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原著名出版年月表題作者その他
物語77-1-61933/12天祥地瑞辰 田族島着陸王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
万里の島
あらすじ
 朝香比女の神一行は白馬ケ岳の麓に着いた。この島は万里の島といい、幾千万の野馬と羊が棲息し、未だ一柱の国津神も住んだことのない田族の島であった。
 朝香比女の神の一行が上陸すると、数多の馬、羊は先をきそって白馬ケ岳の麓をさして逃げ出した。一行は、楠の大樹の蔭で休憩する。そこへ、輪守比古の神と若春比古の神が一行を迎えにくる。
名称
朝香比女の神 天晴比女の神 初頭比古の神 起立比古の神 立世比女の神 若春比古の神 輪守比古の神
天津神 顕津男の神 国魂神 国津神 田族比女の神 八十曲津見
高地秀の山 田族の島 白馬ケ岳 万里の海 万里の島 御樋代
 
本文    文字数=10499

第六章 田族島着陸〔一九三八〕

 伊猛り狂ふ荒浪を  ものともなさず比女神は
 生言霊の御光に  忽ち巌の島となし
 泡立つ浪は忽ちに  島の真砂と変へさせて
 いみじき功を立て給ひ  諸神等を驚かせ
 水火の光を照らしまし  果しも知らぬ万里の海
 浪押し分けて悠々と  白馬ケ岳を目当とし
 声も清しく言霊の  御歌を詠ませ給ひつつ
 進ませ給ふぞ雄々しけれ  御空を渡る天津日は
 高地秀山の頂に  うすづき給ひて山影は
 万里の海原襲ひ来ぬ  冷たき夕べの海風は
 女神の御舟に襲ひ来ぬ。  

 朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『浪高き万里の海原渡り居れば
  高地秀山に陽は落ちにけり

 高地秀の山影遠く万里の海の
  面に黒く倒れけるかも

 百鳥は塒求めて島々の
  茂樹の梢をさして飛ぶなり

 奴婆玉の翼の黒き夕烏は
  西の島根をさして急ぐも

 浪の音いや高らかに響きつつ
  わが乗る舟はさゆらぎにけり

 数限りなき島山を縫ひて来し
  舟も恵みに恙なかりき

 天津日は山に沈みて月読の
  光はますます冴え渡るなり

 月読の清き姿を眺むれば
  わが背の岐美を偲ばるるかな

 御空ゆく月をし見れば背の岐美の
  清き姿の偲ばるるかな

 天津日はかくろひぬれど月読の
  御舟は磐楠舟を照らせり

 月冴ゆる大海原を渡りゆく
  われ国魂の神を生まむと

 百鳥の声は聞こえずなりにけり
  ただ潮騒の音のみにして

 島々の岸打つ浪は白々と
  しぶき立つなり風のまにまに

 滔々と巌ケ根を打つ浪しぶきの
  音は一入高くなりけり

 海の面に匂はぬ花の咲き満ちて
  わが行く夜半の舟はさやけし』

 初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『万里の海早や黄昏れて潮騒の
  音たかだかと鳴り響くかも

 百鳥は島の茂樹に宿をとるか
  ただ一羽だも影を見せなく

 吾もまた何れの島にか舟寄せて
  雨宿りつつ夢を結ばむ

 白馬ケ岳深雪は月に輝きて
  霧の海原に影をうつせり

 音にきく白馬ケ岳の生島は
  白馬数多群れ棲むときく

 吾駒は終日舟に乗せられて
  苦しかるらむ水も飼はねば

 水飼はむ術もなきかな万里の海の
  水はことごと塩なりにける』

 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『比女神の御供に仕へて万里の海に
  黄昏れにつつくたびれしはや

 曲神の伊猛り狂ふ海中に
  黄昏れてやる舟は淋しも』

 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『起立の神の言葉ぞあやしけれ
  生言霊の旅にあらずや

 さびしみを語れば淋し楽しみを
  語らば楽しき神世なるぞや

 言霊のたすけ幸ふ国中に
  弱音ふかすな起立比古の神』

 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『立世比女神の言霊うべなうべな
  吾言霊をあやまりにけり

 久方の月照る夜半の海原は
  いと賑はしくかがやきにけり

 浪の秀は花と冴えつつ岸を打つ
  潮のしぶきは玉と照るなり

 生き生きて吾は栄えむ永久に
  心も魂も疲るることなく

 朝香比女神の雄々しさに比ぶれば
  吾は小さき弱き神かも』

 朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『起立の神の宣らする言霊に
  万里の海原よみがへりぬる

 大空の星も降りて水底に
  光りかがやき給ふ海原

 上と下に月と星とを眺めつつ
  わが行く舟は天の鳥船よ

 かくの如美しき海の浪の上を
  月に照らされ行くは楽しも』

 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『白馬ケ岳影はやうやく近みたり
  千重の浪路を遠く渡りて

 海原の浪の頭は百千々に
  またたきにけり月の光に

 右左島根はここだく並べども
  神の住むべき所だになし

 巌骨をあらはし島は赤々と
  空行く月のかげをうつせり

 仰ぎみる白馬ケ岳は青々と
  樹木茂れり行きてひらかばや』

 かく歌ひつつ漸くにして白馬ケ岳の麓に御舟は着きにけり。この島は万里の島と称へ、この海原に浮べる島々の中に、最も広くして地肥えたる貴の島ケ根なりける。万里の島には幾千万ともなき野馬と羊棲息し、未だ一柱の国津神も住みたることなき田族の島にぞありける。
 朝香比女の神の一行は船を磯辺に繋ぎ、静々とのぼり給へば、数多の馬、羊は先をきそひて白馬ケ岳の麓をさして逃げ出でにけり。一行は、こんもりと天を封じて立てる楠の大樹の蔭に憩はせながら、各自御歌詠ませ給ふ。

『万里の海やうやく渡り月の夜半
  田族の島に着きにけるかも

 こんもりと空を封じて聳り立つ
  楠の樹蔭は月影見えずも

 この島にわがのぼり来て生島の
  草の根に鳴く虫聞きにけり

 虫の音はいや冴えにつつ天津日の
  栄えを永久にうたひつつ居り

 白馬ケ岳尾の上の雪は白々と
  夜目にもしるく輝き渡れり

 この島に群がり棲める幾万の
  馬と羊は逃げ失せにけむ

 土地肥えしこの島ケ根は百草の
  いや茂らひて栄え果なき

 幾万の馬と羊を養ふに
  足らふ小草の萌ゆる島はも

 この島に国津神等のたねうゑて
  千代に八千代に拓かせたきもの』

 初頭比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『仰ぎみれば白馬ケ岳は雲の上に
  雪をかぶりてかがやきにけり

 浪の音高く聞えて遠つ野に
  白馬の嘶き響き渡れり

 白駒の嘶き高く千万の
  声も一つに響かひにけり

 この島に吾は御樋代神ますと
  おもはれにける駒の嘶きに

 白駒の嘶き聞けば天津神の
  生言霊の光おぼゆも』

 朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『国津神はただ一柱も住まねども
  八十御樋代の神はいまさむ

 遠近の野はひらかれて穀物の
  生ひ立ちみれば神おはしまさむ

 八十柱御樋代神の一つなる
  田族比女神の住処なるらむ

 明日の日はこの島ふかく進み行きて
  御樋代神に言問ひせむかな』

 立世比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『この島に御樋代神のおはしますと
  聞けばかしこし言問ひまつらむ

 御樋代神これの田族島におはしまして
  国魂神を生ます日待たるる』

 起立比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『万里の島山野は清く見えながら
  谿の狭間に黒雲立つも

 黒雲は八十曲津見の水火ならむ
  明日は近みて言向け和さむ』

 朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『主の神の神言畏み田族比女の
  神はこの地に住み給ふべし

 顕津男の神の出でまし待ちにつつ
  この島ケ根にひそみ給はむ』

 天晴比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『八十柱御樋代神は只一人
  この広き島におはしますにや

 この広き島根に一人おはします
  田族の比女神は淋しかるらむ』

 朝香比女の神は御歌詠ませ給ふ。

『十柱の貴の神たち従へて
  鎮まりいまさむ御樋代神は

 ともかくも夜の明くるまでこの森に
  安く眠らむ潮騒聞きつつ』

 かく歌はせ給ふ折しも、何処よりか輪守比古の神、若春比古の神の二柱は、白馬に跨り進み来りこの森の蔭に駒を止め、

『かしこけれど言とひ奉らむこの森に
  いますは朝香比女神にまさずや

 田族比女神の神言をかしこみて
  吾二柱伊迎へまつるも』

 朝香比女の神は御歌もて答へ給ふ。

『二柱神に申さむ吾こそは
  朝香の比女よ御樋代神よ

 霧こむる万里の海原晴らしつつ
  これの島根に今来つるはや』

 若春比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『待ち待ちし朝香の比女の御姿を
  拝む今宵ぞ尊かりける

 いざさらば御樋代神よ諸神よ
  案内をなさむ比女の館へ

 吾こそは田族比女の神に仕へ奉る
  若春比古の神司なり

 今ここに現はれ来りし一柱は
  輪守の比古の神司なるよ

 いざさらば館に案内仕らむ
  早や立たせませ比女神諸神』

 朝香比女の神は、

『いざさらば若春比古の宣り言に
  従ひ吾は御館に進まむ』

と言ふより早く白馬に跨り給へば、初頭比古の神、起立比古の神、立世比女の神、天晴比女の神の四柱の神は、ひらりと駒に跨り、月照る夜半の野路を轡を揃へて進ませ給ふぞ畏けれ。

(昭和八・一二・一二 旧一〇・二五 於大阪分院蒼雲閣 内崎照代謹録)



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