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原著名出版年月表題作者その他
物語78-1-11933/12天祥地瑞巳 浜辺の訣別王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
御来矢の浜
あらすじ
 朝香比女の神及び四柱の神々が万里ケ島を立ち去る時、田族比女の神は十柱の神々を率いて御来矢の浜辺まで見送る。お互いに歌で訣別の辞を述べ、朝香比女の神一行は磐楠舟に乗り船出した。

 78巻のあらすじ。

 火食の道について。
名称
朝香比女の神 天晴比女の神 初頭比古の神 起立比古の神 雲川比古の神 田族比女の神 立世比女の神 霊山比古の神 直道比古の神 正道比古の神 保宗比古の神 若春比古の神 輪守比古の神
射向ふ神 太元顕津男の神 面勝神 国魂神 国向の鋒 主の大神 照男の神 曲津神 八十曲津見
国津神 火食の道 牛頭ケ峯 狭野の里 紫微天界 高地秀の宮居 高照山 西方の国土 白馬ケ岳 燧石 火の国 万里ケ丘 万里の海 万里の島 真火 御来矢の浜 御手代 御樋代
 
本文    文字数=13185

第一章 浜辺の訣別〔一九五七〕

 万里の大海原に浮びたる万里の島ケ根は、その面積約八千方里にして、豊葦原の瑞穂の国の発祥地なりければ、土地殊に肥え、春夏秋冬の四季の順序正しく、万物の発育また極めて良好なりければ、味よき果物や美しき花に害虫の好んで簇生するが如く、八十曲津見は千代の棲処と此処に暴威を振ひ居たりけるが、八十柱の御樋代神の一柱とまします田族比女の神は、主の大神の神宣を畏み給ひ、十柱の女男の神将を率ゐてこの島ケ根に降臨し、生言霊の剣を抜き持ちて、荒ぶる神等を山の尾ごとに追伏せ河の瀬ごとに追攘ひて打ち譴責め給ひ、心安く心楽しき神国と定め給ひける。折しもあれ高地秀の宮居に親しく仕へ給ひし八柱御樋代神の中にても最も美はしく最も面勝神と射向ふ神なる朝香比女の神が、女男四柱の神を従へ、しばしこの土に御跡をとどめ給ひしより俄に国形新まり、その威光を日に月に加へ給ひけるこそ目出度けれ。加ふるに曲神の最も忌み恐るる真火を切り出づるべき燧石を、この国土の御宝として朝香比女の神御手づから授け給ひしより、日日に国土治まり、総ての国津神等はその恩恵に浴し、火食の道を盛んに行ひにける。主の大神の生み給ひし八十国八十島の中にて、最も早く火食の道を始めたるは狭野の里なれども、国内一般に火食の道を開きたるは、この万里の島をもつて濫觴となす。故に一名火の国とも称へける。
 これより程経て朝香比女の神の勧めにより、太元顕津男の神は西方の国土を治め、朝香比女の神に国魂神の養育を任せおき、照男の神をして西方の国土を守らしめ置き、潮の八百路を渡りて万里ケ島に天降り給ひ、茲に田族比女の神に御水火を合せ給ひ、左右りの大神業を終へて国魂神を生ませ給ひ、国土の基礎定まるを見すまして再び高照山北面の稚国原を修理固成すべく進ませ給ひしなり。本巻においてその経緯を略序せむと欲す。
 朝香比女の神及び女男四柱の神々が、万里ケ島を立ち去らむとし給ふや、田族比女の神は十柱の神々を率ゐて御来矢の浜辺まで馬上豊に見送らせ給ひ、訣別の御歌を互に交し給ひける。
 茲に朝香比女の神は御舟に乗らせ給はむとして駒を下り、田族比女の神に対して御歌詠ませ給ふ。

『新しき国土の栄えを祈りつつ
  別れてゆかむ西方の国土へ

 田族比女御樋代神は平けく
  安らけくませ国魂生ますと

 四方八方の雲霧晴れて月日稚き
  国土の栄の思はるるかな

 顕津男の神にしあへば汝が神の
  功を審さに語り伝へむ

 美はしく雄々しくいます田族比女の
  神の真心伝へまつらな

 短かけれどこの新国土に留まりて
  吾が魂線は足らひけるかな

 御樋代神手づからたまひし宝石を
  清き御魂と朝夕仰ぐも

 曲津神荒び狂はむ事あらば
  真火の力に追ひそけたまへ

 海原の雲霧晴れて浪の秀は
  天津日光にかがやき渡るも

 別れゆく今日の名残は惜しめども
  留まるよしなき吾なりにけり』

 田族比女の神は酬の御歌詠ませ給ふ。

『雄々しくて優しくいます朝香比女の
  神に別ると思へば悲しも

 顕津男の神に吾事まつぶさに
  宣らすと言ひし公に感謝す

 この国土の千代の固めの宝なる
  燧石をたまひし嬉しさに泣く

 何よりの貴の宝よ燧石もて
  治まる国土に曲神はなし

 公が御行天津日光も祝ぎまして
  大海原を晴らさせたまへり

 朝宵に公の御幸を祈りつつ
  神の御前に仕へまつらむ

 万里ケ丘に公が記念と美はしき
  宮居造りて仕へまつるも

 八柱の御樋代神の天降りましし
  この島ケ根は特に尊し

 万世に伝へ伝へて朝香比女の
  御魂を祀り守り神とせむ

 火の神と御名を称へて朝香比女の
  大宮柱太しく仕へむ

 永久に公が御魂を止めおきて
  この新国土を守らせたまへよ

 千早振る神世も聞かず朝香比女の
  八柱神のいでまし尊し

 今日よりは御空の月日も光清く
  照り渡るらむ公の御稜威に』

 霊山比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『御来矢の浜辺に公を見送りて
  名残惜しさに涙こぼるる

 如何にしても止めむよしなき朝香比女の
  神のいでたち惜しまるるかな

 永久にこの新国土に御魂を
  止めて吾等を守らせたまへ

 新しき国土の宝を賜ひつつ
  旅に立たすよ光の神は

 いざさらば潮の八百路も恙なく
  進ませたまへ面勝の神』

 輪守比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『天晴れ天晴れ光の神は帰りますかと
  思へば惜しき今日の別れよ

 田族比女神に賜ひし燧石は
  公の光と千代を照らさむ

 天地にまたなき宝を賜ひつつ
  出で立たす公を送る淋しさ

 曲神は如何に伊猛り狂ふとも
  光賜ひし国土はやすけむ

 曲津見の伊猛り狂ふ暁は
  焼き滅さむ山に火をかけて

 百万の曲の猛びも何かあらむ
  ただ一点の真火の光りに』

 若春比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『国土稚く春の陽気の漂へる
  国土に仕ふる若春の神

 若春の神も悲しくなりにけり
  朝香の比女の旅立ち送りて

 瑞御霊一日も早く天降りませと
  伝へたまはれ面勝の神よ

 かくのごと雄々しく優しく美はしき
  女神に別ると思へば悲しも

 惟神また時あらばこの島に
  天降らせたまへ光の女神よ』

 保宗比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『天地の一度に晴れし思ひせし
  公帰らすと思へば淋し

 田族比女神に賜ひし御宝に
  吾は仕へむ公と仰ぎて

 万里の島の生の命の燧石こそ
  千代万代の宝なりけり

 国向の鋒にもまして尊きは
  公の賜ひし燧石なりける』

 直道比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『久方の御空はさやかに晴るれども
  吾魂線は曇らひにけり

 幾千代も万里の島根におはしませと
  祈りし心も夢となりしか

 尊かる八柱神の天降りましし
  万里の国原は輝きにけり

 この島の森羅万象おしなべて
  今日の別れを惜しみつつなく

 許しあればせめて西方の国境まで
  御樋代神を送りたきかな

 田族比女神の功は尊けれど
  一入貴き公が御光

 万世の記念と公が賜はりし
  燧石は国土の光なるかも』

 田族比女の神は朝香比女の神に向ひて御歌詠ませ給ふ。

『朝香比女神の神言よ直道比古の
  願ひをつばらに許させたまへ

 直道比古神の御供に仕ふるは
  吾御手代と思し召しまして』

 朝香比女の神は酬の御歌詠ませ給ふ。

『雄々しかる直道比古の真心を
  吾嘉すれど許すすべなし

 惟神神の定めし十柱の
  万里の島根の柱ならずや

 束の間も十柱神の欠くるあらば
  万里の島根はまたも動かむ

 四柱の神を従へ出でてゆく
  吾には何の艱みなければ

 十柱の神を手足と朝夕を
  国土生みの神業に使はせ給へ

 御樋代神の御言葉否むにあらねども
  万里の新国土思ふが故なり』

 田族比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『明らけき公の言葉に照らされて
  答の言葉吾なかりけり

 御教を畏みまつり十柱の
  神と諸共国土を拓かむ

 直道比古の神よ心を落ち付けて
  公の御教に従ひまつれよ』

 直道比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『二柱の女神の神言畏みて
  高鳴る胸の火を鎮めなむ

 万里の海は到る処に曲津棲めば
  心し行きませ朝香比女の御神』

 正道比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『浪の音はいやさやさやに響かへど
  心の海に浪たち騒ぐも

 公が御舟かくるるまでも佇みて
  見送る外にすべなかるべし

 浪の上潮の八百路も安かれと
  吾真心に祈るのみなる

 果しなき広き稚国土万里ケ島の
  記念と賜ひし燧石はも

 田族比女神の御言葉をかしこみて
  公が宮居を仕へまつらむ』

 雲川比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『顕津男の神に会はすと出でたたす
  公が旅路の遥けくもあるか

 八潮路の潮の八百路も恙なく
  進ませたまへ朝香比女の神

 四柱の御供の神等おはしませば
  心やすけく御舟を送るも

 をりをりは思ひ出して万里ケ島に
  清き御魂を通はせたまはれ』

 初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『田族比女神の神言の真心に
  別れの涙止めあへぬも

 朝香比女神の神言の御尾前を
  守り進まむ御心安かれ

 いろいろと生言霊のもてなしに
  わが魂線はよみがへりつつ

 なつかしき万里の島ケ根を後にして
  潮の八百路を進みてゆかむ

 この島は紫微天界の真秀良場と
  千代に八千代に栄えますらむ

 朝香比女の神に仕へて美はしき
  万里ケ島根の国形見しはや

 いざさらば名残は尽きじ吾公の
  御尾前守りて神国に別れむ』

 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『幾年もこの島ケ根に村肝の
  心清けく住ままく思ひし

 吾公の御供なれば村肝の
  心に任せぬ吾なりにけり

 牛頭ケ峰白馬ケ岳に立つ雲を
  遠行く舟に仰ぎて偲ばむ

 霊幸はふ神世の初めの田族国と
  吾は思ひぬ万里の島根を

 雲霧を吹き払ひたる万里ケ島は
  光にみつる貴の国原よ

 吾は今光の国土を後にして
  光の公と海原進まむ

 田族比女神は光の神とまして
  万里の新国土を照らさせたまへ』

 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『新しき国土の光を見ながらに
  吾は御供に仕へて行くも

 鳥獣草木の端に至るまで
  なつかしく思ふ万里の島根は

 森羅万象皆吾友と親しみし
  この新国土に別れむとすも

 主の神の許しありせば吾もまた
  この新国土に再び来らむ

 田族比女神の神言の顔を
  いや永久に若く守らむ

 この島の別れにのぞみ田族比女の
  神の優しさ若さを守らむ

 十柱の神の御姿永久に
  いや若かれと吾は祈るも』

 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『田族比女の神十柱の神いざさらば
  名残を惜しみて今や別れむ

 心若く永久にましませ万里ケ島の
  守りの神と光らせたまひつ』

 かく互に歌もて訣別の辞を述べたまひ、朝香比女の神初め四柱の神は駒諸共に磐楠舟にひらりと移らせたまへば、春とも初夏とも知れぬ陽気にみてる清しき風は忽ち吹き来り、艪櫂を用ひたまはぬに御舟は波上静に動き出でにける。

(昭和八・一二・二〇 旧一一・四 於大阪分院蒼雲閣 加藤明子謹録)



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