出口王仁三郎 文献検索

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物語69-3-161924/01山河草木申 波動王仁三郎参照文献検索
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第一六章 波動〔一七六一〕

 国照別一行は四辺の果実をむしりながら、飢ゑを凌ぎ三日三夜の禊を修し、鏡の池の由緒深き霊場に参拝し声も涼しく宣伝歌を奏上した。

国照『アさ日は清く明らけく  イてり通らすテルの国
 ウき世の悩みを他所にして  エらまれ切つた身魂等が
 オさまりゐます懸橋御殿  カみも平らに安らかに
 キこしめすらむ真心の  クに照別の御願ひ
 ケしきいやしき曲道を  コん本的に改良し
 サかえ尽きせぬ珍の国  シきます国魂大御神
 スずしき聖き太祝詞  セかいのために宣り上げて
 ソぐりし身魂を救ひ上げ  タすけて生かす高砂の
 チとせ栄ゆる松の教  ツきは御空を隈もなく
 テらして暗を晴らしつつ  トこ世の国まで救ひ行く
 ナみに漂ふ高砂の  ニしと東の珍の国
 ヌしとなるべき吾が魂も  ネそこの国の悩みをば
 ノぞかぬうちは是非もなし  ハやく身魂をあらためて
 ヒろく尊き御恵みの  フゆを世界に現はして
 ヘい和に民を治め行く  ホまれも高き珍の国
 マこと一つの三五の  ミちの光に陰もなし
 ムかしの神代に立替へて  メぐみ洽き草の露
 モもの神人勇み立ち  ヤすく楽しく何時までも
 イのち栄えて国のため  ユう冥界を救うため
 エい遠無窮の生命を  ヨさし玉へと願ぎ奉る
 ワが言霊の大前に  ヰてり通らい奉りなば
 ウき世の雲をかきわけて  ヱがほに充てる神の顔
 ヲがませ玉へ惟神  国照別が善悪の
 世のさまうつす鏡池  玉の宮居の御前に
 畏み畏み願ぎ奉る』  

と歌ひ終り、拍手し、傍の巌に腰を打ちかけ、昔の歴史話に移りける。
国『オイ、乾児ども、この鏡の池は一名言霊の池といつて高砂洲第一の神秘的な霊場だ。真心を以てこちらから言霊を発射すれば、キツと神様が言霊をもつて答へて下さるさうだが、どうだ一つ滝で身を浄めて来たのを幸ひ、神様に伺つて見やうかい』
浅『いかにもソラ面白うございませう。ここで乾児の順序を神様に聞いて定さしてもらひませう。それが公平で互ひに怨恨が残らいでよろしいからなア』
『それも結構だ。そんなら浅公、お前から一つ神様に願つて見よ』
『ハイ、承知しました』
と言ひながら拍手再拝し、

浅公『惟神昔の神の坐しまさば
  示させ給へ吾が願言を

 言霊の池と名に負ふ斎場なれば
  答へ給はむ吾が言の葉に』

 忽ち鏡の池はブクブクブクと異様な泡を吹き出したりけるに、国照別外一同は早速の感応に襟を正し、片唾を呑んで畏まつてゐる。浅公も小気味が悪くなつたが、後へ退くわけにも行かず、額から冷汗を流しながら、
『アア有難や辱なや、鏡の池の生神様、侠客の浅公が朝間も早うから、阿呆が足らいで、あられもない事をお願ひ申しますが、どうぞ、あら立てずに、あらましでよろしいから、御神徳をあらはして下さいませ』
 鏡の池から、
『アツハハハハ、浅公の浅知恵の阿呆奴、開いた口が塞がらぬワイ』
浅『イイイいけ好かない、イイイの一番から人を罵倒する神が何処にありますか、ウウウうるさいと思はずに、どうぞ真面目に私の願ひを聞いて下さい、国さまの乾児の中において誰が上になるか下になるかと言ふ事を聞かしてもらへばそれで良いのです』
 池の中から、
『エエエえらい奴が、上になるのだ、オオオ劣つた奴が下になるのだ。そんな事をカカカ神に聞かずとも、キキキ気がつきさうなものぢやないか。ククク国照別の国公の乾児になつた以上は、汝も侠客だ。一つケケケ喧嘩でもして力比べを致し、コココこつかれた奴が乾児になるのだ。サササ騒ぐには及ばぬ、今の世は言論よりも実力だ。シシシ主義も糸瓜もあつたものぢやないぞ。ススス速かに実行する奴が数多の人気を、セセセ制するのだ。今に珍の国にはソソソ騒動が起るから、タタタたがひに霊を練つて、生死のチチチ巷にかけまはり、体も魂も人に秀れて、ツツツ強くなつておかねば、テテテ天下は取れぬぞよ。トトト遠い国へ駈落ちいたし、ナナナ何かの事を研究し、天晴れ立派な男伊達となつて、故郷へ、ニニニ錦を飾り、親に反いて国許を、ヌヌヌぬけて出た贖ひを致し、ネネネ根の国底の国の国民の苦を救ひ、ノノノ長閑な、神代に立直さねばならぬぞよ。ハハハ早く霊を研き、ヒヒヒ一人でも霊の研けた者を集め、勢力をフフフふやして、ヘヘヘ平和と人道のために社会に貢献する、ホホホ方策を定めたが良からう。マママ誠一つが世の宝だ。ミミミ身を粉にいたし、ムムム昔の神の教を遵奉し、メメメ名利に耽らず、モモモ諸々の欲に離れ、ヤヤヤ大和魂を研き上げ、イイイ厳の御霊の教に従うて、ユユユ勇敢に大胆に、エエエ遠慮会釈もなく、ヨヨヨヨウ言はぬワ、世のために活動するのだぞ。ラララ乱世の今日、リリリ倫常は地に落ち、ルルル累卵の危ふき各階級の状態、レレレ連年の不景気に人心は悪化し、ロロロ老骨は上に立つて国政を料理し、もはや珍の国の人心は収拾すべからざるに立至つてゐる。ワワワ吾が身の出世ばかり考へて他人の事は、ヰヰヰ指一本そへてやらむといふ悪党な世の中だ。ウウウ有為転変の世の中は、何時変るか知れないぞ。ヱヱヱ遠国へ行つて、魂を研き、天晴れ、ヲヲヲ男となつて、ここ三年の内には帰つて来よ。浅公ばかりでない、親分の国州、その他一同の者に気をつけておく。さうして駒治は国州の一の乾児と神が定めるぞよ、ブルブルブルブル ウーツ』
と唸つたきり、後はコトツとも言葉はなくなつてしまつた。
駒治『鏡の池の神様、どうも有難うござります。貴神のおつしやることは良く合ひました。私の思ふ通り言つて下さいました。惟神霊幸倍坐世』
浅『オイ駒州、この神はチツと審神の必要があるぞ。おほかた汝の副守か何かが飛出しやがつて、あんなこと吐いたのだらう。エー、ケツタクソの悪い、誰が何といつても俺が一の枝だからのう』
駒治『一の枝だから駄目だといふのだよ。松の木でも見よ、一の枝が枯れて二の枝、二の枝が枯れて三の枝が出来、後から後から立派な枝がより以上大きく出るぢやないか。マアともかく神様のおつしやる通りに任しておくのだなア』
国『ハハハハまづ此処で、それほど神様の神勅を疑ふのなら、力比べをやつて見よ。喧嘩さすと互ひに疵がついていかぬから、神様の前で角力でもとつて、勝つ奴を一の乾児にすることにしやう。浅公、お前も得心だらうなア。お前も先夜の事を思へば余り威張れぬぢやないか』
 ここに二人は一番勝負の角力を取り、いよいよ駒治が国州の一の枝と定まり、意気揚々として山を降り蛸取村の海岸に出た。
 国照別一行は蛸取村の海岸に息を休めながら渺茫たる海原の景色を眺め、愉快げに歌つてゐる。

国州『雲か山かはた波か  渺茫千里の塩の波
 浅ましき人間の眼をもつて  大西の洋に臨む
 十里二十里三十里  わづかに視線は働けども
 いかにせむ海の彼方に  漂へる国の姿の
 目に入らぬ悲しさ  行交ふ白帆は
 花弁のごとく  波のまにまに
 清く輝く  吾は今
 磯辺に立ちて  広大無辺の
 天地に跼蹐し  人間の身の
 いと腋甲斐なきを  深く深く歎く
 アア吾今  住みなれし故国を捨てて
 始めてこの広き海洋の波に接す  珍の国は広しといへど
 この海原に及ばむや  大空の雲と
 海原の波と  相接する所
 定めて麗しき宝国あらむ  アア思へば思へば
 微弱なる人間の身よ  いとも雄大なる
 天地の現象  宇宙の摂理
 今更ながら  吾が胸は轟き始めぬ
 吾が志すヒルの都は  果して何処ぞ
 かの遠き紅の雲の  真下ならむか
 はたまたそれよりもズツと秀れて  遠き遠き低き雲の
 真下に在るか  思へば
 わが前途は  極めて遼遠なり
 四人の供人を引きつれて  際限もなき
 原野を行く  吾が心の波の高さよ
 否胸の騒ぎよ  沈静せしめ給へ
 天地の司宰とあれまする  国治立大神
 荒金の地を領有ぎ給ふ  神素盞嗚大神よ
 帆は白し波は高し  空は広く雲は低し
 吾等五人の前途を守らせ給へ』  

と詠じ終り、国照別は先頭に立ちて、伝来の古き宣伝歌を高唱しながら、テル国街道を北へ北へと進み行く。

(大正一三・一・二四 旧一二・一二・一九 伊予 於山口氏邸 松村真澄録)



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