出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語76-0-151933/12天祥地瑞卯 パレスチン創造説王仁三郎参照文献検索
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パレスチン創造説

 昔神が世界のさまざまの地方から、さまざまの土を採つて、最初の人であるアダムを造つた。神はアダムを造り上げると、大地の上に横へた。アダムは人形のやうに動かないで四十日が間地面に倒れたままにしてゐた。神は天使たちを呼びよせて、
『わしがこの男を活きて動くやうにするから、動き出したら、みんな大事に崇め尊ばなくてはならぬ』
と言つた。そしてアダムの鼻の孔から息を吹き込むと、忽ち生命が体中に入つて活きて動くやうになつた。それを見ると、天使たちはみんなこれを崇め尊んだが、ただイブリスといふものだけは、傲然と構へてゐた。神はそれを見て、
『イブリス、そなたはなぜアダムを崇め尊ばないのぢや』
と責めた。
『たかが土から出来たものに、頭を下げるのは嫌ひです』
とイブリスが答へた。これを聞くと、神は非常に怒つて、
『わしの言ひつけに背くものは、ここに住ませて置くわけには行かぬ』
と言つて、イブリスを楽園から追ひ出してしまつた。
 イブリスは、ひどくアダムを恨んで、
『おれが楽園から追ひ出されたのは、全くアダムのせゐだ。このままにしては置かぬぞ』
と言つて、魔王サタンとなつて、アダムの子孫である人間に執念深く仇をするやうになつた。
 神はアダムを男女両性にこしらへたのであつた。で、体の半分は男で、他の半分は女であつた。しばらくの間さうしてゐるうちに、やがて二つに分れて、立派な男と立派な女とになつた。男はやはりアダムと呼ばれ、女はリリスまたエル・カリネーと呼ばれた。リリスは猶太人が呼ぶ名であり、エル・カリネーは亜拉比亜人の呼ぶ名であつた。
 二人は神の言ひつけに従つて夫婦となつた。しかし仲がよくなかつた。アダムが、
『お前は女だから、わしの言ふことに従はなくてはならぬ』
と言ふと、エル・カリネーはつんとして、
『いやですよ。そんなことは出来ませんよ』
と言つた。
『なぜだね』
『だつて、あなたもわたしも同じ土から出来たのでせう。だから、あなたはわたしに命令する権利なんかありませんわ』
 エル・カリネーはかう言つて、どうしてもアダムの言ひつけに従はないので、神が怒つて、楽園から追ひ出した。
 エル・カリネーは、自分より先に楽園から追ひ出されたイブリスの許に訪ねて行つて、その妻となつた。そして二人の間に沢山の悪魔が生れて、永久に人間の敵となつた。
 エル・カリネーを追ひのけた神は、アダムのために新たに一人の女をこしらへることにした。しかしアダムと同じやうに土で造つては、また夫婦の仲が睦まじく行かぬと考へたので、今度はアダムを眠らせて、そのひまにアダムの肋骨を引きぬいて、それで女をこしらへた。この女が即ちエバである。
 二人は夫婦となつた。エバはよくアダムの言ふことを聞いたので、二人は楽園の中で楽しい月日を送ることが出来た。それを見たイブリスは、
『よし、おれが邪魔をしてやるぞ』
と言つて、そつと楽園に忍び込んだ。
『うかうかしてゐて神に見つかると大事だ。どこかに身を隠すところはないか知ら』
 イブリスはかう思つて、あたりを見廻すと、一匹の蛇が目についた。
『うん、いい隠家が見つかつた』
 イブリスはかう言つて、忽ち姿を小さくして、蛇の牙にあいてゐる空洞に入り込んだ。そして蛇の口を借りて、うまくエバに取り入つて、
『エバさん、楽園にある小麦を食べてごらん』
と勧めた。エバは驚いて、
『とんでもない。小麦は禁制の食物です。神様から食べてはならぬと堅く申しつけられてゐるのです』
と言つた。
『そんなことを言はないで、まあ食べてごらん。素敵においしいんですよ』
と、蛇がしつこく勧めた。エバもつひにその気になつて食べて見ると、非常にいい味がするのでたうとう夫のアダムを説き伏せてこれを食はせた。
 神はすぐにそれを知つた。そしてアダムとエバとイブリスと蛇とを楽園から追ひ出した。しかしアダムは楽園を出るときに、神の目を盗んで、一つの鉄床と二本の火箸と二つの槌と一本の針とを持ち出した。
 アダムは「後悔の門」から追ひ出され、エバは「哀憐の門」から追ひ出され、イブリスは「呪ひの門」から追ひ出され、蛇は「災ひの門」から追ひ出された。そしてアダムはセレンディブ(今日の錫蘭)に降り、エバはジダーに降り、イブリスはアカバーに降り、蛇は波斯のイスファハンに降つた。
 かうして、アダムとエバとは、永い間はなればなれになつて暮してゐたが、二百年たつてからメツカの近くに聳えてゐる「認めの山」アラファット山で、はしなくも再会することになつた。アダムは楽園で犯した罪を心から悔いてゐたので、天使ガブリエルが可哀さうだと思つて、彼をアラファット山に導いて、エバを見出さしめたのであつた。



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