出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語80-3-201934/07天祥地瑞未 復命王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
秋男島
あらすじ
 秋男と従者たちは火の湖の小さな島秋男島を守っていたが、水奔鬼は昼夜攻めかける。譏り婆と笑ひ婆が攻めるが、秋男は言霊で対抗した。そこへ、朝空男の神、国生男の神と冬男一行、そして春男一行が一緒に天の鳥船でやって来た。
 朝空男の神と国生男の神が天の数歌を奏上すると、笑ひ婆たちは言霊に打たれて満身創痍となり、生命からがら湖城を逃げ去ったが、ついに力尽きて熱湯の湖水に陥り、全滅してしまった。
 春男一行は水上山へ帰り、秋男一行は秋男島で湖の神となった。また、冬男一行は忍ケ丘に鎮まって国を守った。
名称
秋男 朝空男の神 海 梅 瘧 川 国生男の神 熊公 桜 瀬音 譏り 竹 虎公 泣き 夏男 春男 冬男 松 水音 山 笑ひ
天津神 巌ケ根 国津神 水奔鬼
秋男島 天の鳥船 幽世 火炎山 忍ケ丘 水奔草 精霊界 高光山 火の湖 水上山 御樋代 葭原の国土
 
本文    文字数=9620

第二〇章 復命〔二〇二四〕

 火の湖の中央に浮びたる小さき小島を秋男島といふ。火炎山の陥落により、熱湯吹き出で、忽ち百里四方の湖となり、その頂の僅に水上に浮べる島なりける。茲に天変地異のため、あらゆる猛獣毒蛇も、水奔鬼も、大略滅亡したれども、流石に執着深き意地強き笑ひ婆、譏り婆、瘧婆、泣婆は辛うじてこの島に取付き、此処を唯一の棲処とし、あらゆる暴虐を振舞はむとたくらみ居たりけるが、噴火口に飛入りて白骨となり居りし秋男の霊はこの島に止り、松、竹、梅、桜と共に島の司となり居たりしが、水奔鬼の面々は、秋男のある限りその暴状を逞うするに由なきを恐れ、如何にもして秋男を亡ぼさむものと、昼夜間断なく決戦をつとめて居る。秋男は休息したる火炎山の火口に身を潜めながら、此処を堅城鉄壁と頼み、頻に言霊を打出しける。水奔鬼はいやらしき言霊を以て秋男一行の精霊を濁し亡ぼさむと、あらゆる手段を尽しける。秋男島は水面より最頂上と雖も百間ばかりなりければ、水奔鬼は笑ひ婆を先頭に、火口の周囲を取巻き、昼夜の区別なく、連続的に濁れる言霊を吐出すこそ嘆てけれ。
 笑ひ婆は火口の壁内を覗き、大口を開けて眼を釣上げながら、

『アハハハハ、イヒヒヒヒ、ウフフフフ、エヘヘヘヘ

 オホホホホおのれ秋男の餓鬼どもよ
  早く立去れこの島ケ根を

 ギヤハハハハこの島ケ根は火炎山の
  頂なれば吾棲処なり

 何時までも立退かざればこの婆が
  鬼を集めて攻め殺すべし

 足許の明るい間に早帰れ
  この浮島には住まはせぬぞや

 その方の供か知らねど松、竹や
  梅と桜はつまらぬ餓鬼ぞや

 この方の罠に陥り身亡せたる
  餓鬼の住むべき島でないぞや

 何時までもしぶとう居るなら居つてみよ
  また火を吐きて殺してやるぞや

 この島は今は静かに眠れども
  今に火を出す恐ろしき島よ

 その方の弱きみたまの力もて
  住めると思ふは浅はかなるぞや』

 秋男は憤然として歌ふ。

『火炎山湖となりしも吾宣れる
  生言霊のしるしと知らずや

 国津神の数多の生命を奪ひたる
  汝を亡ぼす時は来にけり

 玉の緒のみたまの生命惜しければ
  少しも早く島を立ち去れ

 汚れたる息を吐き出し島ケ根を
  穢さむとする憎らしき婆』

 譏り婆は笑ひ婆の言霊戦を手緩しと思ひしか、すつくと立ち、旧火口の壁に寄添ひながら、

『ギヤハハハハ腰抜野郎の秋男の餓鬼よ
  生命惜しくばこの場を立去れ

 聞かざれば聞くやうにして聞かすぞや
  譏り婆アの力限りに

 ともかくもこの島ケ根は吾々の
  永遠の棲処ぞ早く去れ去れ

 どうしても島を去らねば水奔鬼
  数多集めて悩ましくれむ

 鬼よ鬼よ集まれ来れこの餓鬼が
  生命取るまで詰め寄せ来れ』

 かく歌ふや島全体より、大河の堤防の崩れたる如く怪音轟き来り、耳を聾せむばかりの光景とはなりぬ。
 かかる処へ天の鳥船御空を高く轟かせながら、秋男島の平坦なる砂地に悠々と舞ひ降り、中より現れしは御樋代神に仕へたる朝空男の神、国生男の神を始めとし、精霊界に入れる秋男が弟冬男及び熊公、虎公、山、川、海の精霊一行及び、水上山の聖場より弟の所在を探ねて出発したる春男、夏男を始め、水音、瀬音、その他数多の従者にてありければ、水奔鬼の司も此処ぞ一生懸命と、死力を尽して戦ふべく汀に集まり、鬨の声を揚げつつ示威運動を試みて居る。
 秋男はこれを見るより歓天喜地、霊の身の置き処も知らず、忽ち火口より四人の従者を引連れ降り来り、二柱の前に遠来の苦労を謝し、且弟の精霊や二人の兄及び従神等に面会したる嬉しさに、吾を忘れて踊り狂ひつつ歌ふ。

『あら尊御樋代神の御脇立
  二柱神は天降りましけり

 吾今は精霊界にありながら
  神の出でまし拝みて生きぬ

 吾魂は生き栄えたり二柱の
  神の天降りの御光拝みて』

 朝空男の神は歌ふ。

『葭原の国土の災救はむと
  高光山へ渡り来しはや

 鳥船に乗りて大空かけりつつ
  忍ケ丘に先づ天降りたり』

 国生男の神は歌ふ。

『忍ケ丘に下りて見れば汝が弟
  冬男精霊となりて住みけり

 水奔鬼笑ひ婆アの謀計に
  あはれ冬男は生命捨てしよ

 汝もまた笑ひ婆アや譏り婆の
  たくみに生命亡せしか愛し』

 秋男は歌ふ。

『有難し二柱神の出でましに
  この島ケ根は安く栄えむ』

 冬男は歌ふ。

『恋ひ慕ふ吾兄上も精霊の
  世界に入りしと思へばかなしき

 さりながらこの島ケ根に吾兄に
  会ふは神の恵なりける

 吾兄の春男、夏男の御姿を
  今目の前に見るは嬉しき』

 水音は歌ふ。

『御後を慕ひ来りつつこの島に
  亡き若王に会ふは嬉しき

 今は世に亡き君ながら嬉しもよ
  精霊界に輝き給へば』

 瀬音は歌ふ。

『巌ケ根の君の御言を被りて
  君に会はむと探ね来つるも

 神々の厚き恵みにこの島の
  磯辺に君に会ふは嬉しき』

 春男は歌ふ。

『吾父の御言重しと来て見れば
  弟は既に鬼となりしよ

 水奔鬼に生命取られし弟と
  思へばかなしき吾なりにけり』

 夏男は歌ふ。

『うつせみの吾弟に会ひぬれど
  何か一つの淋しみを覚ゆ

 さりながら霊魂の生命は永遠に生くと
  聞きて心をなぐさみにけり

 父上がこのありさまを聞きまさば
  歎き給はむと思へば悲し

 天津神の天の鳥船にたすけられ
  汝に会はむと渡り来にけり』

 秋男は歌ふ。

『有難し吾兄と兄のやさしかる
  心を聞きて吾蘇る

 幽世の生命は長し吾父に
  告げさせ給へ安く住めりと

 二柱神よ願ぎごと聞食せ
  四人の婆を吾は征討めむ

 力なき吾を救ひて鬼婆を
  征討め給はれ神国のために』

 茲に二柱神は頂上に登り立ち、声も清しく天の数歌を奏上し給ふや、さしもに強き水奔鬼の笑ひ、瘧、譏り、泣の婆司は、言霊に打たれて創痍を満身に受け、生命からがら、湖城を逃げ去りしが、終に力尽きて熱湯の湖水に陥り、全滅なしたるぞ目出度けれ。

 天津神二柱島に現れまして
  生言霊に曲津を退へり

 冬男、秋男二人は精霊となりぬれど
  神の力にみたま生き居り

 うつそみの二人の兄に巡り会ひ
  蘇りたる心地なしける

 御樋代の神の鳥船空高く
  一行を乗せて送り給へり

 冬男等は忍ケ丘に送られぬ
  春男、夏男は水上に帰る

 秋男等は四つのみたまと相共に
  秋男の島の主となりけり

 鳥船の翼を摶ちて二柱は
  御樋代神に復命せり

 空の海渡りてここに二柱
  御樋代神に具に報ぜり

 葭原の曲津は大方亡びたれど
  水奔草の災やまず

 猛獣や大蛇毒虫はびこりて
  葭原の国土は未だ造れず。

   附言

 春男、夏男に水音、瀬音その他の従者等は、一人も生命を落すものなく、無事神の助けにより、水上山に復命し、二人の弟の身の成行等を具に神前に報告し、父の巌ケ根にも一伍一什を物語りければ、巌ケ根も神恩の深きに落涙し、朝夕神前に差籠りて感謝祝詞の奏上に熱中したりける。
 次に秋男は松、竹、梅、桜と共に湖中の浮島を秋男島と命名け、此処に永遠の住家を営み、湖中の神として、往来の船や漁夫等を永遠に守る事とはなりぬ。また冬男は忍ケ丘に熊公、虎公及び山、川、海の精霊と共に永久に鎮まり、霊界より葭原国の栄えを守り、悪魔を亡ぼす神として永遠に国人より尊敬さるる事となりにける。あなかしこ。

(昭和九・七・三〇 旧六・一九 於関東別院南風閣 森良仁謹録)



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