出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語77-4-241933/12天祥地瑞辰 会者定離王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
万里ケ丘
あらすじ
 祝宴が終えた頃、白馬ケ岳の背後にあたる夕暮の空が一種異様の光に満ちて、尊い御樋代神の降臨を知らせた。田族比女の神が、輪守比古の神、若春比古の神を、御来矢の浜辺へ迎えに行かせたところ、朝香比女の神一行の来訪だと分る。
 田族比女の神と朝香比女の神は、魔棲ケ谷からの戦利品のダイヤモンドと、朝香比女の神の燧石を交換する。田族比女の神たちは初めて真火を見たのだった。
名称
朝香比女の神 天晴比女の神 初頭比古の神 起立比古の神 雲川比古の神 田族比女の神 立世比女の神 霊山比古の神 千貝比女の神 直道比古の神 正道比古の神 保宗比古の神 山跡比女の神 湯結比女の神 若春比古の神 輪守比古の神
天津神 鋭敏鳴出の神 顕津男の神 国魂神 邪神 曲津見 八十比女神
高地秀山 ダイヤモンド 西方の国土 白馬ケ岳 燧石 魔棲ケ谷 万里ケ丘 万里の海 万里の島 万里の神国 真火 御来矢の浜 御樋代
 
本文    文字数=11729

第二四章 会者定離〔一九五六〕

 万里ケ島の天地を塞ぎたる邪神の潜みし雲霧はくまなく晴れて、日月は清く光を地上に投げ万物蘇生の思ひして、茲に新しく国名を万里の神国と称へ、総ての基礎を万世に固め給ひ、生きとし生けるものを悉く万里ケ島の聖所に集めて、寿ぎの宴を開き給ひしが、七日七夜の後、総ての生きとし生けるものは各自常住の地に帰り、水を打ちたる如く、御樋代神の御舎は静寂に帰したり。
 かかる所に西に聳ゆる白馬ケ岳の背後にあたれる夕暮の空は、一種異様の光に満ちぬれば、田族比女の神は高殿に立ちて、この様を覧はし、尊き御樋代神の降臨なりとして、直に輪守比古の神、若春比古の神をして御樋代神を迎へ奉るべく、黄昏の月下を鞭うたせ給ひける。
 茲に二柱の神は神言のまにまに、白馬ケ岳の西に当る御来矢の浜辺に馳けつけ給へば、常磐の森に憩はせ給ふ五柱の天津神等に出会ひまし、恭しく言葉を交し、万里ケ丘の聖所に神々を導きつつ、翌日の黄昏頃やうやくに復命申し給ひける。輪守比古の神は八柱の尊き御樋代神一行を導き、無事に帰りたることを田族比女の神の大前に奏上し給ひぬ。

『わが公の神言畏み二柱は
  御来矢の浜に急ぎ着きけり

 御来矢の浜辺に着けば森蔭に
  朝香比女の神休らひ給ひぬ

 恐る恐る吾御前に跪きて
  公の真言を宣り伝へける

 御樋代神朝香の比女は頷きて
  諸神を従へ此処に来ませり』

 田族比女の神はこれに答へて御歌詠ませ給ふ。

『久方の高地秀山より降りましし
  御樋代神をよくも迎へ来しよ

 ともかくもこれの高殿に導けよ
  吾も階段を下りて迎へむ』

 茲に輪守比古の神、若春比古の神の二柱は「オー」と一声畏まりつつ、御庭に待たせ給へる朝香比女の神一行の前に言葉も恭しく、

『いざさらば御樋代神の朝香比女
  進ませ給へこれの高殿へ

 四柱の神も後よりつづきませ
  吾も御後に従ひまつらむ』

 朝香比女の神は軽く目礼しながら、静々と高殿さして進みたまふ。茲に田族比女の神は高殿の階段を降りて恭しく朝香比女の神の一行を待たせ給ひけるが、比女の御姿目前に迫りけるより、

『あらたふと御樋代神の天降りましし
  尊さに吾は迎へ奉るも

 いざさらばこの高殿に案内せむ
  のぼらせ給へ五柱の神』

 茲に朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『音に聞く田族の比女の御樋代は
  汝なりしかも愛しと思ふ』

 かく歌ひ終り、悠然として田族比女の神の後より、朝香比女の神は高殿さしてのぼらせ給ひける。朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『所々に御樋代神は八十柱
  いますと聞きしを今日会ひにけり

 地稚き国土を固むる御樋代神の
  苦しき神業を思ひやらるる

 国土は未だ定まらずして曲津見の
  猛る国原拓くは苦しき

 諸々の艱みに堪へて万里ケ島を
  拓き給ひし公の功を思ふ

 吾は今西方の国土に進まむと
  その道すがらを立ち寄りしはや

 この島に八十比女神のましますと
  かねて聞きしゆ立ち寄りて見し

 まめやかに在せる公の御姿に
  吾は嬉しさ堪へやらぬかも

 永久の命保ちて若々しく
  国魂神を生ませ給はれ』

 田族比女の神は感激に堪へず、御歌もて答へ給ふ。

『ありがたし尊し朝香比女の神の
  優しき言葉に蘇りける

 八柱神尊き比女の御自ら
  吾を訪はせし今日の畏さ

 顕津男の神の出でまし待ちまちて
  今はやうやく年さびにけり

 眺めよきこの高殿に安らかに
  光放ちて在しましませ』

 朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『吾もまた同じ思ひの御樋代よ
  背の岐美に会ふと求ぎて来れり

 背の岐美は西方あたり曲津見の
  百の軍と戦ひ給はむ

 一水火の契なれども主の神の
  よさしなりせば忘れ難く思ふ』

 田族比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『愛くしき朝香の比女の言の葉に
  吾はおもはず涙しにけり

 背の岐美を恋ふる心の苦しさを
  味はひ給ふ女神いとしも』

 茲に二柱の御樋代神は百年の知己の如く、互に心の底より解け合ひ、同情の涙にくれ給ひつつ思はず知らず日を重ね給ひける。田族比女の神は、白馬ケ岳の魔棲ケ谷にて神々の戦利品として持ち帰りたる数多のダイヤモンドを取出し、朝香比女の神に奉りければ、実に珍しき物よと賞め讃へながら、田族比女の神の奉るままに、こころよく受け取らせ給ひぬ。田族比女の神の奉りたる宝石は、最も光り眩く、最も大いなるダイヤモンドにして稀なる珍しき物なりける。
 朝香比女の神はその謝礼として、懐中より燧石を取出し、火を切り出で四辺の枯芝を集めて火を燃し給ひければ、田族比女の神を始めとし十柱の神々は初めて真火の燃ゆるを見給ひしこととて、何れも感嘆の声を放ち給ひけるが、朝香比女の神は宝石の謝礼として手づからのこの燧石を田族比女の神に贈り給ひける。
 田族比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『あら尊明るき熱き火は燃えぬ
  闇夜を照らす神なるよ真火は

 この国土に真火の功のある限り
  曲津見の神は荒ばざるべし

 曲神の潜む山野を焼き払ひ
  清むるによき真火なりにける

 朝香比女の神の給ひし燧石は
  万里の神国の貴の宝よ

 石打ちて真火出づるとは今日の日まで
  愚しき吾はさとらざりけり

 この宝賜ひし上は万里の国土の
  総ての曲津を焼き滅ぼさむ』

 朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『鋭敏鳴出の神の賜ひし燧石なれば
  国土の鎮めと公に贈るも

 この燧石一つありせば稚国土も
  忽ち固らに栄えゆくべし

 穀物その外すべての食物を
  真火にてあぶれば味はひよろしも

 真清水も真火の力に湯となりて
  神に捧ぐる代となるべし』

 田族比女の神はまたもや御歌詠ませ給ふ。

『朝香比女神に捧げし宝石は
  光あれども熱からず燃えず

 命なき光を公に奉り
  命ある光を賜はりしはや』

 茲に二柱の神はダイヤモンド、燧石の贈答終り、再び寛ぎて歓談に耽けらせ給ふ。
 初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『波の秀を渡りて万里の神国に
  求ぎて来つるも公を守りて

 珍しく輝く玉を見たりけり
  この新国土に着きし間もなく』

 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『高山と高山の中にかくの如
  聖所のあるは珍しきかな

 御樋代神と御樋代神の出会ひませる
  この神国は永久に栄えむ』

 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『わが公に従ひ奉りて万里の国土に
  夜光の玉を拝みけるかも

 夜光の玉は美しかれども命なし
  燧石の真火の真言にしかざり』

 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『諸々の曲津をやらひし燧石を
  贈らせ給ひしわが公畏し

 貴宝数多あれども真火出づる
  燧石にまさる宝なきかな』

 輪守比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『朝香比女神の賜ひし燧石こそ
  この新国土の生ける宝よ

 宝石の光は如何に輝くも
  邪神の持ちし宝なりける』

 霊山比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『畏しや天降りましたる八柱の
  比女神の言葉直に聞く吾は

 顕津男の神に出会ふと数万里の
  海山渡らす比女ぞ雄々しき』

 若春比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『やうやくに雲霧晴れし万里の国土に
  二柱の御樋代神天降らせり

 わが公は尊しされど八柱の
  比女の功はひとしほ高し』

 保宗比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『珍しや御樋代神は二柱まで
  この神国に天降り給ひぬ

 西方の国土に出でます朝香比女の
  神の心を雄々しとおもふ』

 直道比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『一柱の瑞の御霊を恋ひ恋ひて
  ねたみ給はぬ御樋代神等よ

 惟神神のよさしの御樋代なれば
  清くすがしく在しましけるよ』

 山跡比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『御樋代の二柱神の御面は
  月日の如くかがよひませり

 拝むもまばゆきばかり御樋代の
  神のおもざし輝き強し』

 千貝比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『はろばろと瑞の御霊を慕ひまして
  出でます朝香比女の神雄々しも

 雲霧をいぶきわたりて海原の
  波の秀ふみて来ませし公はも』

 湯結比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『ためしなき雄々しき御樋代神等の
  赤き心に照らされしはや

 帰りまさむ日は近づきぬ美しき
  神に別るとおもへばかなしも』

 正道比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『御樋代神これの神国に賜ひたる
  燧石は千代の宝と仰がむ

 かくの如尊き生ける力あらば
  万里の神国におそるるものなし』

 雲川比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『新しく国土は生れぬ新しき
  真火輝きぬ神の恵に

 身を清め心清めて燧石の
  神霊を永久に斎かむとおもふ』

 かく神々は各自御歌詠ませつつ、朝香比女の神の訪問や、燧石を国宝として賜ひしことなどの嬉しさに国土の前途を祝し給ひけるが、御樋代神の朝香比女の神は長らくこの国土に留まるを得ず、以前の四柱の神を従へまし諸神に別れを告げ、御来矢の浜辺より磐楠舟に乗り万里の海原を東南の空さして静かに静かに進ませ給ひける。

(昭和八・一二・一七 旧一一・一 於大阪分院蒼雲閣 内崎照代謹録)



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