出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語58-4-241923/03真善美愛酉 礼祭王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
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あらすじ
三五教とバラモン教の2つの神を祭って祭礼を行う。
祖霊祭について。
バラモン教と三五教の関係
名称


 
本文    文字数=11991

第二四章 礼祭〔一四九九〕

 愈祭典の準備にとりかかるべく三千彦、デビス姫、バーチル、サーベルの二夫婦は下男にも下女にも構はさず、せつせと神饌物の調理に熱中して居る。
三千『もし、バーチルさま、私はお察しの通り三五教のヘボ宣伝使ですが、バラモンの大神様の神饌を拵へるのは今が初めてでございますよ。何だか奥歯に物が、こまつたやうな気分が致しますわ。ハハハハハ』
バーチル『うつかりして居ましたが如何にも吾々は三五教の宣伝使に助けられ、また三五教の大神様の御神徳を感謝してる者でございますから、どうしても三五の神様の祭典を第一に致さねばなりませぬ。どうでせうか』
三千『さうですな。神様はもとは一株ですから、どちらにしても同じやうなものの神代からの歴史を考へて見ますと、三五教は国治立の大神様、その外諸々の神様から押籠められた方の神様で、大自在天様とは、人間同士なら敵同志のやうな者ですが、しかし神様のお心は人間の心と違つて寛大なもので、少しも左様な事に御頓着なく、大自在天様をお助け遊ばさうと思つて、バラモン教を言向和すために吾々をお遣はしになるのですからね。しかし私では到底決断がつきませぬから、一寸これからお師匠様に伺つて参ります』
バーチル『はい、それは有難うございます。序に先祖様の霊も三五教で祭つて頂きたうございますが、これも差支がないか伺つて来て下さいませぬか』
 三千彦は『承知致しました』とこの場を立つて玉国別の居間に打通り、バーチルがバラモン教を脱退し、三五教に入信し、三五の大神を祭つて貰ひたい事、並に祖霊祭を三五教にて営みたい事等の願を告げ、玉国別に対し先づ第一に祖霊祭に就いて教示を乞ふた。
三千『先生、人間は現世を去つて霊界へ行つた時は、極善者の霊身は直ちに天国に上りて天人と相伍し天国の生活を営み、現界との連絡が切れるとすれば、現界にある子孫は父祖の霊祭などをする必要は無いもののやうに思はれますが、それでも祖霊祭をしなくてはならないのでせうか。吾々の考へでは真に無益な無意義なことのやうに感じられますがなア』
玉国『何程天国へ往つて地上現人との連絡が断たれたと言つても、愛の善と信の真とは天地に貫通して少しも遅滞せないものである。子孫が孝のためにする愛善と信真の籠もつた正しき清き祭典が届かないと云ふ道理は決して無い。天国にあつても矢張り衣食住の必要がある。子孫の真心よりする供物や祭典は、霊界にあるものをして歓喜せしめ、かつその子孫の幸福を守らしむるものである』
三千『中有界にある精霊は何程遅くても三十年以上居ないといふ教を聞きましたが、その精霊が現世に再生して人間と生れた以上は、祖霊祭の必要は無いやうですが、かういふ場合でも矢張り祖霊祭の必要があるのですか』
玉国『顕幽一致の神律に由つて、例へその精霊が現界に再生して人間となり霊界に居らなくても、矢張り祭典は立派に執行するのが祖先に対する子孫の勤めである。祭祀を厚くされた人の霊は霊界現界の区別なく、その供物を歓喜して受けるものである。現世に生れて居ながら猶かつ依然として霊祭を厳重に行ふて貰ふて居る現人は日々の生活上においても、大変な幸福を味はふことになるのである。故に祖霊の祭祀は三十年どころか、相成るべくは千年も万年の祖霊も、子孫たるものは厳粛に勤むべきものである。地獄に落ちた祖霊などは子孫の祭祀の善徳に由つて、忽ち中有界に昇り進んで天国に上ることを得るものである。また子孫が祭祀を厚くしてくれる天人は、天国においても極めて安逸な生涯を送り得られ、その天人が歓喜の余波は必ず子孫に自然に伝はり子孫の繁栄を守るものである。何んとなれば愛の善と信の真は天人の神格と現人(子孫)の人格とに内流して何処迄も断絶せないからである』
三千『ウラル教や波羅門教の儀式に由つて祖霊を祭つたものは、各自その所主の天国へ行つて居るでせう。それを三五教に改式した時はその祖霊はどうなるものでせうか』
玉国『人の精霊やまたは天人なるものは、霊界に在つて絶えず智慧と証覚と善真を了得して向上せむことをのみ望んで居るものです。故に現界に在る子孫が最も善と真とに透徹した宗教を信じて、その教に準拠して祭祀を行つてくれることを非常に歓喜するものである。天人と雖も元は人間から向上したものだから人間の祖先たる以上は、仮令天国に安住するとも愛と真との情動は内流的に連絡して居るものだから、子孫が証覚の最も優れた宗教に入り、その宗の儀式に由つて、自分等の霊を祭り慰めてくれることは、天人及び精霊または地獄に落ちた霊身に取つても、最善の救ひと成り、歓喜となるものである。天国の天人にも善と真との向上を望んで居るのだから、現在地上人が最善と思惟する宗教を信じ、かつまた祖先の奉じて居た宗教を止めて三五教に入信した所で、別に祖霊に対して迷惑をかけるものでない。また祖霊が光明に向つて進むのだから決して迷ふやうな事は無いのだ。否却て祖霊はこれを歓喜し、天国に在つてその地位を高め得るものである。故に吾々現身人は祖先に対して孝養のために最善と認めた宗教に信仰を進め、その教に由つて祖先の霊に満足を与へ、子孫たるの勤めを大切に遵守せなくてはならぬのである。アア惟神霊幸倍坐世』
三千『はい、有難うございました。当家の主人も、それで安心致しませう。それから、も一つお尋ねがございますが、バラモンの神様をどういたしたらよろしいでせう』
玉国『祠の森の聖場でさへも御三体の大神様を初め大自在天様を祀つてあるのだから、別に排斥するに及ばぬぢやないか。今までこの家もバラモン神の神徳を享けて来たのだから、そんな薄情な事も出来まい』
三千『アヅモス山の聖地にはバラモン大自在天様のお宮が建つて居るさうですが、この際主人に吩咐けて祠の森のやうにお宮を建てさせ、あの式に大自在天様を脇に祀つたら如何でございませうか』
玉国『一度主人を呼んで来てくれ。宮を建てるとなると、さう軽々しくは行かぬから一応意見を聞いて見る積りだ』
三千『はい、承知致しました。直様呼んで参ります』
と、もとの神饌調理室に引返し、祖霊祭に関する玉国別の教示を伝へ、且……神霊奉斎に就いて師匠様がお尋ねしたいとおつしやるから一寸来て下さい……とバーチルを誘ひ、玉国別等の居間に帰つて来た。
玉国『あ、バーチルさま、貴方はアヅモスの森の天王様のお宮を、どうなさるお考へでございますか』
バーチル『はい、先祖代々お祀りして来たお宮様なり、また私の精霊が眷族として仕へて居つたのですから、今俄に三五教に這入つたと云つて直に祀り変へる事はどうかと考へます。これに就いては貴方様にゆるゆるお尋ね致したいと思つてゐました。先生のお考へは如何でございませうか』
玉国『私の考へとしてはアヅモス山の森林に新にお宮を二棟建造し、一方は三五の大神様、一方は今の天王様を奉斎し、さうして猩々ケ島に残つて居る小猿を、数十艘の船を用意して迎へ来り、序にバラモン組の三人も助けて帰るやうにしたいものでございます。それが神様に対しても、貴方の守護神に対しても最善の方法だと考へます』
バーチル『有難うございます。実の所は最前からどうぞさう願ひたいものだと、家内とひそびそ話をして居りました。あの小猿共は皆猩々姫の子でございますから、どうしても自分の手近に引寄せたいのは当然でございます。私も何だか猩々の親になつたやうな、妙な気分が致します。どうぞさうして下さらば、これに越したる喜びはございませぬ』
玉国『貴方の決心が定れば直様、その準備にかかる事に致しませう。しかしながら今日はただ大神様へ感謝の祭典をするばかりですから、三五の大神とバラモンの大神を並べて祭り、下男下女の端に至るまで参拝させておやりなさるがよろしうございませう』
バーチル『はい、何から何まで御親切なお気付け、有難うございます。

 人の親は猿より出でしと聞きつるに
  猿の親とぞなりにけるかな。

 さる昔遠き神代の古より
  きれぬ縁につながれし吾』

玉国別『天王の森に長らく仕へたる
  その神徳で人の宿かる。

 肉体はよし猩々と生るとも
  霊魂は清し神の御使』

バーチル『有難し宣り直したる師の君の
  言葉に妻も嘸勇むらむ。

 人猿と仮令世人は笑ふとも
  罪をとりさる神となりなむ』

 かく歌ひ慌ただしく神饌所に引返し、用意万端整へて茲に芽出度く感謝祭を執行する事となつた。玉国別は主人の乞によつて祭主となり、天津祝詞を奏上し、終つて感謝の歌を奉つた。

玉国別『朝日刺す夕日の照らすアヅモスの、 常磐堅磐の森の辺に、 弥永久に鎮まり玉ふ、 大国彦の大神の、 珍の使と仕へたる、 猩々彦の精霊の、 懸り玉へる館の主人、 バーチル司に代り玉国別の神司、 三五教の大御神、 バラモン教の大神の、 珍の御前に慎みて、 吾々一行は云ふも更、 バーチル初めアンチーが、 三年の憂きを凌ぎつつ、 漸くここに帰りけるは、 皇大神のお計らひと、 喜び敬ひ大御恵みの、 千重の一重にも報い奉らむとして、 山海河野種々の珍味を、 八足の机代に、 所狭きまで置き並べ、 神酒は甕の瓶甕の腹充て並べて、 御水堅塩大御饌奉る事の由を、 完全に委曲に聞召し、 これの館の人々を初め、 三五教の神司、 スマの里の人々を、 厚く守らせ玉へかしと、 大御前に摺伏して、 畏み畏み仕へ奉る  惟神霊幸倍坐世』
と歌ひ終り、感謝祭も無事に終了した。玉国別一行は美はしき閑静な離れ座敷を与へられ、海上の疲労を癒やすべく、師弟五人は足を伸ばして休養する事となつた。

(大正一二・三・三〇 旧二・一四 於皆生温泉浜屋 北村隆光録)



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