく、独神で、其後も依然として御身を見えぬやう隠し玉うた。
 以上五柱の神を別天神と申し上げる。
 その次に成らせ給うた神は、
 第一に 国之常立神
 第二に 豊雲野神で此の二柱の神も亦独神で御身を隠された。其の次に生れ坐せし神は、いづれも配偶の神々で、
 第三に 宇比地邇神  女神は須比智邇神
 第四は 角杙神  女神は活杙神
 第五は 意冨斗能地神  女神は意冨斗能弁神
 第六は 淤母陀琉神  女神は阿夜訶志古泥神
 第七は 伊邪那岐神  女神は伊邪那美
以上国之常立神より伊邪那美神までを神世七代と申すなり云々。(以下省略)


国の御柱神

物語06-4-21 1922/01 霊主体従巳 真木柱

伊弉諾大神の又の御名を、天の御柱の神といひ、伊弉冊大神の又の御名を、国の御柱の神といひ、天照大神の又の御名を、撞の御柱の神といふ。

物語01-4-35 1921/10 霊主体従子 一輪の秘密

国常立尊は冠島の国魂の神に命じて、この神宝を永遠に守護せしめたまうた。この島の国魂の御名を海原彦神といひ、又の御名を綿津見神といふ。つぎに沓島に渡りたまひて真澄の珠を永遠に納めたまひ、国の御柱神をして之を守護せしめられた。国の御柱神は鬼門ケ島の国魂の又の御名である。
 いづれも世界の終末に際し、世界改造のため大神の御使用になる珍の御宝である。しかして之を使用さるる御神業がすなはち一輪の秘密である。

物語01-4-36 1921/10 霊主体従子 一輪の仕組

 国常立尊は邪神のために、三個の神宝を奪取せられむことを遠く慮りたまひ、周到なる注意のもとにこれを竜宮島および鬼門島に秘したまうた。そして尚も注意を加へられ大八洲彦命、金勝要神、海原彦神、国の御柱神、豊玉姫神、玉依姫神たちにも極秘にして、その三個の珠の体のみを両島に納めておき、肝腎の珠の精霊をシナイ山の山頂へ、何神にも知らしめずして秘し置かれた。これは大神の深甚なる水も洩らさぬ御経綸であつて、一厘の仕組とあるのはこのことを指したまへる神示である。
 武熊別は元よりの邪神ではなかつたが、三つの神宝の秘し場所を知悉してより、にはかに心機一転して、これを奪取し、天地を吾ものにせむとの野望を抱くやうになつた。そこでこの玉を得むとして、日ごろ計画しつつありし竹熊と語らひ、竹熊の協力によつて、一挙に竜宮島および大鬼門島の宝玉を奪略せむことを申し込んだ。竹熊はこれを聞きて大いに喜び、ただちに賛成の意を表し、時を移さず杉若、桃作、田依彦、猿彦、足彦、寅熊、坂熊らの魔軍の部将に、数万の妖魅軍を加へ、数多の戦艦を造りて両島を占領せむとした。
 これまで数多の戦ひに通力を失ひたる竹熊一派の部将らは、武熊別を先頭に立て、種々なる武器を船に満載し、夜陰に乗じて出発した。一方竜宮島の海原彦命も、鬼門島の国の御柱神も、かかる魔軍に計画あらむとは露だも知らず、八尋殿に枕を高く眠らせたまふ時しも、海上にどつとおこる鬨の声、群鳥の噪ぐ羽音に夢を破られ、竜燈を点じ手に高く振翳して海上はるかに見渡したまへば、魔軍の戦艦は幾百千とも限りなく軍容を整へ、舳艪相啣み攻めよせきたるその猛勢は、到底筆舌のよく尽すところではなかつた。
 ここに海原彦命は諸竜神に令を発し、防禦軍、攻撃軍を組織し、対抗戦に着手したまうた。敵軍は破竹の勢をもつて進みきたり、既に竜宮嶋近く押寄せたるに、味方の竜神は旗色悪く、今や敵軍は一挙に島へ上陸せむず勢になつてきた。このとき海原彦命は百計尽きて、かの大神より預かりし潮満、潮干の珠を取りだし水火を起して、敵を殲滅せしめむと為し給ひ、まづかの潮満の珠を手にして神息をこめ、力かぎり伊吹放ちたまへども、如何になりしか、この珠の神力は少しも顕はれなかつた。それは肝腎の精霊が抜かされてあつたからである。次には潮干の珠を取りいだし、火をもつて敵艦を焼き尽くさむと、神力をこめ此の珠を伊吹したまへども、これまた精霊の引抜かれありしため、何らの効をも奏さなかつた。
 鬼門ケ島にまします国の御柱神は、この戦況を見て味方の窮地に陥れることを憂慮し、ただちに神書を認めて信天翁の足に括りつけ、竜宮城にゐます大八洲彦命に救援を請はれた。

物語02-1-7 1921/11 霊主体従丑 天地の合せ鏡

稚桜姫命一行は無事帰還された。さうしてこの玉を竜宮島の海に深く秘めおかれた。さきに木花姫命より大足彦に賜はりしは国の真澄の鏡である。天地揃ふて合せ鏡という神示は、この二個の神鏡の意である。また五個の神玉は海原彦命、国の御柱神二神の守護さるることなつた。

物語06-0-3 1922/01 霊主体従巳 総説

総て太古の御神政は神祭を第一とし、次に神政を行ひ、国々に国魂神があり、国魂神は、その国々の神王、又は八王などと云つて八尋殿を建てられ、殿内の至聖処に祭壇を設け、造化三神を鎮祭し、神王および八王は、同殿同床にて神明に奉仕された。さうして神政は左守神又は右守神(或は八頭神とも云ふ)に神示を伝へ神政を司掌らしめ玉うたのであります。さうして国治立命御神政の時代は、天使長と云ふ聖職があつて、国祖の神慮を奉じ、各地の国魂たる八王神を統轄せしめつつあつたのが、諾冊二尊の、淤能碁呂嶋へ御降臨ありし後は、伊弉諾の大神、八尋殿を造りて、これに造化の三神を祭り玉ひ、同殿同床の制を布き、伊弉冊尊を、国の御柱神として、地上神政の主管者たらしめ玉うたのであります。しかるに地上の世界は、日に月に、体主霊従の邪気漲り、物質的文明の進歩と共に、地上神人の精神は、その反比例に悪化し、大蛇、鬼、悪狐の邪霊は天地に充満して有らゆる災害をなし、収拾すべからざるに立ち致つた。そこで神界の神人の最も下層社会より、所謂糞に成り坐すてふ埴安彦神が現はれて、大神の神政を輔佐し奉るべく、天地の洪徳を汎く世界に説示するために教を立て、宣伝使を天下に派遣さるる事となつたのである。

物語06-6-31 1922/01 霊主体従巳 襤褸の錦

この大中教は、葦原の瑞穂国(地球上)に洽く拡がり渡りて、大山杙神、小山杙神、野槌神、茅野姫神の跋扈跳梁となり、金山彦、金山姫、火焼速男神、迦具槌神、火迦々毘野神、大宜津姫神、天の磐樟船神、天の鳥船神などの体主霊従的荒振神々が、地上の各所に顕現するの大勢を馴致したりける。
 ここに於て国の御柱神なる神伊弉冊命は、地上神人の統御に力尽き給ひて、黄泉国に神避りましたることは、既に述べたる通りなり。

物語06-7-39 1922/01 霊主体従巳 石仏の入水

丁『大きいも小さいもあるかい。この毎日日にち雨の降るのは、青雲山の御宝の黄金の玉とやらをウラル彦神が持つて去ぬと云ふので、神様が嘆いて毎日涙をこぼさつしやるのだ。それで涙の雨が降るのだ。困つた事になつたものだ。昔神澄彦天使さまが御守護あつた時は天気も好かつたなり、何時も青雲山は青雲の中まで抜き出て立派な姿を現はし、山の頂からは玉の威徳によつて紫の雲が靉靆き、河の水は清く美しく、果物は実り、羊はよく育ち、ほんたうに天下泰平であつたが、アーメニヤのウラル彦神が、青雲山に手を付けてからと云ふものは、ろくにお天道さまも拝めた事はなく、毎日々々、ザアザアザアと雨が土砂降りに降るなり、羊は雨気の草を食うて病を起してころつ、ころつと息盡なり、五日の風十日の雨は昔の夢となり、こんな詰らぬ世の中は有りやしない。何を言つても肝腎の大将が、鬼掴とかいふ悪い奴にまゐつて了うたのだから、お天道さまも御機嫌が善くないのは当前だ。それ迄は二十年や三十年に橋が落つるの、家が流れるのと云ふ様な水が出た事が無いぢやないか。何でも国の御柱神様は、あまり悪神が覇張るので業を煮やして、黄泉の国とかへさつさと行つて了はれたと云ふことだ。後に天の御柱神様が独り残されて、何も彼も御指揮を遊ばすと云ふ事だが、一軒の内でもおなじ事、女房が無くては家の内は暗がりと同じ様に、世界も段々暗うなつて来るのだよ』

物語07-4-18 1922/02 霊主体従午 海原の宮

時彦『業が湧くぢやないかい。若い男と女奴が海に飛び込みたり、上つたりしよつてな、終には気の良い宣伝使を、ちよろまかして夫婦になるなンて、馬鹿にしとるじやないか。俺らは遥々とこの波の上を、常世へ行くのも、ウラル彦さまの乾児となつて、甘い酒を鱈腹呑まして貰うためだ。国の御柱の神さまが根の国とかへ遁げて行つたと云つて、宣伝使とやらが騒いでゐるが、根の国とか、夜見の国とか云ふのは、常世の国のことだい。きつと酒に浸つて酒池肉林といふ、贅沢三昧を遊ばして御座るのよ。俺らもその酒池肉林に逢ひたさに、可愛い女房を捨てて行くのぢやないかエーン』

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