出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語58-1-41923/03真善美愛酉 銅盥王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
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あらすじ
トンク、タンクがワックス他を尻たたきで仕置き。三千彦、金たらいを尻につけてやる。
名称


 
本文    文字数=14021

第四章 銅盥〔一四七九〕

 タンクの会長は三千彦と相談の結果、悪酔怪を解散し神館の神殿に一同参拝し感謝祈願の祝詞を奏上し了つた。日は已に暮れて暗の帳はボトボトとテルモン山の麓より下ろされて来た。数百の会員並に町民一同はワックス以下の悪漢に誤魔化され、思はぬ暴動をつづけ大神の道に背きたる事を悔ひ、かつ懲戒のためワックス以下四人に笞を加へ追放せむ事を主張して止まなかつた。三千彦は種々言葉を尽し、その不合理を責た。しかしながらこの町の昔からの不文律、俄に破る訳には行かぬと云ふので三千彦も止むを得ず笞刑を許した。笞打つ役はトンク、タンクの二人が当つた。ワックスには一千の笞、その外の連中には五百づつの笞を加へて放逐する事となつた。四人は杭に後向きに繋がれ、竹の根節の笞にて力限りに打たれる事となつた。三千彦は暗夜を幸ひ、四人の尻に銅の金盥を括りつけ、素知らぬ顔して居た。タンク、トンク両人は少しも覚らず松明をドンドン焚きながらソロソロ笞を打ち初めた。一同は拍子をとつてこれに和す。銅の盥の上には着物がかかつて居るから何程松明の火が明くても容易に誰の目にもつかなかつた。タンクは笞を振り上げ一節歌つてはワックスの尻をピシヤと殴る。その度ごとにカンと妙な音がする。トンクはエキスの尻を目蒐けてピシヤと打つ。これまたカンと鳴る。

『テルモン山の神館  珍の聖地に仕へたる
 ヨーイ ヨーイ ドンと打て  カーン カーン
 アイタタアイタタアイタタツタ  家令の悴ワックスは
 古今無双の悪党者  エキス、ヘルマン、エルの奴
 うまく騙かし如意宝珠  館の宝を盗み出し
 ヨーイ ヨーイ ドンと打て  カーン カーン
 アイタタアイタタアイタタツタ  小国別の御夫婦に
 あらぬ難題塗りつけて  せつぱつまつたその挙句
 自分のラブした姫さまを  うまく手に入れ御養子と
 ならうと致した悪漢だ  ヨーイ ヨーイ ドンと打て
 カーン カーン  アイタタアイタタアイタタツタ
 この世に神のます限り  悪は何時までつづかない
 蜴のやうな面をして  色の恋のと何の事
 色と欲との二道を  かけた家令の小悴奴
 馬鹿を尽すもほどがある  ヨーイ ヨーイ ドンと打て
 カーン カーン  アイタタアイタタアイタタツタ
 此奴の尻はどうしてか  笞打つ度にカンカンと
 怪体な音がするぢやないか  面の皮まで厚い奴
 お尻の皮まで厚いのか  ヨーイ ヨーイ ドンと打て
 カーン カーン  アイタタアイタタアイタタツタ
 三千彦さまの神司  野蛮な事は止めにして
 助けてやれとおつしやつた  それも一応尤もだ
 さはさりながら昔から  きまつた所刑を今となり
 どうして廃止がなるものか  打たねばならぬ四人連れ
 お尻の皮が剥けるまで  ヨーイ ヨーイ ドンと打て
 カーン カーン  アイタタアイタタアイタタツタ
 こりやこりやワックス初めとし  エキス、ヘルマン、エルの奴
 もうかうなれば是非がない  十分覚悟を相定め
 お尻の肉が取れるまで  打つて貰つて俺等を
 今まで騙し苦しめた  罪の償ひするがよい
 ヨーイ ヨーイ ドンと打て  カーン カーン
 アイタタアイタタアイタタツタ  お前がここを去つたなら
 テルモン山の神館  宮町中は餅搗いて
 ポンポンポンと勇み立ち  平和にその日を送るだろ
 悪酔怪を組織して  吾等一同を抱き込み
 神の使の三千彦を  苦しめまつりお館を
 占領せむとの悪企み  いつまで神は許さむぞ
 ヨーイ ヨーイ ドンと打て  カーン カーン
 アイタタアイタタアイタタツタ  此奴のお尻は渋太いな
 観音さまでもあるまいに  カンカンカンと音がする
 余程因果な生れつき  家令の悴と生れ来て
 水平会や町民に  声を揃へて唄はれて
 笞刑の恥を曝すとは  憎いながらもお気の毒
 これも規則だ仕様がない  涙を呑んで辛抱せよ
 ヨーイ ヨーイ ドンと打て  カーン カーン
 アイタタアイタタアイタタツタ  ほんとに厄介な者だなア
 デビスの姫やケリナ姫  尊い尊いお姫様
 生命を助けて下さつた  求道居士の修験者
 狐に狸の化物と  うまく俺等を騙かして
 鳩の岩窟に放り込んで  夜な夜な自分が通ひ込み
 種々雑多と辞を設け  二人の姫の歓心を
 買つて天晴色男  鼻毛をよまれ涎くり
 目尻を下げて出でて行く  そのスタイルが見たかつた
 ヨーイ ヨーイ ドンと打て  カーン カーン
 アイタタアイタタアイタタツタ  二人のナイスに肱鉄を
 喰つたその上スマートに  腕をば咬まれ足噛まれ
 半死半生と成り果てて  血まぶれ姿の憐れさよ
 自業自得と締めて  町民一同の志
 きつい笞をば受けなされ  俺等もヤツパリ人間だ
 痛い苦しいその味は  決して知らぬ者ぢやない
 それでも以後の懲戒だ  涙を呑んで尻叩く
 止むに止まれず尻叩く  ヨーイ ヨーイ ドンと打て
 カーン カーン  アイタタアイタタアイタタツタ
 かうなりやお前も金盥  叩いたやうな音がする
 余程お尻が腫ただろ  痛いとて辛抱するがよい
 たつた五百や一千の  笞を受けてメソメソと
 吠面かわく奴があるか  お前も一度は団体の
 頭となつた男ぞや  男の中の男ぞと
 誇つてござつたワックスよ  それに従ふ三人連れ
 相も変らず無頼漢  お気の毒だがもうしばし
 規則通りにカンカンと  神妙に打たれて置きなされ
 万劫末代名が残る  ヨーイ ヨーイ ドンと打て
 カーン カーン  アイタタアイタタアイタタツタ
 悪酔怪の会長と  町民諸君に選まれた
 神力無双のタンクさま  此方の腕には骨がある
 あんまり強う叩かねど  力が充ちて居ると見え
 軟かい尻を叩くのに  カンカンカンと音がする
 こりやまたどうした事だらう  ヨーイ ヨーイ ドンと打て
 カーン カーン  アイタタアイタタアイタタツタ
 落選したるトンクさま  ヤツパリ俺と同じやうに
 竹の根節を振り上げて  エキスの尻を打叩く
 ヤツパリこれも腕力  備はり居ると見えまして
 打つ度ごとにカンカンと  怪体な音が響いてゐる
 尻観音か知らねども  何程カンカン云つたとて
 最早貫目は保たれぬ  カンカラカンのカンカラカン
 カンツク カンツク カンツクカン  カンカンベラボウ、ボンボラボウ
 ボンボラ坊主の四つの尻  ヨーイ ヨーイ ドンと打て
 カーン カーン  アイタタアイタタアイタタツタ
 何程尻を叩いても  痛い痛いと云ふばかり
 涙一つも零さない  クスクスクスと笑つてる
 余程肝の太い奴  これを思へば神館
 思ふがままに占領して  天下無双の美人なる
 デビスの姫に目をかけて  思惑立てたは当然
 ホンに図太い奴だな  此奴の尻は不死身だらう
 何程打つてやつたとて  チツとも往生致さない
 打てよ打て打て確り打てよ  ヨーイ ヨーイ ドンと打て
 カーン カーン  アイタタアイタタアイタタツタ』

トンク『さあエキスの分は済んだ。これからヘルマンだ。おい、ヘルマン無情な奴と怨めてくれな。これも貴様の心から出た錆だから仕方がないわ。尻の結目の合はぬ事するから、シリが来るのだ。それだから俺もお前等のシリ合だけれどこの町の規則によつて尻を打たねばならぬ破目となつたのだ。悪い事をするなら何故もつと尻を結んで置かないのだ。シリ滅裂の計画をやるものだから到頭終ひの尻は町民に笞刑五百と判ケツされてこんなケツい目に会ふのだ。しかしまあケツ構と思へ、命とられぬだけケツ構だから。お姫様をケツねだの、狸だのと吐した酬いでケツ構な目に遭はなならぬのだから観念するがよいわ。いやもうカン念してるに相違ない。エキス、ワックスはカン念カン念と云つて居る。何分尻まで物云ふ時代だから馬鹿にならぬわい。これから俺が音頭とるのだ。さア辛抱せい。ワックスはまだ半分残つてる。これを思へば貴様は半分で済むのだからケツ構だぞ。

 ヨーイ ヨーイ ドンと打て  カーン カーン
 アイタタアイタタアイタタツタ  家令の館へ押掛て
 チヨコ チヨコ サイサイ金銀の  小玉をドツサリ強請りとり
 うまい汁をば吸ひよつた  その証にや尻までが
 ブクブク太つてケツからア  さアさア痛うても辛抱せよ
 俺も涙は零してる  現在互に識つた仲
 こんな役目を勤むるは  俺も嬉しうはないけれど
 止むにやまれぬこの場合  ヨーイ ヨーイ ドンと打て
 カーン カーン  アイタタアイタタアイタタツタ
 此奴の尻もまた不思議  又々カンカン唸り出す
 顔に被つた鉄面皮  此奴は尻まで鉄面だ
 手詰になつたこの場合  いやでも打たねばならうまい
 宮町中の怨霊が  お前の尻に集まつて
 このケツ断になつたのだ  お前も決心するがよい
 打たねばならぬこの場合  ヨーイ ヨーイ ドンと打て
 カーン カーン  アイタタアイタタアイタタツタ
 これから此処を立出でて  荒野ケ原を打渉り
 テルモン山を後にして  運も命も月の国
 デカタン高原さして行け  お前によう似た悪人が
 沢山集つて居ると云ふ  この霊場に置くならば
 またもや悪事を企み出し  吾等一同に難儀をば
 必ず掛るに違ひない  気の毒ながら打つてやらう
 ヨーイ ヨーイ ドンと打て  カーン カーン
 アイタタアイタタアイタタツタ』  

 漸くにして規則通り四人は数百人に声を揃へて囃されながら尻を打たれた挙句、縛を解かれて、夜陰に紛れ逃げ出す途端、金盥はガランガランと音をして芝生の上に仰天してキラキラと篝火に輝いて居る。
トンク『やア、余り強く打つたので尻に血が凝つたので、こんな大きな肉塊を落して行つた』
とよくよく見れば四つの金盥が大きな口を開けて天を眺めて居る。
トンク『ハハア、皆さま、これ御覧なさいませ。何がカンカン云ふかと思へば四人の奴の尻はこの通り金になつてしまひました。ヤツパリ余り金を使つた天罰でせう』
 一同は、タンク、トンクの両人が両方の手に金盥を一つづつ捧げて来て見せるのを不思議相に『ワーイ ワーイ』と叫んで、
『溜飲が下つた、胸がスツとした。これで飯がうまい。帰んで一杯やらうかい』
と口々に囁きながら各吾家を指して帰り行く。タンク、トンクの両人は無事笞刑の済んだのを報告すべく金盥を四つ、各自に抱へて神館の大神殿に進み入り、恭しく呈上した。三千彦はこの場に現はれ来り、
三千『タンクさま、トンクさま、御苦労でございました。四人は嘸弱つたでせうな』
タンク『はい、何だか知りませぬが余り打つたものですから、この通り尻が硬くなり、血が滲んで尻の凝固を落して逃げました。しかし随分元気よく何処かへ逃げましたよ、アハハハハハ』

タンク『三千彦の神の司の慈み
  尻に鎧を着せ玉ひけり』

トンク『金盥とは知りながら大神の
  恵嬉しみ打据ゑにける』

三千彦『大神の恵の露を負ひし身は
  如何でか人を損ひ得べき。

 皇神も二人の司の誠心を
  さぞ喜びて諾ひますらむ』

(大正一二・三・二八 旧二・一二 於皆生温泉浜屋 北村隆光録)



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