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原著名出版年月表題作者その他
物語60-2-71923/04真善美愛亥 方便王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
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場面:

あらすじ
全員、三五教に帰順する。
名称


 
本文    文字数=11332

第七章 方便〔一五三二〕

 新に建てられたアヅモス山の社の前には、アキス、カールにワードの役を命じおき、バーチルは玉国別一行その他と共に喜び勇んで、一先づ館へ帰る事となつた。スマの里人は老人少女を聖地に残し、玉国別一行を見送つて、バーチル館に従ひ行く。
 元来スマの里は何れも山野田畠一切、バーチルの富豪に併呑され、里人は何れも小作人の境遇に甘んじてゐた。しかしながら日歩み月進み星移るに従ひて、彼方此方に不平不満の声が起り出し、ソシァリストやコンミュニスト等が現はれて来た。中には極端なるマンモニストもあつて、僅かの財産を地底に埋匿し、吝嗇の限りを尽す小作人も現はれてゐた。しかるにこの度、アヅモス山の御造営完了と共に、一切の資産を開放して郷民に万遍なく分与する事となり、郷民は何れも歓喜して、リパブリックの建設者として、バーチル夫婦を、口を極めて賞揚する事となつた。俄にスマの里は憤嫉の声なく、各和煦の色を顔面に湛へて、オブチーミストの安住所となつた。
 サーベル姫は村人の代表者を十数人膝元に集めて、一切の帳簿を取出し、快くこれを手に渡し、自分は夫と共に永遠に、アヅモス山の大神に仕ふる事を約した。ここにまたもや郷民の祝宴は盛大に開かれ、夫婦の万歳を祝し合うた。
 さて玉国別一行はバーチルの居間に請ぜられ、各歓を尽して、尊き神の御教を互に語り合ひつつ、嬉しくその日を過ごした。
チルテル『玉国別様にお願ひがございます。私もこの通り菩提心を起し、一切の世染を捨て、惟神の大道を遵奉し奉る嬉しき身の上となりましたのも、全く貴師の御余光でございます。就ては宏遠微妙なる御教理も承はりたく、且また自分の歓びを衆生に分ち、神業の一端に奉仕したく存じて居りますから、三五教式の宣伝方法を御教示願ひたいものでございます』
玉国別『それは誠に結構な思召、玉国別も歓喜の情に堪へませぬ。左様ならば吾々の大神様より直授された宣伝方法に就て、少しばかり御伝へを致しませう。

 神の恵を身に禀けて  世人を救ひ助けむと
 四方に教を開くなる  至仁至愛の神司
 たらむとすれば何時とても  心を安く穏かに
 歓喜の情を湛へつつ  蒼生に打向ひ
 幽玄微妙の道を説け  清浄無垢の霊地にて
 座床を造り身を浄め  塵や芥を排除して
 汚れに染まぬ衣をつけ  心も身をも清くして
 始めて宝座に着席し  人の尋ねに従ひて
 極めて平易に道を説け  比丘や比丘尼や信徒や
 王侯貴人さまざまの  前をも怖ぢず赤心を
 尽して微妙の意義を説き  面貌声色和らげて
 人の身魂をよく査べ  因縁比喩を敷衍して
 天地の道理を説きさとせ  人は神の子神の宮
 善言美詞の言霊を  一人も嫌ふ者はない
 もし聴衆のその中に  汝が説を攻撃し
 或は非難するあれば  吾身を深く省みよ
 神にかなはぬ言霊を  心の曲の汚れより
 不知不識に発せるを  必ず覚悟し得るならむ
 百千万の敵とても  ただ一言の善言に
 感じて忽ち強力の  神の味方となりぬべし
 仮令数万の吾部下を  味方となして誇るとも
 ただ一言の悪言に  感じて忽ち怨敵と
 掌覆す如くなる  この真諦を省みて
 必ず過つ事勿れ  ただ何事も世の中は
 すべて善事に宣り直し  愛の善をばよく保ち
 信の真をばよく悟り  しかして後に世の人に
 真の道を説くならば  如何なる外道の曲人も
 決して反くものでない  誠一つは世を救ふ
 神の教は目のあたり  現はれ来る摩訶不思議
 すべて天地は言霊の  御水火によりて創造され
 また言霊の御水火にて  規則正しく賑しく
 治まり栄ゆるものぞかし  あゝ惟神々々
 真善美愛の神の道  学ばせ玉へバラモンの
 軍に仕へし諸人よ  玉国別の神司
 心の岩戸を押開き  茲に一言宣り申す
 あゝ惟神々々  神の授けし言霊の
 厳の伊吹ぞ尊けれ  旭は照る共曇る共
 月は盈つ共虧くる共  大三災の来る共
 神に受けたる言霊を  清く涼しく宣るならば
 すべての災忽ちに  雲を霞と消え失せむ
 守らせ玉へ言霊の  善言美詞の太祝詞
 心を清め身を浄め  その行ひを清くして
 厳の言霊宣るなれば  雲井に高き天界の
 皇大神もエンゼルも  地上に現れます神々も
 蒼生も草や木も  その神徳を慕ひつつ
 これの教を守るべし  偉大なる哉言霊の
 皇大神の御活動  仰ぎ敬まひ奉れ
 仰ぎ敬ひ奉れ』  
チルテル『バラモン教の神柱  大黒主に従ひて
 左手にコーラン捧げつつ  右手に剣を握りしめ
 折伏摂受の剣として  外道の道を辿りつつ
 今まで暮し来りしが  玉国別の師の君に
 誠の道を教へられ  布教伝道の方便を
 いと明かに授けられ  心の暗も晴れ渡り
 旭の豊栄昇る如  身も健かになりにけり
 いざこの上は真心の  限りを尽して愛善の
 徳を養ひ信真の  覚りを開き詳細に
 一切衆生を救済し  天地の御子と生れたる
 その本分を尽すべし  あゝ惟神々々
 三五教を守ります  厳の御霊や瑞御霊
 玉照彦や玉照姫の  雄々しき聖き御柱に
 従ひ奉り八十の国  八十の島々隈もなく
 神の教の司とし  沐雨櫛風厭ひなく
 神の御ため世のために  所在ベストを尽すべし
 守らせ玉へ惟神  神の御前に赤心を
 捧げて祈り奉る  アヅモス山の宮司
 バーチル夫婦も今よりは  聖き尊き三五の
 教を守り玉ひつつ  東の宮と西の宮
 心に隔つる事もなく  いと忠実に朝夕に
 仕へ玉はれ惟神  神の光に照されて
 バラモン軍に仕へたる  チルテル司が願ぎ奉る
 あゝ惟神々々  御霊幸ひましませよ』

カンナ『キャプテンの司の君に従ひて
  吾も進まむ神の大道へ』

ヘール『久方の天津御神の音信を
  今目のあたり聞くぞ尊き』

チルナ姫『背の君は全く人となりましぬ
  心に棲める曲のはなれて』

チルテル『わが魂はさまで悪しくは思はねど
  寄りくる曲を防ぎかねつつ。

 力なき吾魂も今は早や
  千引の岩の動かずなりぬ』

チルナ姫『背の君の珍の言霊聞こしより
  心の曲も消え失せにけり』

真純彦『師の君の初めて宣らす言霊を
  聞きし吾こそ嬉しかりけり』

三千彦『斎苑館立出で月日数重ね
  初めて聞きし吾師の言葉』

伊太彦『一と言へば十百千を悟るてふ
  身魂ならでは詮すべもなし。

 一聞いて直ちに島に打渡り
  功績を立てし猩々舟哉』

三千彦『すぐにまた鼻をば高め足許に
  眼失ひ躓くなゆめ』

伊太彦『皇神の選りに選りたる吾魂は
  いかでか汝に比ぶべきやは』

真純彦『うぬぼれて深谷川に落ち込むな
  慢心すればすぐに躓く』

伊太彦『吾とても誇る心はなけれ共
  魂はいそいそ笑み栄え来て』

デビス姫『何事も人に先立つ伊太彦の
  神の使のいとど畏き』

チルテル『伊太彦の得意や実にも思ふべし
  獣の皮着し人を迎へて』

カンナ『獣とは云へどこの世の人草に
  優る霊を持てる尊さ』

ヘール『かくまでも人の心の曇りしかと
  思へばいとど悲しくなりぬ』

アンチー『アヅモスの山に棲まへる鳥翼
  人にあらねど人を見下す。

 人々の頭の上を悠々と
  舞ひて遊べる鷹ぞ恨めし』

バーチル『何事も天地の神の御心に
  任すは人の務めなるらむ』

サーベル姫『天地の神も諾ひ玉ふらむ
  心清けきこの人々を』

テク『朝夕によからぬ事のみ漁りつつ
  暮し来りし吾ぞうたてき。

 さりながら恵も深き大神の
  御手に救はれ勇む今日かな』

ワックス『テルモンの山を立出で今此処に
  仇と思ひし人と並びぬ。

 仇とのみ思ひし事は夢となり
  今は救ひの神と見る哉』

エキス『相共に悪しき事のみ謀り合ひ
  神を汚せし事の悔しさ。

 町人の前に恥をば曝されて
  尻叩かれし事ぞ恥かし。

 今日よりは心の駒を立直し
  進みて行かむ神の大道に』

ヘルマン『吾もまた善からぬ友に誘はれ
  ワックスを責めし事の愚かさ。

 三五の神の司を殺さむと
  大海原に待ちし愚かさ。

 皇神の厳の力におぢ恐れ
  今は全く猫となりけり』

エル『神館小国別の身失せしと
  思ひて世人欺きし吾。

 くさぐさの罪を重ねし吾なれど
  救ひ玉ひぬ誠の神は。

 スメールの御山に清く現れませる
  神の御稜威を仰ぐ尊さ。

 いかならむ魔神の襲ひ来るとも
  今日の心は千代に変へなむ』

サーベル姫『吾こそは猩々姫の霊なり
  玉国別に願言やせむ。

 天王の宮の御跡の石蓋を
  開けて竜王救ひ玉はれ』

玉国別『汝が願諾ひまつりこれよりは
  アヅモス山の神を救はむ』

 かく互に歌を取かはし、十二分の歓喜を尽し、玉国別は一同を従へ再び天王の古宮の床下を調査すべく、夜の明くるを待つて進み行く事となつた。

(大正一二・四・七 旧二・二二 於皆生温泉浜屋 松村真澄録)



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