出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語73-3-371933/10天祥地瑞子 玉手の清宮王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
三笠山
あらすじ
 一行は南の国原を進み、三笠山の玉手の宮にやって来た。玉手の宮は天国浄土の光景である。三笠比女の神が出迎え、八十比女の一人の現世比女の神が現われた。
 太元顕津男の神は現世比女の神と右左の神業を行い、玉手姫の命という子供が生れた。顕津男の神は、圓屋比古の神を宮居の神の司と定め、三笠比女の神に玉手姫の命の養育を頼み、現世比女の神に名残を惜しみながら、西南の国に向かって、近見男の神その他を伴って出発した。
 途中で、天之御中の神に会い、二人で神業に励まれた。
名称
天之御中の神 現世比女の神 太元顕津男の神 玉手姫の命 近見男の神 圓屋比古の神 三笠比女の神
大蛇 迦陵頻伽 主の神 鳳凰
久美戸 玉手の宮 天国浄土 三笠山 横河
 
本文    文字数=11463

第三七章 玉手の清宮〔一八六八〕

 ここに太元顕津男の神は、近見男の神、圓屋比古の神達十一柱を率ゐて、際限もなき曠原を渡り、夜を日に次いで、南の国原さして進ませ給ふ。遥か南方の空にかすめる高山あり、顕津男の神は、駒をとどめて遥かにかすむ山を打ち眺めつつ御歌うたはせ給ふ。

『南の遠野の奥にぼんやりと
  かすめる山は三笠山かも

 われは今三笠の山に進むなり
  早や近づけり行手の山は

 薄雲の衣をかぶりて泰然と
  立たせる山の雄々しきろかも

 目路の限り荒野の中を分けて行く
  われには珍し三笠の神山

 大蛇棲むと聞くなるこれの曠原も
  わが行く道は影だも見せず

 三笠山麓の貴の神館は
  現世比女のありかなりとふ

 現世の神に御逢ひて御子を生む
  わが神業も近づきにけり』

 近見男の神は謡ひ給ふ。

『たづね行く三笠の山も近見男の
  心勇ましくなりにけらしな

 現世の比女神岐美の出でましを
  待たせ給はむ疾く進みませ

 天も地も岐美がみゆきを守らすか
  この曠原にそよ風もなし』

 圓屋比古の神はまたうたひ給ふ。

『こんもりと天に聳ゆる三笠山の
  ほのけき姿仰げば楽しも

 幾千里荒野を渡り来しわれの
  目にめづらしき三笠山はも

 瑞御霊御供に仕へて遥の野に
  聳ゆる神の山を見しはや

 村肝の心勇まし三笠山
  われを待つがに思ほへにつつ

 いざさらば進ませ給へ近見男の
  神に従ひわれも進まむ

 顕津男の神の後前守りつつ
  荒野を分けて進む楽しさ』

 近見男の神は先頭に立ち、馬上豊かに謡ひ給ふ。

『限りもしらぬ荒野原
 瑞の御霊に従ひて
 萱草わけつ来て見れば
 遥かの空にかすみたる
 山は正しく三笠山
 現世比女の永久に
 鎮まりいまして神生みの
 神業に仕へまつらむと
 長の年月待ち給ふ
 いよいよここに天の秋
 到りて顕津男の神は
 現世比女に御逢はむと
 出でます今日の佳き日こそ
 主の大神も嘉すらむ
 われ等も尊き神生みの
 神業の供に仕へつつ
 いや先に立ち草を分け
 道芝ひらきて進むなり
 み空にかかる月かげも
 天津日かげも柔かく
 われ等一行守りまし
 道の隈手も恙なく
 一足一足近づくは
 三笠の山の清どころ
 ああたのもしやたのもしや
 貴の神業の畏けれ
 貴の御供ぞ畏けれ』

 圓屋比古の神はまた謡ひ給ふ。

『行手は遠しいや広し
 限りも知らぬ大空に
 霞の衣を被りつつ
 遠き神代の昔より
 貴の姿をそのままに
 高く聳ゆる三笠山
 山の姿をまるまると
 わが見るさへもおとなしく
 比女の神言の御舎と
 思へば実にも尊けれ
 ああ惟神々々
 生言霊の幸ひて
 一日も早く片時も
 疾く速かに聖場に
 進ませ給へと願ぎ奉る』

 顕津男の神は馬上より豊かに謡ひ給ふ。

『仰ぎ見る南の空に雲の衣
  着つつわれ待つ三笠山かも

 比女神の貴の姿を三笠山
  月読の露に濡れもこそすれ

 けながくも吾を待ちます比女神の
  心はかればいつくしみの湧く

 一夜さの契に御子を生みおきて
  うつらふわれは苦しかりける

 現世の比女神にまたなげかひを
  与へて別るる思へばうれたき』

 ここに神々は十二の轡を揃へ、その日の夕暮、三笠山の聖場玉手の宮に漸く着かせ給ひける。遠く眺めし霞の三笠山は、案に相違し百花千花全山に咲きみちて、その麗しさ言はむかたなく、天国のさまを目のあたりにあらはしぬ。現世比女の神の鎮りいますてふ玉手の宮は、蜿蜒として延び広がり、常磐の老松枝を交へてこの清宮をこんもりと囲み、金砂銀砂は月日の光を浴びて、目もまばゆきばかり輝き渡り、鳳凰巣ぐひ、迦陵頻伽は常世の春を謳ひつつ、天国浄土の光景を現しつつあり。
 近見男の神は真つ先に駒を進ませ神苑深く入り給ひて、馬上より朗らかに謡ひ給ふ。

『顕津男の神の出でまし今なるぞ
  いむかへ奉れ館の神々

 われは今御供に仕へ奉りつつ
  いや先き立ちて現れしはや』

 この御歌に、館を守る三笠比女の神は、蒼惶として宮の階段を下り、駒の前に近づきながら、

『近見男の神よ畏し瑞御霊
  早くもここに誘ひましませ

 現世の比女神これの清宮に
  瑞の御霊を待たせ給へる』

 かく謡へる折しも、顕津男の神は諸神を従へ、馬上ゆたかに進み入り給ひて、

『われこそは月の御霊よ瑞御霊
  はや出でませよ現世比女神

 はるばると荒野を渡り今此処に
  比女に逢はむとわが来つるかも』

三笠比女『幾年を数へて待ちし瑞御霊
  今日のいでまし尊とかりける
 いざさらば現世比女の神の前に
  つげ奉りてむしばしを待ちませ』

と三笠比女の神は、御歌うたひ終へて、奥深く入り給ふ。顕津男の神は馬背に跨りながら、宮の光景を眺めて、

『花も香もなき荒野原渡り来て
  百花匂ふ清所に来しはや

 鳳凰は御空に高く舞ひあそび
  迦陵頻伽は春をうたふも

 いや広きこれの清所の青垣は
  常磐の松にかこまれにけり

 きらきらと日光とどめて金銀の
  真砂は庭に照り耀へるも

 主の神の生言霊に生れしてふ
  この生宮の厳かなるも

 長旅の疲れも今や忘れけり
  花咲きみつる神苑に来て

 現世比女神の神言はわが来る
  聞きて驚き給ふなるらむ』

 近見男の神は馬上より謡ひ給ふ。

『百敷のこれの宮居の常磐木は
  月日宿してみどりの露照る

 千代八千代この神国は変るまじ
  常磐の松の茂らむ限りは』

 圓屋比古の神は謡ひ給ふ。

『瑞御霊はるばる御供仕へつつ
  これの清所にわが来つるかも

 薄原篠の笹原のり越えて
  夢かうつつか清所に来つるも』

 かく謡ひ終り、馬をひらりと下り、辺りの光景を、各々賞め称へ給ふ折しもあれ、三笠比女の神に導かれて、ここに現れ給ひしは、艶麗にして威厳の備はる貴の女神、現世比女の神にましき。
 現世比女の神は御歌もて迎へ給ふ。

『わが待ちし比古遅の神は出でましぬ
  恋しき神は現れましにける

 岐美待ちてけながくなりぬ吾はしも
  なやみなやみてかくもやせける

 神生みの神業を待ちて幾年を
  夜な夜な涙にむせびたりしよ

 いざさらば比古遅の神よ案内せむ
  岐美の安所は奥にありける

 神々に感謝ごと宣る道さへも
  嬉しさあまりて忘れ居たりし

 近見男の神よ許させ給へかし
  嬉しさあまりて宣りおくれける

 圓屋比古神のみことは瑞御霊
  安く送らせ給ひけるはや

 いざさらば百神たちも奥の間の
  清所に入りて休ませ給へ』

 かく謡ひ終へ、太元顕津男の神の御手を引きながら、蜿蜒と架け渡したる長き廊下を、踏みしめ踏みしめ奥の一間に導き給ひける。現世比女の神は、顕津男の神の御手を静かに握らせ、やや面ほてりながら、

『待ちわびし瑞の御霊を三笠山
  匂へる花のかをり床しも

 岐美待ちて幾年月を経たりけるを
  今日の佳き日に迎へけるかな

 八十神を持たせ給ひし岐美ならば
  われは恨まじ今日が日までも』

 顕津男の神は、あまりの感激に打たれてしばし茫然とし給ひしが、

『はしけやし公の言霊きくにつけ
  わが魂のどよめきやまずも

 道もなき荒野ケ原を渡り来て
  今日いとこやの比女に逢ひぬる

 愛恋の比女に逢はむと荒野原
  駒に鞭ちわが来つるかも

 二柱姫の命を生み終へて
  公を三笠の山の花見つ』

 かく互に述懐歌をうたひつつ、久美戸におこして、右り左の神業を行ひ給ひ、その夜は安く寝ねましぬ。近見男の神の一行は広き一間に招ぜられ、三笠比女の神の厚き饗応に旅の疲れを休めつつ、感謝の御歌うたひ給ふ。

『天界の春の花咲く三笠山は
  現世比女のみけしなるらむ

 すすき原篠の笹原ふみ分けて
  今宵楽しく花を見るかも

 百鳥の声もすがしく聞ゆなり
  これの清所は国の真秀良場

 幾年を待ち給ひたる現世比女は
  三笠の山の花と笑まさむ』

 圓屋比古の神は謡ひ給ふ。

『横河を渡りし心に比ぶれば
  天と地とのけぢめありける

 いやはての国にすがしき花の山
  ありとは夢にも思はざりける

 主の神の経綸になりしこの宮は
  緑も深き常磐木茂れる

 金銀の真砂の光る清所に
  やどらせ給ふ月日のかげよ』

 かく謡ひて、その夜は安く寝ねましける。ここに顕津男の神は婚ぎの神業を終へ給ひ、御子のやどらせ給ふ事をいたく喜び給ひて、百神たちと共に、これの館に幾何の日を過させ給ひ、生れませる御子を、玉手姫の命と名づけ給ひて、圓屋比古の神をこれの宮居の神の司と定め給ひ、三笠比女の神に、生れませし御子玉手姫の命の養育を頼み置き、現世比女の神に名残を惜しみつつ、再び西南の国をさして、近見男の神その他を伴ひ出でまししが、その道すがら天之御中の神にあひ給ひて、相共に神業のため進ませ給ひぬ。

(昭和八・一〇・一八 旧八・二九 於水明閣 白石恵子謹録)



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