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原著名出版年月表題作者その他
物語77-3-151933/12天祥地瑞辰 笹原の邂逅王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
小笹原
あらすじ
 他の神々も霊山比古の神に合流した。神々はおのおの部署を定め、魔棲ケ谷をさして進む。
名称
雲川比古の神 霊山比古の神 千貝比女の神 直道比古の神 正道比古の神 保宗比古の神 山跡比女の神 湯結比女の神
田族比女の神 曲津見
邪気 白馬ケ岳 魔棲ケ谷 万里の島 禊の神事 御樋代 夜光の玉
 
本文    文字数=11244

第一五章 笹原の邂逅〔一九四七〕

 霊山比古の神は、小笹の芝生に曲津見の計略も難なく逃れて一夜を明し給ひけるが、漸く東の空を照して昇らせ給ふ天津日の光に、蘇生の息を吐き給ひける。
 折しも保宗比古の神、直道比古の神、正道比古の神、雲川比古の神の四柱は、この場に悠々と駒の手綱をかいくりながら現はれ来り、駒をひらりと飛び下り、保宗比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『霊山比古の神は事無くおはせしか
  夜半を進みし醜の常闇に

 吾こそは道の行手を塞がれて
  咫尺弁ぜず途中に宿りし

 東雲の空を力に立ち出でて
  駒を急がせここに来つるも』

 霊山比古の神は答の御歌詠ませ給ふ。

『待ち待ちし四柱比古の姿見つ
  わが魂線は蘇りたり

 常闇の小笹ケ原に夜をこめて
  醜の曲津と言問ひしはや

 醜女探女も夜光の玉を照らしつつ
  吾を魔窟に誘はむとせし

 三柱の比女神の姿と体を変へて
  やさしく吾を誘ひしはや

 竜神は眼を光らし吾前に
  夜光の玉と偽りにける

 いかにして進まむ由もなかりけり
  咫尺弁ぜぬ黒雲の幕に

 青臭き息に囲まれ玉の緒の
  生きの生命を危ぶみにけり

 これよりは部署を定めて各も各も
  魔棲ケ谷に進まむと思ふ』

 保宗比古の神は驚きながら御歌詠ませ給ふ。

『吾もまたとある小さき森蔭に
  やすらひにつつ夜光の玉見し

 三柱の比女神吾にも現はれて
  夜光の玉に誘ひにけり

 如何にしても怪しきものと思ひしゆ
  吾言霊に逐ひやりにけり

 三柱の比女神等の面ざしに
  似たれど少しは怪しと思へり

 とにもあれ角にもあれや夜の明くるを
  待たむと心定めたりしよ』

 直道比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『吾もまた醜の曲津の化身なる
  三柱比女の神に逢ひける

 曲津見の猛び忌々しければ吾許に
  来れと彼等は誘ひにけり

 よく見れば二つの耳は動きたれば
  正しく曲神の化身と悟りき

 言霊の水火をこらして曲神を
  伊吹き払へば消え失せにけり

 色々と手段を持ちて曲神は
  吾等が征途を防がむとすも』

 正道比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『吾前に三柱比女は見えねども
  夜光の玉の地に落ちゐたるよ

 吾伊行くあたりの闇を射照らして
  夜光の玉はかがやきにけり

 怪しみて吾手にふれず鞭もちて
  打てば夜光の玉は動けり

 闇の夜を照らす真玉と見えけるは
  正しく竜の眼なりけむ

 大いなる騒ぎの音を立てながら
  夜光の玉は千々に砕けぬ

 竜神の眼は砕け破れつつ
  独眼竜となりて逃げしか』

 雲川比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『荒野ケ原に吾も漸く黄昏れて
  やさしき女に出会ひけるかも

 先に立たす比古神等は悉く
  滅び給へば進ますなと宣りし

 怪しかる女神は秋波をよせにつつ
  吾駒の首に飛びつきにけり

 駒に鞭あつれば忽ちをどり上り
  女神を捨てて駆け去りにけり

 ここに来て始めて知りぬ比古神の
  事なく在せしを雄々しき姿に

 いざさらば天津日の光昇りませば
  部署を定めて征途に上らむ

 曲神の醜の奸計はこまやかに
  手筈極めて待ちあぐむらむ

 ともかくも今日の首途に先立ちて
  この笹原に神言宣らむか』

 霊山比古の神その他の諸神は、雲川比古の神の提言に賛意を表し、天地も割るるばかりの言霊をはり上げて、貴の神言を宣らせ給ひぬ。霊山比古の神は小笹ケ原を流るる細谷川の清水に禊し給へば、四柱の神も吾後れじと健びの禊を修し給ひ、各自首途の御歌詠ませ給ふ。
 霊山比古の神の御歌。

『天晴れ天晴れ細谷川に禊して
  吾言霊は清まりしはや

 かくまでも禊の神事の畏さを
  悟らざりしよ愚かなる吾は

 みそぎして吾気体も魂線も
  清めし上は恐るる事なし

 吾魂は冴えに冴えつつ鳴り出づる
  生言霊の力満ちぬる

 玉の緒の生きの生命もさやさやに
  清まりにつつ光を増しけり

 奴婆玉の闇より黒き曲神の
  魂を照らして勝鬨あげむか

 はてしなき生言霊の力もて
  進まむ今日の出で立ち楽しも

 曲神の醜の砦も近づきぬ
  いざや進まむ言霊照らして

 八十曲津谷間に深くひそむとも
  現はしくれむ言霊の光に

 鷲の棲みしこの森林の谷間を
  安く開きて吾は進まむ』

 保宗比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『禊して吾身はあかくなりにけり
  いざや進まむ魔棲ケ谷に

 万里の島に永久にさやりし曲神の
  滅ぶる時は今や来にけり

 雲を起し霧を湧かしてすさびたる
  曲神滅ぶと思へば楽し

 千引巌あまた並べて構へゐる
  醜の砦も何か恐れむ

 黒雲の中にかくれて邪気を吐く
  八十の曲津の終りなるかも

 主の神のたまひし厳の言霊を
  今日の禊に清めて進まむ

 月も日も包みかくして荒びたる
  魔棲ケ谷の砦を放らむ』

 直道比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『白馬ケ岳の頂までも黒雲を
  起して曲津は待ち構へ居り

 白馬ケ岳百谷千谷に黒雲を
  湧かせて曲津は吾等を遮れり

 アオウエイの生言霊に荒び狂ふ
  竜も大蛇も生命をたたむか

 おとなしく服従ひ来れば吾もまた
  愛のこころを起して救はむ

 御樋代の神の天降りし万里の島を
  清むも吾等が務なりける

 田族比女神は泉の森蔭に
  吾戦を守りますらむ

 溪川をおつる滝津瀬高けれど
  水は残らず赤濁りたり

 溪川の流れを見れば曲津見の
  こもれる水火の濁りなりけり

 この水の流るる所浸みる所
  木草は育たず穀物実らず

 曲神の醜の砦を打ち破り
  清き清水の滝津瀬とせむ

 さりながらこの一筋の細谷川は
  禊のために澄みきらひたり

 主の神の禊せよとて造らしし
  小川と思へば尊かりける』

 正道比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『両肩に重荷を負ひし心地して
  神の神言をかしこみ進むも

 夕されば曲津の荒び強からむ
  真昼の間によく戦はむ

 昨夜の如曲津の化身現はれて
  吾等を迷はす事の憎ければ

 曲神は真昼を恐れ真夜中を
  吾世となして猛び狂ふも

 夕されば戦休み時じくに
  生言霊を宣りて明さむ』

 雲川比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『雲霧となりて天地を塞ぎたる
  曲津見今や滅びむとすも

 五男三女の雄々しき神の行く道に
  いかなる曲津もさやる術なけむ

 ともかくも醜の曲津と戦はむ
  陽のある間ぞ勝利なるべし

 ほしいままに伊猛り狂ふ真夜中に
  曲津を攻むるは益なかるべし

 曲津見は真昼の光を恐れつつ
  雲霧となりて地を包むなり』

 かく御歌詠ませ給ふ折しも、三柱の比女神は駒の轡を並べてこの場に悠々と現はれ給ひ、山跡比女の神は馬上より御歌詠ませ給ふ。

『五柱の比古神ここに在せしか
  昨夜の闇を案じつつ来し

 吾こそは御樋代神の計らひに
  後れて征途に上り来しはや

 曲神は吾等三柱比女神の
  姿まねぶと思ひて後れしよ

 御樋代の神の言葉に従へば
  曲津は吾等に身を変へしと聞く』

 霊山比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『御樋代神の水ももらさぬ御計らひに
  われは驚き畏むばかりよ

 山跡比女神の宣らせる言の葉の
  畏さ吾身に迫るものあり

 曲津見は三柱比女の神と化し
  吾誘ふと計らひしはや

 さりながら吾魂線はささやきぬ
  曲神の化身よ心許すなと

 吾魂の囁き言葉に従ひて
  曲の奸計の罠をのがれし』

 千貝比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『五柱比古神等に後れ来しも
  曲の奸計を思ひてなりけり

 田族比女神の神言のさとき目に
  吾も今更驚きにけり

 吾来る道はほのぼの明るみて
  月のかかれる野辺なりにけり

 小笹原芝生に五柱神ますと
  宣らせ給ひぬ御樋代の神は

 御言葉の如く五柱比古神は
  小笹ケ原に待ち給ひける

 かくの如神の守りの強ければ
  醜の曲神も何か恐れむ』

 湯結比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『三柱の比女神夜の大野ケ原を
  ほのかな月に照らされて来し

 吾来る大野ケ原に夜は明けて
  駒の歩みも早くなりける

 言霊の天照り助くる神の世に
  醜の曲神のいかで栄えむ

 いざさらば諸神等と言霊の
  水火を合せて進みに進まむ』

 霊山比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『かくの如五男三女の神柱
  集ひし上は急ぎ進まむ

 さりながら神々等は各も各も
  部署を定めて攻め上らむかな』

 ここに五男三女の神は各の部署を定め、遥か彼方の空に巍峨として峙つ魔棲ケ谷さして進み給ふ事とはなりぬ。

(昭和八・一二・一五 旧一〇・二八 於大阪分院蒼雲閣 谷前清子謹録)



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