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原著名出版年月表題作者その他
物語78-1-41933/12天祥地瑞巳 焼野の行進王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
グロスの島
あらすじ
 朝香比女の神は、翌朝、舟を千引巖の立ち並ぶ浜辺に寄せて上陸された。浜は萱草、葦が生ひ茂った原野であった。
 初頭比古の神は、朝香比女の神から燧石を受け取り、あたりの萱草に火をつける。すると、原野は焼け爛れ、竜神、大蛇、猛獣などの焼け亡びた無残な光景を現出する。朝香比女の神は四柱の神に命じて遺骸を土中に埋めさせた。作業には多くの月日を費した。その後、一行は葦原ケ丘を目指して進む。
名称
朝香比女の神 天晴比女の神 初頭比古の神 起立比古の神 立世比女の神
葦原比女の神 鋭敏鳴出の神 国魂神 グロノス ゴロス 主の神 曲津見
葦原ケ丘 大蛇 鵲 木耳 グロスの島 鷹巣の山 千引き巖 燧石 猛獣 万里の島 真鶴 真火 御樋代 竜神
 
本文    文字数=10308

第四章 焼野の行進〔一九六〇〕

 東の空は漸く東雲めて、海面を飛交ふ鴎の声は彼方此方よりものやさしく響き来り、グロスの島ケ根はカラリと明けて鷹巣の山は屹然と島の東方に聳えたち、天津日は悠然として紅の幕を別けながら昇らせ給ひ、昨夜の物凄き光景はあとなく消え失せ、真鶴の声、鵲の声、冴えに冴えつつ、朝香比女の神の一行を迎へまつるものの如し。
 朝香比女の神は御舟を千引巖の碁列せる浜辺に静々と寄せ給ひ、駒諸共に御舟を出でて陸地に一行出でさせ給ひ、初頭比古の神は御舟を浜辺の片方にかたく結びつけ、起立比古の神外二柱の女神と共に陸に上らせ給ひつつ、萱草、葦の莽々と道のなきまで生ひ茂りたる原野を御覧しつつ初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『荒れ果てし島にもあるか萱草の
  生ひ茂りたる野は限りなし

 よしあしの道を塞ぎて茂りたる
  島根は曲津の潜むも宜なり

 駒の脚いるる隙さへなきまでに
  生ひ茂りたるよしあし原よ

 わが公に畏れ多けれどいや先に
  駒をうたせて道別けせむかな』

 朝香比女の神は馬上に跨り、御歌詠ませ給ふ。

『見はるかす島のことごと醜草に
  包まれけるかも曲津の棲処は

 曲神はこの草原に潜みゐつ
  百の災起すなるらむ

 見の限り雲立ち昇り霧湧きて
  風さへ冷ゆるあらき国原よ

 この国土を拓かむとして葦原比女
  神は早くも渡らせ給へる

 葦原比女神の神言のみあらかに
  進み語らむ時の待たるる

 グロノスやゴロスの潜むこの島は
  鳥の鳴く音も悲しげに聞ゆ

 真鶴は翼揃へて鷹巣山の
  尾根をよぎりつ近づき来るも

 この島も真鶴数多棲みけるか
  翼の音の近づき来るも』

 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『御樋代の神に仕へて今日もまた
  御樋代神に会ふぞ目出度き

 目路の限り生ひ茂りたる草の生に
  真火を放ちて曲津を焼かばや

 この島にありとしあらゆる曲津見を
  焼き滅すと思へば楽しき

 曲神の眼を醒す真火の光りは
  またと世になき宝なるかも』

 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『曲神といへどももとは主の神の
  水火より出でし神なりにけり

 鋭敏鳴出の神のたまひしこの真火は
  曲津を清むる剣なるかも

 比女神の生言霊にグロスの島の
  曲神はいつかかげをかくしぬ

 ひろびろと限りも知らぬグロス島の
  雑草の野に風さやぐなり』

 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『黒雲の覆ひし昨夜に引替へて
  御空晴れつつ日光清しも

 曲津見は天津日の光に驚きて
  草葉のかげに身をひそめけむ

 いろいろに言霊宣りてさとせども
  曲津の耳は木耳なりしよ

 かくならばこの生島を拓くために
  真火の荒びも是非なかるらむ

 雲をぬく鷹巣の山の山麓に
  御樋代神はおはしますらむ

 御樋代の神のまします清宮居は
  広き流れにかこまると聞く

 この野辺に火を放つとも御樋代の
  神の宮居は恙無からむ』

 朝香比女の神は再び御歌詠ませ給ふ。

『科戸辺の風は出でたりいざさらば
  真火を放てよこの草の野に』

『吾公の神言畏みいざさらば
  真火を放たむ初頭比古われは』

 かく御歌もて応へ給ひつつ初頭比古の神は、朝香比女の神の御手よりうやうやしく燧石を受取り、荒金の如き石もて燧石を、神言を奏上しつつカチリカチリと打ち出で給へば、真火は辺りに飛散し忽ち幾年ともなく積れる萱草の茂れる根もとの枯草に真火は移りける。折しもあれ、海面よりはげしく吹き来る風に吹きまくられ、見る見る四方八方にひろごり、紅蓮の舌は四辺かまはず、木も草も生物もあとを絶てよとばかり舐めまはりける。
 幾千里に亘る大原野は、見る見る黒焦げとなりて彼方此方に竜神、大蛇、猛獣等の焼け亡びたる姿、天日に曝され、無残の光景をとどめけるにぞ、御樋代神は四柱の神に命じて各自その遺骸を土中に埋めさせ給ひつつ、数多の月日を費し給ひけるぞ畏けれ。
 朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『あはれなる醜の魔神は亡びたり
  その遺骸をわれ葬りつ

 グロノスやゴロスの曲津の司等は
  未だ滅びず逃げ失せにける

 曲津見は鷹巣の山の空指して
  雲を起して逃げ去りしはや

 かくの如焼き浄めたる大野原は
  国魂神を移すによろしも

 国魂の神をこの土に移し植ゑて
  グロスの島を拓かむと思ふ

 よしあしの群がり生ひしこの島は
  土自ら肥えにけらしな

 曲神の棲処はことごと焼かれたり
  いざこれよりは神国をひらかむ』

 初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『御樋代の神の姿の雄々しさよ
  燃ゆる火の如輝きましつつ

 わが公は光の神にましませば
  常世の闇も晴れ渡るなり

 御空飛ぶ百鳥千鳥も驚きて
  いづくの果てか姿かくしぬ

 目路の果てに白煙たつはまさしくや
  野火の燃えたつしるしなるらむ

 風のあし如何に速けく走るとも
  燃えつつ進む真火はおくれむ

 上べのみは燃え尽せども草の根は
  未だ燃えつつ煙たちたつ』

 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『御供に仕へまつりて今日の如
  雄々しき楽しき日はあらざりき

 燃えさかる野火の勢ながめつつ
  公の力の功をおもふ

 何よりも尊きものと悟りけり
  公が持たせるこれの燧石は

 万里の島も公の賜ひし燧石にて
  魔神の潜む棲処は絶えむ

 ここに来て真火の力の功績を
  さとりけるかな起立比古われは

 数十里の野辺はみるみる焼け失せぬ
  風の力と真火の功に』

 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『黒雲の包みしグロスの島ケ根も
  晴れ渡りつつ月日かがよふ

 昼月の光冴えにつつ大空に
  吾等が振舞ひを見つつ笑ませり

 わが駒の脚下広くなりにけり
  百草千草焼きはらはれて

 大野原にすくすくたてる太幹の
  松と楠とは蒼く残れり

 火にさへもひるまぬ常磐樹の心こそ
  朝香の比女の操に似たるも』

 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『曲神の醜の棲処は悉く
  真火の力に払はれにけり

 海ゆ吹く潮の風の強くして
  見る見る荒野は浄まりしはや

 今日よりは如何に曲津見荒ぶとも
  恐れざるべし真火の功に

 火を吹きて吾等をおどせしグロノスや
  ゴロスの曲津はいづらへ行きけむ

 グロノスとゴロスの曲津見罰めずば
  この国原は安からざるべし

 葦原比女神のみあらかを今よりは
  勇み進みて探ねゆくべし

 いざさらば御前に立ちて仕ふべし
  天晴比女の神はうたひつ

 果てしも知らぬ大野原
 真火の力に悉く
 焼き払はれし面白さ
 科戸の風にたすけられ
 真火は忽ち四方八方に
 ふくれ拡ごりゴウゴウと
 火焔の舌を吐きながら
 総てのものを焼き尽す
 その勢の凄じさ
 馬背に跨り眺むれば
 火の海原の如くなり
 ああ惟神々々
 御樋代神の御尾前に
 仕へて進む焼野原
 駒の蹄もカツカツと
 果てしも知らに進みゆく
 この稚国土の稚野原
 未だあちこちに煙たち
 靄の如くに棚引けり
 常磐の松や楠は
 彼方此方の原頭に
 緑の梢かざしつつ
 グロスの島の瑞兆を
 寿ぐ如く見えにけり
 鷹巣の山に雲湧きて
 峰の百樹は青々と
 緑に映ゆる目出度さよ
 御樋代神と天降ります
 葦原比女の神司
 五柱の神従へて
 鷹巣の山の山麓に
 広き流れをめぐらしつ
 朝香の比女の出でましを
 喜び迎へ待たすらむ
 駒の歩みは速くとも
 この高原の末遠く
 鷹巣の山の麓まで
 進むは容易にあらざらむ
 この駿馬に大いなる
 翼のあらば大空を
 鷹の如くに天翔り
 進まむものを如何にせむ
 焼野ケ原をチヨクチヨクと
 吾等は気ながく進むべし
 ああ惟神々々
 公の御行に幸あれよ
 公の御行に光あれ』

 かく歌はせつつ、大野ケ原を五柱の神は吹き来る風に御髪を梳りつつ意気揚々と、葦原ケ丘の聖所を指して進ませ給ひける。

(昭和八・一二・二〇 旧一一・四 於大阪分院蒼雲閣 林弥生謹録)



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