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原著名出版年月表題作者その他
物語73-2-241933/10天祥地瑞子 天国の旅王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:
高照山
あらすじ
 太元顕津男の神は比女の遭難を前もって知っていたので、それを聞いても、泰然自若としていた。八百万の神々は、高日の宮に集まって、比女の弔いの歌を歌う。真澄の神が滝の大蛇を言向けることを提唱し、賛成した一同は、高照山の滝に向かった。
名称
明晴の神 大御母の神 太元顕津男の神 大物主の神 片照の神 日の本の神 近見男の神 遠津御幸の神 真澄の神 眼知男の神 美玉姫の命 八百万の神々 如衣比女の神
大蛇 主の神 目の神
愛善 天の宮居 誄歌 紫微界 高照山 高日の宮 天界 御手代 八洲河
 
本文    文字数=10573

第二四章 天国の旅〔一八五五〕

 眼知男の神は如衣比女の神の遭難を見て驚きかつ歎きつつ、一刻も早く高日の宮の神司、顕津男の神に一伍一什を報ぜむと、猿も通はぬ巌壁や岩の根樹の根をふみさくみつつ、辛うじて高日の宮に帰りつき、轟く胸をおさへながら落着かむとして落着かず、宮の広庭に呆然として立ち給ひ、天を拝し地を拝し、如衣比女の神の冥福を祈る折もあれ、大物主の神を従へて、悠々と顕津男の神は御殿の階段を降り給ひ、目の神の呆然たる姿を見て、

『汝こそは眼知男の神なれや
  黙して立たすさまのあやしも』

 目の神は初めてこの御歌に心づき、

『復言申さむ術なき今日の吾を
  おもひて天に祈りてしはや

 如衣比女は滔々落つる中滝の
  滝壺ふかくかくれましけり

 滝壺にひそみて住める大蛇神は
  比女の神言を呑みてかくれぬ

 言霊の力に救ひ奉らむと
  吾がねがひさへ水泡となりぬる

 如何にしてこの有様を申さむかと
  われは汀にたたずみ居しはや』

 顕津男の神は泰然自若として、色をも変じ給はず、御歌うたはせ給ふ。

『比女神の今の歎きはかねてより
  我はさとれり主の神言もて

 美玉姫の命を安く産みおきて
  天の宮居に昇りし比女神

 比女神の高き功に報いむと
  我は御霊を祀りて待ちぬ

 何事も神の経綸のみ業なれば
  泣くも悔むも詮なかるべし

 神業を全く終りて御子を産み
  天に昇りし比女ぞ尊し

 さりながら滝の大蛇を言向けて
  この天界の禍を祓はむ』

 目の神はこの御歌に、はつと胸を撫で下しながら、

『広きあつき岐美の心に宣直し
  見直しますぞ嬉しかりけり

 比女神のみ供に仕へただ一人
  かへらむつらさ苦しさにをり

 比女神の隠れまししを目のあたり
  打ち仰ぎつつ心みだれぬ

 八千尋の水底ふかく隠れましし
  比女の神言の悩みかしこし

 今日よりは女神いまさず如何にして
  国つくらすとおもひわづらふ』

 大物主の神は両神の仲に立ちて、涙ぐみつつ声低に謡ひ給ふ。

『比古神の今日の心の苦しさを
  おもひて吾は涙にくるる

 貴御子と夫神を遺し神去りし
  比女の神言の心しのばゆ

 如何にして御子を育み奉らむと
  大物主のこころなやまし

 目の神の心遣ひを聞く身には
  ふたたび涙あらたなりけり

 わが涙天に昇りて雲となり
  地に降りて雨となるらむ』

 かく謡ひて両眼の涙をスーと拭はせ給ひぬ。目の神もまた悄然として再び謡ひ給ふ。

『二柱神の神言の言霊に
  吾は言ふべき言の葉もなし

 如何にせむ神のよさしの御使の
  吾は女神を見捨ててかへりし

 この上は滝の大蛇を言向けて
  み代の禍はらはむとおもふ』

 かく謡ひ終り、三柱の神は奥殿深く入らせ給ひ、祭壇の前に端坐して、生言霊の神言を宣り給ふ。顕津男の神は比女の遭難を神命によりて前知し、早くも御霊代を造りて祓ひ清め、祭壇の上に納め、いろいろの花を供へ、目の神の帰り来るを待ち給ひたるなりき。目の神はこのさまを見て驚きながら、

『岐美こそは真の神よ瑞の神
  比女の遭難前に知りませり

 明けき岐美の神霊を今更に
  仰ぎぬるかな目の神吾は

 語らはむ術なき身ぞと思ひしを
  前に知らせるあはれ岐美はも

 何事も主の大神のみさだめと
  おもひさだめて歎かざるべし

 滝津瀬の音滔々と吾が耳に
  今も聞ゆる恨めしきかな

 恨むまじ歎くまじとは思へども
  霊代拝せばひとしほ恋ほし』

 大物主の神は拍手を終り、声さはやかに謡ひ給ふ。

『八洲河のみ底ゆ安く生れましし
  如衣の比女はあはれ世になし

 春駒を曳きて仕へし如衣比女
  神の神言をおもへば悲しも

 幾年を高日の宮に住みまして
  御子を生ませし功績おもふ

 これよりは御子の命にかしづきて
  岐美の神業をつがせ奉らむ

 比女神の御霊は天津高宮に
  帰れど此処にいます如おもふ

 比古神の御手代となりいやますに
  仕へ奉らむ比女よ安かれ』

 比古神の顕津男の神は、儼然として霊代の前に謡ひ給ふ。

『幾年を吾に仕へてつつがなく
  御子を生ませる公ぞかしこき

 一柱御子の命のある上は
  我は力を落さざるべし

 比女よ比女あとに心を残さずに
  主の大神の大宮にゆけ

 汝に逢ひし日を思ひつつ今茲に
  くやみの涙とどめあへぬも

 さりながら神の定めは詮もなし
  我もこころをたて直してむ

 せめてもの我が志と霊代の
  比女神これの供物を召せよ』

 八百万の神々は、如衣比女の神の昇天と聞きて吾先にと、高日の宮に集り給ひ、弔ひの歌を次々謡はせ給ふ。遠津御幸の神、

『歎くとも詮なきものか比女神は
  天津神国に昇りましぬる

 如衣比女天国に帰りましませど
  霊は高日の宮を照らさむ

 姫御子を後に遺して神去りし
  比女神の心いたはしきかも

 神の国にかかる歎きのあらむとは
  おもはざりしよ御幸の神は』

 次に大御母の神は、比女神の昇天をいたく悼ませ給ひて、御歌詠ませ給ふ。

『八洲河の清水に生れし比女神は
  惜しや天国に昇りましける

 主の神の貴の経綸か知らねども
  われ朝夕のなげかひ絶えず

 幾千代も共にみわざに仕へむと
  わがおもひしは夢なりにけり

 顕津男の神の神言のみ心を
  おしはかりつつ涙しぐるる

 白銀の駒にまたがり迎へたる
  よき日おもへば夢か現か

 歎くとも最早詮なしこの上は
  美玉の姫を育み仕へむ

 比女神の神去りまししこの宮は
  月日の光もうすら曇りつ

 天津日も月も歎かせ給ふらむ
  今日の御空はうすらくもれり』

 日の本の神は誄歌詠み給ふ。

『高照の山もくもりて比女神の
  今日のみゆきを仰ぎおくりつ

 からたまの神生みましし功績を
  のこして比女は神去りにけり

 神去りし比女の神言のけなげさよ
  平然として大蛇に呑まれぬ

 吾は今比女の神言の訃を聞きて
  日の本山より降り来にけり

 諸々の神一柱おちもなく
  比女の昇天惜しまざるなし

 比古神の心如何にと思ひつつ
  空に知られぬ涙の雨降る

 主の神の大みよさしにまつろひて
  如衣の比女は神去りにけむ』

 片照の神はまた謡ふ。

『おもひきや高日の宮の神柱
  如衣の比女の神去りますとは

 一度は見らくおもひつ比女神に
  あはで別るる事の惜しさよ

 比女神の昇天ききて吾はただ
  夢になれよと祈りけるかな

 紫微界に姿見えずも比女神は
  天の高宮に輝き居まさむ

 吾はしも片照の神高地秀の
  尾の上をわけて来り弔ふ

 主の神の神言畏み今日はしも
  比女弔ふと降り来しはや

 比女神の神去り給ふは惜しかれど
  神の経綸とおもへば尊し』

 明晴の神はまた謡ひ給ふ。

『比女神のここに現れましてより
  この天界は明晴の神

 あきらけく晴れ渡りたる天界の
  今日は曇りぬ比女いまさねば

 あけくれを仕へ奉りし比女神の
  かげだに見えず淋しき今日なり

 比古神の雄々しき心きくにつけ
  わが天界の栄えをおもふ

 美玉姫神の命に従ろひて
  吾は神国をひらき照らさむ』

 近見男の神は謡ひ給ふ。

『中滝の大蛇の神の醜業を
  比女神のために退はむと思ふ

 愛善の光に満つる天界に
  仇報ゆるは如何あるべき

 さりながら世の禍を打ち祓ふ
  みわざは神も許させ給はむ

 これに在す百の神達きこし召せ
  世のため大蛇の神のぞかばや』

 茲に真澄の神は声高々と謡ひ給ふ。

『ます鏡真澄の神の言霊に
  切り放るべし滝の大蛇を

 天も地も真澄に澄みてある世なり
  醜の曲霊を清めずあるべき

 われここに真澄の神と現れて
  比女を弔ひ言はかりすも

 天界に禍をなす醜神を
  打ちきためずば神世は栄えじ』

 かく滝の大蛇の言向けを提唱し給へば、百神は一度に「オー」と答へて、真澄の神の御謀り事に参じ、これより百の神々は、中津滝に向つて大蛇を言向けやはすべく、さしも難路の高照山の谿間を進ませ給ふぞ畏けれ。

(昭和八・一〇・一六 旧八・二七 於水明閣 内崎照代謹録)



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