出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語59-4-191923/04真善美愛戌 猩々舟王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:

あらすじ
伊太彦を隊長として、333匹の猩々を20隻の舟で迎えにゆく。
名称


 
本文    文字数=6631

第一九章 猩々舟〔一五一九〕

 玉国別一行は晩餐を与へられ、再び神に拝礼し、寝に就かむとする時しも、サーベル姫は言葉静かに玉国別の耳に口を寄せ、
サーベル『モシ先生様、猩々島に残しおかれた三人の男を助けるため、船を出して頂けませぬでせうか、どうか神様に御願ひ下さいまして、御差支なくば彼等三人を助けてやりたうございます。そしてモ一つの御願ひは、天王の森に一日も早く二棟の宮様を建築し、一方は三五の大神様、一方はバラモンの大神様を鎮祭して頂く事は出来ませぬか』
玉国『成程、それはいいお考へでございます。しかしあの猩々ケ島の沢山の眷族は、元はアヅモス山のお宮に仕へてゐたもののやうに直覚致しましたが、差支なくば、沢山の船を用意し、一匹も残らず天王の森へ伴れて帰つてやりたいと思ひますが、如何でございませうかな』
 サーベル姫は俄にこの言葉を聞くより、嬉し相に飛び上り、『キヤツ キヤツ』と怪しき声を立てながら両手を合せ、
サーベル『妾は猩々姫でございます。沢山の子や孫が残してございますから、そればかりが気になつて、夜もロクに寝られませぬ。ようまア言うて下さいました。どうぞ神様のお許しがあれば、一匹も残らず此方へ迎へさして頂きたうございます』
玉国『ヤアそれは尚々結構です。左様ならば明日早く船の用意を致しまして、村人に命じ迎ひ取りにやりませう』
サーベル『どうか貴師の御弟子を一人か二人、行つて頂く事は出来ませぬか』
 伊太彦は側に居つて、小耳に挟み、
伊太『先生、その御用は伊太彦が承はります。三千彦さま夫婦はどうかお館にしばらく逗留して、お宮の普請の設計図でも書いて貰いませう。そして先生はしばらく村人に布教をして頂きまして、真純彦さまがその間を補ふといふ都合に願ひますれば誠に結構ですがなア』
玉国『イヤ、お前のやうな慌者は絶対に許す事は出来ませぬ。三千彦夫婦に願ひませう』
伊太『オイ、三千彦夫婦、あんな、よく荒れる海の上、女房のある者が行くものぢやないよ。私のやうな独身者なら仮令死んでも女房の悔む心配もいらず、大変都合が好い。そこは俺にお株を譲つて貰いたいものだなア』
三千『先生のお許しさへあれば、どうでもしてやる』
伊太『先生、是非私に御下命を願ひます』
玉国『ウン、ヨシ、それならお前に一任せう。相当の人物をお前から選むで伴れて行つたがよからう』
伊太『イヤ、有難い、抃舞雀躍だ、エヘヽヽヽ。サア、これから北極探険隊だ。オイ、アンチーさま、お前は副艦長だ。アキス、カールの両人は分隊長だ。テクの番頭さまは家事万端を管掌せなくてはならないから、出陣は許されない。サア、アキス、カール、両人さま、屈強な人間を選抜して貰ひませう。猩々先生を迎へに行くのだから、猩々潔白の霊をよりぬいて伴れて行くやうにして貰ひませう。それから潰れかけたボロ船があれば一艘つもりをして貰ひたい。此奴ア、ヤッコス、ハール、サボールの人一化九を乗せる船だ。アハヽヽヽ』
アキス『そんなボロ船は一隻もございませぬよ』
伊太『アヽ仕方がない。人間の姿をしてゐるのだから、中でも堅牢な船を選むで持つて行くやうにしてくれ、一体猩々の数は何人さまほどゐられるのだらうな』
サーベル『ハイ、三百三十三匹だと思つて居ります』
伊太『成程、猩々潔白の身魂が三百三十三人、バラモン、ヤッコスのなまくら者のサボール屋の人の頭をよくハールといふ人一化九が三匹、アキス、カールさま、抜目なく、至急用意して貰ひませう。サアいよいよ伊太彦も三百三十三人並に三匹の総司令官となつたのだ、アハヽヽヽ。イヤ先生、どうも有難うございます。これが私の登竜門、出世の門口、移民会社の社長となつて、大活動を致します。どうぞ巧く凱旋致しましたら花火を打上げ、里人一同を浜辺に整列させ、伊太彦万歳を唱へて下さいませ。これが何より吾々の楽みでございますから』

サーベル姫『伊太彦の教の君よ一時も
  早く出ませ吾子迎ひに』

伊太彦『これはまた不思議な事を聞くものだ
  猩々の群を吾子なりとは』

サーベル姫『からたまはよし猩々に生るとも
  霊は人に変らざりけり。

 今の世の人は獣の容器よ
  獣の中に人の魂あり』

玉国別『面白しサーベル姫の御言葉
  聞くにつけてもうら恥づかしきかな』

真純彦『人は皆獣の棲みかとなりはてて
  誠の人は影だにもなし。

 吾とても罪に汚れし獣の
  魂の棲家ぞ恥しき哉』

三千彦『恐ろしき八十の曲津の猛る世は
  人の身として立つ術もなき。

 それ故に人の心は鬼となり
  大蛇となりて世を渡るなり』

伊太彦『これはしたり三千彦司の世迷言
  神の宮居を獣と宣らすか』

デビス姫『背の君の宣らせ玉ひし言霊は
  人の皮着る獣の事よ。

 伊太彦の珍の司は神様よ
  人の中なる人の神なり』

伊太彦『いざさらばアキス、カールよアンチーよ
  用意召されよ猩々の船』

 これより伊太彦は夜も碌に眠らず、アキス、カール、アンチーを指揮し、船に熟練たる荒男を選抜し、船をキヨの港やその外附近の磯辺より集め来り、漸く二十艘の小舟をしつらへ、各酒樽を満載し、猩々の眷族を迎ふべく夜明くる頃までにすべての準備を整へた。

(大正一二・四・二 旧二・一七 於皆生温泉浜屋 松村真澄録)



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