出口王仁三郎 文献検索

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物語52-2-101923/02真善美愛卯 霊界土産王仁三郎参照文献検索
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第一〇章 霊界土産〔一三四六〕

 小北山の神殿にては、文助が蘇生したるその祝意を表するために、盛大なる祭典を行ひ、且直会の宴を張つた。松姫を始めその他一般の役員信者は大広前に集まつて、文助が神より与へられたる広大無辺の神徳にあやからむと参籠せる信者は各宿舎より来つて歓喜の神酒に酔うた。文助はソロソロ歌ひ出した。

『無限絶対無始無終  生死の上に超越し
 この世を造り給ひたる  皇大神の神徳に
 生れ出でたる人草は  何れも神の子神の宮
 永遠無窮の生命を  保ちて顕幽両界に
 生き通し行く尊さよ  われは一度大神の
 恵の綱にあやつられ  ふとした事より霊界に
 知らず知らずに突入し  山河草木悉く
 現実界に変りなく  大地の上を歩みつつ
 吾身の嘗て死去したる  事は一つも知らざりき
 これを思へば人の身は  神の教にある如く
 不老不死にて永遠に  神の御国に栄え行く
 霊物ぞと知られける  ああ惟神々々
 一度神の御国へ  旅立したる愉快さは
 醒めてこの世にありとても  容易に忘るることを得ず
 実にも楽しき霊界の  光は今に現然し
 宛然高天の神界に  身をおく如き心地なり
 松姫司やその他の  百の司の介抱に
 再び現世に立帰り  四方の有様伺へば
 実にもこの世は娑婆世界  罪に汚れし状態に
 彷徨ふものとの感深し  神霊界に至りては
 目かひの見えぬ吾々も  すべての物をありありと
 残る隈なく目撃し  殊更気分も麗しく
 身も軽々と道を行く  地上の世界を行く如き
 苦痛は少しも知らざりき  現界人は気を急ぎ
 足を早めて道行けば  必ず呼吸切迫し
 心臓の鼓動忽ちに  烈しくなりて息塞り
 喉は渇き汗は出で  足は疲れて苦しさを
 覚ゆるなれど神界の  旅行はこれに相反し
 何の苦もなく易々と  思ひのままに進みけり
 実にもこの世は苦の世界  厭離穢土ぞと言ふことは
 ただ聖人の方便と  思ひそめしは誤謬と
 深くも感得したりけり  抑も神の坐す国は
 恨み嫉みも醜業も  塵ほどもなきパラダイス
 愛と善との徳に充ち  信と真との光明に
 輝き渡り日限も  土地さへ知らぬ長閑なる
 常世の春の如くなり  これを思へば大神の
 仁慈無限の御経綸  ゆめゆめ疑ふ余地もなし
 この大前に参集ふ  信徒等よ司等
 人のこの世にある時は  時世時節に従ひて
 国の掟をよく守り  五倫五常の大道を
 明め悟り実行し  最第一の神の国
 開き給ひし大神の  その神格を理解して
 善と真との徳を積み  神より来る美はしき
 智慧証覚に充たされて  仮の浮世の生涯を
 完全無欠に相送り  凡ての罪を大神の
 御前にひれ伏し悉く  悔い改めて天国の
 門戸を開く準備をば  この文助は云ふも更
 皆さま心を一つにし  身の行ひを慎みて
 神の御国の御為に  吾三五の大道を
 尽しまつらむ神力を  具備させ給へと大前に
 祈れよ祈れ百の人  これ文助が霊界に
 至りて親しく見聞し  実験したる物語
 黄泉路帰りの礼祭に  集ひ給ひし人々に
 土産話と述べておく  ああ惟神々々
 御霊幸はひましませよ  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  仮令大地は沈むとも
 少しも動かぬ神の国  常住不断の信楽に
 身をおくならば何事も  恐るることやあらざらむ
 省み給へ百の人  われ人ともに慎みて
 この神国に生れたる  恵に報いまつるべく
 心の限り身のきはみ  誠を捧げまつるべし
 ああ惟神々々  神の御前に文助が
 見聞したる一端を  此処に謹み述べ終る
 ああ有難し有難し  限りも知らぬ神の恩
 果てしも知らぬ御稜威』  

と歌ひ了り、一同に向つて自分が仮死中種々親切な介抱に預かつたことを感謝し、且将来の自分の神に仕ふる方針に就いて略叙し自席に着いた。次に松姫は歌ふ。

『高姫司の開きたる  ウラナイ教によく仕へ
 支離滅裂の教義をば  至善至美なる大道と
 渇仰したる受付の  文助さまも漸くに
 三五教の御光に  照らされ給ひ大神の
 誠の心を理解して  朝な夕なに神殿に
 いと忠実に仕へたる  誠の信者となり給ふ
 かかる尊き真人を  惜しみ給ひて神々は
 再びこの世に追ひ返し  現実界に残したる
 その神業を完成し  神の御前に復命
 申させ給はむ御心  仰ぐも畏き次第なり
 この世を造りし神直日  心も広き大直日
 ただ何事も人の世は  直日に見直せ聞直せ
 身の過ちは宣りかへと  善言美詞の詔
 深遠微妙の真理をば  含ませ給ふ有難さ
 初公、徳公両人は  妖幻坊や高姫の
 醜の曲津に欺かれ  朝な夕なに大神に
 いと忠実に仕へたる  この真人を打擲し
 仮死状態に至るまで  悩めしかども翻り
 その真相を思惟すれば  これも全く神界の
 不可知的なる御経綸  文助さまはそのために
 願うてもなき霊界の  真相までも探険し
 再びこの世に帰り来て  世人を導き給ふべく
 計らひ給ひし事ならむ  ああ惟神々々
 ただ何事も神様に  任しておけば怪我はない
 何程人が利口でも  物質界に住む上は
 幽玄微妙の神界の  深き真理は分らない
 卑しき弱き人の身で  何程真理を究めむと
 焦慮するとも無益なり  文助さまの物語
 聞くにつけてもヒシヒシと  胸にこたえて吾魂は
 俄に向上せし如く  神の御国の有様を
 いと明かに悟り得し  歓喜の心に充たされぬ
 いざこれよりは松姫は  文助さまを師父となし
 すべての執着排除して  いと忠実に仕ふべし
 許させ給へ真人よ  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  少しも動かぬ神の国
 現実界の人々の  計り知らるる事ならず
 ああ惟神々々  神のまにまに進むより
 吾等は手段なきものぞ  初稚姫の神司
 天国浄土や地獄道  中有界の状態を
 いと懇に説き給ひ  帰りましたるその後へ
 文助さまの甦り  右と左に真人が
 現はれまして霊界の  その真相を詳細に
 教へ給ひし有難さ  ああ諸人よ諸人よ
 この世に命のある限り  神に親しみ神を愛し
 善と真との徳を積み  生きてこの世の範となり
 死しては神の御使と  仕へまつらふそのために
 三五教の御教を  心ひそめて拝聴し
 処世を誤ること勿れ  ああ惟神々々
 神の御前にこの度の  恵を感謝し奉る』

 イクは立上つて歌ひ出した。

『ああ有難し有難し  思ひ掛なき神界の
 深遠微妙の経綸を  今目のあたり明かに
 説き示されし吾々は  この世の中の人として
 いと幸福の者ぞかし  文助さまの物語
 松姫さまの御教訓  聞くにつけても何となく
 心は勇み腕は鳴り  ただ一刻もグヅグヅと
 して居れないよな心持  俄に湧き出し全身の
 血は漲りて歓楽の  涙は胸に溢れけり
 さはさりながら命とも  柱杖とも頼みてし
 初稚姫の神司  夜前の騒ぎを他所にして
 出で行きますとは何事ぞ  かかる優しき神人も
 文助さまの危難をば  他所に見すてて帰るとは
 合点の行かぬ節がある  とは言ふものの吾々は
 向ふの見えぬ愚か者  智慧証覚に秀れたる
 愛と信との善徳を  身に帯び給ひし姫君の
 心は如何で吾々の  小才浅智の知悉する
 限りにあらずと諦めて  この上何にも言ひませぬ
 さは言へ吾はどこまでも  初心を貫徹せにやならぬ
 初稚姫に相反き  仮令地獄に堕つるとも
 神の御ため世のために  尽す誠の益良夫を
 神は必ず救ふべし  松姫様よお菊さま
 その外百の司たち  いかいお世話になりました
 これより私は小北山  神の御前に拝礼し
 膝の栗毛に鞭うつて  特急列車に身を任せ
 矢を射る如く御後を  つけて行かねばおきませぬ
 我慢の強い男だと  必ず笑うて下さるな
 バラモン軍の猪突武者  首もまはらぬ男だと
 今まで言はれて来たけれど  夜光の玉を保護しつつ
 常世の暗を踏み分けて  浮き瀬に悩む人々を
 神の光に照らしつつ  舎身の活動継続し
 首尾よくハルナに立向ひ  大神業に参加して
 斎苑の館に復命  申さむ折は小北山
 大神殿に参詣で  山と積れる御話を
 皆々さまの御前に  申上ぐべき時こそは
 今より楽しみ待たれける  ああ惟神々々
 御霊幸はひましませよ』  

と歌ひ了り、サールを促して早くもこの場を立出で、初稚姫の後を追はむとした。松姫は百方言葉を尽して、イク、サールの出立を止むべく、初稚姫の意を体して説き諭した。されどはやり男の猪武者、いかでかその言葉に耳を傾くべき。サールと共に小北山を拝礼し、善一筋の心を渡す一本橋、二人の身なりも怪シの森、運ぶ歩みも浮木ケ原を指して進み行く。

(大正一二・一・三〇 旧一一・一二・一四 松村真澄録)



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