出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語45-4-161922/12舎身活躍申 雨露月王仁三郎参照文献検索
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第一六章 雨露月〔一二〇六〕

 教の庭も大広木  正宗さまの肉の宮
 出入遊ばす神様に  お神酒をすすめて管を巻き
 曲角狸止を奏上し  酒酌み交はしグイグイと
 心は浮れて天国の  園に遊べるよい機嫌
 潮時見すましお寅さま  大広前に現はれて
 夕の御礼を申さむと  お菊を側に侍らせて
 酒の相手をさせながら  いといかめしき装束を
 体にまとひ中啓を  殊勝らしくもひん握り
 教祖の館を立ち出でて  五三公、万公外三人
 伴ひながら悠々と  大神殿に参入し
 恭しくも拍手を  うちて四辺の空気をば
 いやが上にも濁らせつ  曲角狸止を奏上し
 自分勝手の願をば  百万だらりと宣べ立てて
 五人に暇を告げながら  慌しくも蠑螈別
 潜む一間へ帰り行く  あとに万公、五三公は
 戸棚の襖を引きあけて  夜具や枕をとり出し
 大広前に布き並べ  足を伸ばして横たはり
 皆口々に三五の  天津祝詞を奏上し
 終つて互に高姫や  黒姫司を初めとし
 お寅婆さまの身の上や  蠑螈別のローマンス
 ひそびそ笑ひ囁きつ  漸く寝に就きにける
 万公さまは目を醒まし  四人の寝息を窺ひつ
 玄関口の雨戸をば  音せぬやうにひきあけて
 ブラリブラリと庭内を  うろつき初めお菊さまは
 もしや外には居るまいか  一つ直接談判を
 やつて見なくちや納まらぬ  五三公さまを初めとし
 白河夜舟の四人づれ  俺もこれから彼奴等が
 夢にも知らぬ白河の  夜舟に一つ乗つて見よか
 櫓櫂の音がキクキクと  聞えて来さうなものぢやなあ
 お寅の港に寄り来たる  老朽船や新造船
 どの方向を尋ねたら  波止場に出づる事ぢややら
 本当に誠に気がもめる  あゝ惟神々々
 結縁の神の御恵みに  何卒嬉しきおもてなし
 偏へに願ひ奉る  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  星は天から下るとも
 鼬が最後屁放るとても  お寅婆さまが万公を
 耕し大神の生宮ぢや  娘のお菊は地上姫
 テツキリ夫婦の身魂故  霊肉茲に合致して
 大神業に参加せば  小北の山は万歳だ
 等と甘い事云ひよつた  俺はもとよりウラナイの
 神は信用せぬけれど  お寅婆さまの言ひ草が
 万公さまの気に入つた  ここは一先づ猫冠り
 お菊を首尾克く女房に  定めた上に潮時を
 考へすまし三五の  教の道に帰順させ
 夫婦手に手を取り交はし  松彦さまに従ひて
 悪魔の征途に上らうか  我慢の強いお寅さまも
 可愛い娘が三五の  道に信仰した上は
 屹度信仰するだらう  さうなりや万公の結婚も
 決して無意味にや終らない  神と恋との二道を
 かけて愈神界の  大神業に加はらば
 誠に都合のよい事だ  待てば海路の風が吹く
 松彦さまは久振り  恋しき女房に巡り合ひ
 俺はまたもや義妹に  思はぬ処で出会はし
 ここで愈結婚の  式を挙げるやうになつたのも
 何かの神の引合せ  これほどボロイ事はない
 これを思へば五三公や  アク、タク、テクの三人が
 気の毒さうになつて来た  ほんに浮世はままならぬ
 神が表に現はれて  善と悪とを立別ける
 五三公さまの眼力は  実に驚く外はない
 あれほど六かしい三昧経  苦もなく解いたその手腕
 並々ならぬ人物だ  あれを聞いたら松彦も
 さぞや感心するだらう  俺も今迄五三公を
 あれほど偉い人物と  夢にも思うて居なかつた
 天教山に現れませる  木の花姫の御化身か
 何処とはなしに違つてる  五三公さまの寝姿を
 一寸覗ひ眺むれば  何とも知れぬ霊光が
 周囲を包んでゐたやうだ  此奴あ迂濶戯言も
 云ふてはならぬ化物だ  あゝ惟神々々
 御霊幸倍ましまして  蠑螈別や魔我彦や
 お寅婆さまが目を醒まし  誠一つの三五の
 道を悟つて神政の  教を四方に開くべく
 守らせ玉へ三五の  道を守らす大御神
 国治立の御前に  慎み敬ひ祈ぎ奉る

と庭園のロハ台に腰を打かけて歌つて居るのは万公である。
万公『あゝ、何と暗い夜だな、星は随分沢山に現はれてゐるが矢張り月の光でないと駄目だわい、しかしながら青春の血に燃ゆる若き男女のむすびの神は矢張闇夜だ。お菊と情的締結の最中に空から円い顔で覗かれちや、あまり見つともよくないからな。

 あれ見やしやんせ、あれ、あの人は
 橋の欄干で艶文を読む
 雲が悋気で月かくす。

お月さまも若い男女のローマンスを御覧になると嬉しがつてニコニコなさるさうだ。いや嬉しがつてでない、可笑しくて笑ふのだらう。そこを雲の奴、悋気しやがつて、艶文を見えないやうにするのだから雲と云ふ奴あ、意地の悪いものだ。鬼雲彦だつて矢張この世の雲だからな』
と独り呟いて居る。其処へ足音を忍ばせてやつて来る一つの影があつた。万公は思はず胸を躍らせた。この人影は果して何者なりしか。

(大正一一・一二・一三 旧一〇・二五 北村隆光録)



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