出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語49-3-111923/01真善美愛子 水呑同志王仁三郎参照文献検索
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第一一章 水呑同志〔一二八五〕

 治国別は、クルスの森の古い祠の傍にある社務所に陣取り、ランチ、片彦、ガリヤ、ケース、万公、お寅、蠑螈別、お民、竜公、松彦などと、一百日の間講演会を始め、三五教の教理の大体を吹き込み、漸くにしてお寅を、先づ第一着に宣伝使の候補者となし、添書を認めてイソの館に向はしめた。お寅は前述の如く、小北山に立ち寄り、魔我彦を伴ひ、宣伝歌を歌ひながら、河鹿峠を登り往く。

『朝日は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 大海原は乾くとも  大地は泥にしたるとも
 誠一つの三五の  神の光は世を救ふ
 治国別の宣伝使  クルスの森に現はれて
 百日百夜のその間  尊き神の御教を
 授け給ひし嬉しさよ  お寅は茲に撰まれて
 三五教の宣伝使  その候補者と定められ
 嬉しき添書を渡されて  今やいそいそイソ館
 聖地をさして進み往く  あゝ惟神々々
 神の恵の浅からず  体主霊従のありだけを
 尽し来りし吾身をば  愍みまして大神は
 清き尊き御教を  治国別の手を通し
 口を通して詳細に  教へたまひし有難さ
 かくも尊き神恩に  浴し奉りし吾々は
 骨を粉にし身を砕き  皇大神の御為に
 仕へまつらで置くべきや  風も漸くやわらぎて
 春の陽気は立ち上り  梅の梢に一二輪
 花咲き初めし春の空  谷の戸あけて鶯の
 長閑な声に送られて  進む吾身ぞ楽しけれ
 浮木の森の侠客と  四辺に聞えしこのお寅
 今は全く三五の  神の教へに鍛えられ
 鬼は変じて神となり  我欲の夢もさめ果てて
 心の底より生れ子の  身魂となりし気楽さよ
 あゝ惟神々々  神素盞嗚の大御神
 従ひませる神司  悪に曇りし吾霊を
 研きて神の御柱と  なさしめたまへ産土の
 珍の聖場を遥拝し  謹み敬ひ願ぎまつる
 河鹿峠は峻しくも  吹き来る風は寒くとも
 神の慈愛に充されし  吾身は春の心地して
 心の園に花開き  小鳥は謡ひ蝶は舞ふ
 長閑な身とはなりにけり  小北の山に頑張りて
 名もなき神に操られ  金と色とに魂を
 曇らせ居たる愚さよ  魔我彦汝も今よりは
 お寅と共に皇神の  清き尊き御教を
 心に刻み胸に染め  誠一つを立て通し
 曲の虜となる勿れ  心も勇み身も勇み
 どことはなしに若やぎて  鬼をも挫ぐ吾思ひ
 力の限り身の極み  尽さにや止まぬ神の道
 上る吾身ぞ楽しけれ  あゝ惟神々々
 御霊幸倍ましませよ』  

と歌ひながら、お寅は魔我彦を従へ漸く河鹿峠の上り口についた。谷川の流れは激潭飛沫を飛ばし、淙々として心胆を洗ふに似たり。木々の梢は春立ちて芽を膨み、何とはなしに春陽の気に満たされた。二人は谷川を下り、手を洗ひ、口をそそぎ、天津祝詞を奏上し、しばし渓流の絶景を眺めながら、

お寅『岩走るこの谷水のいさぎよさ
  瑞の御霊もかくやまさなむ。

 吾胸を洗ふが如く覚えけり
  谷川おつる水の響きに』

魔我彦『この景色見るにつけても思ふかな
  瑞の御霊の雄々しき姿を。

 ただ二人小北の山を後にして
  進み来りぬ神のまにまに』

お寅『河鹿峠はいかに峻しとも
  神を慕ひて往く身ぞ安き。

 獅子熊や虎狼の猛ぶなる
  河鹿の山も神のまにまに。

 登り往くこの坂道も何となく
  楽しかりけり嬉しかりけり』

魔我彦『谷水を掬ぶ心はいそのかみ
  古き神代の思ひせらるる。

 言依別の神の命の落ち入りし
  この谷水を呑むぞ嬉しき。

 言依別天津御国に往かむとて
  掬びたまひしこれの谷水。

 音に聞く河鹿峠の山颪
  吾身の塵を払ふべらなり。

 吹く風は救ひの神のみいきぞと
  思へば嬉し今日の旅路よ』

お寅『いざさらば水に名残を惜しみつつ
  進みて往かむイソの館へ』

魔我彦『いそいそとお寅の方に従ひて
  吾も往かなむイソの館へ』

 かく歌ひ終りまたもや歩を起した。魔我彦は急坂を登りながら歌ひ出したり。

『サアサアこれから坂道だ  お寅の方よ気をつけよ
 道には高い石がある  ウントコドツコイ、ドツコイシヨ
 谷の流れは淙々と  琴をば弾じ笛をふき
 吾等二人の往手をば  祝する如く聞え来る
 あゝ惟神々々  高姫さまに従ひて
 北山村に本山を  築きて教を開きたる
 曲つた心の魔我彦も  小北の山の聖場で
 松彦司に救けられ  全く迷ひの雲も晴れ
 三五教に帰順して  初めて進むイソ館
 今まで神にいろいろと  背きまつりし罪科は
 仮令山ほどありとても  仁慈無限の大神は
 直日に見直し聞直し  救はせ給ふと聞きしより
 創もつ足の吾ながら  一切万事神様に
 お凭れ申して進み往く  大空渡る月影も
 一度は雲に蔽はれて  姿をかくす事あるも
 晴るればやはり元の月  四方の山野を照らすごと
 神に目醒めた魔我彦の  心の空の日月は
 再び茲に輝きて  誠の神をよく悟り
 松姫司に許されて  珍の聖地に詣で往く
 吾身の上こそたのしけれ  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  仮令大地は沈むとも
 誠の力は世を救ふ  如何に嶮しきこの坂も
 神の守護りのある上は  如何でか進み得ざらむや
 ウントコドツコイ ハアハアハア  息が苦しうなつたれど
 こんな所で屁古垂れて  どうして神業が務まろか
 お寅の方よお前さまは  何と云つても年寄りだ
 未だ年若い魔我彦が  これほど息が苦しのに
 お前は平気な顔をして  それほどドンドン登られる
 ほんに不思議な事だなア  これを思へば魔我彦は
 まだ改心が足らぬのか  ウントコドツコイ ハアハアハア
 思つたよりはきつい坂  一方は断崕屹立し
 一方は千仭の深い谷  一足あやまり踏み外し
 肝腎要の生命を  落すやうな事があつたなら
 私は何と致さうか  この世の中に何一つ
 残る事とてなけれども  折角人と生れ来て
 尊き神の神業に  仕へずもろくも幽界に
 往くよな事があつたなら  吾一生の不覚なり
 守らせたまへ大御神  道の隈手も恙なく
 進ませたまへ惟神  神の御前に願ぎまつる
 ウントコドツコイ ドツコイシヨ  だんだん坂がきつなつた
 調子にのつてお寅さま  倒けないやうにしておくれ
 私は心にかかります  あゝ惟神々々
 神様御守護を願ひます  ウントコドツコイ ドツコイシヨ
 ハアハアハアハア息切れる  ここらで一服しよぢやないか』

 云へばお寅は振り返り、

『魔我彦さまよ若い身で  弱音を吹くにもほどがある
 左様な事で天地の  神の御用がつとまろか
 私のやうな年寄が  難なく登るこの坂が
 それほどお前は苦しいか  合点の往かぬ事だなア
 お前は矢張り曲神が  お腹の底に潜伏し
 聖地に往くのを怖がつて  悶へて居るに違ひない
 早く心を取り直し  副守の奴を逸早く
 体の外に追ひ出して  至粋至純の霊となり
 この谷川を流れ往く  清水のやうな霊となり
 瑞の御霊を心から  尊信なして一心に
 天津祝詞を奏上し  くだらぬ歌を止めなされ
 お前はいつも喧しい  口許りの広い人
 嶮しき坂を登る時や  口をつまへて息凝らし
 一歩先に目をつけて  二階の階段登るよに
 静に静に往きなさい  さうする時は如何ほどに
 嶮しき坂も安々と  いつの間にやら登れます
 これが第一坂道を  往く旅人の秘訣ぞや
 一里ばかりも往つたなら  祠の森の聖場が
 吾等二人を待ち顔に  清き尊き神司
 数多まします事ならむ  もう一息ぢや魔我彦よ
 心の駒に鞭つて  勇み進んで往きませう
 祠の森の神様に  お頼み申して登るなら
 如何なる嶮しき山道も  平野を分けて進むごと
 いと易々と知らぬ間に  聖地に進み得らるだろ
 あゝ惟神々々  神素盞嗚の大御神
 尊き恵を賜はりて  この魔我彦に力をば
 与へて登らせたまへかし  あゝ惟神々々
 御霊幸倍ましませよ』  

と歌ひながら辛うじて祠の森の聖場に辿りついた。此処には数多の老若男女が蝟集し一斉に天津祝詞を奏上する声、谷の木魂を響かして居る。お寅は魔我彦と共に受付の係りヨルの案内にて社の前に導かるる事となりける。

(大正一二・一・一八 旧一一・一二・二 加藤明子録)



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