出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語59-4-231923/04真善美愛戌 鳩首王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
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あらすじ
ヤッコス他、疑心暗鬼にかられる。
名称


 
本文    文字数=8677

第二三章 鳩首〔一五二三〕

 ヤッコス、ハール、サボールの三人は、伊太彦丸の片隅に小さくなつて不安の面をさらしながら、コソコソ密談をやつてゐる。
ヤッコス『オイ両人、此奴アちと怪しいぞ。俺達を置去にして行きやがつた宣伝使の片われ伊太彦が大将になつて、これだけ沢山の船を拵へ、猩々の一族を引率れ帰るに就いては何か深い企みがあるに違ひない。猩々の前で、俺等を一つ掻きむしる真似でもせうものなら、あれだけの猩々が一所へ固まつて来て、真似の上手な奴だから、掻きむしり、結局にや一つよりない命まで取つてしまふかも分らぬぢやないか。これを思へば俺はモウ酒を呑む気にもなれない、汝等どう思ふか』
ハール『ナアニ、三五教は無抵抗主義、博愛主義だと聞いてるから、俺達三人位殺した所で、世界の米が安うなるといふ訳もなし、悪魔が根絶するといふ道理もないから、滅多にそんなこたア致すまい。マア安心したがよからうぞ。俺は何だか助けてくれるやうな気がするのだ』
サボール『イヤ、さう安心も出来まい。どつかの磯端へ伴れて行つて猿攻に会はす積だらう。三五教といふ奴ア、ズルイから、自分が手を下して人を殺せば天則違反になるのを虞て、猿公の手をかり、俺達三人をバラモンとやる積だらう。一層の事、今の内に先んずれば人を制すだ。伊太彦の素ツ首を捻ぢ切つてやらうでないか。さうすれば猿の奴真似しやがつて、どの船もこの船も船頭の首を捻ぢ切るだらう。猩々は何と云つても俺達と仮令三日でも同棲して居た馴染もある。また大蛇に呑まれかけた時に応援もやつたし、恩を知つてる獣だから、俺達の危難を見て救はぬといふ道理がない。しかし猿といふ奴、先にやつた者の真似をするのだから、遅れた方が敗だ、一つ決行せうぢやないか』
ヤッコス『まてまて、伊太彦一人ぢやない、この船にはアンチーといふ力強が乗つてゐるから、ウツカリ手出しをせうものなら、それこそ窮鼠却て猫を咬むやうな破目になるかも知れぬ。何とかかとか云つて、沢山酒を呑ませ機嫌を取つて酔ひ潰し、寝鳥の首を締めるやうに甘くそこはやらかそぢやないか』
ハール『お前達両人はどこまでも人を疑ふのか。疑心暗鬼といつて、自分の心の鬼が自分を責めるのだ。何程三五教の魔法使だとて、おとなしい者を苦しめるこたア出来ぬからのう。マアそんな取越苦労をするよりも大自在天様を御祈願した方が安全かも知れぬぞ』
ヤッコス『あ、ともかく俺は険難で堪らない。しかしながらサボールの言つた通り、一方は神力無双の宣伝使、一方は力強だから、先づ甘く機嫌を取り酒に酔ひつぶし、その上決行しよう。それが最良の手段方法だ。オイ、サボール、汝常から声自慢だから、一つ慄ひつくやうな美声を出して唄つてみよ。さうすりやキツと伊太彦が気を許すに違ひない』
 サボールは首を三つ四つ縦にしやくりながら、細い涼しい声で、船の隅の方から唄ひ出したり。

『三千世界の世の中に  尊いものが四つある
 第一番に尊きは  豊栄昇るお日イ様
 次には夜を守ります  円満清朗のお月様
 大地を造り固めたる  三五教の守り神
 大国常立大御神  この神様の御恵で
 梵天帝釈自在天  大国彦の神様も
 この世に生きてござるのだ  モ一つ尊い御方は
 三五教で名も高き  この船守る伊太彦司
 こんな尊い御方と  一つの船に乗せられて
 鏡のやうな海原を  帰つて行く身は有難い
 至仁至愛の神様は  禽獣虫魚の隔てなく
 皆それぞれに生命を  一日なりと永かれと
 守らせ玉ふぞ有難き  まして天地の神様の
 大経綸に仕ふべき  神の鎮まる生宮を
 憐れみ玉はぬ事やある  モシ神様が人間を
 仮令猩々の手を借つて  悩め玉ひし事あるも
 ヤツパリ愛の本体が  根本的に崩解し
 神の資格がゼロとなる  こんなみやすい道理をば
 悟らせ玉はぬ事あろか  かくも仁慈の神様に
 朝な夕なに赤心を  捧げて仕へ奉ります
 三五教の神司  中にもわけて美しき
 身魂を持たせ玉ひたる  伊太彦司は神様の
 珍の化身と人が言ふ  こんな尊い神人に
 守られ帰る吾々は  大舟に乗つた心地して
 先の事をば案じずに  結構なお神酒を頂いて
 猩々さまの御伴を  さして貰ふがよからうぞ
 これこれモウシ宣伝使  三五教の神様の
 深き恵に絆されて  貴方の顔を見るにつけ
 高天原の霊国の  天人のやうに思ひます
 これを思へばバラモンの  教を守る神さまは
 月とスツポン雲と泥  天地のけじめがあるやうに
 何だか思へてなりませぬ  これから素張りバラモンの
 教を捨てて三五の  誠の信徒となりまする
 スパイの役を勤めたり  片商売に海賊を
 やつて来ました吾々は  心の底から悔悟して
 貴師のお弟子になりまする  何程罪があるとても
 天地の神の御心を  思ひ出されて吾々を
 必ず殺して下さるな  最早私は悪神の
 影さへとめぬみづ御霊  鏡の如き魂と
 俄に研き上げました  貴師の清き魂で
 私の心の奥底を  隅から隅まで透視して
 疑晴らし三人を  何卒御助け下されや
 梵天帝釈自在天  オツトドツコイこら違うた
 天地を造り固めたる  天の祖神三五の
 大国常立大御神  その外百の神達の
 御前に畏み願ぎ奉る  旭は照る共曇る共
 月は盈つ共虧くる共  仮令大地は沈む共
 一旦改心した上は  決して元へは返らない
 天地の神も御照覧  安心なさつて沢山と
 結構なお神酒をあがりませ  さうして下さる事ならば
 吾等三人一時に  直接行動ドツコイシヨ
 直接間接神様に  誠を捧げまつりませう
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましませよ』

伊太彦『バラモンの醜の司が村肝の
  心いらちて疑ひて三人。

 吾心すかして三人バラモンの
  醜の司よ心安かれ』

ハール『有難しその御言葉を聞きしより
  心も広くゑみ栄えぬる』

ヤッコス『疑の雲霧晴れて和田の原
  波に揺られて帰る嬉しさ。

 人は皆尊き神の生身魂
  悩むる人は鬼か悪魔ぞ。

 吾れもまた鬼や大蛇とよばれつつ
  世人なやめし事を悔ゆなり』

アンチー『こそこそと船の小隅に集まりて
  疑三人酒に四人。

 伊太彦の神の司よ心せよ
  うはべを飾る人の心に』

伊太彦『何事もただ惟神々々
  神の恵に任すのみなり。

 和田の原五百重の波を辷りつつ
  心もスマの岸を目当に。

 帰り行く猩々舟は勇ましく
  常世の春を齎し帰るも』

ハール『伊太彦の道の司は神なれや
  その言霊に心栄えぬ』

ヤッコス『何事も伊太彦さまの御心の
  御船の舵に任すのみなり。

 さりながら何時荒風の吹きすさみ
  船覆へす事のこはさよ』

ハール『疑の心は暗の鬼となる
  早く晴らせよ胸の曇を』

(大正一二・四・三 旧二・一八 於皆生温泉浜屋 松村真澄録)
(昭和九・一二・一 王仁校正)



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