出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語68-5-211925/01山河草木未 祭政一致王仁三郎参照文献検索
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第二一章 祭政一致〔一七四五〕

 スダルマン太子は宣伝使に送られ、一行と共に無事タラハン城内に立ち帰り、父の大王に面会し、今までの不都合を謝し、かつ今後は心を改めて、父の後を継ぎ、国家万機の政事を総攬せむ事を誓つた。カラピン王は太子の姿を見るより、喜びのあまり気が緩み、ガツカリとしたその刹那、忽ち人事不省に陥り、四五日を経て八十一才を一期となし、この世に暇を告げた。太子は父王の位を継承しカラピン王第二世と称し、天下に仁政を布き、国民上下の区別を撤回し、旧習を打破し、国民の中より賢者を選んで、それぞれの政務に就かしめ、下民悦服して皷腹撃壤の聖代を現出した。
 アリナおよびバランスは国法の命ずる所に従ひ、一時牢獄に投ぜられたが、太子が王位に即くと共に大赦を行ひ、両人は僅に一週間の形式ばかりの牢獄住居を遁れ、アリナは天晴れ右守司となつて国民上下の輿望を担ひ、輔弼の重任を尽し奉つた。そして民衆救護団長たりし大女のバランスを妻に迎へ、アリナの家は子孫代々繁栄した。またバランスはスダルマン太子の即位と共に民衆救護団の必要なきを感じ、部下一般に対して、解散の命を下した。
 左守司のガンヂーはカラピン王の後を逐うて、これまた眠るがごとく帰幽した。浅倉山の山奥に隠れてゐた前左守司シャカンナは新王に召されて、城中に入り元の如く左守の職に就き、国政の改革に全力を傾注し、国民一般の大いに信任を得た。太子の最も寵愛せしスバール姫は王妃の位に上り、殿内の制度を自ら改革し、従前の因習や情実的採用法を全廃し、賢女を集めて殿内の革正に努めた。また向日の森の辺に住む茶坊主のタルチンはスバール姫に終身仕ふる事となつた。
 毒婦シノブのためにインデス河に投込まれた王女のバンナ姫は、バランスの部下に救はれ芽出たく宮中に送り帰され、トルマン国の太子に懇望されてその妃となつた。
 大宮山の盤古神王の社は梅公別の宣伝使が指揮に従ひ、以前よりも数倍宏大にしてかつ立派なる社殿を造営し、社を三棟となし、中央には大国常立尊、豊雲野尊を祭り、左側の宮には神素盞嗚尊、大八洲彦命を鎮祭し、右側の宮には盤古神王および国魂の神を鎮祭し、カラピン王家の産土神として永遠に王自ら斎主となり奉仕する事となつた。
 カラピン大王や左守ガンヂーの葬祭式には上下挙つて会葬し、開闢以来の盛儀と称せられた。次いで大宮山の遷宮式ならびに太子の即位式や結婚式等にて、タラハン城市に全国より祝意を表して集まり来たる者引きも切らず、期せずして大火災に会ひしタラハン市は一年ならずして復興し、以前に優る事数倍の繁栄を来たした。いづれも新王が民意を容れ、平等博愛の政治を布き給ひし恩恵として、子供の端に至るまでその徳を慕ひ、不平を洩らす者は只一人もなかつたといふ。即位式の状況については茲に省略し、祝歌のみを紹介する。

新王『久方の天津御神の御心を
  麻柱まつり国を治めむ

 国民の日々の暮しの安かれと
  朝な夕なに神に祈らむ

 親々の開き給ひし神の国を
  謹み畏み守りまつらむ

 新しき国の政を開きつつ
  野に在る聖広く求めむ

 大宮の下つ岩根に千木高く
  鎮まりゐます神ぞ尊き

 三五の神の教を今よりは
  あが国民に教へひろめむ』

妃『吾が君の勅のままに服ひて
  御国の母と仕へまつらむ

 天つ神国津御神を斎ひつつ
  吾が神国の御民を治めむ

 諸々の珍の司を率ゐつつ
  吾が大君の道を助けむ

 有難き神の恵みの露に会ひて
  今日九重にわれは輝く

 世の中の御民よ永遠に安かれと
  祈るはおのが願ひなりけり』

アリナ『大君は遠く御国に昇りまし
  天にゐまして御代をしらさむ

 吾が父は吾が大君に従ひて
  神の御国に昇りますらむ

 足曳の山の名画と謳はれし
  后の宮のうまし御姿

 吾は今右守司と任られて
  あが大君の御前に侍る

 天はさけ地ゆり海はかかるとも
  君の恵みは忘れざらまし

 大神と吾が大君の御ために
  心も身をも捧げまつらむ』

シャカンナ『神去りしあが大君に仕へてし
  われは再び世に出でにけり

 新たなるあが大君の恵みにて
  吾がまな娘人となりぬる

 山奥に匂ひ初めたる梅の花
  今日は高天に実を結ぶなり

 親と子の称へはあれど大君の
  后とゐます君に従ふ

 十年ぶり珍の都に立帰り
  君に仕ふる事の嬉しさ

 今よりは心の駒を立直し
  御民の心なごめまつらむ』

バランス『バランスは鄙に育ちし身ながらも
  今日九重の空にすむ哉

 背の君と手を携へて政
  輔けまつらむ事の嬉しさ

 タルチンの館に三年忍びつつ
  仇に返せし事の苦しさ

 ブルジョアや資本階級悉く
  打払はむとすさびせしかな

 都路に火を放ちたる曲業も
  御代を救はむ心なりけり』

タルチン『力なき小さき吾が身も御恵みの
  露にうるほひ甦りける

 有難し后の宮の手を取りて
  茶道教ゆる身こそ嬉しき』

梅公別『皇神の貴の御光現はれて
  世の基をば開く今日かな

 大宮山の聖場に  大宮柱太しりて
 斎ひまつりし大神の  御前を畏み願ぎまつる
 そもそもこれの神国は  遠つ神代の昔より
 民の心を心とし  国の司は天地の
 神の心を心とし  上下の隔てを取去りて
 中取り臣と現はれて  国の国王となり給ひ
 四方の民草平らけく  いと安らけく撫で給ふ
 畏き御代も中つ世に  押よせ来たれる曲道に
 皆汚されて神国は  悪魔の荒ぶる世となりぬ
 上に仕ふる司等は  名利の欲に心をば
 晦ませ鬼と成変り  民の苦しみ気にかけず
 利己主義一途に相流れ  世は日に月に弱りはて
 怨嗟の声は野に山に  都大路の隅々に
 轟きわたる恐ろしさ  時しもあれや皇神の
 化身とあれますスダルマン  太子の君は逸早く
 よく民情に通じたる  アリナの君を抜擢し
 股肱の臣と愛で給ひ  心を合せ力をば
 一つになして国民の  苦難を救ひ助けむと
 心を砕かせ給ひしが  曇り切つたる九重の
 御空の雲は深くして  晴らす由なき常暗の
 曲の健びは手を下す  術さへもなく一時は
 館を出でて山に野に  彷徨ひ給ひ千万の
 悩みをうけさせ給ひしが  一陽来復時来たり
 今や王位に登りまし  諸政の改革断行し
 新たに国を開きつつ  慈母の赤子における如
 万の民を撫で給ふ  畏き御世とはなりにけり
 ああ惟神々々  五六七の御代の魁か
 仰げば高し久方の  尊き神の御恵みか
 称へ尽せぬ御稜威  仰ぎまつれよ諸人よ
 上は国王を始めとし  司々の端々も
 神を敬ひ大君を  慕ひまつりて邪の
 心を改め惟神  神の心に叶ひたる
 勤めをなせよ惟神  神に代りて梅公が
 名残に一言述べておく  ああ惟神々々
 御霊幸はひましませよ  旭は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  たとへ大地は沈むとも
 誠一つは世を救ふ  神が表に現はれて
 善と悪とを立てわける  この世を造りし神直日
 心も広き大直日  ただ何事も人の世は
 直日に見直し聞直し  世の過ちは宣り直し
 珍の祭を永久に  執らせ給へよ大君よ
 三五教の宣伝使  梅公別が謹みて
 神の御旨を宣べ伝ふ』  

 梅公別の宣伝使は、新王をはじめ並ゐる重臣どもに神の教を諄々と説き諭し、再び白馬に跨がり、タラハン城を後に眺めて、照国別の隊に合すべく、蹄の音も勇ましく、矢を射る如く帰り行く。ああ惟神霊幸倍坐世。

(大正一四・一・七 新一・三〇 於月光閣 松村真澄録)
(昭和一〇・六・二三 王仁校正)



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