出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語77-3-191933/12天祥地瑞辰 邪神全滅王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
魔棲ケ谷
あらすじ
 曲津見も必死で、百千の邪神は雲霧となり、岩となり、火の玉となって、前後左右に狂ひ廻り、幾度となく五柱神の身辺を襲う。神々にも危険が刻々と迫ったので、霊山比古の神は『アオウエイ』の言霊で、三柱の比女神を呼ぶ。
 三柱の比女神は馬を鷲馬と変化させ、それに乗って、空中から竜神を攻撃する。それで、神々は大勝利を納めた。
 五柱神の彦神は、戦利品として、ダイヤモンドなどの宝玉を持って、泉の森へ戻る。

 宝石について。神々は自ら光り輝いているので宝石は必要ない。婦人達がダイヤモンドなどを飾るのは、烏が、孔雀の落ちた羽で身を飾るのと変りがない。
名称
雲川比古の神 鷲馬 霊山比古の神 直道比古の神 正道比古の神 保宗比古の神
大蛇 蛙 国津神 邪神 田族比女の神 長大身 鼠 曲津神 竜神
泉の森 五百津御須麻琉の珠 ダイヤモンド 白馬ケ岳 魔棲ケ谷 万里の島 御樋代 百津石村
 
本文    文字数=10619

第一九章 邪神全滅〔一九五一〕

 茲に五柱の男神は、谷間の嶮を千辛万苦を重ねつつ辛うじて突破し、魔棲ケ谷を囲める丘の廻りに佇み給ひて、各自力限りに生言霊の征矢を間断なく放ち給ひければ、遉の曲津見も居耐らず此処を先途と必死の力を現はし、百千の邪神は雲霧となり岩となり火の玉となり、前後左右に狂ひ廻り、幾度となく五柱神の身辺を襲ひ危険刻々に迫りければ、霊山比古の神はもはやこれまでなりと臍下丹田に力を籠め、
『ア オ ウ エ イ』
と繰り返し繰り返し宣らせ給ひければ、山麓の小笹ケ原の傍なる楠の森に、手具脛ひいて待ち給ひける三柱の比女神は、わが乗り来りし駿馬に向ひ、
『タ ト ツ テ チ
 ハ ホ フ ヘ ヒ』
と力限りに言霊を宣り給ひけるにぞ、駒は忽ち大なる翼を生し、長大なる鷲と化しけるにぞ、三柱比女神はこれぞ全く神の賜なりと、鷲馬の背に跨り、一目散に魔棲ケ谷の邪神の巣窟さして中空高く翔りつき給ひ、天上より大なる鷲の嘴もて、竜神の頭を啄き、或は太刀膚を傷り、獅子奮迅の勢をもて挑み戦ひ給へば、遉の曲津見も敵し得ず、谷川は忽ち血の川となりて邪神の影は跡もなく清まりける。この大勝利を見るよりも、三柱の比女神は、そのまま中空を翔り、御樋代神の屯し給ふ泉の森をさして、一目散に復命申し給ひ、御樋代神の感賞の言葉を頂き給ひける。
 さて五柱の比古神は、大蛇の群の永久に棲みし魔棲ケ谷の巣窟に、生言霊を宣りつつ進み給へば、周章狼狽のあとありありと見えて、数多の宝玉は彼方此方に飛び散りて、目も眩ゆきばかりなりければ、五柱の男神は戦利品として悉く拾ひ帰り、田族比女の神に奉らむと評議一決し、金銀、瑪瑙、瑠璃、硨磲、白金、金剛石なぞ、数限りなき宝玉を五つの苞に包み、勝鬨あげて一先づ泉の森に引き返し給ふ事とはなりぬ。
 総て真言の天津神はスの言霊より生れたるさまざまの声の水火より生れませる神にましませば、全身悉く光に輝き、恰も水晶の如く透明体にましませば、ダイヤモンドまたは金銀珠玉の装飾物を要せずともその光彩妙にましましにけり。これに反して曲神は、身体曇りに満ちぬれば種々の宝玉を全身に附着して光に包まれ、真言の神を真似むとするものなり。例へば真言の神は孔雀の如く曲津神は烏の如し、烏は孔雀の翼の美しきを羨みて、その落ちし羽根を拾ひ吾翼の間に挿み置きて数多の烏にその美しさを誇るが如く、曲津神は競ひて宝玉を集め、その輩に対して光を誇るものなれば、曲神の強きものほど数多の宝玉を身に附着し居りしものなり。この度の言霊戦によりて太刀膚の竜神も、長大身大蛇も、百の竜神も、装ふべき宝を取り纒むる暇もあらず、倉皇として天の一方に逃げ去り、天日の光に照らされて、次第々々に亡び失せけるこそ目出度き限りなりけれ。
 しかしながら太古の神々は、光なき天然の石を琢磨きて五百津御須麻琉の珠をつくり首飾、腕飾または腰の辺りの飾となし給ひしかども、決して金剛石の如き光を放つものを身に帯ぶることを卑しめ給ひしものなり。何故なれば、神の御身体はすべて光にましませば、光の宝玉を身に纒ふ時は神自身の光の弱きを示す理由となりて、他の神々に卑しめらるるを忌み給ひたればなり。今の世にも貴婦人とか称するもの、令嬢とか言へるものはさておき、すべての婦人等が競ひてダイヤモンドの光に憧憬れ、千金を惜しまず競ひ購ひ、身体の各部に飾りつけてその豪奢を誇り、美を誇り、光を誇れるは、恰も烏が孔雀の落羽根を吾翼の間にさして誇れるのと何の選ぶところなかるべし。全身を光強き金剛石につつむなればまだしも、ただ一局部に小さき光を附着して誇るが如きは、実に卑劣なる心性を暴露せる卑しき業と言ふべし。
 愛善の徳に満ち信真の光添はば、身に宝石を附着せずとも、幾層倍の光を全身に漲らせ、知らず識らずの間に尊敬せらるるものなり。吾人は婦人等の指または首のあたりに鏤めたる種々の宝石の鈍き光を眺めつつ、浅ましき卑しき心よと、常々嘔吐を催し、その人々の醜さを層一層感ぜしめらるるなり。
 五柱の神は、魔棲ケ谷の醜神を根底より剿滅し、歓喜に堪へず、常に黒煙を吐きて国土をなやませたる曲津見の棲処を瞰下しながら、稍小高き丘の上に立ち、御歌うたひつつ踊り舞ひ狂はせ給ひける。その御歌、

『天晴々々四方の国原晴れにけり
 白馬ケ岳の南側の
 百谷千谷を集めたる
 大谷川の上流に
 潜みて醜の曲神の
 猛び狂ひしそのありか
 世を曇らせし元津場
 雲を起せし醜の山
 霧を涌かせて物皆の
 育ちを妨げ荒びたる
 元津砦は亡びけり
 万里の島根は今日よりは
 醜の荒びの黒雲も
 冷たき霧の涌きたちも
 跡なく消えて久方の
 蒼き御空の奥深く
 天津陽の光輝きたまひ
 月読の神はさやかなる
 光を雲井にとどめまし
 地上に恵の露ふらし
 すべてのものの命をば
 千代に八千代に守りまし
 この神国は永久に
 花咲きみのり穀物
 豊になりて牛馬も
 肥え太りつつ日に月に
 栄ゆる神世となりぬべし
 この国原は未だ稚く
 国津神等の影もなし
 蛙と鼠の輩は
 田畑を耕し穀物
 育てて命を保ちつつ
 弥永久に永久に
 月日と共にやすらはむ
 ああ惟神々々
 生言霊の幸ひて
 三柱比女神逸はやく
 鷲馬の背に跨りて
 大空高く翔り来つ
 吾等のなやみし戦を
 たすけたまひし雄々しさよ
 曲津の神の秘めおきし
 百の宝は欲りせねど
 今日の戦の勝鬨の
 印と集め包みとし
 駿馬の背に積み満たし
 御樋代神の御前に
 供へまつらむ勇ましや
 天地創めし昔より
 かかる例はあら尊
 神のよさしの神業を
 〓怜に委曲に仕へし吾等は
 千代に八千代に伝はりつ
 世の語り草となりぬべし
 思へば嬉し勇ましし
 思へば畏し主の神の
 生言霊の光なれ
 貴の御水火の力なれ
 久方の天はせ使ひ
 事の語り言もこをば。

 烏羽玉の夜は迫り来むいざさらば
  下りて帰らむ泉の森まで』

 五柱の神々は数多の宝玉を戦利品として背に負はせつつ、百津石村の碁列せる難所を神言を奏上しつつ漸くにして山麓の小笹ケ原の楠の森に着かせ給ひければ、五頭の神馬は主の帰りを待ち佗びつつ、樹下に頭を並べ整列し居たりける。
 霊山比古の神はこれを見て御歌詠ませ給ふ。

『吾駒は雄々しく正しく待ち居たり
  生言霊の耳にさへしか

 白馬ケ岳荒ぶる神を打ち払ひ
  勝鬨あげて帰りきつるも

 村肝の心晴れたりわが魂は
  駿馬なして勇みつるかも

 復命確に申さむ嬉しさに
  この黄昏も心明るき』

 保宗比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『吾いゆく道に遮りし曲津見も
  煙と消えて今日の勝鬨

 中空を翔り来ませる比女神の
  力に曲津は苦もなく破れし

 今日よりは白馬ケ岳に立ち昇る
  雲はいづれも紅に映えむ

 稚き地稚国原の草も木も
  今日を限りと繁り栄えむ

 かくのごと雄々しき正しき神業に
  仕へし吾身の幸を思ふも

 非時に黒雲立ちし白馬ケ岳の
  魔棲ケ谷は晴れ渡りつつ

 面白し曲津の砦を打ち破り
  明日は御前に復命せむ』

 直道比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『岩根木根踏みさくみつつ登りゆく
  谷間の道は嶮しかりけり

 曲津見は女神となりて吾行手に
  遮らむとせり浅はかなるも

 五柱水火を合せて宣り上ぐる
  生言霊に曲津はさやぎぬ

 岩となり火の玉となりいろいろに
  力尽して射対ひ来りぬ

 危しと見るより霊山比古神は
  水火を凝らして言霊宣らせり

 言霊の終る間もなく比女神は
  鷲馬に跨り翔り来ましぬ

 後の世に語り伝へむ今日の日の
  生言霊の奇びの神業を』

 正道比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『村肝の心にかかりし神業も
  苦もなくすみて空晴れ渡りぬ

 天津日は白馬ケ岳に傾きて
  大いなる影さし来りつる

 山蔭は横に倒れて御空より
  地より闇は迫り来らしも

 顧みれば吾勇ましよ諸神と
  水火を合せて曲津を退ひし

 黒雲と霧に艱みし万里の島の
  天地は清く明け渡りぬる』

 雲川比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『諸神の功は千代に万代に
  輝きたまはむ語草にも

 いざさらば駒に鞭うち大野原
  急ぎ帰らむ泉の森まで』

 ここに神々は駒の背に跨り、黄昏の野路を、轡を並べて泉の森へと急がせ給ひける。

(昭和八・一二・一六 旧一〇・二九 於大阪分院蒼雲閣 加藤明子謹録)



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