出口王仁三郎 文献検索

リンク用URL http://uro.sblog.jp/kensaku/kihshow.php?KAN=58&HEN=1&SYOU=3&T1=&T2=&T3=&T4=&T5=&T6=&T7=&T8=&CD=

原著名出版年月表題作者その他
物語58-1-31923/03真善美愛酉 怪散王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:

あらすじ
悪粋会、三千彦の命により解散。
名称


 
本文    文字数=13494

第三章 怪散〔一四七八〕

 清き心の玉国別は  夏の御空の真純彦
 足を傷づく伊太彦の  二人の弟子を伴ひて
 天津日影もテルモンの  珍の館の表門
 神の使のスマートに  守られながら進み入る
 老若男女の叫び声  矢叫びの音に驚いて
 立ち現はれし三千彦は  表の門の入口に
 焦れ慕ふた師の君や  二人の友に廻り会ひ
 嬉しさ余り胸迫り  何の応答も泣くばかり
 漸く心取り直し  奥の一間に静々と
 三人を伴ひ進み入る  小国姫を初めとし
 デビスの姫やケリナ姫  バラモン教の神司
 ニコラスキャプテン初めとし  求道居士やヘル司
 マリス、リーベナ、ルイキン、ポリト  バットを初め四五人の
 僕と共に控へ居る  小国姫は三人の
 姿を見るより喜びて  その坐を下り手を支へ
 よくこそお出下さつた  貴方は三千彦宣伝使
 救ひの神の師匠様  まあまあこれへと請ずれば
 玉国別は目礼し  その言の葉に従ひて
 設けの席につきにける。  

小国姫『此処はバラモン教の神館、大黒主様の発祥の地、そのお館を守る吾々夫婦、いろいろと禍の神に見舞はれ、煩悶苦悩の最中へ貴方のお弟子三千彦様がお出下さいまして、吾々一同の難儀をお救け下さいました。その胆力と義侠心に対し、感謝の涙を零して居ります。どうぞ今後はお見捨てなく宜敷くお願ひ致します。また、この求道居士は元は、バラモン教のカーネルさま、治国別様のお言葉に感じ比丘となり三五教のお道をお開きなさる道すがら、私の娘二人の危難をお救ひ下さつた御恩人でございます、何ともお礼の申やうがございませぬ』
玉国『それはそれは、結構なお神徳を頂かれました。お目出度う存じます。そして貴方は求道居士様ですか、よくまア入信なさいました』
求道『ハイ、私はバラモン軍のカーネル、エミシと申すもの、鬼春別、久米彦将軍に従ひ浮木の森まで進軍致し、河鹿峠の味方の敗戦によりビクの国まで退陣致し、此処をまた立ち出て、猪倉山の岩窟に要塞を構へ、難攻不落と誇つて居る所へ治国別様がお越になり、神様の道をお諭し下さいましてから、翻然として悟り、今は三五教の信者となり、御神業に奉仕さして頂いて居ます。足はぬ某、何卒厚き御指導をお願ひ申ます』
玉国『お互に手を引き合うて、御用に立てさせて頂きませう』
求道『此処に見えて居る七人の方は、バラモン軍の、ニコラスと云ふ、キャプテンでございます、その他の六人は何れも下士官でございますが、鬼春別将軍の変心及びその後の模様を調査すべく、先刻この館に御出張になり、吾々の話を聞いて、漸く賛成下さつた所です。何卒宜敷く御指導を願ひ上げます』
玉国『何分お互に宜敷く願ひませう。ああ、貴方がニコラス様でございますか。や、御一同様初めてお目にかかります。世の中には敵もなければ味方もございませぬ、同じ神様に育まれて居る吾々人間は互に仲よくせねばなりませぬからなア』
 ニコラス以下六人はハツと頭を下げ、
『何分宜敷くお願ひ申ます』
と心の底より挨拶をする。かかる所に門前俄に騒がしく擦鉦の音、大声に歌ふ声聞え来る。三千彦はツと立つて何事ならむと表門に出た。スマートは厳然として門を守つて居る。悪酔怪長タンクは先に立ちて進み来り、三千彦に向ひ揉手をしながら、米搗バツタのやうにピヨコ ピヨコと腰を折り頭を下げ、媚を呈しながら、
タンク『エエ、これはこれは、三五教の大宣伝使、神力無双の三千彦様でございますか。まアよく遥々と神館にお出下さいまして、館の危難をお救ひ下さり、これの館の黒雲を除き、天下泰平にお治め下さいました段、宮町一同は申すに及ばず、国民一同の感謝措かざる所です。私は天下の無頼漢、イヤ、オツトドツコイ無頼漢を懲す、悪酔怪の怪長タンクと云ふケチナ野郎でございます。怪員一同に代り、貴方の御高徳を感謝するために罷りつん出ました。スマート様にもそれはそれは何とも云へぬ御尽力に預りまして有難う存じます。ワックス、ヘルマン、エキス、エルの悪人輩が集まりまして、如意宝珠の玉を盗むやら、家々の宝を盗むやら騒動をおつ始め、どうともかうともならない難儀でございましたが、貴方様のお出以来、風塵治まり、天下泰平の端緒を得ましたのは、私等の抃舞措く能はざる所です。何卒吾々の至誠をお認め下さいまして、今後御贔屓下さるやうお願ひ致します。この通り数多の町民が参りましたのも皆、貴方の御高徳を感謝せむために参上致しましたのでございますから、どうぞ宜敷く可愛がつて頂きたうございます』
三千『ヤアそれは結構だ。吾々に対する誤解が解けましたかな。今後は互に手を引きやうて、お館のため、お国のため協力一致、誠を捧げられむ事を祈ります。しかしながら、かう大勢館へ入り込まれましては小国別様も御病中なり、御迷惑をせられませうから、門前の馬場にてお目にかかりませう』
とスマートを引き連れ門を出で、階段を下り草青き馬場に出立ち見れば、五十の兵士は列を正し、ワックス外四人を縛したまま警護して居る。軍人側と、悪酔怪側とはいつしか和睦が出来たと見えて互にニコニコ笑つて居る。タンクは再び驢馬に跨り、ワックス外三人の前に馬を留め大音声にて演説を初めかけた。三千彦は麗しき赤、白、黄、紫のデリケートの花の咲き満ちた青芝の上に腰を下ろし、スマートの頭を撫でながら、ニコニコとして控へて居る。

タンク『そもそも此処に繋がれし  テルモン山の神館
 荒し廻りしワックスや  その外三人の悪漢は
 大黒主の御宝  如意の宝珠を横奪し
 館の主を苦しめて  ギウギウ云はせ吾恋の
 野望を甘く達せむと  所在手段を廻らして
 悪の限りを尽したる  極悪無道の痴漢ぞ
 三五教の神使  三千彦さまの威に打たれ
 如何ともする術もなく  首も廻らぬ苦しさに
 魔法使と布令廻し  吾々一同町民を
 甘く偽り暴動を  起させたるぞ憎らしき
 この宮町の町民は  テルモン山の霊地をば
 堅磐常磐によく守り  天地の神の御恵に
 報ひむために赤誠を  力限りに尽すのみ
 知らぬが仏の町民は  家令の悴ワックスが
 企みの罠におとされて  神力無双の神人に
 刄向かひ奉りし愚さよ  悪に長けたるワックスは
 吾身の罪を蔽はむと  茲に一計案出し
 悪酔怪を組織して  弱きを挫き強きをば
 助けむものと主張しつ  数百余人の団体を
 造りて誠の神人を  悩まし奉り神館
 占領せむと企みたる  その悪計ぞ怖ろしき
 天罰忽ち報ひ来て  己が率ゆる怪員に
 手もなく体を縛られて  これの馬場に万世の
 恥を晒すぞ可笑しけれ  ああ惟神々々
 誠の神はいつまでも  悪の企みを許さむや
 吾等はタンクと云ふ男  六百人の町民に
 やつと選まれ長となり  今また茲に悪酔怪の
 頭とおされ町民を  代表なして三五の
 神の司の御前に  誠の心を顕彰し
 御国のために尽さむと  衆を率きつれ来りたり
 赦させたまへ惟神  神かけ念じ奉る
 この世を造りし神直日  心も広き大直日
 ただ何事も人の世は  直日に見直せ聞き直せ
 身の過は宣り直せ  三五教の宣伝使
 三千彦司の前なれど  これに繋ぎし四人連れ
 これの聖地を朝夕に  掻き乱し行く曲者ぞ
 必ず許し給ふ無く  厳しき笞を加へつつ
 これの聖地を追ひ出し  懲しめたまへ惟神
 六百人になり代り  更め願ひ奉る
 ああ惟神々々  御霊幸倍ましませよ
 かかる悪魔の聖場に  姿を見するその内は
 如何なる神の御恵も  如何なる誠の御教も
 如何で開けむ常闇の  世は追ひ追ひと曇るのみ
 ああ願はくば三千彦の  誠の教の宣伝使
 吾等の願ひを逸早く  聞き取りたまひ片時も
 早く聖地を追ひ出し  これの霊地の禍を
 除かせ給へと願ぎまつる  ああ惟神々々
 御霊幸倍ましませよ』  

と歌をもつて演説に代へ、かつ三千彦に向ひ、これ等四人の悪党を一時も早くこの聖場より追放されむ事を祈つた。悪酔怪員一同は、一斉に手を打つてタンクの説に賛成の意を表した。三千彦は歌をもつてこれに答ふ。

三千彦『世は常闇となり果てて  悪魔は天下を横行し
 吹き来る風は腥く  絶ゆる間のなき人馬の音
 払はむよしもなきままに  難み苦しむ宮町の
 老若男女の心根は  今更思ひ知られけり
 テルモン山の峰清く  蓮華の花の四方八方に
 芳香薫じ夏風に  揺られて御代の泰平を
 謳へど神の御館  日毎夜毎に憂愁に
 包まれたまひ神柱  小国別や姫命
 その外二人の乙女達  その身の不覚を歎きつつ
 家令の悴ワックスが  醜の猛びに敵し得ず
 持ち倦みます時もあれ  神の御言を蒙りて
 救ひの神と現はれし  三千彦司は身を砕き
 心を痛め種々の  難みに会いて漸うに
 神の館を包みたる  醜の雲霧吹き払ひ
 旭の豊阪登るごと  漸く生れ代りけり
 ああ惟神々々  神の御稜威の著く
 恵の露の深きをば  喜び祝ひ奉り
 玉の所在も漸くに  現はれまして神館
 上を下へと歓ぎつつ  元の姿となりにけり
 さはさりながら団体の  長とあれますタンクさま
 悪酔怪の綱領は  弱きを挫き強きをば
 助くるよしに聞き及ぶ  悪魔に等しき団体は
 天地の神の御心に  背反したる暴挙ぞや
 いと速に改めて  この団体を解散し
 誠一つの三五の  教の道に帰順せば
 吾等も共に手を引いて  これの聖地を守るべし
 顧りみたまへ惟神  神の御前に赤心を
 捧げて茲に願ぎまつる  旭は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  仮令大地は沈むとも
 誠の力は世を救ふ  誠の道に皆来れ
 悪酔怪の目的は  決して世のため人のため
 利益となるべきものでなし  否々却て世を汚し
 大混乱の種ぞかし  顧み給へタンクさま
 その外会員御一同  三五教の三千彦が
 心を籠めて宣りまつる  ああ惟神々々
 御霊幸倍ましませよ』  

タンク『いざさらば君の教に従ひて
  これの集団を解き放ちなむ。

 この集団吾等一同の心より
  出でしに非ずワックスの胸。

 ワックスの百の企みの現はれし
  上は尚更何の要なき。

 弱きをば挫き強きを助くるは
  曲津の神の仕業なるらむ』

三千彦『健気なるタンクの君の言の葉は
  誠の神の御声とぞ思ふ。

 いざ早く曲の集団を解きほどき
  神の御前に赤心ささげよ』

 かく歌を取り交し、和気靄々として茲に悪酔怪の解散をなし、町民一同打ち揃ひ、神館に恭しく詣でて感謝祈願の言葉を奏上した。中空には微妙の音楽聞え、天津乙女の姿二つ三つ嬉しげに舞ひ狂ひ、優曇華の花弁風に翻り、各人の頭にパラリパラリと落ち来る。ああ惟神霊幸倍坐世。

(大正一二・三・二八 旧二・一二 於皆生温泉浜屋 加藤明子録)



オニドでるび付原文を読む    オニド霊界物語Web