出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語70-2-101925/08山河草木酉 二教聯合王仁三郎参照文献検索
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第一〇章 二教聯合〔一七七七〕

 千草姫は、最愛のキユーバーがハリマの森の祭典において、祭官の列外に立たせられ、照国別をして斎主となしたその処置に憤慨し、病ひと称して城内深く閉ぢ籠り、刹帝利、チウイン太子の参拝あるにもかかかはらず、吾が居間に駄々をこねて寝込んでしまつた。一方キユーバーは何気なく祭典を見むとて刹帝利に随ひ、ハリマの森に来て見れば、新調の盛装を身に纒うて、照国別が斎主をやつてをる。一般の群集は、
『何と立派な宣伝使だ、ウラル教の中にもあんな神徳の高い宣伝使はなからう。今度の国難を救うて下さつたのもあの宣伝使ださうだ。それだから、今度のお祭りに王様の先に立つて斎主を勤めてゐられるのだ。ほんとに偉い生神ぢやないか。またスコブツエンのキユーバーなんて、今まで偉さうに威張つてゐやがつたが、今日の態つたらないぢやないか。あの見窄らしい態を見い。祭官の端にも加へてもらはず、玉串の献上もさしてようもらひやがらぬぢやないか』
などと囁く声が耳敏きキユーバーの皷膜に響いたので、キユーバーは立腹のあまり俄かに逆上し、荘重なる儀式を蹂躙し、斎主の冠を擲きおとしたのである。それがチウイン太子の英断によつて、彼は即座にふん縛られ、たちまち牢獄に繋がれてしまつた。こんな事とは夢にも知らぬ千草姫は、キユーバーの一刻も早く帰れかしと、一時千秋の思ひをして待ち焦がれてゐた。
 そこへガーデン王、照国別、照公、勇将ジヤンク、チンレイ、ハリスその他の面々と共に万歳を三唱しながら、玉座の次の間に帰つて来た。さうして今日の祭典の状況につき種々と談じ合ひ、特にキユーバーが聖場を乱し、たちまち縛につき牢獄に投ぜられた事なぞまで、刹帝利の前にて興味を湧しつつ話しながら、直会の宴が開かれてゐた。疑ひ深き千草姫は玉座の次の間に身を潜め、耳を澄まして聞いてゐたが、キユーバーが乱暴を働き牢獄に投ぜられたと聞くより気が気でならず、どうとかして照国別を排除し、出来得べくんば彼に難癖をつけ牢獄に投じ、キユーバーの仇を打たむと瞋恚の炎を焦がしてゐる。刹帝利は上機嫌で、照国別に再生の恩を謝し、トルマン国の救世主とまで称揚した。王は先づ盃を手にしながら祝歌を謡ふ。

『トルマン国は神の国  遠き神代の昔より
 ウラルの彦の神霊を  斎き祭りて世を治め
 来たりし事の尊さよ  さはさりながら世の中に
 八岐大蛇や醜狐  荒ぶる鬼の身魂らが
 やうやく首をもたげつつ  バラモン教やスコ教や
 そのほか百の邪宗教  吾が神国に襲ひ来て
 国人たちの魂を  支離滅裂に乱しつつ
 敬神尊祖愛国の  誠心は消え果てて
 ただ国人は我利我欲  形の上の宝のみ
 豺狼の爪牙を磨きつつ  あさりゐるこそ悲しけれ
 富者はますます富み栄え  貧者はますます窮乏し
 怨嗟の声は国内に  漲り果ててコンミュニズム
 アナアキズムやソシヤリズム  その他あらゆる悪思想
 国の外より襲ひ来て  人の心はまちまちに
 野獣の如くなりにけり  かかる所へつけ込んで
 大黒主の開きたる  バラモン教の別派なる
 スコブツエン宗といふ邪教  燎原を焼く火のごとく
 蔓延したるぞ是非なけれ  スコブツエン宗のキユーバーは
 大黒主の命を受け  吾が国内に根拠をば
 定めて日に夜に活躍し  吾が官民を睥睨し
 暴威を揮ひゐたりしが  なほ飽き足らずバラモンの
 大足別と結託し  トルマン国を手に入れて
 七千余国の月の国  片つ端から蹂躙し
 野望を達成せむものと  企らみゐたる憎らしさ
 大足別の軍隊を  率ゐて王家を威喝なし
 思ひもかけぬこの度の  軍を開き国民を
 苦しめ難ませヅウヅウしくも  吾が城内に忍び入り
 千草の姫の弁舌に  捲き込まれては急激に
 進路を転じ城内の  味方とかはりし早業は
 実に不思議の手品師だ  へぐれのへぐれのへぐれむしや
 へぐれ神社の身霊だろ  彼は城内に現はれて
 表面忠義をよそほへど  なかなか油断のならぬ奴
 それゆゑ此度の祭典に  彼をば退けわが国を
 助け給ひし三五の  照国別の宣伝使
 御苦労ながら斎主をば  願ひ奉りし次第なり
 ああ惟神々々  ウラルの神の御神力
 三五教を守ります  大国治立大御神
 神素盞嗚の大神の  高き御稜威に守られて
 左守右守の二柱  いよいよ国の守り神
 千代に八千代に永久に  納まりますぞ尊けれ
 キユーバーの司はこの体を  見るより痛く腹を立て
 乱暴至極に祭壇に  かけ登りつつ師の君の
 冠をやにはに突落とし  なほも悪言暴語をば
 吐き散らすこそ憎らしき  チウイン太子の命令に
 ジヤンクの司現はれて  かの妖僧を縛り上げ
 一先づ牢獄に投げ込みて  キユーバーが心のどん底ゆ
 前非を悔ゆるそれまでは  閉ぢ込めおかむ吾が心
 アア勇ましや勇ましや  トルマン国は今日よりは
 三五教とウラル教  二つの教を遵奉し
 世の大本の大神を  斎き奉りて国民を
 導き行かむ頼母しさ  ああ惟神々々
 神の御徳の有難き  神の恵みの尊けれ』

 照国別は言葉静かに謡ふ。

『三五教の宣伝使  照国別もその昔
 ウラルの神の御教を  奉じて教を伝へむと
 名も梅彦と賜はりて  竜宮洲に打ち渡り
 三年の辛苦も水の泡  やむを得ずして六人が
 棚なし船に身を任せ  大海原を渡りつつ
 ペルシヤの海に来て見れば  暴風怒濤に悩まされ
 九死一生のその場合  三五教の宣伝使
 日の出別の言霊に  危ふき命を助けられ
 いよいよここに三五の  神の教に仕へつつ
 神の御言を蒙りて  照国別と名を賜ひ
 産土山の斎苑館  珍の聖地を後にして
 教を伝へ今ここに  トルマン国の危急をば
 救はむための御軍に  加はりたるもウラル教
 守らせ給ふ大神の  清き縁の引合はせ
 人間界より眺むれば  ウラルの道と三五の
 教は二つに見ゆれども  世界を創りし大元の
 誠の神は一柱  何れもおなじ神の道
 それゆゑ吾は三五の  神の教にあればとて
 ウラルの宮の祭典に  与り得ざる理由なし
 キユーバーの司の言霊は  偏狭至極の世迷ひ言
 いざこれよりは万教を  一つになして愛善の
 神の御徳を天の下  四方の国々宣伝し
 神政成就の神業を  仕へ奉らむ吾が覚悟
 諾なひ給へ刹帝利  チウイン太子の御前に
 吾が誠心のありたけを  明して言挙げ奉る
 トルマン国は永久に  この王室は万世に
 わたりて民の親となり  神の創りしこの国を
 常磐堅磐に栄ゆべく  守らせ給へと願ぎ奉る
 開かせ給へと願ぎ奉る』  

 チウイン太子はまた謡ふ。

『この神国は永久に  栄え栄えて限りなく
 天津御空の星のごと  浜の真砂の数知れず
 日に夜に国民繁殖し  穏麦豆粟よく実り
 トルマン国の中心を  清く流るる清川は
 魚類多く繁殖し  野にも山にも鳥獣
 数多住ひて国の富  世界に冠たる目出たさよ
 しかるに大黒主の神  瑞穂の秋の豊の国
 トルマン国を奪ひ取り  第二の根拠を作らむと
 スコブツエン宗を持ち込みて  吾が国内を乱さむと
 大陰謀を企らみて  妖僧キユーバーを派遣なし
 こたびの騒動の端緒をば  開きたるこそ由々しけれ
 彼キユーバーの悪業は  天地も許さぬ大罪ぞ
 さりとは言へど吾々は  神の教にある上は
 彼が心の改慎を  認めた上に解放し
 再び神の御使に  任せむものと思へども
 吾が母君を誑かし  大御心を奪ひたる
 その曲業は許されじ  照国別の宣伝使
 照公司と計らひて  彼が体の処決をば
 如何はせむと大神に  祈れば夢に現はれて
 必ず明日はキユーバーを  縛れと命じ給ひけり
 かくする上は母上の  心を怒らせ奉らむは
 火を覩るよりも明らけし  されども神の詔
 国家のためを思ふ時  許しおかれぬ吾が立場
 諾なひ給へ父君よ  照国別の宣伝使
 ここにキユーバーを縛りたる  理由を陣謝し奉る
 三五教やウラル教  ここに両教聯合し
 トルマン国は言ふもさら  七千余国の月の国
 漏らさず落とさず国民に  尊き神の御教を
 教へ伝へて一日も  早く神国成就の
 大神業に仕ふべし  ああ惟神々々
 神の御前に赤心を  明かして誓ひ奉る
 赤心籠めて願ぎ奉る』  

 かく歌ふをりしも、夜叉のごとき勢ひ、満面朱をそそぎ、血眼になつて現はれ来たり、刹帝利の右に憤然と座を占めたのは王妃千草姫であつた。一座は千草姫の突然の出現によつて一種異様な空気に包まれてしまつた。

(大正一四・八・二四 旧七・五 於由良海岸秋田別荘 加藤明子録)



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