出口王仁三郎 文献検索

リンク用URL http://uro.sblog.jp/kensaku/kihshow.php?KAN=57&HEN=3&SYOU=25&T1=&T2=&T3=&T4=&T5=&T6=&T7=&T8=&CD=

原著名出版年月表題作者その他
物語57-3-251923/03真善美愛申 天声王仁三郎参照文献検索
キーワード: 物語
詳細情報:
場面:

あらすじ
隆光彦が現われて教えを述べる。
バラモンも三五教も同じ、大国治立命の教えである。
名称


 
本文    文字数=6482

第二五章 天声〔一四七五〕

 ニコラスのキャプテンはハンナ、マリス外四人と共に小国姫、ヘルの二人を高手小手に縛め、門前の馬場に来て見れば警固させ置いた兵士は何れも一蓮托生、立つたまま白河夜船を漕いで居る。大杭に縛りつけて置いた三千彦以下四人の姿は影もなく、また今縛つてきた二人も何時の間にか縄ばかりになつて居る。ニコラスは不審に堪へず双手を組んで首を垂れ思案に暮れて居る。俄に禿鷲がパツと空から飛つて来て軍帽の上から頭をカンカンとコツいた。アツと叫んでニコラスは芝原に蹲み頭を抱へて慄うて居る。禿鷲は五十人の兵士の居眠つて居る頭の上から一、二、三、四と万遍なく、コツき廻つた。さうして最後の一人をグツと掴んで中空に翼を拡げ、誇り顔に舞うて居る。兵士は一時に兇霊の襲来を受け各刀を引き抜き、ニコラス外六人の士官に向つて、無性矢鱈に斬り込んで来た。ニコラスも頭の痛さをこらへハンナ、マリス以下四人を指図し、兵士にむかつて応戦した。忽ち十数人の重軽傷者を出し、草を紅に染めてしまつた。この時空中に音楽ひびき、淑かな宣伝歌が聞えて来た。
 その歌、

隆光彦『天津御神の御言もて  バラモン教の神館
 テルモン山の霊場を  救はむために三五の
 珍の司の三千彦を  バラモン神の乞を容れ
 神素盞嗚の大神は  此処に遣はし玉ひけり
 その御心も露知らず  バラモン軍のキャプテンが
 数十の兵士を引率れて  これの館に出陣し
 神の御前に拝礼も  なさず忽ち奥の間に
 闖入なして神館  主人の妻を初めとし
 誠の道の神柱  一人も残らずフン縛り
 無慙の仕打をなせしより  仁慈無限の天地の
 神は怒らせ玉ひつつ  旭、高倉二柱
 神の使を遣はして  勝ち誇りたるニコラスの
 軍を悉目を覚し  尊き神の御教に
 言向和す御仕組  ニコラス如何に勇あるも
 神の力に及ばむや  悔い改めよ省みよ
 三五教やバラモンの  教と御名は変れども
 その源を尋ぬれば  大国治立大神の
 珍の御裔と知らざるか  アア惟神々々
 神の教にいと暗き  色盲患者の武士よ
 一日も早く真心に  かへりて天地の大道を
 弁へ悟れ惟神  神は汝と倶にあり
 人は神の子神の宮  心の魂の清ければ
 如何なる曲の襲ふとも  如何で恐るる事あらむ
 汝が力に相任せ  縛り上げたる宣伝使
 その外五人の真人は  誠一つの勇士ぞや
 悔い改めて大神の  御旨に叶ひ奉りたる
 尊き神の太柱  如何でか汝等曲神の
 縄に縛られ怯むべき  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  仮令天地は覆るとも
 誠一つを尽しなば  現幽神の三界は
 思ふがままになるものぞ  眼を覚ませ早覚ませ
 吾は隆光彦の神  天津御空の天国の
 神の使命を蒙りて  汝等一同の曲神を
 誠の道に救はむと  天の八重雲掻き分けて
 降り来れるものなるぞ  この世を造りし神直日
 心も広き大直日  ただ何事も人の世は
 直日に見直し宣り直し  吾身の罪を悔い覚り
 人の過ち悉く  直日に見直せ聞直せ
 それが誠の神心  神の心に曇りなし
 誠の道にさやりなし  誠は天地の宝ぞや
 そもそもこれの神館  バラモン教の大神を
 斎き奉りしものなれど  天津国より降りたる
 如意の宝珠のある限り  瑞の御霊の霊場ぞ
 大黒主は霊宝の  威徳に恐れて逃げ出し
 千里の山野を打渡り  今は漸く月の国
 ハルナの都に居を定め  大雲山の岩窟に
 弥永遠に棲まひたる  八岐大蛇に操られ
 偽り事を真とし  悪をば善と信じつつ
 脱線だらけの宣伝を  始めたるこそ嘆てけれ
 汝ニコラス、キャプテンよ  吾エンゼルの言の葉を
 ただ一言も洩らさずに  胸の奥にと畳み込み
 深く省みよく悟り  尊き神の御心を
 麻柱奉れ惟神  神のまにまに諭し置く
 吾はこれより久方の  高天原の霊国に
 大宮柱太知りて  鎮まり居ます月の神
 貴の館に舞ひ上り  この有様を詳細に
 いとこまごまと復命し  汝等一同神の子の
 罪をば許し玉ふべく  願ひ奉らむいざさらば
 心の底より改めて  神の御為世のために
 真心捧げて尽せかし  アア惟神々々
 神のまにまに宣り伝ふ』  

と歌ひ終り、淡き煙となつて何処ともなく中空に消え玉うた。今まで居眠つて居て禿鷲に片身怨みなく額をコツかれ、苦痛に悩んで居た兵士の傷は忽ち癒え、眠気も頓に覚め、精神爽快を覚え、何んとなく顔色まで生々して来た。ニコラスは合点行かず、ハンナ、マリス外四人の士官を引率れ、再び館の奥の間に進み入り見れば豈図らむや、小国姫、三千彦を初め縛り上げた人々は嬉しげに手を拍つて酒宴の最中であつた。ニコラスは翻然として悟り、神徳の広大なるに感じ、涙を流して三千彦に無礼の罪を謝した。この時館の外にはワイワイと山岳も揺ぐばかりの喊声が聞えて来た。一同は何事ならむと耳を欹てしばし様子を窺つて居る。スマートの声は耳を劈くやうに『ウワッウワッ』と四辺の木霊を響かして居る。

(大正一二・三・二六 旧二・一〇 於皆生温泉浜屋 北村隆光録)
(昭和一〇・六・一五 王仁校正)



オニドでるび付原文を読む    オニド霊界物語Web