出口王仁三郎 文献検索

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物語46-4-211922/12舎身活躍酉 民の虎声王仁三郎参照文献検索
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第二一章 民の虎声〔一二三一〕

 小北の山の霊域を  闇に紛れて逃げ出し
 恋の欲望を達せむと  蠑螈別と語らひつ
 河鹿の橋を打ち渡り  野中の森に来て見れば
 思ひがけなき人の声  幾十人ともわかぬほど
 ザワザワザワと聞え来る  お民は驚き倉皇と
 元来し道に引き返し  息をはづましノソノソと
 野中の森を目当にて  河鹿峠の本道に
 廻らむものと進み行く  怪しき森の木下蔭
 四五の男は胡床座に  なりてヒソヒソ雑談に
 耽りて冬の夜寒をば  慄ひながらも明し居る
 かかる事とは神ならぬ  身の知るよしも泣きながら
 淋しさ身にしむ冬の道  後に心を引かれつつ
 すたすた来る人の影  コー、ワク、エムの三人は
 女に向つて声をかけ  いづくの奴か知らねども
 バラモン軍の御関所  通行罷りならぬぞと
 呶鳴れば女は打ち笑ひ  天下御免の大道を
 通行するのが何悪い  邪魔ひろぐなと云ひながら
 一切かまはず行かむとす  男は両手を打ち拡げ
 一歩もやらじといきまけば  お民は声を荒らげて
 小童武者よ後のため  懲しめくれむと云ひながら
 前後左右に詰め寄せる  男の素首ひん握り
 右や左と打ち倒し  挑み戦ふ折もあれ
 大地をどんどん響かせて  枯草しげる細道を
 走つて来る男あり  この有様を見るよりも
 お前はお民と言つたきり  腰を抜かして道の辺に
 ウンと倒れた可笑しさよ  お民は後を振り向いて
 お前は蠑螈別さまか  ようまあお出で下さつた
 どうぞ助太刀頼みます  蠑螈別は落ち着いて
 アハヽヽヽヽヽヽアハヽヽヽ  御供にも立たぬ蠅虫を
 相手になすとは何事ぞ  俺は此処にゆつくりと
 さも勇ましい活劇を  見物致す精出して
 愉快な芝居を見せてくれ  あゝ面白い面白い
 何ぞと俄に負惜しみ  その場を繕ふをかしさよ
 お民も相手も疲れ果て  互に路傍に息やすめ
 遂に和睦の曙光をば  認めた上に蠑螈別が
 所持の大金放り出して  賠償気取りになつて居る
 かかる所へバラモンの  目附の役と選ばれし
 エキスが一人現はれて  またもや茲に談判を
 開設せしぞ面白き  無欲恬淡金銭に
 心を寄せぬ蠑螈別は  有金すつぽり投げ出して
 エキス目附のお気に入り  お民諸共陣中に
 駕籠に乗せられ将軍の  帷幕に参じ三五の
 教を叩きやぶらむと  胸に一物抱きつつ
 本陣さして進み行く  コー、ワク、エムの三人は
 怪しの森に元の如く  警固を勤むる折もあれ
 遠く聞ゆる宣伝歌  雷の如くに響き来る
 一同両手で耳押へ  木蔭に潜んでブルブルと
 声の過ぐるを待ちにける。  

   ○
 松彦は小北山の聖地を離れ、一本橋を渡り、直に宣伝歌を歌ひ出した。

『神が表に現はれて  善神邪神を立てわける
 この世を造りし神直日  心も広き大直日
 ただ何事も人の世は  直日に見直し聞き直し
 身の過を宣り直す  三五教の神の道
 国治立大神の  厳の教を畏みて
 産土山の高原に  神素盞嗚大神は
 珍の御舎千木高く  仕へまつりて永久に
 鎮まりいまし天の下  四方の国々蒼生に
 救ひの道を宣べたまふ  教にまつらふ宣伝使
 治国別の一行は  河鹿峠を乗り越えて
 南の坂の下り口  進み来ませる折もあれ
 バラモン教の片彦が  久米彦将軍引き具して
 ランチの先鋒とつかへつつ  河鹿峠の八合目に
 進む折しも三五の  治国別の言霊に
 打ちなやまされ散々に  秋の木の葉の散る如く
 逃げ散り往くぞ果敢なけれ  吾は片彦将軍の
 帷幕に参じ秘書となり  斎苑の館の征討に
 向ふ折しも皇神の  慈光に触れて蘇り
 不思議の縁にて恋慕ふ  兄亀彦にめぐり会ひ
 別れて程経し物語  茲に兄弟名告り上げ
 玉国別に暇乞ひ  祠の森を立ち出でて
 峻しき坂を下りつつ  山口の森に一泊し
 不思議な神の経綸に  驚異の眼見張りつつ
 野中の森に来て見れば  またも怪しき事ばかり
 一夜を明すその中に  治国別に立ち別れ
 何と詮方泣く泣くも  五三公、万公初めとし
 アク、タク、テクの三人を  従へ野路を進みつつ
 小北の山の向岸  一本橋に来て見れば
 またもや不思議の神縁に  引かれて登る小北山
 潜む曲津を言向けて  正しき神を祀り込み
 思ひも寄らぬ吾妻や  娘と廻り会ひつつも
 神の仁慈を喜びて  感謝の涙せきあへず
 再びここを立ち出でて  治国別の後を追ひ
 浮木の森の敵陣へ  旗鼓堂々と進み行く
 あゝ面白し面白し  正義に刄向ふ神はなし
 神素盞嗚大神の  無限の神力賜りて
 これの使命を恙なく  終へさせ給へ惟神
 厳の御前に願ぎまつる  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  仮令大地は沈むとも
 神に任せしこの体  たとへ死なうが倒れうが
 決して悔む事はない  ただ何事も神様に
 心のままに打ち任せ  進み行く身は大丈夫
 大和心は胸に充ち  腕は唸り肉躍り
 幾百万の敵軍も  怯めず恐れず堂々と
 進みて行かむ魂と  早くも生れ変りけり
 あゝ勇ましし勇ましし  神の力は目のあたり
 いやしき吾身に添ひたまひ  群がる敵の陣中も
 無人の野をば行くごとし  あゝ惟神々々
 御霊幸倍ましませよ』  

 万公はまた歌ふ。

『斎苑の館を立ち出でて  漸く此処に来て見れば
 思ひもよらぬお寅さま  お菊にまでも廻り会ひ
 切るに切られぬ宿縁の  涙を拭ふ折もあれ
 神の恵に生かされて  小北の山の聖場は
 再び春の花盛り  常世の暗も晴れ往きて
 月日は清く照り渡り  空気はいとも澄みきりて
 今迄悪魔の巣ぐひたる  みやまも今は神の国
 天国浄土となりにけり  松彦司に従ひて
 悪魔の征途に上り行く  神の下僕の万公は
 世にも稀なる宣伝使  治国別のお伴して
 ハルナの都は未だ愚か  神の鎮まるエルサレム
 黄金山に向ひたる  鬼春別の軍隊を
 一人も残らず三五の  誠の道に言向けて
 救ひ助けむこの首途  あゝ惟神々々
 神の恵の幸はひて  一日も早く片時も
 神のよさしの神業を  尽させたまへ天地の
 貴の御前に万公が  畏み畏み願ぎまつる』

(大正一一・一二・一六 旧一〇・二八 加藤明子録)



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