出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語80-3-211934/07天祥地瑞未 青木ケ原王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
高光山
あらすじ
 子心比女の神は竜彦を育てていたが、高光山の青木ケ原の神苑で朝霧比女の神に「この御子は竜の御腹ゆ生れませば 賢しき御子よ美しき御子よ。この御子は育てによりてよくもなり 悪しくもなるべき性をもつなり。朝夕に肌身放さず育みて 国の司と照させ給へ」と言われる。
 そこへ、朝空男の神と国生男の神が天の鳥船に乗って戻って復命した。また、大御照の神も禊の神業から戻り、「万里の海の松浦の港に朝香比女の神が来られている」と告げる。そこで、朝空男の神と国生男の神、大御照の神が迎えに行くことになった。
名称
朝霧比女の神 朝空男の神 大御照の神 国生男の神 子心比女の神 竜彦
秋男 朝香比女の神 巌ケ根 顕津男の神 国津神 水奔鬼 主の神 冬男
天の鳥船 青木ケ原 宇自物 鹿児自物 火炎山 忍ケ丘 高日の宮 高光山 火の種 火の湖 ポケツト 松浦の港 万里の海 水上山 御火 御樋代 予讃の国 葭原の国土
 
本文    文字数=12712

第二一章 青木ケ原〔二〇二五〕

 葭原の国土を東西に画したる中央山脈の最高峯高光山の聖場には、常に紫の瑞雲棚引き、風清く、植物も高地に似ず、神徳に浴して繁茂し、四方の国形を瞰下し得る最勝最妙の霊地なり。この地点を青木ケ原と称し、八百万の神等ここに集りて政に仕ふ。
 朝霧比女の神は青木ケ原の神苑を逍遥しながら御歌詠ませ給ふ。

『久方の高日の宮を立ち出でて
  ここに三年を過ぎにけるかな

 顕津男の神の出でましおそければ
  吾いたづらに年経むとする

 葭原を統べ守るべき君なくば
  あらぶる神をいかに治めむ

 予讃の国の中心に立てる火炎山は
  焔と共に消え失せにける

 見渡せば火炎の山の跡白く
  湖となりしか波かがよへり

 予讃の国に吾遣はせし二柱
  いまだ帰らず心もとなし

 主の神の恵の幸の深ければ
  功を立ててやがて帰らむ

 目路の限り葭草醜草茂り合ふ
  これの国原如何に開かむ

 国津神は山々の裾に住まひつつ
  平野は葭と醜草茂らふ

 この広き醜草生へる野を開き
  五穀など植ゑひろめたき』

 かく歌ひつつ苑内を逍遥し給ふ折もあれ、庭の樹蔭に小児を抱きて子守唄を歌ひながら、子心比女の神は此方に向つて静かに進み来る。
 子心比女の神は歌ふ。

『坊やはよい子ぢやねんねしな
 坊やのお守はどこへいた
 山を越えて野を越えて
 川を渡りて旅に出た
 旅の行く先やいづこぞや
 水上山の聖場へ
 水上山の故郷の
 里のみやげに何もろた
 でんでん太鼓に笙の笛
 ねんねんねんねんねんねしな』

と身体を左右にふり、竜彦の養育に余念なかりける。朝霧比女の神はこの体を見て、

『子心比女神の真心やさしけれ
  竜彦のきみを育みますも

 この御子は竜の御腹ゆ生れませば
  賢しき御子よ美しき御子よ

 この御子は育てによりてよくもなり
  悪しくもなるべき性をもつなり

 朝夕に肌身放さず育みて
  国の司と照させ給へ』

 子心比女の神は歌ふ。

『ありがたし御樋代神の御言葉
  吾謹みて仕へ奉らむ

 朝空男、国生男の神鳥船は
  いかがなりしか聞かまほしけれ

 西の空とほく眼を見渡せば
  くろき一つの影の浮べる

 かすかなる雲の黒影は二柱の
  乗りて帰らす鳥船ならずや』

 朝霧比女の神は、遠く西空をふりさけ見ながら、

『かすかなる影は次々近み来ぬ
  正しく天の鳥船なるべし

 予讃の国土の禍ひ鎮めて二柱
  復命すと勇み来るも』

 かく歌ふ折しもあれ、急速力を以て二柱の乗れる鳥船は、青木ケ原の広場に鳩の如くに着陸せり。
 この聖地に仕ふる数多の神々は、二神の無事帰りしを欣喜雀躍し、「ウオーウオー」と叫ぶ声、高光山も割るるばかりのどよめきなりける。
 朝霧比女の神は二神の側近く進ませ給ひ、

『久方の空を翔りて帰りてし
  汝二柱の功績を思ふ』

 朝空男の神は、先づ朝霧比女の神の御前に最敬礼をほどこし歌ふ。

『比女神の神言畏み漸くに
  今復命白しけるかな

 あれはてし国形見つつ驚きぬ
  葭草醜草生ふる予讃国

 火炎山地中に深く陥没し
  火の湖は生り出でにけり

 醜神の数多集ひし予讃の国の
  天変地異に新まり初めぬ

 さりながら叢に棲む鬼大蛇
  水奔鬼等の曲津はさかしも

 葭原の国土の光りの火炎山
  湖となりしゆ火の種なき国

 如何にしてこの国原に火の種を
  求め得むかも悟らせ給へ』

 朝霧比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『今しばし時を待つべし火の種は
  天津御神ゆ授け給はむ』

 国生男の神は歌ふ。

『吾公の仰せ畏み鳥船に
  乗りて国形調査べ来しはや

 百千里雲を渡りて予讃の国の
  忍ケ丘に安く降れり

 精霊の生命とられし水上山
  巌根が伜と語らひにけり

 巌ケ根の伜冬男や秋男等と
  語りて悪魔の猛び悟りぬ

 葭原の国土のあちこち忍び居る
  曲津焼かずば治まらじと思ふ

 曲津神を焼き滅すは主の神の
  御火の力にしくものあらじ

 火の種を奪はれむことを恐れみて
  猛獣毒蛇は護り居しとふ

 火の種は火炎の山の陥没に
  消えて影さへ見えずなりけり』

 朝霧比女の神は歌はせ給ふ。

『雲枕御空の旅を重ねつつ
  功を立てし公を讃へむ

 国土稚く未だ地やはく葭原の
  国土のかためはただ事ならじ

 葭草や水奔草を焼き払ふ
  力は御火に勝るものなし

 如何にして御火の力を得むものと
  百日百夜を吾は祈りつ

 百日日の禊をよせる大御照の
  神もやがてはここに帰らむ

 百日日の満ちぬる今日を勇ましく
  凱旋したるは目出度かりけり

 大御照神もやがては帰るべし
  百日の禊今日満ちぬれば』

 かく歌ひ給ふ折もあれ、禊の神事を了へ給ひ、神の力を全身に満して、大御照の神は溪間の雲を分けて青木ケ原の聖場に漸く帰りつき給ひ、四柱の神の御前に慕しく現はれ、大御照の神は歌ふ。

『御樋代の神の神言をかうむりて
  百日の禊終り帰りぬ

 溪川の清き清水に禊して
  うつりゆく世を悟らひにけり

 水と火の力によりて葭原の
  地を清めむ御心なりけり

 今しばし吾に暇をたまへかし
  御樋代神を迎へ来らむ

 万里の海に浮ばせ給ふ朝香比女は
  御火をたまふとはつかに悟りぬ

 松浦の港に公を迎へつつ
  御火の力を借らむと思ふ』

 朝霧比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『八人乙女の御樋代神の朝香比女が
  出でましあると聞けば嬉しき

 しかあらば大御照神先に立ち
  朝空男、国生男神従ひ出でませ』

 大御照の神は歌ふ。

『朝霧比女神の神言に従ひて
  朝香の比女を迎へ来らむ

 大前に畏み厳の言霊を
  たたへ終りて直に進まむ

 百日日の禊によりて吾魂は
  鏡の如く透きとほらへり

 朝空男、国生男の神二柱
  吾に添へさせ給ふ嬉しさ』

 朝空男の神は歌ふ。

『朝香比女迎ふるために鳥船を
  遣はせ給へ御樋代の神

 松浦の港は遥か遠けれど
  吾鳥船にのりて進まむ』

 国生男の神は歌ふ。

『二柱神に従ひ松浦の
  港に下ると思へば勇まし

 久方の御空翔ゆくいさましさ
  地上の神と思へざりけり

 予讃の国の空を渡りし覚えあり
  松浦港へは安く降らむ』

 朝霧比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『かくならば三柱急ぎ鳥船に
  乗りて進めよ神を迎ふと』

 朝香比女の神を迎への首途として、朝霧比女の神は四柱の司神を始め数多の神々を率ゐて、青木ケ原の中心に宮柱太しく立てて斎き奉れる主の大神の御前に、沐浴斎戒して種々の供物を献じ、自ら斎主となり、空中安全の祈願を始め給ふ。
 朝霧比女の神は四拍手しながら、

『掛巻も畏きこれの高光山の下津岩根に宮柱太しく立てて、千木高知らし鎮まり給ふ主の大神の大前に、斎主朝霧比女の神、謹み敬ひ願ぎ奉らく。大神の神言被り、御樋代の神と任けられ、天津御空の八重雲を伊頭の千別に千別て高光山に降りてゆ、早も三年は過ぎにけり。御樋代神の吾はも、著き功績も立てずして、月日を送る苦しさに、天に跼り地に蹐して国土安かれと祈りけり。さはあれど未だ国土稚く地やはく、曲津見どもの跳梁にまかせ切りたる葭原の国土を開かむ術もなし。主の神の御水火に生れる御火の種、大御照の神の心の真寸鏡に写ろふ見れば、朝香比女の神は珍の火種を持たせつつこの国土に渡らすとはつかに聞きし嬉しさに、大御照の神始めとし、朝空男の神、国生男の神を朝香比女の神の許に遣はし迎へ奉ると思ふが故に、天の鳥船を堅らかに造り終へて、三柱を乗せ遣はす今日の日の吾願ぎ事を聞し召し、怪しき雲の空行くも、禍ちあらず安々と、長き年月松浦の港に光らす朝香比女の神の一行を、無事に高光の山の聖所に導かせ給へと、鹿児自物膝折伏せ宇自物頸根突貫きて恐み恐みも願ぎ奉る。ああ惟神々々、生言霊に光あれ、吾言霊に力あれ』

 かくて祭典は無事終了し、三柱の神はここに身を清め鳥船に乗じて、伊頭の八重雲をかき分けて松浦の港に向ひ航空することとなりぬ。
 御樋代の神は御歌詠ませ給ふ。

『待ちわびし今日の生日の目出度さよ
  朝香の比女を迎ふと思へば

 八柱の御樋代神のその中に
  殊に雄々しき朝香比女かも

 朝香比女神の神言の出でまさば
  この葭原の国土は安けむ

 主の神に朝夕を祈りたる
  験かがよふ今日は目出度き

 いざさらば雲路安けく出でませよ
  吾は御前に祈りつづけむ』

 大御照の神は歌ふ。

『朝霧比女の神言畏み出でゆかむ
  生言霊に雲路安けむ

 雲の谷雲の川をば横ぎりて
  港に進まむ守らせ給へ

 大空の雲の峰をば打ち渡り
  天の河原渡らひ行かむ

 鷲も鷹も百鳥千鳥も目の下に
  ながめて渡る空の雄々しさ』

 朝空男の神は歌ふ。

『天津日の輝き渡る朝空を
  進む吾等は鳳凰なるよ

 鳥船の翼堅らに造りあれば
  心安けく進まむと思ふ

 主の神の御火より湧ける雲なれば
  空の旅路も安けかるべし』

 国生男の神は歌ふ。

『吾もまた二柱神に従ひて
  天津御空をかき分け進まむ

 ポケツトは数多ありともこの船は
  いや堅ければ安く進まむ

 はてしなき大野の上を限りなき
  御空の雲を見つつ行くなり

 いざさらば高光山の聖場を
  伏し拝みつつ渡りゆくべし』

 朝霧比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『三柱の神の雲路の旅行きを
  今や送らむこの清庭に

 三柱の神よ安けく渡りませ
  神のよさしの神業と思ひて』

 大御照の神は歌ふ。

『いざさらば青木ケ原の聖場を
  立ちて進まむ松浦港へ』

 かく歌ひ終り、三柱は天の鳥船に身を托して空中高く昇らせ給ふや、これの神苑に仕へ侍る百神等は、「ウオーウオー」の鯨波を造りて、勇ましきこの首途を送りける。

(昭和九・七・三一 旧六・二〇 於関東別院南風閣 谷前清子謹録)



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