出口王仁三郎 文献検索

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物語69-2-111924/01山河草木申 気転使王仁三郎参照文献検索
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第一一章 気転使〔一七五六〕

 都大路の中心、赤切公園の真中に浮浪階級大演説会が始まつた。数多の取締は出口入口を固め、角袖は聴衆一人に一人ぐらゐな割合で数千人繰り出だし、物々しき警戒振りを現はしてゐる。浮浪階級演説会の会長ブルドックは獅子の咆哮するごとき声にて、
『取締何ものぞ、法規何ものぞ』
と言はむばかりの勢ひをもつて、決死的大演説会を始めてゐる。

ブルドック『諸君よ諸君よよつく聞け  世は常暗となつて来た
 日月空に晃晃と  輝きわたれど如何にせむ
 中空に村雲ふさがりて  さも晃々と輝ける
 光を包み隠しつつ  世は刈菰の涯もなく
 紊れ行くこそうたてけれ  かくも乱れし原因は
 何処にあるかと尋ぬれば  諸君もすでに御承知の
 事とは思へど今ここに  一口火蓋をきり放つ
 四民平等の神国を  壅塞したる曲神は
 松若彦に伊佐彦を  先づ先頭にその外の
 諸の司や持丸よ  彼等は地位と私欲をば
 みたさむために衆生の  迷惑などは夢にだも
 弁へ知らぬ盲ども  権威を笠に衆生の
 汗や脂を絞りつつ  倉廩充たす憎らしさ
 吾ら衆生は飢ゑに泣き  寒さに凍え枕する
 茅屋さへも無きままに  路傍に佇み眠りをれば
 さも横暴な取締が  法規違反と吐きつつ
 残らず吾等を牢獄に  投込み無限の恥辱をば
 与へゆくこそ憎らしき  霜ふり雪つむ冬の夜も
 また永久のものでない  必ず花咲き風薫り
 水も温みて草木の  百花千花咲き出づる
 嬉しき春の来たるごと  必ず吾等が身の上に
 恵みの雨は降りぬべし  さはさりながら凩の
 吹きすさびたる荒野原  越えずばいかで春の野の
 いと麗しき温光に  浴することを得べけむや
 深く根ざせる喬木の  幹をば払へ枝を切れ
 月日の光を覆ひかくす  醜の喬木ある故に
 地上にすだく諸草は  恵みの露を遮られ
 神の光をかくされて  いや永久に日蔭者
 同じ地上に生ひながら  所を得ざる吾々は
 一生つまらぬ者ぞかし  この難関を切りぬける
 唯一の望みは天空を  封じて立てる喬木の
 枝葉を打ち切り棄つるより  他に手段はなかるべし
 振へよ起てよ諸人よ  いかなる圧迫来たるとも
 十手の鞭の数多く  芒のごとくに攻め来とも
 命を的に放り出した  吾等はいかでか恐れむや
 天の御声を汝等に  伝達いたすブルドック
 語を替へ言へば救世主  吾が言の葉を耳さらへ
 完全に委曲に聞きおうせ  眠れる眼を醒ませよや
 これほど曇つた世の中を  神や仏は何してる
 察するところ神と言ひ  仏といふも道法衆の
 一時の方便に過ぎなかろ  俺らはもはや神仏を
 表にかざして臨むとも  絶対的の無神論
 神も仏も認めない  ただ吾が持てる腕力を
 唯一の力とするのみぞ  勇めよ勇め諸人よ
 吾が言霊を諾ひて  この世を救ふ働きに
 参加を望む人たちは  怯めず臆せず壇上に
 登つて所信を吐露せよ  この世をこのままおいたなら
 吾ら世界の弱者等は  亡びゆくより道はない
 すべて最後の解決は  運根鈍に限るぞよ』

と述べ立てる。取締は「中止、解散を命ず」と大声叱呼する。弁士は次から次へと取締の制止を聞かず登壇して各自に熱をふく。取締は引摺り落とさうとする。たちまち数千の取締と数千の聴衆との間に大格闘を演じ、何者の悪戯か、あちこちの町々より、黒煙濛々と立上り、チヤン チヤン チヤンと警鐘乱打の声聞こえ来たる。取締も群衆も狼狽の極に達し右往左往に散乱してなすところを知らなかつた。そこへ馬に跨がつて、愛州、源州、平州、藤州は数多の部下を指揮し、消防隊を組織して、燃え上る火災を残らず消しとめ、喇叭を吹いて悠々として引きあげてしまつた。火事もすみ、騒動も稍おさまつたところへ、取締所のポンプが数多の取締に保護されてやつて来た。
 一旦逃げ散つた群衆はまたもや赤切公園に集まり来たり、再び演説会が開催された。弁士は代る代る熱弁を揮ひ、伊佐彦内閣倒壊、持丸階級の討滅、清家階級を打破せよなど勝手な熱を吹き立てる。群衆は刻々その数を増し、「ワイワイ」とどよめき亘り、弁士の声も遂に耳に入らなくなつてしまつた。取締もまた次第々々にその数を増し、十重二十重に取りまいて、ここに第二の修羅場を演出した。今回の闘争は最も激烈を極め、阿鼻叫喚の声四方に起り、ほとんど戦場のごとき景況を呈し、何時果つべしとも見当がつかなかつた。賢平も取締も武器を衆生に取られ進退維れ谷まり、逃場を失ひ困つてゐる。そこへ白馬に跨がり、被面布を被りながら、声も涼しく宣伝歌を歌つて出て来た女性がある。

『オレオン星座を立ち出でて  豊葦原の中津国
 珍の都へ天降りたる  神の使の松代姫
 この世を救ふそのために  白馬に跨がり現はれて
 衆生一同にさとすなり  みな静まれよ静まれよ
 汝等一同皇神の  恵みの露に包まれし
 尊き誠の珍の子ぞ  兄弟垣に鬩ぐとは
 何たる心得違ひぞや  はるかに天よりこの世界
 聖き眼で見わたせば  上に立つ者下にゐる
 民草どちらも良くはない  互ひに意地を立て通し
 名利物欲第一と  思ひひがめて肝腎の
 吾が魂を省みず  いと浅ましき修羅場を
 ここに現出したものぞ  何れも一同心をば
 静めて神の教を聞き  天教山に現れませる
 木花姫の御言もて  珍の御国の衆生をば
 天国浄土に救はむと  今や現はれ来たりけり
 松若彦を初めとし  伊佐彦司の政策は
 全く時勢を顧みぬ  無謀至極の行方ぞ
 下万衆の心根も  神をば忘れ肝腎の
 吾が魂の所在をば  忘却したる酬いぞや
 人は神の子神の宮  天津国より精霊が
 神の御心畏みて  この世の人と生れ来る
 その肉体を有ちながら  この有様は何事ぞ
 人たる者の所作でない  虎狼か熊猪か
 但しは八岐の大蛇奴か  たとへがたなき醜体を
 天地にさらせし浅ましさ  悔い改めよ諸人よ
 上と下との隔てなく  貴き賤き別ちなく
 心を協せ力をば  一つになして珍の国
 神の賜ひし霊国を  堅磐常磐に守れかし
 いざいざさらばいざさらば  吾はこれより八重雲を
 かきわけ天に昇り行く  万一神の言の葉に
 反く衆生のありとせば  神罰忽ち下るべし
 ああ惟神々々  皇大神の御心を
 茲に伝達なし了る』  

と言ひながら、馬に鞭うち浅原山の山頂目がけて雲を霞みと駈けり行く。今現はれた松代姫と称する女武者は、その実松若彦の娘常磐姫であつた。常磐姫は春乃姫と諜し合せ、奇智を弄して天使と化け込み、一時の擾乱を平定せしめむがために現はれたのである。
 賢平も取締も群集も酒偽者も、神を信ずる者も信じ無い者も、麗しき美人の出現に胆を潰し、猛り切つたる勢ひを削がれ、争闘の手を止めて、ただ茫然と浅原山を指して逃げ行く怪しき女の姿を見送つてゐた。
 かかる所へ蓑笠草鞋脚絆の扮装にて、被面布を被りながら、声も涼しく宣伝歌を歌ひつつ進み来たる女がある。

『神が表に現はれて  三千世界を引きならす
 すべてこの世は天地の  神の造りし楽園ぞ
 この地に生ふる人草は  貴き卑きの隔てなく
 互ひに睦び親しみて  神の賜ひし宝をば
 互ひに別ち万遍なく  分配すべき御律ぞや
 一方に高く宝をば  積み重ぬれば一方は
 必ず欠けて低くなり  一方に楽しむ者あらば
 一方に苦しむ者出来る  これでは平和といはれない
 今や天運循り来て  高砂城の奥深く
 救ひの神は現はれぬ  吾は春乃の姫なるぞ
 この衆生の難儀をば  救ひやらむと朝夕に
 凡ての宝を打捨てて  模範を示し蓑笠を
 身に纒ひつつ町々を  巡りて誠を諭せども
 清家階級持丸は  欲にからまれ目はさめず
 耳は塞ぎて衆生の  この号泣の悲鳴さへ
 分らぬまでになり果てぬ  ああ惟神々々
 モウこの上は神様の  御手にすがりて黎明の
 世を開くより道はない  目ざめよ目ざめよ上下の
 各階級の人々よ  天津国より皇神の
 御言を畏み下り来て  国依別の御子となり
 今まで城中に育ちしが  いよいよ天の時来たり
 神の柱と現はれて  汝ら衆生に説き教ゆ
 ああ惟神々々  神の言葉に二言なし
 悔い改めよ戒めよ』  

と言つたきり、煙のごとく何処ともなく姿を隠した。群衆は異口同音に春乃姫と聞いて感歎の言葉を絶たなかつた。負傷した役人も衆生も、一言の叱言も言はずおのおの家路に帰り行く。はたして今後は春乃姫の出現によりて衆生の心が鎮静し、取締と衆生との争闘の根が断たれるであらうか。

(大正一三・一・二三 旧一二・一二・一八 伊予 於山口氏邸 松村真澄録)



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