出口王仁三郎 文献検索

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物語63-1-61923/05山河草木寅 テルの里王仁三郎参照文献検索
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第六章 テルの里〔一六一三〕

 夜は烏の声にカラリと明け放れた。老人夫婦を初め、美人のブラヷーダは早朝より花園の手入れをし、門を掃きなどして、アスマガルダの船をもつて帰つて来るのを待つて居る。伊太彦を神の告によつてブラヷーダの夫とした事の喜びを早く兄に告げて悦ばせたいと一時千秋の思ひであつた。伊太彦も肝腎の船がないので、心ならずも待つより仕方がなかつた。涼しい森林の中に建てられた新宅に主客六人は車座となり、果実の酒を呑みながら、嬉々として謡ひ舞ひなどして、兄の帰るを待つて居る。爺さまのルーブヤは先づ第一に神に感謝しかつ謡ひ初めた。

『空照り渡る月の国  スダルマ山の南麓に
 伊都の鏡をのべしごと  広く浮べるスーラヤの湖
 その辺りなるテルの里  ルーブヤの家にも
 常世の春は来りけり  吾は元より三五の
 神の教を朝夕に  つかへ守りし信徒ぞ
 此処は名に負ふバラモンの  神の教の茂き国
 三五教と名乗りなば  忽ち醜の司等が
 刃の錆となり果てむ  卑怯未練と知りながら
 三五教の信徒と  名乗りも得せずバラモンの
 醜の教に信従し  時待ち居たる苦しさよ
 この里人も古ゆ  三五教に身を奉じ
 仕へまつりしものなれど  醜の猛びの強ければ
 止むを得ずして醜道に  仕へまつりし哀れさよ
 それゆゑ兄のアスマガルダにも  年頃なれど若草の
 妻さへ持たさず三五の  神の御前に朝夕に
 声をひそめて祈りつつ  イドムの神の御計らひ
 待つ折もあれ三五の  神の司の伊太彦が
 嬉しく此処に現れまして  吾子娘のブラヷーダ
 妻といたはり慈み  給はむ事の御誓ひ
 聞くにつけても有難く  枯木に花の咲く心地
 老の涙も漸くに  歓喜の涙と変りけり
 あゝ惟神々々  神の恵のいや深く
 大御稜威の弥高く  限り知られぬ喜びの
 心勇みて大前に  感謝し仕へ奉る
 朝日は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 星落ち海は涸るるとも  三五教の御教は
 孫子に伝へて放れじと  忍びし事の甲斐ありて
 一度に開く梅の花  いと香ばしく薫る代の
 今日の生日ぞ目出たけれ  あゝ惟神々々
 御霊幸倍ましませよ』  

 伊太彦はまた謡ふ。

『吾は伊太彦宣伝使  玉国別の師の君に
 祠の森より仕へ来て  諸の功を現はしつ
 スダルマ山の麓まで  来りて見れば吾体
 その面影も若々と  緑の色と輝きぬ
 はて訝かしやと思ふ間に  カークス、ベースの両人に
 夏木茂れる道の辺に  巡り遇ひてゆスーラヤの
 山にかくれしウバナンダ  ナーガラシャーのかくしたる
 夜光の玉のありと聞き  伊都の言霊打ち出だし
 竜神達を言向けて  夜光の玉を授かりつ
 珍の聖地のエルサレム  黄金山の神館に
 奉らむと勇み立ち  二人に間道教へられ
 緑滴るテルの里  スーラヤ湖水の磯端に
 来りて見れば摩訶不思議  木花姫の再来か
 但しは神代を松代姫  容貌麗しきブラヷーダ
 姿やさしき姫君に  玉の御声をかけられて
 胸轟きし愚かさよ  かくなる上は伊太彦も
 ただ惟神々々  神の経綸と畏みて
 ブラヷーダ姫を娶りつつ  千代に八千代に玉椿
 赤き縁を結びつつ  神の大道に仕ふべし
 玉国別の師の君も  この消息を知りまさば
 必ず喜びたまふべし  あゝ惟神々々
 神に誓ひて伊太彦が  心の岩戸押し開き
 思ひの丈を述べまつる  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  仮令大地は沈むとも
 誠一つを立て通し  ルーブヤ父上母上の
 バヅマラーカによく仕へ  ブラヷーダをいつくしみ
 三五教の御教を  月の御国は云ふも更
 四方の国々隈もなく  伝へまつりて大神の
 御前に凱申すべし  あゝ惟神々々
 守らせたまへ三五の  皇大神の御前に
 畏み畏み願ぎまつる』  

 バヅマラーカはまた謡ふ。

『待ちに待ちたる文月の  今日は十まり二つの日
 神素盞嗚の大神の  瑞の御霊の幸はひて
 千代の喜び来りけり  三五教の伊太彦よ
 愚なれども吾娘  ブラヷーダ姫を憐みて
 千代もかはらぬ宿の妻  娶らせたまへ相共に
 鴛鴦の衾の睦じく  神にならひて岩窟を
 押して開くてふ神業に  清けく仕へさせたまへ
 吾は老木の身なれども  汝が命の来りしゆ
 心勇みて何となく  嬉しく楽しくなりにけり
 汝が命は天津日の  元津国より下ります
 日の出の神によく似たり  テルの里にも春は来て
 永久の花さく代となりぬ  あゝ惟神々々
 三五教の皇神の  深き恵を今更に
 喜び感謝し奉る  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  仮令大地は沈むとも
 これの赤縄は変らまじ  あゝ惟神々々
 御霊の恩頼を祝ぎまつる』  

 ブラヷーダはまた謡ふ。

『実に有難き今日の日は  天の岩戸の開けたる
 常世の春の心地なり  天の河原に棹さして
 天降りましたる彦星の  厳の御顔伏し拝み
 蕾の花も露を得て  今や開かむ時は来ぬ
 吾父母よ背の君よ  吾赤心を憐みて
 常磐に堅磐に恵みませ  二人の親によく仕へ
 兄の言葉に背かずに  吾背の君と諸共に
 スーラヤ山に立ち向ひ  八大竜王の随一と
 世に聞えたるウバナンダ  ナーガラシャーを言向けて
 皇大神の御前に  凱あげて功勲を
 千代に八千代に伝へなむ  恵ませたまへ惟神
 神素盞嗚の大神の  御前に感謝し奉る
 この世を造りし神直日  心も広き大直日
 ただ何事も人の世は  直日に見なほし聞直し
 三五教の御教を  伊太彦司の背の君と
 心を合せ力をば  一つに固めて八十の国
 八十の島々隈もなく  開き伝へむ門出を
 守らせたまへ惟神  畏み畏み願ぎまつる』

 カークスはまた謡ふ。

『スダルマ山の森林の  辺に住めるカークスは
 神の恵に守られて  伊太彦司と諸共に
 常世の花咲くテルの里  ルーブヤ館に立ち向ひ
 思ひも寄らぬ待遇しに  与りました有難さ
 それのみならず伊太彦の  神の司はブラヷーダ
 姫の命の背となりて  いとも尊き御教を
 世界に開きたまはむと  スーラヤ山に立ち向ひ
 功を立てむとなしたまふ  神力無限の宣伝使
 伊都の司の御伴と  仕へ奉りし吾々は
 天にも登る心地して  神の御稜威を感謝しつ
 心の限り身の限り  この世のために尽すべき
 嬉しき身とはなりにけり  三五教の大御神
 罪に汚れし身なれども  大御心に見直して
 赦させたまひ吾々を  空前絶後の神業に
 使はせたまへ惟神  御前に感謝し奉り
 ルーブヤ館の喜びを  言祝ぎまつり願ぎまつる
 あゝ惟神々々  御霊幸倍ましませよ』

 ベースはまた謡ふ。

『目出度い目出度いお目出度い  枯木に花は咲き出でぬ
 梢に深く包まれし  無花果さへも今は早
 開き初めたる優曇華の  目出度き春となりにけり
 スーラヤ山の宝玉を  神の守りに手に入れて
 吾一生を安楽に  暮さむものと思ひしは
 今に至りてつくづくと  省みすれば恥かしや
 いざこれよりは伊太彦の  珍の司に従ひて
 赤き誠の心もて  大神業に仕ふべし
 神の御ため世のために  ナーガラシャーの宝玉を
 請取るならば難はなし  吾身の欲に搦まれて
 その宝玉を得むとして  尊き命を召されたる
 人は今まで数知れず  実にもうたてき次第なり
 あゝ惟神々々  神の大道を生々に
 悟りそめたる吾々は  最早昨日の人ならず
 神の恵に包まれし  尊き神の御子ぞかし
 あゝ有難し有難し  ルーブヤさまやバヅマラーカ
 ブラヷーダーのお姫さま  何卒宜敷く願ひます
 一時も早くアスマガルダ  兄の命の帰りまし
 この有様を臠はし  共に喜び手を引いて
 玉の御船をかざしつつ  伊太彦司に従ひて
 スーラヤ山に登る日を  指折り楽しみ待ちまする
 あゝ惟神々々  御霊幸倍ましませよ』

ルーブヤ『とざされし天の岩戸も開くてふ
  楽しき春は吾家に来りぬ』

バヅマラーカ『待ち佗し道文月の今日こそは
  瑞の御霊の恵あまねし』

伊太彦『皇神の経綸の綱に操られ
  縁の糸を結びけるかな』

ブラヷーダ『待ち佗し神の司の背の君を
  与へられたる吾ぞうれしき』

カークス『かかる代に生れ遇ふ身の嬉しさは
  常世の春の心地するかな』

ベース『如何にして称へむよしも無きほどに
  神の恵の尊くなりぬ』

(大正一二・五・一八 旧四・三 於教主殿 加藤明子録)



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