出口王仁三郎 文献検索

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物語64a-5-231923/07山河草木卯 暗着王仁三郎参照文献検索
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第二三章 暗着〔一六五二〕

 名利の欲に捉はれし  男女四人の醜魂は
 うろたへ騒ぎ小北山  後に見すてて汽車の窓
 勢ひ込んで乗込めば  轍の音も轟々と
 大地をビリビリふるはせて  何の当途も嵐山
 花園二条京都駅  西へ西へと向日町
 上る山崎高槻や  大阪駅も乗越えて
 出でゆく先は広島や  馬関の関に立向ひ
 転覆丸に身を乗せて  漸く釜山に上陸し
 京城平壌鴨緑の  橋を渡つて満洲の
 広軌鉄道スクスクと  夜を日についで進み行く
 二十余日の汽車の上  漸く聖地に安着し
 音に名高きエルサレム  市中をウロウロ迂路付きつ
 一目散に橄欖の  山を目がけて駆上り
 四辺の景色を見まはして  胸を躍らせ呆れゐる。

 お寅はほつと息をつぎ、
『アヽヤレヤレ、ヤツトの事で、八千哩の水陸を渡り、目的地点へ達しました。何とマア桶伏山によく似た所ですな。しかしながら山の具合と云ひ木の具合と云ひ、どうも日の出島の桶伏山とはどこ共なしに物淋しいやうな気がするではありませぬか。また外国身魂を盛んに教育せうと思つて、大きな学校を建ててゐるだありませぬか。練瓦や石をたたんで、この結構な霊場をワヤにする奴は、何処の四つ足人種だらうかなア』
 守宮別は迷惑顔にて、
『コレコレお寅さま、さう大きな声で云ふものぢやありませぬよ。あれはシオン大学と云つて、世界の学者を集めて、世界の思想界を改良しやうといふ所ですよ。つまり日の出守護にせうと云つて、ユダヤの学者や世界の博士等が寄つて経営してるのですよ。日の出島なら何を云つて居つても笑ひませぬが、言葉の通じない斯様な所へ来て仕様もない事を云つては困りますからな。あなたは外国語が分らぬのだから、何事も私の言ふやうにして下さい』
『ヘン、外国語が、何夫程有難いのだい。変性男子さまはこの世の中をイロハ四十八文字で何もかも治めるとおつしやつたのぢやありませぬか。これから外国人に改心さしてイロハ四十八文字の日の出島の言葉を覚えさしたらいいだありませぬか。それだけの権威がなくてどうして三千世界の日の出神となれますか。お前さまも余程分らぬことを云ふぢやありませぬか。オホヽヽヽ』
『またはしやがれるのかなア。しかし何ぼはしやいでも、外国人に日本語の分る人が少いからマア結構だ。サアこれからシオン大学の建築工事でも見せて貰ひませうかい』
『コレ守宮別さま、そんな気楽なことをいつてる時だありますまい。早く、桶伏山からソツと隠れて来てゐるといふブラバーサの所在を捜し、談判せねば思惑が立ちませぬぞや』
 かく話す所へシオン大学の創立者たるスバール博士が、ステツキをつきながらやつて来た。守宮別は得意の英語で何だかペラペラと話しかけた。博士も極めて愉快気に守宮別と握手しながら半時ばかり話してゐた。その要点は……守宮別が日の出島から救世主日の出神を送つて来たといふ大体の話であつた。スバール博士は真面目に聞いてゐたが、しまひには吹出してニタツと笑ひ袂を別つたのである。守宮別はこの博士に認められなければ日の出神もダメだと思つたが、そ知らぬ面して平気を装ふてゐた。お寅はスバール博士の姿が見えなくなつたのを幸ひ、またもや喋り出したり。
『コレ、守宮別さま、チーチク、パーパーと雀のよなことをいつてゐたが、一体何をいつてゐたのだい。日の出神の救世主が御降臨だといふことをお前さまは言はなかつたのかい』
『ソンナことに如才がありますか。そのためにはるばる来たのではありませぬか。確に云ひましたよ。あの方はスバール博士といふて世界で有名な学者ですよ。あの人さへ分れば世界中の人間があなたを救世主と認めてくれますよ』
『何とマア神様のお仕組と云ふものは偉いものだなア。ここへ着くが早いか、スバール博士に会ふて日の出神を認めて貰ふとは本当に神さまも偉いワイ。ヘン、ブラバーサなんて、抜がけの功名をせうと思つて先へ来ながら、何処の隅に居るかとも云はれてゐないとみえて、橄欖山に姿も見えぬぢやないか。どつかへ消滅したと見える。オホヽヽヽあた気味のよい、だから日の出神に従へ……といふのだ。コレ曲彦さま、お花さま、御神力が分りましたかな』
『今来たばかりで根つから何も分りませぬ』
『エヽ、何といふ盲だいな。お花さま、お前は分つただらうな』
『何を云ふても英語を知らないものだから不便でございますワイ』
『そこが御神力でいくのだよ。イロハ四十八文字さへ使へば三千世界に通用するのだからな』
『曲彦が考へると、現に此処では日の出島の言葉が通用せぬぢやありませぬか。イロハ四十八文字もいい加減なものですな』
『コレ、守宮別さま、二人の分らずやに、今の博士のことをトツクリと合点の行くやうに言ふて上げて下さい。さうするとチツとは、目がさめるでせうから、今あの博士が去んだから、やがて旗を立てて大勢で迎へに来るだらう。エヘヽヽヽ』
『コレお寅さま、ダメですよ。さう今から喜んで貰ふと困りますがな』
『エヽ?何がダメだい。三千世界の救世主が現はれて来てるだないか。世界の学者ともあるものが、ソンナことが分らぬと云ふことがあるものか。お前はそんなこと云つていちやつかすのだらう、本当のこと云つて下さいな』
『本当の事云つたら、あなたビツクリしますよ。サア当山を下つて、どつかのホテルへ這入りませう』
『そして博士は何と云つたのだい』
『モウ云ひますまい。偽予言者、偽救世主が沢山に来る世の中だから、お前さまもいい加減に目を醒ませと云ひました。どうもあの博士の云ふことには真理があるやうです。こんな所まで来て恥を掻きました。何しろ日の出神は偽救世主ですからなア』
『エヽ馬鹿にしなさるな。お前さまの云ひやうが悪いからだ。チーパーチーパーと小鳥の鳴くやうなこと云つて、何分るものか。なぜモツと分るやうにおつしやらぬのだい。本当に仕方のない人だなア』
『どつかでウヰスキーでも一杯やらぬと元気が出ませぬワ。一遍エルサレムの町まで行きませう、そこでゆつくり話しませう』
『一寸待つて下さい、何処ぞ此処らにブラバーサが潜伏して居るか知れぬから、一遍彼奴に会うて面の皮をヒンむいてやらむことにや仕方がない。何でも彼奴がシオン大学の博士等に会うて邪魔をして居るに違ない。サアサア曲彦さま、お花さま、この山を小口から捜すのだよ』
『お寅さま、ブラバーサだつて、コンナ山ばかりに居り相なことはない。朝とか晩とかに一遍づつ参る位でせう。キツとどつかの宿に居るに違ありませぬワ』
『折角此処まで来たのだから、ソンナラ此処で一つ日の出神さまを御祈願して、歌でも詠んで、それからエルサレムまで一先づ行くことにしませう』
『モシお寅さま、日の出神を拝めと云ひなさるが、日の出神は貴女とは違ひましたかいな』
『エー合点の悪い、日の出神と云へば底津岩根の大弥勒さまを拝めと云ふことだがな。一を聞いたら十を悟るのが大和魂ですよ。何から何まで教へてやらねばならぬといふのは、困つた男を連れて来たものだなア』
『それでもお寅さまの選によつた水晶魂が来たのだもの、さう小言を云つて貰ひますまいか。アタ阿呆らしい、こんな遠い所までついて来て、いきなり小言を聞かうとは夢にも思ひませぬワイ、なアお花さま、本当にバカらしいぢやありませぬか。歌もロクによむ気になりませぬがな』
『コレ曲彦さま、ここへ来た上はモウ仕方がない、守宮別さまとお寅さまのおつしやる通りにするのだよ。言葉も分らず、神徳の足らぬ者は何と云つたつてダメだらう……神力の高いお寅さまと外国語の分つた守宮別さまに絶対服従するより途がありませぬワイ』
『何と云つても此処へ来ればこの守宮別さまの天下だ。お寅さまもチツと我を折つて私の云ふことを聞きなされ。イロハ四十八文字も此処へ来ては余り権威がありますまいがな。アハヽヽヽ』
『これだけ立派な日の出神が日の出島から御降臨になつてゐるのに、分らぬ奴ばかりとみえて、一人も歓迎に来ぬぢやないか。コレ守宮さま、お前さまの談判が悪いからだ。モ一遍宣直して来なさい。それが厭ならブラバーサを捜して、彼奴を博士の前であやまらすがよろしい。さうすりや一遍に信用が回復しますぞや』

お寅『海山をはるばる越えて来て見れば
  聞きしに違ふ橄欖の山』

お花『思ひきや長い鉄路を渡り来て
  山の上にて小言聞くとは』

『コレお花さま、何といふ不足らしい歌をいふのだい。宣り直しなさい』
『ハイハイ、宣直さうと云つたつて、乗車切符もなし、どうするのですかい』
『エー合点の悪い、歌を言ひ直しなさいと云ふのだがなア』

お花『果てしなき海山越えてこがれたる
  聖地にやうやうつきの空かな』

『またソンナことを言ひなさる、つきの空なぞと私は月は嫌ひだと何時も云ふぢやないか。丸くなつたり虧けたり、細くなつたり、出たり出なかつたりするやうな、変性女子的の月のことをいつて下さるな。何で日の出神を歌ひなさらぬか。コレ曲彦さま、お前一つ歌つて御覧……』

曲彦『日の出島あとに見すてて火の車
  乗りて来たのは橄欖の山』

『ソリヤ何ぢやいなア。ソンナ腰抜歌がありますか』
『それでも私は力一パイ、知恵を絞り出してよんだのだから、余り笑ふて貰ひますまいかい』
『エー、下手でも上手でもよい。日の出神のことを歌ふのだよ』
 曲彦は、

『日出づる国の御空を立出たる
  お寅婆さまは目から日の出の神となる』

『何といふバカだらうかな。エーエー仕方がない、何事も人を力にするな、杖につくなと神様がおつしやつた筈だ。ドレ私が自ら詠んでみませう……

 烏羽玉の暗をてらしてさし上る
  日の出神の光尊し

と、かういふのだよ』
『あなたのいふ日の出神さまは日天さまのこつちやございませぬか、チツと可笑しいぢやございませぬかい』
お寅『コラ曲彦、よく聞きなさい。この世界は元は一天さまがお造り遊ばしたのだ。そして一天様のお子様に日天月天とあるのだ。それを御三体の大神といふのだ。しかし月天さまといふのは盈虧のあるお月様だないよ。月天が行きましたかな。次が鍾馗さまの霊、その次が東方朔の身魂、この五つを合せてこの世を五苦楽といふのだ。大の字の端々に○をつけて御覧なさい、ヤツパリ五つになりませうがな』
『末代日の王天の大神さまやユラリ彦さま、ミロク成就の大神さまはどうなつたのですか。東方朔なことをおつしやいますな。それでも正気でおつしやるのですか。日天月天が行きませぬワイ。オツホヽヽヽ』
『日の出島の言葉とは此処の言葉は違ふから名を変へたのだよ。英語を使ふ国へ来たら英語で言はなならぬからなア』
『ヘーエ、それでも英語ですかいな、曲彦には合点が承知しませぬワ』
『エーエ、ゴテゴテいひなさるな、サア一つ守宮別さまも歌ひなさい』
『私は英語で一つ歌つてみませう。極簡単によく分るやうにいひますから、気をつけて聞いて下さいや……
ヂヤパニース、セウホクザンノ、ヤンチヤアバーサン、オー、トラワー、キンモーキウビニー、ダー、マサレテー、ウミヤマヲコエ、ココマデヤツテキタノワー、カワイ、ソー、ダゾヨー、オレモ、スバールハカセニアウテ、ニセモノトイフコトガワカリタノダゾヨ、ソレデアイソガツーキターダカラ、ハライセニサケデモノンデヤロート、オモツテイルノダー、アータ、アホラシ、バカニ、シラレ、タゾヨ、イヒ、イヒヽヽヽヽ、あゝ英語の歌も一寸六つかしいワイ』
『コレ、守宮さま、人が知らぬかと思ふて何といふ悪口をいふのだい。ヘン、そんな英語位分つて居りますぞや。私だつてその位の英語は立派に使つてみせますぞや。お前さまはヤケになつて酒を呑むと云つただらう。呑むと云つたつて、お金がなければ呑めますまい。チヤンと私が懐にしめこみてゐるのだから、一合づつ呑まして上げやう。お前さまに酒を呑ますと、泥に酔ふた鮒のやうになつてチツとも間に合はぬからなア…………エー気分が悪うなつて来た。ともかくエルサレムのどつかで宿をとることにせうかい………皆さま、ついて来なされや』
と肩や尻をプリンプリンとふりながら不機嫌な面して山を降り行く。

(大正一二・七・一三 旧五・三〇 松村真澄録)



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