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物語72-1-11926/07山河草木亥 老の高砂王仁三郎参照文献検索
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第一章 老の高砂〔一八一〇〕

 神の力のこもりたる  如意の宝珠に村肝の
 心の綱を奪はれて  自転倒島を初めとし
 世界隈なく駈けめぐり  揚句のはては外国魂の
 よるべ渚の捨小舟  琵琶の湖水に浮びたる
 弁天さまの床下の  三角石を暗の夜の
 目標となして爪先の  血のにじむまで掻きまはし
 断念したる玉探し  産みおとしたる一人子の
 所在をさがす折りもあれ  淡路の洲本の東助は
 昔なじみの恋人と  知るや忽ち恋雲に
 全身くまなく包まれて  またも狂態演出し
 綾の聖地を追放され  おためごかしに再度の
 山の麓に建てられし  生田の森の神館
 司となりてしばらくは  いとまめやかに大神に
 仕へ侍りし折りもあれ  夜寒の冬も早あけて
 若葉のめぐむ春となり  再び起る婆勇み
 恋の焔を消しかねて  大海原を打ち渡り
 見なれぬ山野を数越えて  五月六月草枕
 旅の疲れも漸くに  甦生りたる斎苑館
 ウブスナ山にかけ上り  総務を勤むる東別
 司に面会せむものと  富婁那の弁の舌の先
 泣きつ口説きつ詰寄れど  ビクとも動かぬ千引岩
 鉄石心の東助を  生捕る由もないじやくり
 恥を忍びてテクテクと  阿修羅の姿凄じく
 にらみつけたる斎苑館  後足あげて砂をけり
 肩肱怒らせ尻を振り  おのれ見てゐよ東助よ
 思ひこんだる女丈夫の  矢竹の心はこの通り
 岩に矢の立つ例あり  千引の岩にも松茂る
 挺子でも棒でも動かない  恋の意地をば立てぬいて
 居並ぶ数多の役員に  泡を吹かせにやおかないと
 風吹き荒ぶ坂道を  徳利コブラをぶらつかせ
 尻切れ草履を足にかけ  鼻息荒く口ゆがめ
 眼を怒らせ空中を  二つの肩にしやくりつつ
 地団駄踏んで上り行く  ああ惟神々々
 御霊幸はひましまして  思ひつめたる恋の意地
 遂げさせ玉へと祈りつつ  祠の森に来て見れば
 思ひがけなき神の宮  千木高知りて聳り立つ
 荘厳無比の神徳に  あきれて高姫言葉なく
 しばし佇みゐたりしが  ヤンチヤ婆の高姫は
 金毛九尾と還元し  づうづうしくも受付に
 大手をふりつつ進みより  声厳かに掛合へば
 祠の森に仕へてゆ  まだ日も経たぬ神司
 斎苑の館の御使と  信じて奥へ通しける
 高姫ここに尻を据ゑ  斎苑の館へ往来する
 信徒たちを引止めて  虱殺しに吾が道へ
 堕落とさせむと企らみつ  教主の席にすましこみ
 奥殿深く鎮まりぬ  少時あつて受付に
 訪ふ真人のメモアルは  トの字のついた司ぞと
 聞いて高姫膝を打ち  ウブスナ山の聖場に
 おいてトの字のつく人は  東助さまに違ひない
 人目の関を恥ぢらいて  吾が身を素気なく扱ひつ
 心はさうぢやない(内)証の  妻に会はむと河鹿山
 けはしき坂を昇降し  昔馴染の高姫を
 慕うてござつたに違ひない  アア有難い有難い
 女の髪の毛一筋で  大象さへも引くといふ
 諺さへもあるものを  年はとつても肉付きの
 人に勝れたこの体  吾が肉体の曲線美
 全身つつむ芳香を  忘られ難く捨て難く
 慕うて来たるやもめ鳥  東助さまも恋の道
 少しは話せる人だなア  こりや面白い面白い
 人目少なきこの館  思ふ存分口説き立て
 昔の欠点をさらけ出し  顔を紅葉に染めてやらう
 とは言ふものの妾だとて  年はとつても恋衣
 着せられや顔が赤くなる  赤き誠の心もて
 たがひに親切尽し合ひ  老木の枝も花盛り
 小鳥は歌ひ蝶は舞ふ  喜楽蜻蛉の悠々と
 羽を拡げて翔つごとく  天下に羽翼を伸ばしつつ
 斎苑の館に鼻あかし  もしあはよくばウラナイの
 道を再開せむものと  雄猛びするぞ凄じき
 受付イルの案内で  入り来る男はあら不思議
 東助ならぬ時置師  いつも吾が身の邪魔ひろぐ
 杢助総務の姿には  さすがの高姫ギヨツとして
 倒れむばかりに驚けど  副守の加勢に励まされ
 膝立て直し襟正し  太いお尻をチンと据ゑ
 団栗眼を細くして  あらむ限りの媚呈し
 前歯の抜けた口許を  無理にすぼめたスタイルは
 棚の鼠の餅かじる  その口許にさも似たり
 高姫心に思ふやう  吾が目の敵杢助も
 木石ならぬ肉の宮  少しは情けを知るであらう
 一程二金三器量  恋の規則と聞くからは
 天下に比類なきほどの  よき高姫がこの笑凹
 鬼でも蛇でも吸ひ込んで  捕虜にせられぬ筈はない
 さうぢやさうぢやと胸の裡  合点合点と首肯いて
『これこれまうし時置師  杢助司の総務さま
 ようマアお出まし下さつた  三羽烏の一人と
 名を轟かすお前こそ  東別に比ぶれば
 幾層倍の英傑ぞ  何しにござつたそのわけを
 つぶさに知らして下され』と  しなだれかかる嫌らしさ
 杢助総務に変装した  大雲山の大妖魅
 妖幻坊は面を上げ  鼻蠢めかし鷹揚に
 赤き口をば開きつつ  ダミ声しぼりケラケラと
 館もゆるぐ高笑ひ  
『これこれ高チヤン生宮さま  日出神の肉の宮
 お前の強い恋の意地  側に見る目も羨ましと
 後を慕うて来たわいな  東助さまには済まないが
 人の前とは言ひながら  一旦捨てた恋の花
 拾うて見るも人助け  恋の奥の手と勇み立ち
 一つ相談せむものと  きつい山坂乗り越えて
 出て来た可愛い男ぞや』と  祠の森の聖場で
 交渉談判開始して  
『二世や三世はまだ愚か  五百生まで契をば
 ここで確り結び昆布  寝てはするめの老夫婦
 二人の誉も高砂や  お前の持つた浦舟に
 真帆や片帆をかかげつつ  浪の淡路の島影に
 漂ひ舟を割りし如  玉の御舟を漕ぎ出して
 心も安く住の江の  月と花との夫婦仲
 面白可笑しく暮さうか』  言へば高姫喉鳴らし
 よい鴨鳥を捉まへた  チンチンカモカモ酒祝ひ
 杢助さまの銚子から  さす玉の露ドツサリと
 玉の盃に満たしつつ  夜舟遊びをせむものと
 契りも深き秋茄子  種なし話に夜を明かす
 かかるところへ宣伝使  初稚姫が現はれて
 高姫さまの醜態を  見て見ぬふりをなしながら
 駒を停めてややしばし  祠の森の曲津見を
 払はむものとスマートに  旨を含ませ床下に
 忍ばせおきて妖幻坊  高姫司を神の在す
 高天の原に救はむと  心も千々に砕かせつ
 とどまり玉ふをりもあれ  妖幻坊は逸早く
 高姫引き連れ雲霞  何処ともなく逃げ失せぬ
 ああ惟神々々  神の恵みに照らされて
 醜の高姫行衛をば  完全に委曲に明しゆく
 神の出口の瑞月が  日本三景の一と聞く
 風光明媚老松の  白砂の浜にそそり建つ
 天の橋立背に負ひ  なかや旅宿の別館に
 口述台の舟に乗り  心も清くいさぎよく
 妖幻坊や高姫の  恋と欲とに迷ひたる
 その経緯を詳細に  伝へ行くこそ床しけれ
 ああ惟神々々  御霊幸はへましませよ。

(大正一五・六・二九 旧五・二〇 於天之橋立 掬翠荘 北村隆光録)



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