出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語79-3-231934/07天祥地瑞午 二名の島王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
水上山
あらすじ
 水上山方面の地は、数日の間天災地妖打ち続き、雷鳴轟き電光閃めき、暴風雨しきりに臻り、驟雨沛然として滝の如く、地鳴震動連続的に起り、大井ケ堰は濁水滔々と流れ落ち、囂々たる水勢は雷鳴に和して、耳も割るるばかりの大騒動となった。
 大井の淵では四頭の竜神が互に眼を怒らし、一人の艶男を奪おうと、間断なく格闘を続け、竜体より流れる血汐と雨による濁りで、玉耶湖も紅の湖となった。水量は日に日に増え、低地に住んでいる国津神等は住家を流され、生命を奪はれる者が多く、附近の山に登って難を避けていたが、暴風雨と地鳴りとの為に振り落され、水中に没して生命を失なうものが多かった。
 山神彦、川神姫は岩ケ根、瀬音、水音と共に、幼き乳児を抱へ、頂上の神殿に参籠して、一時も早く天変地妖が治まることを祈願したが、どうもにもならず、惨状は益々その度を加えるだけだった。
 そこへ、御樋代神の朝霧比女の神が大御照の神、朝空男の神、国生男の神、子心比女の神を従えて降臨した。
 朝霧比女の神は、天変地妖をものともせず、儼然として宣る。
「葭原の国土は獣に汚されて 天と地との怒りを招けり。 竜ケ島の乙女を汚せし罪によりて 国魂神は怒らしにけり。天津神生ませ給ひし食す国を わが物顔に振舞ひし罪なり。玉耶湖の中に浮べる竜ケ島は 今は全く備はらぬ国。人の面なしつる女神も身体の その大方は獣なるぞや。神の子の御魂を持ちて獣なす 姫を娶るは罪とこそ知れ。」そして、暴風雨と地震を言霊で止められた。
 山神彦、川神姫が反省の心を示すと、朝霧比女の神は、二人を許し、「水上山に永遠に留まれ」と告げる。
 大御照の神は、「竜神の島の乙女に心せよ 彼等は全き神にあらねば。御樋代の神の渡らせ給ひなば 竜の島根は生く国とならむ。伊吹山尾根に集る曲津見は 百花千花と化りて匂へるよ」と、竜の島の者達は曲津見であったことを告げる。
 また、竜彦は子心比女の神が国の柱と育てることになった。
 御樋代の神の他四柱は、高光山の方面へ行かれた。そして、高光山を境として、東に御樋代神の貴の御舎を建て、そこを土阿の国と名付け、高光山以西を予讃の国と名付け、葭原の国土を総称して貴の二名島と称することになった。
名称
朝霧比女の神 朝空男の神 岩ケ根 大御照の神 川神姫 国生男の神 子心比女の神 瀬音 竜彦 水音 山神彦
艶男 天津神 国魂神 主の大神 曲津見 竜神
伊吹山 大井の堰 高光山 竜の島 玉耶湖 天変地妖 土阿の国 地震 二名島 恩頼 水上山 御樋代 予讃の国 葭原の国土
 
本文    文字数=12029

第二三章 二名の島〔二〇〇四〕

 水上山方面の地は、数日の間天災地妖打ち続き、雷鳴轟き電光閃めき、暴風雨しきりに臻り、驟雨沛然として滝の如く、地鳴震動連続的に起り、大井ケ堰は濁水滔々と流れ落ち、囂々たる水勢は雷鳴に和して、耳も割るるばかりの大騒動とはなりぬ。
 大井の淵には四頭の竜神互に眼を怒らし、一人の艶男を奪はむと、間断なく格闘を続け、竜体より流るる血汐は、濁水に和して朱の如く、さすがに広き玉耶の湖も紅の湖と変りけり。水量は日に日に増さり行きて、低地に住める国津神等は住家を流され、生命を奪はるる者多く附近の山にのぼりて難を避けつつありけるが、暴風雨と地鳴とのために振り落され、水中に没して生命を失するもの、その数を知らざりき。
 山神彦、川神姫は岩ケ根、瀬音、水音と共に、幼き乳児を抱へ、頂上の神殿に参籠して、一時も早く天変地妖のをさまらむ事を祈願すれども、如何ともせむ術もなく、惨状は益々その度を加ふるのみ。
 かかるところへ大空の黒雲を分け、四柱の侍神を従へ、嚠喨たる音楽と共に、水上山の頂さして降り給ひし神は、御樋代神の朝霧比女の神に坐しましける。侍神は大御照の神、朝空男の神、国生男の神、子心比女の神に坐しましける。
 朝霧比女の神は、天変地妖をものともせず、儼然として宣らせ給ふ。

『われこそは主の大神の神言もて
  御樋代神と降り来つるも

 葭原の国土は獣に汚されて
  天と地との怒りを招けり

 竜ケ島の乙女を汚せし罪によりて
  国魂神は怒らしにけり

 われは今葭原の国土を治さむと
  降りて見れば浅ましき状よ

 天津神生ませ給ひし食す国を
  わが物顔に振舞ひし罪なり

 山神彦、川神姫が今日の日の
  歎きにあふも神の心よ

 今日よりはたかぶる心を振りすてて
  正しく清く神に仕へよ

 この国は汝が治むる国ならず
  御樋代神の治す国なり

 玉耶湖の中に浮べる竜ケ島は
  今は全く備はらぬ国

 人の面なしつる女神も身体の
  その大方は獣なるぞや

 神の子の御魂を持ちて獣なす
  姫を娶るは罪とこそ知れ

 艶男は神の律に叛きたる
  報いによりて亡せにけるかも

 今日よりはいづれの神も村肝の
  心清めて改めよかし。

 一二三四五六七八九十
 百千万八千万
 風も早凪げ雨も降るな
 雲よ退け地震振る止まれ
 これの神国は主の神の
 よさし給へる御樋代神の
 永久に鎮まる清所なり
 雨はれ国はれ雲はれよ
 葭の島根は今日よりは
 黄金花咲く食す国と
 宣り直しつつ開くべし
 ああ惟神々々
 わが言霊に力あれ
 生言霊に光あれ』

と宣らせ給ふや、さしも烈しかりし雷鳴は鎮まり、電光は影を没し、暴風雨は跡形もなく尾の上の雲と消え、地震はひたと止まりて、安静の昔にかへりしこそ畏けれ。
 山神彦は濁流の次第々々に減じ行くを眺めながら、恐れ畏み歌ふ。

『御樋代の神の光の畏けれ
  百のなやみも消え失せぬれば

 大御祖神のみあとを継ぎて来し
  われは御国の仇なりしかも

 治むべき神の治むる国なりしと
  今更ながら悟らひにけり

 御祖より重ね来りし罪科を
  許させ給へ御樋代の神

 わが伜水の藻屑と消え果てしも
  御祖の罪のめぐり来つるか

 畏しや貴の言霊幸はひて
  国のなやみは消え失せにけり

 今日よりは心清めて御樋代の
  神の教にまつろひ奉らむ』

 川神姫は恐る恐る御前にひれ伏して、述懐を歌ふ。

『はしけやし厳の御神天降りまして
  われらが悩みを救はせ給ひぬ

 知らず知らず罪を犯せしわれなりし
  許させ給へ天降ります神

 御顔を仰ぐもまぶしくなりにけり
  曇りきりたるわがまなかひは

 まなかひの眩むばかりに思はるる
  神のよそほひ尊きろかも

 今となりてわが子の生命は惜しむまじ
  ただ惟神神に任せむ

 よしやよしわれらの生命召さるとも
  罪し消ゆれば悔ゆる事なし

 昔よりこの丘の上に鎮まりて
  国を守りしことのはづかし

 主の神の御許しなくばよき事も
  罪なりといふ事を悟りぬ』

 御樋代神の朝霧比女の神はうなづきながら、

『汝が言葉澄みてありけり宜よ宜よ
  国の司とありし身なれば

 汝が罪をここに改め許すべし
  水上の山に永久に鎮まれ』

 山神彦は涙を袖に拭ひながら、

『再生の思ひするかな御樋代神の
  なさけの言葉かたじけなみつつ

 天地の神は怒りて国原は
  修羅の巷となりにけりしな

 常闇の世を照しつつ天降りましし
  神の御前に戦くわれなり』

 岩ケ根は恐る恐る歌ふ。

『二柱神に仕へて今日までも
  安く暮れにしわが身恥かし

 御樋代の神の御前を伏し拝み
  わが身体はいすくみにける

 主の神の御許しなくて仕へたる
  われは悲しも罪を重ねて

 目路の限り国津神らの住む家は
  跡形もなく失せにけるかも

 かくの如なげきの種を培ひし
  われは礼なき罪人なりける

 わが生命よしや死すとも厭はまじ
  なやめる神を許させ給へ

 この館に古く仕へて年老いぬ
  著きいさをのあともなくして』

 水音は歌ふ。

『久方の雲井を分けて天降りませし
  神の御前にわれ戦きぬ

 常闇の醜の国原伊照らして
  天降り給ひし尊き神はも

 滝津瀬の水音とみにしづまりて
  漲る水は低みたるかも

 つぎつぎに漂ふ水も流れ行きて
  狭霧立ちたつこれの国原

 如何して貴の恵に報いむと
  思ふはわれらが真心なりけり』

 瀬音は畏み歌ふ。

『常闇の歎きに泣きしわが魂も
  神の光によみがへるける

 幾千代の末の末まで忘れまじ
  神の恵のいやちこなるを

 あはれあはれ水上山の聖場は
  蘇りつつ朝日照らへり

 草も木も歓ぎよろこぶ世となりぬ
  光の神の天降りましてゆ』

 大御照の神は御歌詠ませ給ふ。

『天津日も大御照らしの神なれば
  御樋代神に添ひて降れる

 今日よりは御空の雲霧吹き払ひ
  葭原の国土を生かさむと思ふ

 光闇行きかふ世なりわれあらば
  夕さりくるも国原明るし

 竜神の島の乙女に心せよ
  彼等は全き神にあらねば

 御樋代の神の渡らせ給ひなば
  竜の島根は生く国とならむ

 伊吹山尾根に集る曲津見は
  百花千花と化りて匂へるよ』

 岩ケ根は頭を地にすりつけながら、

『ありがたし天津御神の御宣示
  心に刻みて忘れざらまし

 歎かひの日を送りつつよろこびの
  今日はよき日にあひにけらしな』

 朝空男の神は御歌詠ませ給ふ。

『悩ましき水上の山のありさまを
  われあはれみて降り来つるも

 御樋代の神のみあとに従ひて
  天降りしわれは朝空男の神

 朝津日は御空に昇り夕月は
  尾の上にかかりて国土照しまさむ

 主の神の貴の食す国を美し国と
  治めて永久の礎固めむ

 山神彦よ岩ケ根、瀬音、水音と
  力協せて御子を育てよ

 生ひ立ちし御子をこの地の司とし
  近き辺りを安く治めよ』

 山神彦は嬉しさのあまり、落涙しながら地に伏して歌ふ。

『罪深きわれらが孫をかくまでも
  恵ませ給ふと思へば悲しき

 真心のあらむ限りを捧げつつ
  御樋代神に永久に仕へむ』

 川神姫は同じく伏して歌ふ。

『常闇の世は晴れにけり隈もなく
  御樋代神の光によりて

 わが夫と共にかしこみこの国の
  近き辺りを謹み治めむ』

 国生男の神は御歌詠ませ給ふ。

『葭原の国土は涯なく広ければ
  われは力の限りを尽さむ

 はてしなきこの国原に天降りまして
  都つくると思へばいさまし』

 御樋代の神は再び歌はせ給ふ。

『朝霧は四方に立ちたつ夕霞
  棚引き初むるこれの国原

 水上山これの清所は年老いし
  二人を休ませ岩ケ根にあづけむ

 この御子の生ひ立ちまさば岩ケ根は
  国の政治を御子に返せよ

 この御子は竜神の腹に生りませば
  国津神らの手には育たじ

 子心比女神に嬰児を守らせて
  安く雄々ししく育てむと思ふ』

 岩ケ根は地に伏して歌ふ。

『ありがたし老います君のあとうけて
  水上の山に仕へ奉らむ

 貴御子の生ひ立ちまさば吾は直に
  これの御国を返し奉らむ

 貴の子の生ひ立ち頼みまゐらする
  御樋代の神子心比女の神に』

 子心比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『御樋代の神の仰せをかしこみて
  朝な夕なを恵み育てむ』

 かく歌ひ給ひて、竜彦の御子を御肌に抱へさせ給ひ、

『貴の子よ愛しき御子よ汝こそは
  国の柱よすくすく育てよ。

 神の恵はいや広し
 汝の生命の永かれと
 朝夕祈りて育まむ
 山神彦よ川神姫よ
 心安かれ岩ケ根も
 すくすくこの子の生ひ立ちを
 楽しみ待てよ惟神
 われはこれより高光の
 御山を指して御樋代の
 神に従ひ出で行かむ
 ああ惟神々々
 恩頼は永久にあれ
 恩頼は永久にあれ』

と歌はせ給ひつつ、悠然として雲を起し、御樋代の神の他四柱は、高光山の方面指して出で給ひける。

 因に言ふ、高光山を境として、東に御樋代神の貴の御舎は建てられ、土阿の宮殿を造り、改めて土阿の国と名付け給ひ、高光山以西を予讃の国と名付け給ひ、葭原の国土を総称して貴の二名島と称へ給ひけるぞ畏けれ。

(昭和九・七・二〇 旧六・九 於関東別院南風閣 白石恵子謹録)



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