出口王仁三郎 文献検索

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物語72-3-171926/07山河草木亥 六樫問答王仁三郎参照文献検索
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第一七章 六樫問答〔一八二六〕

 懺悔生活の偽君子、スコブッツエン宗の教祖と名乗る妖僧キユーバーは、ダリヤ姫に対する恋衣のすげなくも破れしより、もとより心の汚い便所掃除、糞度胸を据ゑ、捨台詞を残して、問答所より屁のごとく消え去つた。あとはヨリコ、花香、ダリヤの三人は、なにほど女丈夫でも男の受持つべき掃除は永く続かないとて、薬種問屋の主人イルクに掛合ひ、門番のアル、エスを臨時掃除番として、手伝はしむることとなつた。朝も早うから、新参者の掃除番はキユーバー、ダリヤが奮戦苦闘の古戦場、上雪隠の掃除しながら、
アル『オイ、エス、主人の言付けだから是非もなく、エースといつて返事はしたものの、本当に糞忌々しい、バカ臭い目に遇ふぢやないか、エー、これだから人に使はれるのは辛いといふのだ』
エス『何ほど辛いといつても仕方がないぢやないか、何一つ人に勝れた芸能がアルといふでもなし、雪隠の虫のやうに、ババの尻ばかり狙つてゐるやうな事で、気の利いた大役も勤まりさうなことがないぢやないか。いつも雪隠といふやつは、紛擾の種を蒔く奴だ。昨日もスコブッツエン宗の小便使、キユーバーとかキユーフンとかいふ糞坊主が、ダリヤさまに糞糟にこきおろされ、犬の糞のやうに言はれ、終ひの果にや、糞然として屁つ放り腰で雲を霞と逃げ散つたりといふ為体、その跡釜に据ゑられた俺たちアまるつきり雪隠虫だ。しかし雪隠虫だつて落胆するにや及ばないよ、しばし糞壺の中でウヨウヨしてる間に羽が生え、立派な金襴の衣を着けて、金蠅となり、ヨリコ姫の頭へでも止つて糞小便を放りかけるやうになるのだからのう』

アル『門番も今日はお尻の門番と
  成り下がりけり糞忌々し

 仰ぎ見て穴恐ろしと雪隠虫
  泣くに泣かれぬ糞を被りつ

 世の中の臭い味はひしりの穴
  やがて羽衣着くる雪隠虫

 金襴の衣まとへば糞虫も
  人の頭にとまり糞放る』

エス『ヨリコ姫ダリヤとしり(知)合の穴なれば
  肥え(光栄)ならむと糞虫いふらむ

 美はしき乙女の尻はよけれども
  糞婆の尻いと臭きかな

 天香は雪隠空しうせぬといふ
  日に三回の飯礼ありせば』

 かく話してゐるところへヨリコ女帝が盲腸、結腸、直腸辺りの大清潔法を施行すべく、やつて来た。アルはこれを見て、

『あな尊とひしりの君の御降臨
  アルにあられぬ恥を見しかは』

ヨリコ『雪隠といふ字は雪に隠るなり
  白妙の衣まとふ糞虫』

エス『白妙の衣をまとひて糞虫は
  黄金の餌朝夕に喰ふ』

ヨリコ『アル エスの二人の君よ心して
  黄金仏にならぬやうにせよ』

アル『アル望み抱へし吾は糞度胸
  すゑてかかりぬ便所掃除に』

エス『アル望みなどとしり顔するでない
  糞奴めがいばり散らすな』

ヨリコ『アル エスの二人の君よ今少時
  はばかり玉へ吾が帰るまで』

アル『はばかりの掃除はすれどのこの男
  はばかりながら腕に骨あり』

エス『えらさうにしり顔なしてブツブツと
  口先過ぎてババ垂れるなよ』

 両人はヨリコ姫の用を足す間、便所遠く庭の隅のパインの下にクルツプ砲の難を避けた。

アル『いかほどに容姿美はしき女帝さへ
  下から見れば愛想やつきむ』

エス『裏門を開いて出づる兵卒の
  ラツパの声も勇ましきかな』

『バカいふなばば垂れ腰を眺めたら
  かたい約束も小便したくならむ』

『草木もゆる谷の流れをピユーピユーと
  鵯越の進むよしなし

 谷の戸を開いて出るは鶯の
  声ならずして鵯の声』

『思うたよりヨリコの姫の長雪隠
  心短き俺はたまらぬ』

『こんなことヨリコの姫に聞こえたら
  糞腹立てて尻や持て来む

 何事も皆しりの穴ヨリコ姫
  尻もて来れば猫婆きめる

 猫婆をきめる積りでキユーバーが
  便所掃除請合しならむ

 こつぴどくこき卸されて糞腹立て
  糞垂れ腰の糞坊主去ぬ』

 ヨリコ姫は便所から、しとやかに出て来た。アル、エスは先を争うて手洗鉢の前により、柄杓の柄をとり水を無暗やたらにかけながら、

アル『弁天の化身のやうな女帝様の
  お手洗ふさへしやくの種なる』

エス『このやうな美人を妻にする男
  面見るさへも小しやくにさはる』

ヨリコ『八尺の二人の男が漸くに
  五勺ばかりの水をくれたり

 雪隠の掃除も神の御恵みよ
  天香さまの出世見たまへ』

アル『何ほどに出世したとて何時までも
  尻掃除とはバツとしませぬ』

ヨリコ『左様ならアルさまエスさま別れませう
  また明日の朝会ふを楽しみに』

と言ひながらヨリコ姫は吾が居室に帰つて行く。
   ○
 ヨリコ姫、花香、ダリヤ、アル、エスの聯合家族は、食堂に集まつて四方山の話にふけりながら朝飯を喫してゐると、表の玄関に向かつて甲走つた女の声が聞こえて来た。
高姫『ハイ、御免なさいませ、ちよつと物をお尋ね申します。ヨリコさまといふ無冠の女帝さまはお宅でございますかな、宗教問答のためにウラナイ教の教主千草の高姫が参りました。別に驚くやうな女ぢやございませぬ、第一霊国の身魂、日出神の生宮、下津岩根の大弥勒の化身でございますよ』
と呼ばはつてゐる。
ヨリコ『ホツホホホホ、朝つぱらから、どこの狂人か知らないが、妙な事を言うて来よつたものだ。ダリヤさま、妾の代理となつて少時相手になつてやつて下さいな』
ダリヤ『女帝様の仰せではございますが、狂者を相手にすることは真平御免を蒙りたうございます』
ヨリコ『第一線に貴女出て下さい、もしも戦況危ふしと見た時は第二線として花香に行つてもらひます。その第二線が破れました時、殿としてこのヨリコが大獅子吼をいたしますからね』
アル『もしもし女帝様、あんな狂者にダリヤ姫さまなんか出すのは勿体ないぢやありませぬか。先陣は私が勤めますから、どうぞこの役目をアルに譲つて下さいませ、タカが知れた狂者ぢやありませぬか』
ヨリコ『お前さまは決して相手になつちやいけませぬよ。いくつくらゐの女か、ちよつと様子を調べて来てもらひさへすればよろしい』
アル『ハイ、承知いたしました。オイ、エス、お前は俺の副将軍だ、ソツと後から従いて来い』
と言ひながら、早くも玄関口に立ち塞がり、
『イヨー! 何とマアチツとばかり年はよつてゐるが、ステキなものだなア』
高『これ奴さま、ナーンぢやいな、失礼な、お客さまの前で立ちはだかつて、挨拶一つ知らない穀潰しだな、僕のやり方を見りや大抵主人の性質が分るものだ。この下駄の脱ぎ方といひ、乱離骨灰、まるつきりなつちやゐないぢやないか。ヘンえらさうに宗教問答所なんて、まるつきり狂者の沙汰だ』
アル『オイ、高姫とかいふ中婆さま、人の所の宅へ出て来て、履物の小言まで言うてくれな、俺たちの悪口をつくのならまだ虫を堪へておくが、天下無双の才女、ヨリコ姫女帝の悪口まで吐かすにおいては、断じてこの玄関は通さない。エー糞忌々しい、婆の来る所ぢやない、屁なつと嗅いで去んでくれ』
『ホツホホホホ、お前がさう言はいでも、この高姫がヨリコ姫の膏をしぼり、蛸を釣り灸をすゑ、鼬の最後屁を放らして往生さしてやるから臭い顔して待つてゐなさい、ド奴の糞奴め。こんなガラクタ男を使うて、えらさうに構へ込んでゐるとは誠にもつて噴飯の至りだ、ホツホホホホ』
『エー、とても、こんな気違ひ婆は俺たちの挺棒に合はない、サア第一線だ第一線だ』
と言ひながら奥に飛び込み、
アル『もしもし女帝様、竹に、鶯、梅に雀といふやうな婆が来ましたよ』
ヨリコ『ホツホホホホそれは木違ひ鳥違ひと言ふのだらう、サアこれから梅に雀の婆さまに向かつて、戦闘開始をやつて下さい』
ダリヤ『ハイ、及ばずながら第一線に立ちませう、どうか後援を頼みます』
と言ひながら玄関口に出た。

ダリヤ『玉鉾の道の問答せむものと
  遥々尋ね来たりし君はも

 いざさらば問答席へ通りまし
  及ばずながら案内申さむ』

高『むづかしき歌よみかけて高姫を
  困らさむとす猾さに呆れし

 ともかくもこの家の奥へ踏ん込んで
  狸の化の皮むいて見む』

と言ひながら、ダリヤ姫に従ひ問答席についた。

ダリヤ『いざさらば寛ぎ給へ椅子の上に
  世のことごとはしりの穴の君』

高姫『賢しげな事を言へども何処やらに
  息のぬけたる汝の顔かも

 汝こそはヨリコの姫の身代りと
  吾が慧眼に見えたり如何にや』

『妾こそヨリコの姫の妹よ
  ダリヤの花の名を負ひし姫

 何なりと問答遊ばせ立板に
  水の流るるごとく答へむ』

『美はしき女にも似ず出し抜けに
  大法螺を吹くしりの太さよ

 いざさらば吾が問ふことに答へかし
  今日こそ汝が生死の境ぞ』

『如何ならむ賢き人の来たるとも
  後へはひかぬ弦離れたる征矢』

 高姫いかい目をむいて  ダリヤの姫の面上を
 ハツタと睨み大口を  斜めに開き白歯をば
 むき出しながら手を振つて  演説口調で語り出す
高姫『お前はヨリコの妹と  名乗つたからは高姫が
 宣る言霊を一々に  川瀬の水の流る如
 答へて裁くでござらうな  よしよしそんなら高姫が
 一つの問題出しませう  この世の中を造りたる
 誠の神は何神か  何とぞ聞かしてもらひませう
 それが分らぬやうな事で  問答所の役員と言へませうか
 サアサア如何に』と詰寄れば  ダリヤはニツコと打ち笑ひ
ダリヤ『いかなる難しいお尋ねと  思つてゐたのに何のこと
 この世の御先祖は言はいでも  世界に知れた厳霊
 国常立の神様よ  この神様は泥海を
 造り固めて山川や  草木の神まで生みました
 吾らの誠の親です』と  言へば高姫反りかへり
 フフンと笑ふ鼻の先  
 『三五教のトチ呆け  大根本の根本の
 誠の神は大弥勒  底津岩根の神様よ
 人間姿の分際で  誠の神は分らうまい
 そんな下らぬ事いうて  沢山の人を欺すより
 早くすつこんでをりなされ  お前ぢや事が分らない
 肝腎要の当の主  ヨリコの姫を呼んでおいで
 あまりに相撲が違ふので  阿呆らしくて話になりませぬ』
 言へばダリヤはうつ向いて  顔を真赤に染めながら
 すごすご立つて奥に入る  つづいて出て来る美婦人は
 天女にまがふ花香姫  千草の高姫見るよりも
 いと慇懃に会釈して  静かに梅花の口開き
 声しとやかに『妾こそ  ヨリコの姫に仕へたる
 梅の花香と申します  何とぞお見知りおかれませ
 いかなる問答か知らねども  即座にお答へ申しませう
 遠慮会釈は要りませぬ  何なとお尋ねなさいませ』
 言へば高姫反りかへり  
 『妾こそ誠の救世主  高天原の霊国の
 第一天人の霊魂ぞや  下津岩根の大弥勒
 三千世界の救世主  日出神と現はれて
 トルマン国のスガの町  天降りたるウラナイの
 教の道の神柱  必ず粗相のないやうに
 謹み敬ひ吾が言葉  胸にたたんでトツクリと
 考へなされよ花香さま  サアサアこれから高姫が
 貴女に質問いたすぞや  そもそも天地の根本の
 大根本の根本の  そのまた根本の根本の
 まだまだ根本の根本の  昔の昔のさる昔
 ま一つの昔のまた昔  ま一つの昔の大昔
 またも昔のその昔  ドツと張込んでその昔
 猿が三匹飛んで来て  三千世界を掻きまはし
 この世に暗と明りと雨降りを  来たした訳はどうですか
 この訳聞かしてもらひませう』  言へば花香は噴き出だし
 『弥勒の弥勒のまだ弥勒  ま一つ弥勒のその弥勒
 日の出の日の出のまだ日の出  も一つ日の出のその日の出
 昔の昔の大昔  猿が六匹飛んで来て
 一つは雪隠を掻きまはす  一つは頭をかきまはす
 一つは恥をかきまはす  一つは借用証文書きまはす
 一つはお粥をかきまはす  一つはそこらをかきまはす
 も一つお尻をかきまはす  こいつの謎がとけたなら
 お前さまの問題に答へませう』  などと分らぬ予防線
 鉄条網を張りまはし  用心堅固に備へしは
 さすがはヨリコの妹と  生れし甲斐ぞ見えにける
 高姫拳を固めつつ  力限りに卓を打ち
 『これやこれや女つちよ痩せ女郎  そんな事言うて高姫を
 煙りに捲かうとはづうづうしい  お前のやうな分らない
 女を相手にやしてをれぬ  当の主人のヨリコ姫
 早くこの場へ引き出せよ  この高姫の弁舌で
 道場破りをして見せる  アア面白い面白い
 いよいよこれから正念場  気の毒なのはお前たち
 折角建てた神館  城明け渡しスゴスゴと
 逃げねばならぬ断末魔  いよいよこれが悪神の
 世の持ち終りとなつたのだ  ああ惟神々々
 ウラナイ教の御神徳  今更感じ入りました』

 花香姫は高姫のあまりの強情に呆れ果て、暗に打ち出す鉄砲玉に持てあましつつ匆々としてヨリコの居室に駈け込んでしまつた。

(大正一五・七・一 旧五・二二 於天之橋立文珠なかや別館 北村隆光録)



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