出口王仁三郎 文献検索
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原著名 | 出版年月 | 表題 | 作者 | その他 |
物語76-0-8 | 1933/12 | 天祥地瑞卯 メキシコナフア族の天地創造説 | 王仁三郎 | 参照文献検索 |
キーワード: 物語 |
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本文 文字数=3258
メキシコナフア族の天地創造説
太初世の中には何もなかつた。あるものはただどこまでもどこまでも広がつてゐる淼々たる水だけであつた。その水の中からいつとはなしに大地があらはれた。
大地が出来上ると或日のこと「豹蛇」と呼ばれる雄々しい鹿の男神と、「虎蛇」と呼ばれる麗しい鹿の女神とが、どこからとなく現はれた。二人はどちらも人間の姿をしてゐた。二人の神は漫々たる水の中に高くして大なる岩を拵へて、その上に美々しい館を造つた。それから岩の頂に銅で拵へた一本の斧を突き立てて、大地の上に円くなつてゐる天空を支へることにした。
美々しい館は「アボアラ」の近くで上部「ミシユテカ」の地にあつた。鹿の男神と鹿の女神とは、この館の中に幾世紀となく住み続けてゐた。さうしてゐるうちに二人の男の子が生れた。一人は「九蛇の風」と呼ばれ一人は「九洞の風」と呼ばれた。「九蛇の風」と「九洞の風」とはすくすくと生ひ立つて立派な凛々しい若者となつた。両親が非常に気をつけて育て上げたので、若者たちは様々の技に通じ、あらゆる動物に姿を変へることも出来れば、まるで姿を見えなくすることも出来た。またどんな堅いものでも、するりとつきぬける事が出来た。
或る時、「九蛇の風」が「九洞の風」に対つて、
『自分たちがこんなに立派になつて色々の技に通ずるやうになつたのは、全く神々のお蔭だ。だからそのお礼に神々にささげものをしようではないか』
と言つた。「九洞の風」はしきりに頷首て、
『全くさうだ。それではすぐにその支度にとりかかることにしよう』
と答へた。
二人は粘土を掘りとつて香爐を拵へた。そしてその中に煙草を満して、それに火をつけた。やがて香爐から煙が静に立ち昇つて空にたなびき始めた。これが神々に対する最初のささげものであつた。
それから二人は花園をこしらへて、そこに灌木や花や実を結ぶ樹や香りの高い薬草などを植ゑ付けた。そしてそのすぐ側の地をならして、そこを自分たちの住居ときめた。二人は満足しきつて煙草をふかしては、神々にお祈りをするのであつたが、しばらくすると二人はどちらからとなく、
『お祈りの力を強めるためには、こんなに安閑として居ては駄目だ、どこまでも身を苦しめて懸命になつてお祈りをしてこそ、その力が現はれるのだ』
と言ひ出した。そしてその後は燧石でこしらへた小刀で、自分たちの双の耳と舌とに孔を穿け、柳の小枝で造つたブラツシで木や草に紅の血を灌ぎかけてお祈をすることにした。
しかし「九蛇の風」と「九洞の風」は光明と暗黒、昼と夜とを示すものであるらしいと思はれる。
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