ウラル山・アーメニヤ・コーカス山

目次
1.地理的関係
2.アーメニヤ
3.霊界物語概観
4.物語5巻を考える
5.コーカスについて
6.霊界物語のコーカス山
7.まとめ

参考資料


1.地理的関係

霊界物語では、アーメニヤとコーカス山はとても重要な地域です。
 
地理的関係をはっきり述べているのはこの文章ですが、私には「瀬戸の海がアーメニヤ附近まで展開していた」という部分が分りません。
 
物語37-1-1 1922/10 舎身活躍子 富士山

 また小亜細亜のアーメニヤの南方に当たるエルセルムであつた。そしてヨルダン河も、現今のヨルダン河とは違つてゐることは勿論である。死海の位置も、メソポタミヤの東西をはさんで流れ落つる、現今の波斯湾がそれであつた。
 また現今の地中海は、この物語において、古代の名を用ゐ、瀬戸の海と称へられてゐる。この瀬戸の海は、アーメニヤの附近まで展開してゐた。しかしながら、これも震災のために、瀬戸の海の東部は陸地となつてしまつたのである。故にこの物語は、地球最初の地理によつて口述するものであるから、今日の地理学の上から見れば、非常に位置または名義が変つてゐることを、予め承知して読んでもらひたいのである。

はっきりしているのは、アーメニヤが現在のアルメニア近辺。それより、トルコ側に広がっていたと思われます。
琵琶の湖=カスピ海、瀬戸の海=地中海、呉の海はたぶん黒海でしょう。
通常の地名では下図のようになります。


■1、2巻のウラル山

物語では、最初はウラル山が登場します。

ウラル山の位置は、1巻、2巻では確定するのが不可能でしょう。
1、2巻は活動範囲が広く、世界に渡っているので、たぶん上図の関係かも知れません。2-47などは現在のウラル山脈かもしれません。もしくは、ウラル山麓の原野=アーメニヤとも言えます。この論考ではこちらを取ります。
 

2-47

天足彦、胞場姫の霊より出生したる金毛九尾白面の悪狐は、ただちに天竺にくだり、ついでウラル山麓の原野に現はれた。


■5巻以降のウラル山

5巻以降は、現在のロシアのウラル山脈よりも、アーメニヤの近くにありそうです。
下文章では「アーメニヤに来て、ウラル山に登った」とあり、近くにあることを思わせます。
 

物語05-2-13 1922/01 霊主体従辰 神憑の段

聖地エルサレムの天使言霊別の長子なる竜山別といふ腹黒き神人は、始終野心を包蔵してをつた。それゆゑ今回のエルサレムにおける変乱にも、自己一派のみは巧みに免れ、邪神常世彦の帷幕に参じてゐた。彼は今また、このアーメニヤにきたり、神人とともにウラル山の中腹に登つて断食断水の仲間に加はつてゐた。

5-12ではウラルの山颪が吹くところがアーメニヤです。かなり近くでしょう。

物語05-2-12

折しもウラルの山颪、地上を吹きまくり、つひには空前絶後の大旋風となつた。

5-13でも、アーメニヤとウラル山が近いことを思わせます。

物語05-2-13

彼は今また、このウラル山の中腹に登つて


■ウラル山の方角

ウラル山はアーメニヤのコーカス側にあったのか、アーメニヤの南にあったのかは、物語からは不明です。
しかし、6-31の文章ではカイン河の話でウラル山のことが語られているから、ウラル山はアーメニヤの南にある可能性もあります。その場合は、アララト山が比定されます。
 

物語06-6-31

アーメニヤの神都を南に距ること僅かに数十丁の田舎の村を、東西に流れてゐる可なり広き河あり、これをカイン河といふ。

コーカス山は現在のコーカス山脈のどれかの山で、カスピ海側にあることは間違いありません。

物語10-3-32

石凝姥神はアーメニヤに行かむと行をいそぎける。

次の文章では、カスピ海の西北がコーカス山です。
 

物語11-2-14

カスピ海の西岸に着いた「五人はいういうとして歌をうたひながら、またもや西北指してコーカス山目あてに進み行きたり。

カスピ海はコーカス山の麓。
 

物語12-3-27

実は家内も子供も一しよに乗つてゐますが、私はコーカス山の山麓の琵琶の湖のほとりに住むもの

呉の海からもコーカス山の麓になっているから、コーカス山は呉の海と琵琶の海にまたがる大きいものだったことが分ります。

物語12-2-16

「天に月日の光なく、地に村雲ふさがりて、奇しき神代も呉の海、国武丸に帆をあげて、水夫のあやつる櫂の音は、波に蛇紋を画きつつ、コーカス山の麓を指して進み行く。

呉の海と琵琶の湖は昔1つだったが別れたということ。
 

物語12-2-16

乙『もつたいないことを言ふな。この呉の海と、琵琶の湖だよ。さういう因縁のあるこの海に、どうして悪神さまが住居をなさるものかい。』

ウラル山とコーカス山から風が呉の海に吹き降ろす。

物語12-3-17

ウラルの山の山おろし     コーカス山の神風も
一つになりて呉の海 

呉の海から、大野原を進んで、琵琶の湖に行った。アーメニヤとは書いていないので、コーカス山の北側を通ったのでしょうか。

物語12-3-25 1922/03 霊主体従亥 琴平丸

高光彦、玉光彦の宣伝使は時置師神とともに橘島を立出て、呉の港に上陸し、宣伝歌をうたひながら、天地暗澹たる大野原を進みすすみて琵琶の湖のほとりに着きぬ。

全体の地図は下図のようになるでしょう。


■ウラルトゥ

アルメニア地方では先史時代に「ウラルトゥ」(URARTU)と言う国がありこれが「アララット」(ARARAT)に変化したということです。
ウラルトゥ王国の形成は紀元前9世紀ごろ、紀元前6世紀まで強力な奴隷制国家を維持していました。崩壊は、スキタイの侵入によるもので、その後、アルメニア人の国家になりました。
この地域の国では、その後アルメニアはインド・ヨーロッパ語族の外来文化が乗っかっていますが、グルジアは言語学的には土俗的で古い文化を比較的受け継いでいるといいます。
グルジアは現代でもイスラエルと関係が深い国で、古来からのユダヤを考えると、この地域「何かある」という思いを強くします。

  

2.アーメニヤ

新月の光

新月の光』ではア-メニヤが何度も出てきます。
 

上P.343
 アメは天でアーメニヤ、天照大神はここにおられた。
 (参照)『霊界物語』第37巻第1章「富士山」
  「アーメニヤということは天の意味または高天原の意味」

上P.348
 国常立尊はアーメニヤ方面から日本(現在の)へおいでになった。年代はほとんど同じくらいである。ニニ岐尊の降臨の高千穂の峰は富士山である。

下P.218 アーメニヤ騒動
問 疎開した児童はどうなるのですか。
答 これからが(『霊界物語』の)アーメニヤ騒動である。アーメニヤはアジアアメリカということである。アジアアメリカ騒動である。これからそうなってくるのである。
(昭和19年十月一日)

この後木庭氏の解説として44巻2章がとりあげられている。

 『皆さまに御免を蒙つて治国別が其方と別れし後のアーメニヤの状況を詳しく聞かしてくれないか。さうして其方はどういふ手続きでバラモン教にはいつたのか。その動機を聞かしてもらひたい』
 『兄上様が、アーメニヤの神都より宣伝使となつて竜宮の一つ洲へ渡られた後、バラモン教の一派に襲はれ、刹帝利、浄行をはじめ毘舎、首陀の四族は四方に散乱し、目も当てられぬ大惨事が突発しました。大宜津姫様が、コーカス山から敗亡のていで逃げ帰つて来られてから間もない疲弊の瘡(きず)の癒えきらないところだから、たちまち神都は防禦力を失ひ、常世の国ヘウラル彦、ウラル姫様一族はその姿を隠したまひ、諸司百官庶民の住宅は焼き亡ぼされ、ウラル河のほとりに武士の館が少しばかり残されたのみ。離々たる原上の草、累々たる白骨叢に纏(まと)はれて、ありし昔の都のおもかげも見えず、蓮府槐門の貴勝をはじめ毘舎の族に至るまで、ウラル河に身を投じて水屑となつたものも沢山にあり、中には遠国に落ちのび田夫野人の賤しきに身を寄せ、あるひは山奥の片田舎に忍び隠れて、桑門竹扉に佗住居する貴勝の身の果敢(はか)なさ。夜の衣は薄くして、暁の霜冷たく、朝餉(あさげ)の煙も絶え首陽に死する人も少なからず。その中にも私は父母兄弟に生別れ、死別れの憂目に会ひ、広い天下を当所(あてど)もなく漂流するうちバラモン教の片彦に見出だされ、心ならずも兄様の所在を探るを唯一の目的として今日まで日を送つて参りました。アゝ有難き大神様のお引合せ、コンナうれしいことはござりませぬ』

と袖に涙をしぼる。


木村鷹太郎説

木村鷹太郎の「世界的研究に基づく日本太古史」(1911年(明治44年)にアーメニヤのことが書かれています。
木村説ではアーメニヤは山城に当たります。
 

アルメニアの別名アマゾン(Ama-Zones)国のこと。アマゾンはアマ+ゾン、アマはヤマ(山)、ゾンはギリシャ語で園生(ゾノフ)で城を意味する。また、キリスト教でいうエデンの園もここである。


3.霊界物語概観

霊界物語でウラル山、アーメニヤ、コーカス山に関する話の大筋を紹介しましょう。

1巻

鬼熊、鬼姫がウラル山に割拠。しかし、竹熊との戦いに敗れ死んで、悪霊となる。

2巻

常世彦・常世姫の一派は正神と戦いを繰り返す。
その結果、ウラル山は八頭八尾の悪竜の元となり、ウラル山麓の原野(アーメニヤ)には天足彦、胞場姫の霊より出生したる金毛九尾白面の悪狐が現われたことになります。
 

物語02-7-471921/11 霊主体従丑 天使の降臨

 ここに常世姫は、竜宮城に敗れ、金毛八尾の悪狐と変じ、常世城に逃げかへり、魔神八頭八尾の大蛇とともに、天下を席捲せむとし、ロッキー山、ウラル山はにはかに鳴動をはじめ、八頭八尾の悪竜と化し、あまたの悪竜蛇を吐きだした。

 天足彦、胞場姫の霊より出生したる金毛九尾白面の悪狐は、ただちに天竺にくだり、ついでウラル山麓の原野に現はれた。ここに常磐城といふ魔軍の城がある。その王は八頭八尾の悪竜の一派にしてコンロン王といふ。青雲山より現はれたる金毛九尾の悪狐は、コンロン王の前に現はれ、たちまち婉麗ならびなき女性と化し、コンロン王に愛されつひにその妃となり、名をコンロン姫とつけられた。
 コンロン姫はウラル山一帯を掌握せむとし、まづコンロン王を滅ぼさむとして仏頂山の魔王、鬼竜王に款を通じてゐた。

5巻

 聖地エルサレムは常世彦、常世姫らの暴政の結果、天地の神明を怒らしめ、怪異続出して変災しきりにいたり、つひにアーメニヤに、八王大神は部下の神人とともに逐電した。エデン城、竜宮城、橄欖山の神殿は鳴動し、三重の金殿は丁字形の金橋となった。

 常世彦、常世姫は盤古大神とともに、アーメニヤやウラル山で怪異を体験する。常世彦、常世姫を守護したのは八頭八尾の大蛇・金毛九尾の悪狐あった。

 盤古大神は審神の力を発揮し、ウラル山に宮殿を造り治めた。ウラル彦、ウラル姫はアーメニヤに神都をきづいたが、日の出神がウラル山にやってきて盤古大神と手を握ったため、ウラル彦、ウラル姫はウラル山の盤古大神を攻撃、盤古大神は逃げた。

 常世城の大自在天大国彦(常世神王と改名)と、アーメニヤの常世彦、常世姫(ウラル彦、ウラル姫)との間に戦いが起こる。ウラル彦、ウラル姫は破れアーメニヤに逃げ帰る。

 その後、大洪水が起こるが、ウラル彦、ウラル姫も救われる。

6巻

 大洪水で救われたウラル彦、ウラル姫は一時は改心していたが、再度、ウラル彦は盤古神王自称して、アーメニヤで大中教を起して、独裁政治を布いている。

10巻、11巻

 ウラル姫大気津姫と称してコーカス山の山奥に、立派な宮殿を造り、たくさんの家来をつれて、人民の膏をしぼつて、自分らの眷属ばかりが栄耀栄華に暮していた。

 それを松竹梅の宣伝使他の宣伝使が制圧して、コーカス山は三五教の拠点となりました。

物語11-4-23 1922/03 霊主体従戌 保食神

黄泉比良坂の戦に、常世の国の総大将大国彦、大国姫その他の神人は、残らず日の出神の神言に言向け和され、悔い改めて神の御業に仕へ奉ることとなりたり。そのため八岐の大蛇や金毛九尾の悪狐、邪鬼、・醜女、探女の曲神は、暴威をたくましうする根拠地なるコーカス山には荘厳美麗なる金殿玉楼をあまた 建てならべ、ウラル彦の幕下の神人は、ここにおのおの根拠を造り、酒池肉林の快楽にふけり、贅沢の限りをつくし、天下をわが物顔に振るまふ我利々々亡者の隠処となりてしまひぬ。かかる衣食住に贅をつくす体主霊従人種を称して、大気津姫命と言ふなり。

三五教に占領されてからの状況。

物語11-5-24 1922/03 霊主体従戌 顕国宮

 アーメニヤにもおとらざる神都を開きつつありける。
 かかるところへ石凝姥命、天之目一箇神、天之児屋根命、正鹿山津見神の娘大神津見と現はれたる松代姫、竹野姫、梅ケ香姫、時置師神、八彦、鴨彦たち現はれて、天津誠の神言を奏上し宣伝歌をとなへたれば、さすがのウラル姫も以下のものどもも天津誠の言霊に胆をうたれ、胸をひしがれ、全力を集注して経営したるあたらコーカス山は今はまつたく三五教の管掌するところとなりにける。
 ここに神須佐之男命は地教の山をあとにして顕国の宮に入らせ給ひ、天之目一箇神をして十握の剣を鍛へしめ、顕国の宮の神実となし、天下の曲神を掃蕩すべく天之児屋根命、太玉命をして昼夜祭祀の道に鞅掌せしめ給ひける。神須佐之男大神は十握の剣をあまた作り供へて、曲神の襲来にそなへむため天之目一箇神をアルプス山につかはし、鋼鉄を掘らしめ、あまたの武器を作ることを命じたまへり。アルプス山はウラル彦、ウラル姫の一派の武器製造の原料をもとめつつありし重要の鉱山なりき。これより天之目一箇神は、竹野姫と共にアルプス山に向ふこととなりたり。
 淤縢山津見司、正鹿山津見司、月雪花の宣伝使は、アーメニヤに向ひける。またアルプス山には石凝姥神を添へて、天之目一箇神、竹野姫と共に、銅鉄を需めしむべく出発せしめ給ひける。 このこと、たちまち天上にます天照皇大神の御疑ひをいだかせ給ふ種となり、つひに須佐之男命は姉神に嫌疑を受け、神追ひにやらはれ給ふ悲境におちいり給ひたるなり。

6巻から11巻までのまとめ

物語12-1-1 1922/03 霊主体従亥 正神邪霊

常世彦の後身なるウラル彦は、八岐大蛇の霊に憑依されて、みづから盤古神王といつはりコーカス山に根拠を定めたりしが、
またもや三五教の宣伝使のために追ひ払はれ、今はほとんど策のほどこすところなく、アーメニアの都を捨て、八百万の曲神は四方八方に散乱し、筑紫の洲をはじめ高砂洲、常世の洲、豊秋津洲、竜宮洲等に死物ぐるいとなつて、悪逆無道のかぎりをつくすこそ歎てけれ。
 地上はふたたび妖気に充され、天日くらく、邪気発生して草木色をうしなひ、闘争所々に起り、悪病蔓延しふたたび常世の暗と一変して、諸神、諸人の泣き叫ぶ声は、天地に充満するにいたれり。しかるに悪神らは、アーメニアを死守して勢ひあなどるべからず、ウラル山また看過すべからざる形勢にあり。変幻出没きはまりなき魔神の活躍は、日に月に猛烈となり収拾すべからざる惨状を呈するにいたりたれば、神素盞嗚大神は大いにこれを憂ひ給ひて、母神のまします月界に還らむかとまで心を痛め給ひつつありける。

ウラル姫がコーカス山を捨ててアーメニヤに逃げてからの状況

物語12-3-27 1922/03 霊主体従亥 航空船

アーメニヤを死守せしめ、みづから黄泉島にわたりて第二の作戦計画をめぐらしつつありける。

13巻、14巻

ウラル教の岩彦、梅彦、亀彦、駒彦、音彦、鷹彦が、フサの国をアーメニヤに向かって横断し、醜の岩屋を探検する。

日の出別命がコーカス山に入り、人々が参詣している。野次彦、与太彦もコーカス詣をする。

岩彦、梅彦、亀彦、駒彦、音彦、鷹彦の三五教帰順。

15巻

ここは重要な場面。ウラル彦、ウラル姫はアーメニヤから常世国に逃れた。

物語15-1-1 1922/04 如意宝珠寅 破羅門

八頭八尾の大蛇、悪狐の邪霊は、アーメニヤ危険に瀕したれば、ウラル彦、ウラル姫は、遠く常世国に逃れ、茲に大自在天大国彦の末裔大国別、醜国姫の夫婦をして、埃及のイホの都に現はれ、第二のウラル教たる婆羅門教を開設し、大国別を大自在天と奉称し、茲に極端なる難行苦行を以て、神の御心に叶うとなせる教理を樹立し、進んでメソポタミヤの秀穂の国に来り、エデンの園及び顕恩郷を根拠としたりける。それが為に聖地エルサレムの旧都に於ける黄金山の三五教は忽ち蚕食せられ、埴安彦、埴安姫の教理は殆ど破壊さるる悲境に陥りたるなり。
 茲にコーカス山に残し、夜を日に継いでエデンの河上に現はれ、エデンの花園を回復して根拠とし、ハム族の侵入を防がしめむとし給ひ、太玉命は安彦、国彦、道彦の三柱と共に、エデンの園に宮殿を造り、ハム族の侵入に備へ居たり。されど河下の顕恩郷は遂に婆羅門教の占領する所となり了りぬ。ここに太玉命は、その娘照妙姫をエデンの花園に残し置き、安彦、国彦、道彦を引連れて、顕恩郷の宣伝に向ひたり。この安彦と云ふは弥次彦の改名、国彦は与太彦の改名、道彦は勝彦の改名せし者なり。

三五教の太玉命は、コーカス山を出発して、バラモン教の本山顕恩郷を攻撃します。

神素盞嗚尊は、姉大神の斯くも深き猜疑心に包まれ給うとは夢にも知らず、コーカス山を立出でて、天磐船に乗り、天教山に向かいます。

その後は単発的にコーカス山が出てきます。すべて三五教の根拠地の一つとしてです。

コーカス山からウラル姫が追われた後、常世国に逃げましたが、その後まもなく、アーメニヤはバラモン教に襲われて荒れ果てました。

物語44-1-2 1922/12 舎身活躍未 月の影

コーカス山から敗亡のていで逃げ帰つて来られてから間もない疲弊の瘡の癒えきらないところだから、たちまち神都は防禦力を失ひ、常世の国へウラル彦、ウラル姫様一族はその姿を隠したまひ、諸司百官庶民の住宅は焼き亡ぼされ、ウラル河のほとりに武士の館が少しばかり残されたのみ。離々たる原上の草、累々たる白骨叢に纒はれて、ありし昔の都の俤も見えず、蓮府槐門の貴勝をはじめ毘舎の族に至るまで、ウラル河に身を投じて水屑となつたものも沢山にあり、中には遠国に落ちのび田夫野人の賤しきに身を寄せ、あるひは山奥の片田舎に忍び隠れて、桑門竹扉に佗住居する貴勝の身の果敢なさ。夜の衣は薄くして、暁の霜冷たく、朝餉の煙も絶えて首陽に死する人も少なからず。


 4.物語5巻を考える

この地域を考えるためには、物語5巻が重要でしょう。 ここでは抜粋しています。

原文

常世彦は八頭八尾の大蛇に助けられてアーメニヤにやってきます。

物語05-2-10 1922/01 霊主体従辰 奇々怪々

 常世彦は火と雪とに攻められ、あまたの神人らと共に、辛うじてアーメニヤの野にむかつて遁走しはじめた。

 盤古大神はいち早くエデンの大河に船をうかべ、南岸に渡り、雪をかきわけながら些少の従者とともに、期せずして、アーメニヤの野にむかつて命カラガラ遁走した。降雪ますます烈しく、つひに一行は雪に埋もれてしまつた。

 このとき太陽はにはかに光熱を増し、四方山の積雪は一時に氷解し、地上はあたかも泥の海となつてしまつた。盤古大神はじめその他の神人らは、傍の木に辛うじて攀ぢ上つた。あまたの蛇その他の虫族は先を争ふて木にのぼり難を避けた。前方の木の枝にあたつて泣き叫ぶ声が聞えた。見れば、竜宮城の司宰者なる常世姫が、木の上であまたの毒蛇に全身を巻かれて苦しむ声であつた。八王大神はその木の中腹にまたもやあまたの蛇に全身を巻き付けられ、顔色蒼白となり、息も絶え絶えの光景である。
 このとき東南の方より、天地六合も一度に崩壊せむばかりの大音響をたて、黒雲をおこし、まつしぐらに進みきたる大蛇があつた。
 これは天足彦、胞場姫の霊より現はれた八頭八尾の大蛇であつた。
 大蛇は巨大なる尾を前後左右に打振りうち振り暴れまはつた。この震動に水はおひおひと減じ、大地の表面を露はすやうになつた。すべての蛇は先を争ふて樹上より落下し、各自土中にその影を潜めた。

 このため常世彦、常世姫をはじめ、塩長彦は漸くにして危難を免れ、神人らと共に、アーメニヤに無事到着することを得た。

 
物語05-2-11 1922/01 霊主体従辰 蜃気楼

盤古大神以下の神人は、忽然として現はれたるアーメニヤの宮殿を、万古不易の安住所と定め、各居室を定め、八百万神を配置し神政を行ふこととなつた。天より降つたか、地から湧いたか、知らぬまに荘厳無比の宮殿をはじめ数多の建築物が建てられてゐた。

ここはアーメニヤの宮殿と、何れも思ふて宮殿の方を一せいに見やれば、今まで立派な宮殿と見えしは蜃気楼であつた。の宮殿と、何れも思ふて宮殿の方を一せいに見やれば、今まで立派な宮殿と見えしは蜃気楼であつた。の宮殿と、何れも思ふて宮殿の方を一せいに見やれば、今まで立派な宮殿と見えしは蜃気楼であつた。の宮殿と、何れも思ふて宮殿の方を一せいに見やれば、今まで立派な宮殿と見えしは蜃気楼であつた。

(これは国治立命側の白狐が見せた幻)

盤古大神も八王大神も天上に影が映つてゐるのみで、依然として深き泥田に乳のあたりまで落ちいり、身動きもならず苦しんでゐた。されど数多の神人らは、盤古大神以下の神将残らず天上に昇りしものと思ひ、右往左往に泥田を走りまはり、盤古大神、八王大神以下の神将を泥足で踏みつけ、一せいに、
『オイオイ』
と泣くばかりである。
 このときウラル山の方面より黒雲をまきおこし、空中を照らし進みきたる八頭八尾の大蛇が現はれた。今まで国治立尊以下の神将、天の一方に現はれゐたりしその姿はいつしか消えうせ、八頭八尾の大蛇の火を噴きつつ、満天墨を流したごとく黒雲をもつて包んでしまつた。

 

物語05-2-12 1922/01 霊主体従辰 不食不飲

八頭八尾の大蛇の命令

折しもウラルの山颪、地上を吹きまくり、つひには空前絶後の大旋風となつた。あらゆる樹木を吹き倒し、泥田に落ちたる神人らを、木の葉のごとく土もろとも中天に捲きあげ、天上をぐるぐると住吉踊りの人形のやうに釣りまはした。そのため何れの神人も、鶴のやうに首が残らず長くなつてしまつた。ちやうど空中に幾百千とも限りなき首吊りが出来たやうなものである。首吊りでなくて、残らず鶴首になつてしまつた。
 風がやむとともに、一せいに雨霰のごとく地上に落下した。腕を折り足を挫き腰をぬかし、にはかに半死半生の者ばかりとなつてしまつた。そのとき何処ともなく、
『八岐の大蛇、八岐の大蛇』
といふ声がきこえた。八百万の腰抜け奴、不具者はぶるぶる唇をふるはせながら、
『八岐の大蛇様、助けたまへ』
と叫んだ。
 たちまち天上より美はしき八柱の男女の神人が、神人らの前に降つて来た。さうしてその中の一番大将と思しき男神は、耳まで裂けた紅い口をひらいて、
『吾はアーメニヤの地にきたつて神都を開き、神政を樹立せむと思はば、まづ第一に宮殿を造り、わが霊魂を鎮め、朝夕礼拝を怠るなかれ。また盤古大神をはじめ八王大神その他の神人は、ただ今より百日の断水断食を励むべし』
と言ふかと見れば、八柱の神人の姿は烟のごとく消え、ただ空中を運行する音のみ聞えてきた。その音も次第々々に薄らいでウラル山目がけて帰つたやうな気持がした。
 不思議にも、大負傷に悩んでゐた神人は手も足も腰も旧のごとくに全快し、ただ首のみは長くなつたままである。神人らは先を争ふて、ウラル山方面さして断食をなさむと駈け登つた。
 ウラル山の中腹には、非常な広い平地がある。この平地は南向きになつて、非常に香りのよい甘さうな果物が枝もたわむばかりになつてゐて、平地に垂れてゐる。

 あまたの神人は、やつと此処まで登つてきたが、咽喉はにはかに渇きだし、腹は非常に空いてきた。されど大蛇の厳命によつて、咽喉から手が出るほど食ひたくても食ふことができなかつた。ちやうど餓鬼が河の端に立つて、その水を飲むことができぬやうな苦痛である。
 盤古大神はじめ八王大神はしきりに口なめしをなし、長舌を出し、この果物をみて羨望の念にかられてゐた。神人は咽喉は焼けるほど渇き、腹は空いて板のごとくなつてゐる矢さき、目の前にぶらついたこの美味を食ひたくて堪らず、見るより見ぬが薬と、いづれも目を閉ぶつて見ぬやうに努めてゐた。さうすると何処ともなしに、百雷の一時に落下したやうな音響がきこえ、地響がして身体をニ三尺も中空に放りあげた。吃驚して思はず目を開くと、目の前、口の前に甘さうな果物がぶらついてゐる。エエままの皮よと四五の従者は、そのまま大きな果物を鷲づかみにしてかぶりはじめた。何とも言へぬ甘さである。濡れぬうちこそ露をも厭へ、毒を食ふたら皿までねぶれといふ自棄糞気味になつて、四五人の神人は舌鼓をうつて猫のやうに咽喉をごろごろ鳴らしながら、甘さうに食ひ始めた。傍の神人はその音を聞いて矢も楯もたまらなくなつて、目を閉ぢた上、両方の指で耳を塞いで、顔をしかめて辛抱してゐた。風が吹くと、果物の枝が揺れて、その甘さうな果物は口のあたりに触つてくる。
 思はず知らず舌がでる。こいつは堪らぬとまた口を閉いだ。ちやうど見ざる、聞かざる、言はざるの庚申さまの眷属が沢山に現はれた。
 四五の自棄糞になつた神人は腹一杯布袋のやうになつて息までも苦しく、肩で息をするやうになつた。腹の中は得心したが、まだ舌が得心せぬので、無理無体に舌の要求をかなへてやつた。もはや舌も得心をしたが、かんじんの眼玉が得心せぬので無理矢理に取つては食ひ取つては食ひ、大地にドンドンと四肢を踏んで、詰め込まうとした。そのとたんに臍の括約筋がバラバラになつて、果物の赤子が沢山生れた。アイタタ、アイタタと腹をかかへて顰み面しながら大地に七転八倒した。他の神人はまた目をあけてこの光景を見、あり合ふ草の蔓をとつて腹の皮を一処へあつめ、これを臍の真中でかたく括り、五人の神人を神命違反の大罪人として棒にかつぎ、その果物の樹の枝にかけた。
 この時、またもや天上から声がした。
『腹が空いたら、神命違反者を食らへ』
と言つた。神人は果物は食はれぬが、この五人の神人でも食つて見たいやうな気がした。このとき早玉彦といふ八王大神の侍者は、天の声のする方にむかひ、
『断食する吾々、この者を食ふても神意に反せずや』
と尋ねて見た。
 さうすると、また空中に声あつて、
『鬼になりたき者はこれを食へ』
と言つた。いづれの神人も自分の悪は分らず、各自に至善至美の立派な者と自信してゐるので、さすがの邪神も鬼になることだけは閉口したとみえ、一柱もこれを食はうとする者もなかつた。さうかうするうちに、断食の行も五十日を経過した。いづれの神人も声さへも立てる勇気は失せ、目は潤み、耳はガンガン早鐘をつくがごとくになり、ちやうど蛭に塩したやうにただ地上に横たはつて、虫の息にピコピコと身体の一部を動揺させてゐた。このとき、東北の空より、六面八臂の鬼神、あまたの赤、青、黒などの顔をした幕下の鬼を引きつれ、この場にむかつて嬉しさうに降つてくるのを見た。
あ丶この結果は如何なるであらうか。

邪鬼(猶太の地で発生したことになっている)は、このとき八頭八尾の大蛇・金毛九尾の悪狐とは敵対していた。

アーメニヤとウラル山の位置関係がよく分る文章。

物語05-2-13 1922/01 霊主体従辰 神憑の段

 東北の天より降りきたれる六面八臂の鬼神は、あまたの部下を引率し、盤古大神以下の飢餓に迫りて身体やせ衰へ、あたかも葱を煮たやうにヘトヘトになつて、身動きも自由ならぬこの場に現はれ、鉄棒をもつて疲れ悩める神人を突くやら打つやら、無残にも乱暴狼藉のかぎりをつくし、連木で味噌でもするやうな目にあはしてゐる。
 盤古大神以下の神人は、抵抗力も防禦力も絶無となつてしまつて、九死一生、危機一髪の悲境に陥るをりしも、またもや忽然として暴風吹き起こり、岩石の雨は邪鬼の群にむかつて打ちつけた。あまたの鬼どもは周章狼狽しながら、雨と降りくる岩石に打たれて頭を割り、腰骨を挫き、脚を折り、這々の体にて、負傷した鬼どもを各自小脇にかかへながら、東北の空さして雲を霞と逃げ失せた。
しかるに不思議なことには、盤古大神部下の神人は一柱も負傷するものがなかつた。いづれも顔を見合して、眼前の奇怪千万な光景に呆れるばかりであつた。
 このとき、一陣の風サツと音して吹き来たるよと見るまに、大地に平臥して苦悶せし盤古大神も常世彦、常世姫もにはかに顔色紅を呈し、元気は頓に回復し、立ちあがつて両手を組みながら上下左右に身体を動揺させ、躍りあがつて遠近を狂気のごとくに飛びまはつた。これは八頭八尾の大蛇と金毛九尾の悪狐の邪霊が、心身の弱りきつたところを見すまし、一度に憑依したからである。次々に他の神人も同様に元気を回復し、手を振り足を踏みとどろかせ、遠近を縦横無尽に駈けまはるその有様、実に雀の群に鷹の降りたる時のごとき周章かたである。

常世姫は俄然立ちあがり、
部下の神人たちよ、われこそは日の大神の分魂にして玉津姫大神なるぞ。このたび地の高天原をこのアーメニヤに移されしについては、世の初発より大神の経綸であつて、万古不易の聖地と神定められたり。盤古大神夫婦は、今日よりこの方の申すことに誠心誠意服従すべきものなり。ただ今より常世姫の肉体は玉津姫大神の生宮なるぞ。一日も早く立派なる宮殿を造営し、神定の地に神政をおこなへ、ウーン
と唸つて天にむかひて打ち倒れた。
 聖地エルサレムの天使言霊別の長子なる竜山別といふ腹黒き神人は、始終野心を包蔵してをつた。それゆゑ今回のエルサレムにおける変乱にも、自己一派のみは巧みに免れ、邪神常世彦の帷幕に参じてゐた。彼は今また、このウラル山の中腹に登つて断食断水の仲間に加はつてゐた。たちまち身体震動し、顔色火のごとくなつて神憑りとなつた。彼には八頭八尾の大蛇の眷属、青竜魔が憑りうつり、
『ア丶有難いぞよ、勿体ないぞよ。この方こそは日の大神、月の大神であるぞよ。神人ども、頭が高い、頭が高い、大地に平伏いたせ、申しわたすべき仔細こそあれ。今日は実に天地開闢以来の目出度き日柄であるぞよ。眼を開いてこの方を拝んだならば、たちまち眼が潰れてしまふぞ。これからこの方の仰せを背いた神人は、神罰立ちどころにいたると思へよ。この方は日の大神、月の大神に間違ひないぞよ』
と呶鳴つた。その声は百雷の一度に鳴りとどろくごとくであつた。

 

物語05-2-14 1922/01 霊主体従辰 審神者

 このとき竜山別はたちまち神憑りして、小高き丘陵に飛びあがり、眼下に神人らを梟鳥のまるき目玉に睨めつけながら、
『吾こそは日の大神、月の大神、国治立の大神なるぞ。ただいま常世姫に神憑りしたる玉津姫の託宣を馬耳東風と聞きながし、あまつさへ雑言無礼を恣にしたる盤古大神塩長彦ははたして何者ぞ。汝は六面八臂の鬼神の魔軍に襲撃され、危急存亡の場合を八頭八尾の大蛇の神に救はれしに非ずや。神力無辺なる八頭八尾の大蛇の神の憑りきつたる常世彦の妻神常世姫の生宮にたいして、今の雑言聞き捨てならず。神界の規則にてらし盤古大神はこの場かぎり神界総統者の職を去り、その後任に八王大神を据ゑたてまつりなば、万古不易の神政は完全無欠に樹立さるべし。満座の神人ども、大神の言葉を信ずるや否や、返答聞かむ』
とどなりつつ物凄き目をむき出し、口を右上方につり上げ、水ばなを長く大地に垂れながら、さも厳かに宣言した。あまたの神人は審神の術を知らず、日の大神はじめ尊き神の一度に懸らせたまひしものと信じ、頭を得上ぐるものも、一言の答弁をなすものもなかつた。盤古大神は空嘯きて満面に冷笑をたたへ、常世姫の面体を凝視し、鎮魂の姿勢を取つてゐた。
 盤古大神の眼光に睨みつけられたる常世姫の神憑りは、左右の袖に顔をかくし、泣き声をふりしぼり、
『八王大神常世彦よ。いま盤古大神には、常世の国に年古く棲める古狸の霊、憑依してこの尊き神の生宮を無礼千万にも睨めつけをれり。神力をもつて速やかに彼を退去せしめ、貴下は盤古大神の地位に就かるべし。神勅は至正至直にして寸毫も犯すべからず、満座の神人異存あるや、返答聞かむ。かくも大神の言葉をもつて神人に宣示すれども、一言の応へなきは、汝ら諸神人は神の言葉を信ぜざるか、ただしは神を軽蔑するか。かよわき常世姫の生宮として、歯牙にかけざるごとき態度をなすは無礼のいたりなり。アーラ残念や、口惜しやな』
といひつつ丘陵上を前後左右に飛んだり、跳ねたり、転んだり、その醜態は目もあてられぬ有様であつた。常世彦は、やにはに常世姫の倒れたる前に進みいで、襟首を無雑作に猫でも提げたやうに引掴みて、右の片腕に高くさしあげ、大地にむかつて骨も砕けよとばかり投げつけた。常世姫はキヤツと一声叫ぶとみるまに、邪神の神憑りはにはかに止んで、又もや、もとの優美にして温和なる常世姫と変つてしまつた。

 さて、盤古大神の注意周到なる審神はよくその効を奏し、邪神はここに化の皮をむかれ、一目散にウラルの山上目がけて雲霞のごとく逃げ帰つた。(ここはウラル山の中腹)されど一度憑依せし悪霊は全部脱却することは至難の業である。ちやうど新しき徳利に酒を盛り、その酒を残らず飲み干し空にしたその後も、なほ幾分酒の香が残存してゐるごとく、悪霊の幾部分はその体内に浸潤してゐるのである。この神憑りありしより、常世彦、常世姫、竜山別も、日を追ひ月を重ねて、ますます悪神の本性を現はし、つひには全部八頭八尾の大蛇の容器となり、神界を大混乱の暗黒界と化してしまつたのである。あ丶慎むべきは審神の研究と神がかりの修業である。 

盤古大神ウラル山の中腹に宮殿を造営。

物語05-2-15 1922/01 霊主体従辰 石搗歌

 盤古大神は、厳粛なる審神に依つて、常世彦、常世姫、竜山別その他の神人の憑霊的狂乱状態はたちまち鎮静した。ここに常世彦以下の神人は、盤古大神の天眼力と、その審神の神術の優秀なるに心底より感服し、何事もその後は盤古大神の指揮に服従することを決議した。
 ここに
盤古大神は、ウラル山の中腹のきはめて平坦の地を選び、宮殿を造営せむとし、大峡小峡の木を伐り、石をはこびて基礎工事に着手した。神人らの寄り集まつて勇ましく歌ひながらドンドンと石搗く音は昼夜の区別なく、天地もために震動せむず勢であつた。
 百神人の必死的活動の結果、一百余日にして基礎工事は全く終了したのである。

この後、大自在天大国彦が常世彦の敵となり戦いをくりひろげます。

日の出神がウラル山に来て、盤古神王に仕える。ウラル彦、ウラル姫、それと対立する。

物語05-3-19 1922/01 霊主体従辰 旭日出暗

 神王はあたかも生ける神のごとく、この宣伝者(日の出神)を尊敬し、敬神の態度を怠らなかつた。ただちに宣伝者の命により、ウラルの山上に改めて立派なる宮殿を造り、日の神、月の神、大地の神を、さも荘厳に鎮祭し、敬拝怠らなかつた。
 それに引換へ、体主霊従の大蛇と金狐に魅せられたるウラル彦、ウラル姫は、この神王の行為にたいし不快を感じ、さかんに神人らにたいして自暴自棄となり、日夜酒宴を張り、豊熟なる果実を飽食せしめ、無神説を唱へ、

『呑めよ騒げよ一寸先や暗よ、暗の後には月が出る。よいとさ、よいやさつさ、よいやさつさ』
と意地づくになつて踊りくるひ、連日連夜の遊楽にのみふけつて、神政を忘却するにいたつた。
 このとき轟然たる音響天に聞ゆると見るまに、さも強烈なる光は地上を放射した。神人らは一せいに期せずして空を仰いだ。眼も眩むばかりの強烈なる光である。その光はまたもや、天の浮橋の東西南北に悠々として探海燈を照したごとく、中空を東西南北に転回してゐる。さうしてこの強き光のために盲目となる者も現はれた。
浮橋の尖端よりは金色の星幾十となく放出して、ウラル山上の盤古神王の宮殿に落下した。
 盤古神王は大神の恵みと深く感謝し、一々その玉を拾ひあつめて神殿に恭しく安置し、日夜供物を献じ祭祀を荘厳におこなひ、敬神の至誠をつくしてゐた。それよりウラル山上は、紫雲たなびき、天男天女はときどき降りきて中空に舞ひ、微妙の音楽を奏し、風暖かく花は香しく、木々の果実は味はひ美しく豊熟するにいたつた。
 神王は、日の出神を宮司として、これに奉仕せしめた。これよりウラル山上の盤古神王とウラル彦夫妻との間には、もつとも深き溝渠がうがたれた。


5.コーカスについて

霊界物語以外では、コーカス山はあまり出てきません。これくらいでしょうか。

神の国 1933/01 素尊の神業

 一体素盞嗚尊は大国主命に日本をまかされて、御自身は朝鮮(ソシモリ)の国に天降り給ひ、あるいはコーカス山に降り給ひて、亜細亜を平定され治められて居た。尤も大国主命が治められた国は今の滋賀県より西であつて、それより東は天照大神様の治め給ふ地であつた。但し北海道は違ふ。大国主命に対して国譲りのことがあつたのは、其滋賀以西を譲れとの勅命であつたのである。故に素盞嗚尊の神業は大亜細亜に在ることを思はねばならぬ。王仁が先年、蒙古入りを為したのも、太古の因縁によるもので、今問題になりつつある亜細亜問題と云ふものは、自ら天運循環し来る神業の現はれであると云つても良い。

コーカス人種は何箇所かでてきます。

物語36-1-1 1922/09 海洋万里亥 二教対立

土耳古、希臘のごときコーカス人種もまた、仏教の感化を受けたこと最も大なるものがあつた。

三鏡の文章が操作されていないとしたら重要な文章。

神の国 1932/12 三大民族

 太古、世界には三大民族があつた。即ちセム族、ハム族、ヤヘツト族である。セムの言霊はスとなり、ハムの言霊はフとなり、ヤヘツトの言霊はヨとなる。故にスの言霊に該当する民族が、(1){神の選民と云ふことになり、}日本人、朝鮮人、満洲人、蒙古人、コーカス人等である。ユダヤ人もセム族に属する。次がハム族で支那人、印度人又は小亜細亜やヨーロツパの一部に居る民族である。ヨの民族即ちヤヘツト族と云ふのはアフリカ等に居る黒人族である。しかし現在は各民族共悉く混血して居るのであつて、日本人の中にもハム族等の血が多数に混入して居る。又欧米人の中にはハム族とヤヘツト族とが混血したのがある。イスラエルの流れと云ふことがあるが、イは発声音で、スラエの言霊はセとなるが故に、イセ(伊勢)の流れと云ふことになる、即ちセム族の事である。

次の文章はコーカス民族が日本に来ているということ?

神の国 1932/12 出雲言葉

出雲の言葉は、今では出雲地方独特のものとされて一般にさげすまれ嘲られて居るが、これが神代の言葉を多分に含んで居る。霊界物語第四巻に神代言葉として示して置いたものに、よく似た所のあることを悟る事が出来るであらう。コーカス民族であつたものが勢力を拡大して彼等の言葉を、正しきものとして使用するやうになつた為め、出雲言葉が次第に衰へて了つて今日の様になつたのである。


6.霊界物語のコーカス山

コーカス山は、ウラル姫が大気津姫命となって第二の根拠地として開いたとありますが、「かかる衣食住に贅をつくす体主霊従人種を称して、大気津姫命と言ふなり」という一文が気になります。
 

物語11-4-23 1922/03 霊主体従戌 保食神

コーカス山が三五教に落ちる。

大気津姫命について、超重要な個所。

 黄泉比良坂の戦に、常世の国の総大将大国彦、大国姫その他の神人は、残らず日の出神の神言に言向け和され、悔い改めて神の御業に仕へ奉ることとなりたり。そのため八岐の大蛇や金毛九尾の悪狐、邪鬼、・醜女、探女の曲神は、暴威をたくましうする根拠地なるコーカス山には荘厳美麗なる金殿玉楼をあまた 建てならべ、ウラル彦の幕下の神人は、ここにおのおの根拠を造り、酒池肉林の快楽にふけり、贅沢の限りをつくし、天下をわが物顔に振るまふ我利々々亡者の隠処となりてしまひぬ。かかる衣食住に贅をつくす体主霊従人種を称して、大気津姫命と言ふなり。
 大気津姫の一隊は、山中のもつとも風景佳き地点をえらみ、荘厳なる宮殿を建設するため、あまたの大工を集め、昼夜全力をつくして、宮殿の造営にかかり、やうやく立派なる神殿を落成し、いよいよ神霊を鎮祭することとなりぬ。さすがのウラル彦夫婦も、天地の神明を恐れてや、まづ第一に国魂の神として、大地の霊魂なる金勝要大神をはじめ、大地の霊力なる国治立命および大地の霊体なる素盞嗚命の神霊を鎮祭することとなりたり。あまたの八王神はきそうて稲、麦、豆、粟、黍をはじめ非時の木の実、その他の果物、毛の粗きもの、柔きもの、鰭広物、鰭狭物、沖津藻菜、辺津藻菜、甘菜、辛菜にいたるまで、人を派して求めしめ、てんでに大宮の前にそなへ奉ることとせり。
 この宮を顕国の宮といふ。この祭典は三日三夜にわたり力行されぬ。あまたの八王、ヒツコス、クスの神たちは、祝意を表するため、酒におぼれ、あるひは歌ひ、あるひは踊り舞ひくるふ様、あたかも狂人の集まりのごとき状態なりき。 

かかるところに神殿さして悠然と現はれ出でたる三五教の宣伝使、松竹梅をはじめとし、石凝姥神、天之目一箇神、淤縢山津見司、時置師神、八彦司、鴨彦司は口をそろへて、(宣伝歌を)言葉さはやかに歌ひをはれば、神殿の鳴動はこの宣伝歌と共にピタリとやみたり。ウラル姫はたちまち鬼女と変じ、雲を呼び、風を起し、雨を降らし、四辺を暗につつみ、八王、ヒツコス引連れて、天の磐船、鳥船にその身をまかせ、アーメニヤ、ウラルの山を指して雲を霞と逃げ散りたり。
 松竹梅をはじめ宣伝使一同は、あらためて神殿に祝詞を奏上し神徳を感謝する折しも、この場に現はれたる五柱の神あり。見れば鬼武彦、勝彦、秋月姫、深雪姫、橘姫なりき。いづれもみな鬼武彦の率ゐる白狐の化身なり。さすが奸智に長けたる金毛九尾の悪狐も、白狐の鬼武彦、旭、高倉、月日の神力にはかなはず、ウラル姫と共にこの場を捨てて逃げ去りぬ。
 ここに石凝姥神、天之目一箇神、天之児屋根神は、高倉以下の白狐に向ひ、顕国の宮にささげ奉れる稲、麦、豆、黍、粟の穂をくはへしめ、世界の各地に播種せしめたり。
 国治立命、神素盞嗚命、金勝要の三柱を祭り、顕国の宮をあらためて飯成の宮と称へたり。宮の鳴動したる理由は、いづれも体主霊従のけがれたる八王神の供物なれば、神は怒りてこれを受けさせ給はざりしためなり。
 白狐は五穀の穂を四方にくばり、世界に五穀の種子を播布したり。
 これより以前にも五穀は各地に稔れども、今ここに供へられたる五穀の種子は勝れてよき物なりしゆゑなり。
 今の世にいたるまで、白狐を稲荷の神といふはこの理にもとづくものと知るべし。


 7.まとめ

ウラルの地域は、霊界物語の初めから、邪神の根拠地となっています。
特に、5巻でウラル山では、八頭八尾の大蛇が直接姿を現して、常世彦らを指導します。霊界物語で邪神が憑依ではなく、直接姿を現す場面は少なく、この場面は邪神が何なのかを知るためには重要な場面であると言えます。
コーカス山については、ウラル山・アーメニヤの後で、二次的に発生した、邪神の根拠地で、その後三五教の本拠の一つになります。

霊界物語以外では、神の国の「素盞嗚尊は大国主命に日本をまかされて、御自身は朝鮮(ソシモリ)の国に天降り給ひ、あるいはコーカス山に降り給ひて、亜細亜を平定され治められて居た。」

『新月の光』の「アメは天でアーメニヤ、天照大神はここにおられた」と「国常立尊はアーメニヤ方面から日本(現在の)へおいでになった」

これらの記事が、この地域の超重要度を示します。
霊界物語の邪神の根拠地とどう関係しているのでしょうか。今後、議論してゆくべき問題です。

アルメニアは調べれば調べるほど興味深い土地です。
鉄の歴史を調べると、紀元前16世紀ころから鉄を精錬できたが錬鉄と言って柔らかく青銅に劣っていました。
この錬鉄を炭素で鍛えて硬くする方法が始められたのがアルメニア山地だといいます。この硬い鉄は武器の材料で、戦争で世界を変えたと言っていいでしょう。物語でも、アルプス山との関係で鋼鉄が出てきて、アーメニヤと関係してることが述べられています。

第1版 第1版 2004/11/18
第1版形式訂正 2005/10/11
第1.1版(一部修正)7.鋼鉄 2006/9/14
第2版 形式訂正 2007/07/07
一部修正 2014/12/28
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