出口王仁三郎 文献検索

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物語46-3-181922/12舎身活躍酉 エンゼル王仁三郎参照文献検索
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第一八章 エンゼル〔一二二八〕

 お寅、魔我彦両人が、犬と猫とが互に隙を窺ひ、虚々実々論戦に火花を散らし、仁義の争ひ、最も酣なる所へ、エンゼルの如き美人が降つて来た。これは言ふまでもなくお千代であつた。お千代は足早に二人の前にかけ上り、双手を組み、ウンと一声、三尺ばかり空中に飛上り、キチンと二人の前に端坐した。お寅も魔我彦も、威厳備はり何となく優美なる乙女の姿に、思はず知らず頭を下げ、両手をついて畏まつた。
千代『われこそはユラリ彦命なり。汝等両人、小北山の祭神の善悪正邪に就いて論戦稍久しきを知り、天極紫微宮より降臨し、汝両人が迷夢を醒まさむとす、謹聴あれよ』
とおごそかに宣示した。お寅は意外の感に打たれ、実否如何と、神勅の裁断を待つてゐる。魔我彦は心の中にて……それお寅さま、御覧なさい、ヤツパリ私の信仰するユラリ彦命さまは誠の神だろ、このエンゼルの降臨によつて、一切の迷夢を醒ましなされ……と口には言はねど、心の中に期待してゐる。
魔我『これはこれはユラリ彦様、よくマア御降臨下さいました。実の所はお寅さまと、神様の御事や信仰上の点に就て衝突を来し、互に論戦をしてゐた所でございます。どうぞ明晰なる御宣示を願ひたうございます』
天使『魔我彦、汝の苦悶をはらすべく降臨せしものなれば、遠慮会釈はいらぬ、何事でも質問をなされよ』
『しからばお言葉に甘へてお尋ね致しますが、この小北山にお祀りしてある神様は有名無実だとお寅さまが申しますが、実際は如何でございませうか。ある神ならばあるとおつしやつて頂きたい。なき神ならば、ないとおつしやつて下さらば、それにて私は去就を決します』
『この小北山に祀られたる大小無数の神霊は、宇宙に存在せるは確なる事実である。生羽神社の大神、リンドウビテンの大神、五六七成就の神、木曽義姫の大神、旭の豊栄昇り姫の大神、地の世界の大神、日の丸姫の大神、義理天上日の出神、玉則姫、大将軍、常世姫、ヘグレ神社の大神、末代日の王天の大神、上義姫の大神、その他いろいろ雑多の祭神は、確に存在する神なることは証明しておくぞよ』
 魔我彦は狂喜しながら、お寅の方を打見やり、したり顔にて、
『コレお寅さま、どうでげす、ヤツパリ私の考へは違ひますかな』
と稍得意の面をさらしてみせる。
お寅『そりや祀つてある以上は神霊はなけねばなりませぬ』
魔我『それ御覧なさい、それなら朝夕御給仕をしても差支はないぢやありませぬか』

天使『神といへば皆斉しくや思ふらむ
  鳥なるもあり虫なるもあり。

 よき神も曲れる神もおしなべて
  神と言ふなり天地の間は』

お寅『どうも有難うございました。コレ魔我彦さま、神様には違ひないが、神の中にも百八十一の階段があるのだから、そこを考へねばなりますまいぞや』
魔我『エンゼル様に重ねてお尋ね致します。小北山に祀られたる神々様は、上は第一天国より、地の世界を御守護遊ばす主なる神様と聞きましたが、それに間違ひござりますまいなア』

天使『小北山宮居は数多建ちぬれど
  まつれる神は八衢にます。

 八衢にさまよふ神はまだおろか
  根底の国の醜神にます。

 さりながら人は天地の司なれば
  汚れし神を救ふも宜べよ。

 世を守り人の身魂を守るてふ
  誠の神はこの神ならず。

 この神は罪や汚れを犯したる
  曲の霊をいつきしものぞ。

 拝むより救うてやれよ小北山
  まつれる神の身を憐れみて。

 われこそはユラリの彦と宣りつれど
  ただ魔我彦を救はむがため。

 ユラリ彦神とふ神は常世国
  ロツキー山に蟠まる曲。

 松彦をユラリの彦と尊みて
  敬ひ仕ふる人の愚かさ。

 松彦もその真相は悟れども
  汝救はむとしばし忍びつ。

 松姫も上義の姫は曲神と
  云ふ事知らぬ生宮でなし。

 さりながら迷へる人を救ふべく
  あらぬ御名をば忍びゐる哉』

魔我『これはしたり世人を救ふ神々と
  思ひし事の仇となりしか。

 訳もなき神を山々いつかひて
  世を迷はせし事の悔しさ。

 今よりは心の駒を立て直し
  皇大神の道に仕へむ』

お寅『エンゼルの厳の言霊輝きて
  魔我彦の暗を照らし給ひぬ。

 有難し心にかかる村雲を
  払ひ給ひし神ぞ嬉しき。

 魔我彦もさぞ今よりは村肝の
  心の空に月を仰がむ』

魔我『久方の心の空も晴れにけり
  神の使ひのエンゼルの声に』

お寅『吾言葉聞き入れざりし魔我彦も
  神の使ひにまつろふ嬉しさ。

 身に魂に光の足らぬ吾なれば
  魔我彦司を救ひかねつつ。

 有難き神の使の下りまし
  照らし給ひぬ二人の胸を』

天使『相生の松より生れし愛娘
  千代の固めを茲に築きぬ。

 これよりは小北の山の神々を
  祀り直せよ神の詞に』

お寅『いかにして神の御言を反くべき
  勇み進むで仕へまつらむ』

魔我『今はただ神の御旨に任すのみ
  力も知慧も足らぬ吾身は。

 掛巻くも畏き神の御恵に
  うるほひにけりかわきし魂も。

 うゑかわき悩み苦む吾魂も
  瑞の御魂に甦りける。

 瑞御霊、厳の御霊の神柱
  おろそかにせしわれぞ悔しき。

 今迄の深き罪科許せかし
  心の曲の仕業なりせば』

お寅『魔我彦よ心の鬼に罪科を
  きせてはならぬ汝が身の錆。

 迷ひたる汝が身魂に鬼住みて
  あらぬ御業に仕へせしかな』

天使『二柱迷ひの雲は春の水
  氷となりて解けし嬉しさ。

 主の神の永遠にまします神国は
  常世の春の花咲き匂ふ。

 人の身は天つ御空の神国の
  真人とならむ苗代にこそ。

 地の上は汚れ果てたるものなりと
  思ふは心の迷ひなりけり。

 村肝の心に神の国あらば
  この地の上も神国となる。

 地の上に神の御国を立ておほせ
  おかねば死して神国はなし。

 地の上に住みて地獄に身をおかば
  まかれる後は鬼となるらむ。

 鬼大蛇醜の曲霊の猛ぶ世も
  心清くば神の花園。

 うつし世を地獄や修羅と称へつつ
  さげすみ暮す人ぞゆゆしき。

 人は皆天津御国に昇るべく
  生みなされたる神の御子ぞや。

 主の神は青人草の霊体を
  もらさず落さず天国へ救ふ。

 救はむと御心いらち給へども
  人は自ら暗におちゆく。

 根の国や底の国なる暗の世へ
  おちゆく魂を救ふ大神。

 この神は瑞の御霊とあれまして
  三五の道開き給へり。

 三五の道の誠を守る身は
  いかでおとさむ根底の国へ。

 神の愛神の智慧をば理解して
  住めば地上も天国の春。

 秋冬も夜をも知らぬ天国は
  人の住むべきパラダイスなり。

 永久の花咲き匂ひ木の実まで
  豊な神の国ぞ楽しき。

 主の神は数多のエンゼル地に降し
  世を救ふべく守らせ給ふ。

 三五の教司はエンゼルよ
  ゆめ疑ふな神の詞を』

魔我『ウラナイの神の司も皇神の
  珍の使ひにおはしまさずや』

天使『ウラナイの神の司は鳥獣
  虫族なぞを救ふ正人』

魔我『虫族も神の御水火に生れたる
  ものとし聞けば救はむとぞ思ふ』

天使『大神の心用ひて救ふべし
  人の愛する神ならざるを知れ』

お寅『この山にまつれる神は虫族の
  救ひ求むる神にますらむ』

天使『さに非ず虫族までも取りて食ふ
  曲の神ぞや心許すな』

 魔我彦は始めて、エンゼルの訓戒により、心の闇をはらし、俄に顔色清く、元気百倍して無限の歓喜を感得する事を得た。魔我彦はエンゼルに向ひ、涙と共にその神恩を感謝した。
魔我『尊き清きエンゼルの御降臨、御蔭によりまして、今までの私の迷ひも春の雪が太陽にとけるが如く氷解する事を得ました。実に無限の努力と生命とを賦与されたやうな思ひに漂ひます、歓喜の涙にうるほひました。この上は今迄の愚なる心を立直し、ただ一心に誠の神様のために全力を注ぐ考へでございます』
天使『魔我彦、汝は今神様のため世のために尽すと云つたが、神の力は広大無辺、汝の力を加ふべき余地は少しもないぞよ。ただ汝は天の良民として汝の身につける一切の物を完全に照り輝かし、万一余裕あらばこれを人に施すべきものだ。しかしながら人間として、どうして世を救ひ、人を救ふ事が出来ようぞ。汝自らの目を以て、汝の顔及び背を見る事を得るならば、始めて人を幾分なりとも救ふべき力が備はつたものだ。これを思へば、人の身として、如何でか余人を救ふ事を得む。かくの如き考へを有する間は、未だ慢心の雲晴れきらぬものなるぞ』
『ハイ、いろいろの御教訓、誠に以て有難うございます。しかしながら吾々は自分の身を救うて、それで決して満足は出来ませぬ。憐れな同胞の身魂を救つてやりたいのでございます。宣伝使の必要も吾身を救ふためではございますまい。ここをハツキリと御教示願ひたいものでございます』
『宣伝使は読んで字の如く、神の有難き事、尊き事を体得して、これを世人に宣べ伝ふる使者である。決して一人なりとも救ふべき権利はない。世を救ひ、人を救ふは即ち救世主の神業である。ただ宣伝使たるものは、神の国に至る亡者引である。この亡者引は、ややもすれば眼くらみ、八衢にさまよひ、或は根底の国に客を導き、自らも落ち行くものである。それ故何事も惟神に任すが一等だ。何程人間が知識ありとて、力ありとて、木の葉一枚生み出す事も出来ないではないか。一塊の土たりとも産出する事の出来ない身を以て、いかでか世人を救ふ力あらむ。ただ宣伝使及び信者たるものは、神を理解し神の国の方向を知り、迷へる亡者をして天国の門に導く事を努むれば、これで人間としての職務は勤まつたのだ。それ以上の救ひは神の御手にあることを忘れてはなりませぬ』
『ハイ、何から何まで親切なる御教訓有難う存じます』
『最前お寅どのの口をかつて、惟神の説明を致しておいたが、その方はお寅の肉体を軽蔑して居るから、誠の事を云つて聞かしてもその方は分らなかつた。そこで今度は清浄無垢の少女が体をかつて、神は魔我彦のために訓戒を与へたのである、決して慢心致すでないぞや』
 魔我彦は歓喜の涙をしやくり上げ、畳を潤はし蹲まる。お寅は有難涙にくれ、顔もえ上げず、合掌して伏拝む。四辺に芳香薫じ微妙の音楽耳に入るよと見る間に、エンゼルは元つ御座に帰り給ひ、可憐なるお千代の優しき姿は、依然として十二才のあどけなき少女と変つてしまつた。
 魔我彦は初めて前非を悔ひ、神の光に照らされ、松彦の指揮に従つて小北山の祭神を一所に集め、厳粛なる修祓式を行ひ、誠の神を鎮祭する事を心より承認したのである。いよいよこれより松彦を斎主とし、五三公を祓戸主となし、厳粛なる遷座式に着手することとなつた。
 あゝ惟神霊幸倍坐世。

(大正一一・一二・一六 旧一〇・二八 松村真澄録)



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