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原著名出版年月表題作者その他
物語74-2-131933/10天祥地瑞丑 水上の月王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
玉野湖
あらすじ
 玉野湖には生代比女の神が底に隠れていた。神々は、歌を謡って、比女をなだめようとするが、生代比女の神の恋の炎は強く、神々の生言霊の光さえも包みかくすようである。
名称
生代比女の神 産玉の神 美味素の神 宇礼志穂の神 太元顕津男の神 多々久美の神 魂機張の神 遠見男の神 真言厳の神 圓屋比古の神 美波志比古の神 結比合の神
主の大神 玉野比女の神
愛善 紫微天界 高照山 高日の宮 玉野湖 玉の宮居 玉野森 如意宝珠
 
本文    文字数=12431

第一三章 水上の月〔一八八一〕

 顕津男の神一行の白馬隊は、漸く黄昏れむとする時、玉野湖畔に着き給へば、御空を渡る満月の光は、緩やかに湖面を照し、縮緬の波穏やかにたゆたふ。
 玉野森は広き湖水の彼方の岸に、月光を浴びて森厳そのものの如く、地上と湖底に描かれて居る。
 顕津男の神は湖面に向ひ、心静に御歌詠ませ給ふ。

『仰ぎ見る夕の月は玉野湖の
  波に浮びて静なるかも

 こんもりと夕の地上に描きたる
  玉野の森は清しきろかも

 吾は今駒に鞭うち大野原
  遠く渡りて今来つるかも

 鏡なすこの湖に浮びたる
  月の面一入広かりにけり

 そよそよと湖を吹く風もなく
  この天地はしづまりて居り

 村肝の心静けくなりにけり
  月の浮べる湖の鏡に

 わがい行く玉野の森は波の彼方
  かすみて湖路遥けかりけり

 葦蘆の茂らふ荒野を渡り来て
  今ひろびろと波の月見つ

 虫の声岸のあちこち聞えつつ
  わが霊線の清しさを覚ゆ

 真鶴の黒雲を見しわが目には
  一入静けく思はるるかな

 しばしの間駒を休ませ水飼ひて
  彼方の岸に乗りて渡らむ

 波渡る舟さへもなきこの湖は
  駿馬の背こそ力なりけり

 久方の高日の宮を出でしより
  かかる静けき湖を見ざりき

 ままならばこの湖の真寸鏡
  主の大神の土産となさばや

 久方の御空は蒼し湖青し
  月天地に清しく浮ぶも

 雲の蒼湖にうつるか湖の青
  雲にうつるか月の鏡に

 空蒼く水また青き湖の面に
  浮く白鳥のかげのさやけさ

 満天の星を写して輝ける
  湖は千花の匂へるが如し

 星の花水底に浮び湖の青
  天に浮びて清しき宵なり

 見の限り御空は蒼く水青く
  中を流るる月舟のかげ

 月見れば心清しも湖見れば
  わが霊線はひろごりにつつ

 玉野比女の姿なるかも青き湖の
  面に浮ぶ満月の光は

 わが心湖水の月と輝きつ
  玉野の比女の住所照らさむ

 麗しも紫微天界のたましひか
  この湖の面に浮ぶ月光は

 高照の山の宮居を立ち出でて
  清しき湖にいむかひ居るかも

 濁り河渡りし時のわが霊も
  月照る湖の青に洗へり

 天高く湖底深し我は今
  神の御稜威を深く悟りぬ

 湖の面いや広々と目路遠み
  わが行くおもひ遥けくもあるか』

 遠見男の神は御歌詠ませ給ふ。

『瑞御霊御供に仕へ清しくも
  今宵の月に魂を洗へり

 果しなきこの天地を照します
  月光今宵は湖に浮べり

 白銀の玉と輝く月舟の
  これの湖水にかがやき給ふ

 月も日も星も浮ぶなるこの湖の
  あをく清きは神の心か

 如意宝珠玉の月光明らけく
  浮べる湖の清くもあるかな

 小波も立たぬ夕の湖の月は
  玉の宮居を写してさゆるも

 汀辺の千草の虫も月光の
  清きに鳴くか声冴えにけり

 乗りて来し白馬の背に露おきて
  玉とかがよふ今宵の月光

 仰ぎ見る御空の月も湖の底の
  月も太元顕津男の神よ』

 圓屋比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『月盈ちて今宵のかげは圓屋比古
  神の姿は湖にうかべる

 久方の御空うつして玉野湖の
  底明らけく澄みきらふかな

 黄昏の闇は迫れど天渡る
  月に明るく透きとほるなり

 青雲の色を写して夕暮の
  月澄み湖のあをみたるかも

 ぼんやりと彼方の岸に描きたる
  玉野の森は水に映えたり

 きらきらと輝く波は不知火の
  海原照す如く見ゆめり

 雲の上高く聳ゆる真鶴の
  山ほの見えぬ月の光に

 見の限り雲霧晴れて空蒼み
  星きらめきて清しき宵なり

 国土生みの御供に仕へて珍しく
  冴えたる月を今宵見るかな

 乗りて来し駿馬白く月に浮きて
  水底までも影を写せり

 たのもしき旅なりにけり荒野渡り
  玉野湖水の冴えたる月見つ

 何となくわが魂線の和みたり
  今宵の月の光の清しさに

 主の神の御水火に成りし国土ながら
  かく麗しと思はざりけり

 月読は光の限りを光りつつ
  波の面に静に浮けるも

 山かげのただ一つなき広野原に
  一つ浮べる月の湖

 ともかくも岐美のみあとに従ひて
  今宵の内に彼岸に渡らむ』

 多々久美の神は御歌詠ませ給ふ。

『天清く湖また清き中にして
  われは楽しく歌詠まむかな

 虫の声湖畔に冴えて更け渡る
  今宵の空の長閑なるかも

 大空に輝く月も水底に
  写れる月も瑞の御霊よ

 駿馬もこれの景色に見惚れしか
  嘶く声は清しかりけり

 渡り行く彼方の岸の神森は
  水底深くうつろひにけり

 吾は今この水月を駿馬の
  蹄に砕くと思へば惜しきも

 ままならばこの湖の月光を
  空にあづけて渡らまほしけれ

 月の浮く湖面を渡るこの宵は
  御空の雲の上行く如し』

 宇礼志穂の神は御歌詠ませ給ふ。

『歓の天地に充つるこの国土は
  紫微天界の真秀良場なるも

 瑞御霊御供に仕へて天界の
  真秀良場に照る湖の月見つ

 真鶴の稚き国原わかわかしく
  湖水のみどりに潤ひ栄えむ

 久方の天をうつせるこの湖は
  天津月日も永久に宿らす

 この清き水底に遊ぶ魚鱗は
  月を仰ぎて浮び上りつ

 天も地もよみがへりたる心地して
  湖面に浮ぶ宵月を見つ

 夕されど御空の月の底ひまで
  輝く湖畔は明るかりけり

 とこしへの歓び充つる天界に
  生きて歎かふ神は曲なれ

 空高く底深みつつこの湖の
  面にうかぶ蒼空の色

 主の神の言霊清く幸ひて
  澄みきりますかこれの湖

 澄みきらふ月のしたびに吾立ちて
  湖底の月を下に見るかな

 瑞御霊出でます道の幸ひを
  明して冴ゆる湖上の月光

 千万の悩みにあひて今此処に
  清き御空の下に月見る』

 美波志比古の神は御歌詠ませ給ふ。

『近ければ天の神橋をかけ渡し
  この湖を渡らまほしけれ

 紫の雲の神橋を渡りゆく
  月は御空の宝珠なるかも

 久方の御空は蒼く限りなく
  果しも知らに湖に写れる

 名にしおふ紫微天界の真秀良場や
  この湖に月宿るなり

 いや広に月の光はひろごりて
  湖水のあらむ限りを照せり

 そよ風は吹き出でにけり黄金なす
  波のおもてに月はさゆれつ

 波の間に浮べる月の光清し
  湖面を見つつ心躍るも

 つぎつぎに科戸の風は強まりぬ
  波間に浮ぶ月を砕きつ

 そよ風に波紋描きて湖の面は
  右と左に月をひろげつ

 百千々に砕けて月は波の面に
  世の移りゆくさまを示せり』

 産玉の神は御歌詠ませ給ふ。

『夕凪の湖に忽ち風立ちて
  あたら月光千々に砕けつ

 湖の月は砕けて乱るれど
  御空の月は変らざりける

 冴え渡る月天心に輝きて
  わが立つかげも短くなれり

 天心にいつきて動かぬ月光は
  雄々しかりけり瑞の御霊か

 虫の音もいよいよ高くなりにけり
  水の面にをどる月をめづるか

 向つ岸に岐美の渡らす今宵なり
  風もしづまれ波もをさまれ

 波がしら白々光る湖の面に
  夕を浮ける水鳥白しも

 水鳥の翼かがよふ月光は
  いやますますに冴えわたりつつ

 岐美が行く波路静に守れかし
  湖底に潜みて守る神々

 瑞御霊御供に仕へ玉野湖
  渡らむ今宵は静なれかし』

 魂機張の神は御歌詠ませ給ふ。

『たまきはる生命うるほす月読の
  神守りませ水の上の旅を

 つぎつぎに風高まりぬ波荒れぬ
  月は砕けぬうれたきの夜や

 水底に潜むは正しく生代比女の
  神の魂とわれ覚ゆなり

 ナノヌネニこの言霊の功績に
  今立つ波をなぎふせて見む

 ナノヌネニこの言霊の功績に
  曲の荒ぶる術なかるらむ

 清き明き心になり出る言霊に
  如何でしるしのなかるべきやは

 ほのぼのと湖面に狭霧たちこめて
  波は漸く凪ぎ渡りけり

 この清きさやけき湖に狭霧たちて
  水底の月は光うすらぎぬ

 瑞御霊進ませ給ふ今宵なり
  水底の神よ狭霧晴らさへ』

 結比合の神は御歌詠ませ給ふ。

『つぎつぎに狭霧は立ちてひろびろと
  輝く湖を稍狭めたり

 水底の月は次第にかくれつつ
  御空の海のみ月の浮べる

 写るべき月は狭霧に包まれて
  この湖の面は薄ら暗きも

 生代比女恨みの炎かたまりて
  またもや狭霧の湧き立つならむか

 よしやよし黒雲四方を包むとも
  生言霊に吹きはらひ見む』

 美味素の神は御歌詠ませ給ふ。

『主の神のよさしに国土生み神生みの
  旅に立たせる岐美と知らずや

 湖底の神よ静に聞し召せ
  この湖も神のたまもの

 国土生みの妨げなさむ神あらば
  伊吹き払はむ言霊の水火に

 駒並めて今や渡らむ湖の
  面を晴らして風よしづまれ

 この風は科戸の神の水火ならず
  水底の曲の詛の水火なる

 愛善の国の真秀良場にあらはれし
  これの湖水に曲は無からむ

 曲神の住処とすべき湖ならず
  早く去れ去れただに退け

 言霊の水火も恐れぬ神なれば
  この天地に住まはせじと思ふ』

 真言厳の神は御歌うたひ給ふ。

『われこそは真言の厳の神なるぞ
  湖を晴らして岐美を通せよ

 湖の神よわが言霊を聞かずして
  はむかひ来るか生命知らずに

 千早振る神の造りし湖に
  穢あらすな瑞御霊神』

 かく神々は、各も各もに御歌うたひて、湖の神をなだめつ諭しつ時を移し給へども、生代比女の神の恋の炎は強く猛く、神々の生言霊の光さへ、包みかくすぞうたてけれ。

(昭和八・一〇・二三 旧九・五 於水明閣 白石恵子謹録)



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