出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語55-1-41923/03真善美愛午 真異王仁三郎参照文献検索
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あらすじ
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第四章 真異〔一四一二〕

 バラモン教のゼネラルと  羽振利かした久米彦や
 鬼春別を初めとし  スパール、エミシの四人連れ
 玉木の村の里庄の家に  四人の手負を送りつけ
 心を痛め声潜め  悔悟の涙に暮果てて
 青息吐息吐きながら  三五教の宣伝歌
 唱ふる声も口の中  悄気かへり居るその席上へ
 廊下の板の間轟かし  現はれ来るテームスは
 日影も細き部屋の内  鬼春別の敵将が
 帰順し来るを知らずして  娘二人を救ひたる
 治国別の一行と  老の眼に見誤り
 四人の前に手をついて  いと慇懃に挨拶を
 初めかけしぞ可笑しけれ。  

 仄暗き行灯の光に主のテームスは、鬼春別一行とは知らず、叮嚀に両手を支へ、
テームス『これはこれは皆様よくまア助けてやつて下さいました。さうして貴方は誰人でございましたかなア』
と鬼春別の顔をそつと覗いた。鬼春別は言句につまり、頭を掻きながら、
鬼春『ハイ、私は……春別でございまする。イヤ、もう偉い御心配をかけました』
テームス『どう致しまして、此方の方から甚い心配をかけ何とも申訳がございませぬ。貴方は治国別さまと承はりましたが、今承はれば春別とおつしやいました。アアこれはこれは失礼致しました。何分年がよつて記憶が悪いので人の名まで忘れます。いやもう年は取りたくはありませぬ。時に春別様、随分苦心でございましたでせうなア。お骨折お察し申します』
鬼春『いやもうその御挨拶には痛み入ります』
テームス『何と云つてもバラモン教の悪神、鬼春別、久米彦と云ふ鬼のやうな悪党に捕へられたのですから、嘸娘もえぐい目に遇つたでございませう。さうして、奥眼とか久米彦とか云ふ狒々のやうな男がついて居るのだから定めし娘は操を汚されたでございませうなア』
鬼春『いや決してその御心配は要りませぬ。仲々貴方の娘さまだけあつて確りしたものです。それは私が保証致します』
テームス『仮令身を汚されても命さへ持つて帰れば結構だと思うて居りましたが、少々怪我をして居りますけれど肝腎のものに別状さへなくば、こんな嬉しい事はございませぬ。何分養子をせねばならぬ娘ですから、親としても随分心配でございます』
鬼春『成程御心配お察し致します。実は拙者はあの何でございます……。やつぱり……春別でございました。ともかく無事に治まつたのでございますから、これも神様の何彼の思召しとお諦めなさるがよろしうございませう』
久米『初めてお目にかかります。貴方はこの家の主様でございますか。誠に申訳のない事を致しました。治国別様のお蔭により神様の道に救はれ、こんな嬉しい事はございませぬ。貴方も嘸お喜び、お目出度うございます』
テームス『イヤ貴方のおつしやる通り、第一春別様のお骨折り、次には貴方方のお助けによりて、あの意地の悪い鬼春別や、久米彦の、泥棒将軍に拐かされた所を助けて頂き、天にも昇る心持でございます。もし春別様、娘をお助け下さいまして実にお礼の申しやうがござりませぬが、またあの泥棒将軍が、貴方のお帰りになつた後は沢山の雑兵を引き連れ、娘を取り返しに来るやうな事はございますまいか、それが第一気にかかります』
久米『決して御心配なさいますな。治国別さま、松彦さま、竜彦さま、万公さまが、すつかり岩窟退治を遊ばし、二人の頭に大鉄槌を喰はし、三千の軍隊を解散し、後顧の患のなきやうにして此処にお帰りになりましたから、御安心なさいませ』
テームス『遉は春別様、その外のお弟子様、実に御神徳と云ふものは偉いものでございますな。神が表に現はれて善と悪とを立て分けるとおつしやいましたが、やつぱり善は最後までゆけば勝つものでございます。そして鬼春別や、久米彦の泥棒人足は、首でも吊つて死にましたか、但しは切腹でも致しましたか、それが一つお土産話に聞かして頂きたうございます』
 鬼春別は頭を掻きながら、
鬼春『ヘイ将軍としての鬼春別、久米彦は最早消滅致しました。やがて生れ変つて貴方にお目にかかりに来るでせう。その時は悪人と憎まず言葉をかけてやつて下さいませ』
テームス『貴方のお言葉なれば背く訳にはゆきませぬが、彼のやうな悪党が何程天地が覆つて、謝罪つて来ましても一口言葉をかける所か、門内にも入れませぬ。肉を削り血を啜り、骨をはたいて食つても虫の納らない悪党でございますが、何とかして神様のお力で痕跡もなく亡ぼしたいものでございます』
 かく話す所へ治国別、松彦、竜彦は下女の案内によつて現はれ来り、
治国『イヤ、テームス殿、私は治国別でございます。悠りと休まして頂きました。どうですかな、四人共少しく気分はよいやうですか』
テームス『ヤ、貴方は治国別様、ハテナ、今此処にござるお方を貴方様と思つて御挨拶を申上げた所でございます。ハテナ、どうも合点が行かぬ事だなア』
治国『この方は有名な鬼春別、久米彦の両将軍及スパール、エミシのカーネルさまですよ』
 テームスは倒けぬばかりに驚いて、顔を真青にしながら慄ひ声を出し、
テームス『モシ治国別様、早く何処かへ帰なして下さいませ。何故こんな奴が知らぬ間に入つて来たのでせう』
治国『この四人の方が、すつかり御改心の結果、貴方方のお嬢さまを背中に負うて此処まで送つて来られたのですよ。もはや今までの将軍ではございませぬ、治国別の弟子ですから御安心なさいませ』
 テームスはやつと胸を撫で、
テームス『ヤアそれで一寸安心致しました。モシ春別様、随分貴方は腹が悪いですな。なぜ鬼春別だとおつしやつて下さらぬのです』
鬼春『余りお恥かしうて合す顔がありませぬので春別と申しました。しかし最早鬼は取れましたから矢張春別でございます。随分私の悪を並べられた時には五臓六腑を抉られるやうに苦しうございました。此処に居るのは久米彦将軍、スパール、エミシの改心党でございます。どうぞ今までの恨を去つて、通常の人間として御交際を願ひます』
テームス『治国別様のござる間は御交際をさして頂きませうが、また何時引くりかへらるるやら分りませぬから、成るべくは帰つて頂きたいものでございます』
治国『決して御心配なさいますな。この方方の腹の底まで見透かして居りますから、最早大丈夫でございます』

鬼春別『醜神に取り憑かれたる鬼春別も
  神の恵に人となりぬる。

 テームスの里庄の君よ惟神
  神のまにまに赦したまはれ』

久米彦『大神の恵は深し瑞御霊
  河瀬の水を久米彦の吾に。

 汲めど汲めど尽きせぬ神の御恵は
  流れて霊を洗ひましぬる』

テームス『有難や醜雲四方に晴れ渡り
  今日は嬉しき月を見るかな。

 三五の月の教を守りつつ
  いや永久に神に仕へませ』

鬼春別『曲鬼の霊を隈なく追ひ散らし
  空晴別となりし今日なり。

 猪の倉の砦に潜む曲神も
  神の伊吹に吹き散りにけり。

 曲神の去りにし後の久米彦は
  心真澄の空の月かも』

スパール『バラモンの軍の君に従ひて
  カーネルとなりし吾ぞうたてき。

 大神の救ひの喇叭に醒されて
  今は誠の道に覚めける』

テームス『有難き神の恵は醜草も
  薙ぎ払はずに救ひますかも』

エミシ『吾こそはエミシの司三五の
  光を浴びてエミシ吾なり。

 姉妹の二人の御子をいろいろと
  悩ませまつりし吾ぞうたてき。

 ゼネラルや、スパール司の罪ならず
  エミシ一人が犯せし醜業』

鬼春別『友垣の罪をかくして一人負ふ
  エミシの司は真人なりけり』

久米彦『村肝の心の罪に責められて
  吾は言ふべき言の葉もなし』

治国別『猪の倉の山の黒雲空晴れて
  立ちも及ばぬ谷の川霧』

松彦『松の世の魁として現れませる
  木花姫の恵かしこし。

 木の花姫神の命の在ざらば
  いかで救へむこの姉妹を』

竜彦『大神の宣のまにまにビクの国
  早や竜彦の今日の嬉しさ。

 大空に輝きわたる月見れば
  吾師の君の御霊とぞ思ふ』

鬼春別『許々多久の罪や汚れを委曲に
  宣り直したる治国別の司。

 天が下四方の国には仇もなし
  神の教に任す身なれば』

テームス『治国別司を初め百人よ
  今宵は早く寛ぎませよ。

 吾が娘父をたづねて待つならむ
  許させたまへ出で行く吾を』

治国別『親と子の情を思ふ益良雄は
  いかでとがめむ汝の言葉を』

テームス『有難し百の司よいざさらば
  くつろぎたまへ心安けく』

と挨拶しながら、後に心を残しつつ、奥の一間に馳けて行く。お民は下女下男の調理せし膳部を運び来り、酒なぞを添へて一同の前に据ゑ、
お民『皆様、お嬢様が、いかいお世話になられまして有難う存じます。何分私は此処へ雇はれて参りまして、まだ日日も浅うございまして家の勝手も分りませず、不都合だらけですが「どうぞ悠り召し上つて貰へ」との主人の云ひつけでございます。何もございませぬがどうぞ腹一杯召し上り下さいませ』
竜彦『お取り込みの中、御叮嚀な御馳走、イヤもう大変なお骨折でございませう。しからば遠慮なく頂戴致しませう。サア先生、春別様、皆様頂戴致しませうか』
治国『御叮嚀に有難うございます。此方は勝手に頂戴致しますから、どうぞお民さまとやらお構ひ下さいますな』
お民『ハイ不調法者がお給仕を致すよりも御自由にして下さる方が結構でございます』
と挨拶もそこそこに御馳走を並べ終り炊事場へさして急ぎ行く。万公はテームスと交替に、道晴別、シーナの介抱より離れ空腹を抱へて声をしるべに現はれ来り、
万公『ああ先生、大変な御馳走が出て居りますなア。一つ二つ三つ四つ五つ六つ七つヤ一膳足らぬぞ。万公司のお膳はどこにあるのかなア』
竜彦『オイ万公、お前は既に御馳走を頂戴しただらう。スガールさまのお顔さへ見て居れば無上の御馳走だ。飯の一日や二日食はなくても辛抱が出来るだらう』
万公『ヘン大きに憚り様、木仏金仏でない限り、矢張食欲が一人前はございますから、何ならお前の分を拙者が頂戴致しませうかい』
竜彦『ヤお前は別に席が拵へてあるのだらう、主人側だからなア。俺達はお客さまだ何と云つてもテームス家の新養子様だから、些と俺達にお給仕でもしたらよからう』
万公『ウンさうだつた。お前もさう思うて居るか、さうすると俺の考へもちつとも違はぬ、それでは気楽にお客さま面もして居れまい、下女に云ひつけ沢山御馳走をして上げる。………何分取込んで居るので御馳走をして上げたいと思ひましたが俄には出来ませぬ。また明日になつたら、何とか小甘いものでもして上げませう。まアお客様御悠くり召し上り下さいませ』
と慌て柱や襖にゆき当りながら炊事場さして進み行く。

(大正一二・二・二六 旧一・一一 於竜宮館 加藤明子録)



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