出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語44-3-201922/12舎身活躍未 脱線歌王仁三郎参照文献検索
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第二〇章 脱線歌〔一一八九〕

 松彦はお寅、お菊の後を見送つて、

『万公がお寅婆さまに巡り会ひ
  恨みの数々お菊さま哉。

 万更に捨てたものではあるまいと
  たかを括つた五三公の口。

 川の辺で昔の垢を流しけり
  万公末代取れぬ罪とがを。

 荒波の伊猛り狂ふ河鹿川
  丸木の橋を渡る危さ。

 猿叫ぶ野中の森を立出でて
  婆さンとはまつた万公の破目』

万公『お寅さま、お菊をつれて河の辺に
  万公来ると茲に松彦。

 あま相なお里の浮名を永久に
  流しける哉河鹿川原に』

五三『身の油とられた上に小言をば
  菊子の姫の耳の痛さよ。

 偉相にこの行先は言はれまい
  お里の分つた万公の身は』

万公『コラ五三公、おればつかりぢやないほどに
  貴様も尻の臭い奴だよ。

 吾尻の赤いを知らぬ山猿が
  人の事をばかきまはすなり』

五三『恥をかき頭をかきてベソをかき
  お寅婆さまにかき毬られる。

 アハヽヽヽ開いた口さへ塞がらぬ
  ローマンスのロは口と申せば。

 大根畑荒す野鼠土竜
  お里の芋の穴までねらふか』

万公『穴尊と穴ない教の穴を見よ
  宣伝使にも妹が居るぞよ』

五三『芋をほり蕪をぬいてくらふ奴
  三五教の大根役者よ』

万公『馬鹿云ふな蕪をぬいたその跡に
  てまりのやうな穴があるぞよ。

 三五の神の教と誰が言うた
  貴様の顔にも抜穴がある。

 抜けた面口あンぐりとあけながら
  三五教とはよくぬかしたり。

 五三公のローマンスをば尋ぬれば
  磯の鮑の片思ひかも。

 万公は何と云うても色男
  お里の方に思はれたぞや。

 思はれて思ひ返すは益良男の
  権威と知らぬ馬鹿者もあり』

アク『アク垂れのババに悪垂れ口いはれ
  へこ垂れよつた万公の面』

万公『こりやアク奴、何も知らずに喧ましう
  きさまが口をアク所でない。

 山猿のやうな面したその方に
  恋が分つてたまるものかい』

アク『仕殺したお里の事を思ひ出し
  ホヽヽヽとほほゑみをする。

 幾度もホヽヽヽヽと森の中
  暗に紛れて死嬶が慕ふ。

 おかし奴、何程こがれ慕うとも
  幽霊抱いては寝られまいぞや』

万公『こらアクよ、貴様は何を幽霊か
  無礼を云ふもほどがあるぞや』

タク『コレはまた面白うなつて来よつたぞ
  お里が墓からお出でお出でする』

万公『タクの奴何も知らずに八釜しい
  子供に恋が分るものかい』

タク『タクさまは、タク山に姫を持つたぞよ
  天下無双のナイスばかりを』

万公『何ぬかす蜥蜴のやうな面をして
  ナイスもクソもあつたものかい』

テク『こりやタクよ慢心奴を捉まへて
  相手にするな人が笑ふぞ』

タク『笑うてもかまふものかい笑はれて
  油取られた万公ぢやもの』

テク『三五の教の道の万公は
  婆と娘にくはれける哉』

万公『テクまでが何ゴテゴテと囀るか
  俺の心を知つて居るかい。

 万公は今こそ負て居るけれど
  お菊成人した時を見よ』

五三『お菊さま大きくなつたらまたやろと
  万が一をばあてにしてるのか』

万公『コリヤ五三公、急いで事はなるものか
  先を三年の春を見て居れ』

五三『またしてもそンな野心を起すなよ
  今度は首と胴と別れる』

万公『三年の先になつたらお寅さま
  冥途の旅に行つたあとだよ。

 何事も万さまなればお菊ぢやと
  今から秋波を送り居るらし』

松彦『腰折れのみ歌ばかりをうたひ上げ
  うたてき事の限りつくせし。

 サア万公、五三公、アク、タク、テク五人
  もうボツボツと山に登ろか』

万公『よろしかろお寅婆さまはさておいて
  お菊の奴が待つてゐるから』

五三『執着の深い奴ぢやと思たけれど
  これほどまでとは思はなかつた』

万公『呆れたかオツたまげたか五三公よ
  人は見かけによらぬ者だよ。

 さりながら俺も誠の道をゆく
  万公なれば恋は廃した。

 心配をどうぞなさつて下さるな
  メツタにお菊は思はないから』

五三『さうだらう、何程思うてみた所が
  向ふが厭なら仕方なからう』

アク『コレはまた面白うなつて来たわやい
  旅の慰めこの上もなし』

テク『テクついて川の畔に来て見れば
  婆さンに追はれてバサンとはまる。

 アク運の強いお方が助かつて
  世に珍しき話きく哉』

万公『万さまがあつたらこされお前等も
  歓喜の笑に漂うたのだ。

 心霊の餌さは歓喜と云ふぢやないか
  おれを命の親と尊め』

 松彦は先に立つて歩み出せば、五三公は一足々々坂道を登りながら笑ひ半分に歌ひ始むる。

『神が表にはれて  善と悪とを立分ける
 ババが川辺に現はれて  万公とアクを苦しめる
 この世を造りし神直日  心も広き大直日
 この世の鬼に巡り会ひ  心もひどく悄気返り
 ただ何事も人の世は  直日に見直し宣直し
 ただ何遍も人の前  なぶられものに会はされて
 身の過ちは宣直せ  身の過ちを述べられて
 万公の奴がベソをかく  旭は照る共曇る共
 アク公は川へはまる共  月は盈つ共虧くる共
 罪のありだけさらす共  仮令大地は沈む共
 譬方なき大痴呆  誠の力は世を救ふ
 万公の畜生は夜這ひする  三五教の宣伝使
 ウラルの教の穴捜し  ウブスナ山を後にして
 河鹿峠をよぢ登り  ウツカリ川辺に巡り会ひ
 嬶の親になぐられる  祠の森に来て見れば
 玉国別の宣伝使  野中の森を立出でて
 たまたま会うた婆娘  猿に目玉をかき取られ
 気の毒なりける次第なり  皿のよな目玉をむき出され
 気が気でならぬ次第なり  険しき坂をエチエチと
 下りて漸く山口の  険しき流れを打わたり
 やうやう茲に息休め  魔性の女に出会はし
 荒肝とられし可笑しさよ  万公が婆に追ひつかれ
 欠点さらされし可笑しさよ  あゝ惟神々々
 御霊幸ひましませよ  あゝ叶はぬから叶はぬから
 目玉飛出しましませよ  アハヽヽツハ アハヽヽヽ
 イヒヽヽツヒ イヒヽヽヽ  ウントコドツコイきつい坂
 万公は足がだるからう  おれも一度はお菊さまに
 何とか都合よく巡り会ひ  マ一度万公の臆病振り
 一伍一什を打明けて  愛想をつかさせやらうかい
 それが万公の一生の  おためになるに違ない
 これこれもうし松さまへ  私の云ふのが違うたら
 どうぞ叱つて下さンせ  ウントコドツコイ小北山
 ウラナイ教の本山に  一寸よう似た名称だ
 此奴ア大方高姫や  黒姫さまの慢心の
 そのほとばりが芽をふいて  怪体な教を立て通し
 十曜の紋を引つけて  世界をごまかし居るのだろ
 何だか知らぬが五三公は  一寸も気乗がせないぞや
 お寅のよな皺苦茶の  婆さまばかりがウヨウヨと
 両手を合せ水鼻汁を  啜りまはして八釜しう
 下らぬ事を囁きつ  曲津を拝みてゐるのだろ
 あゝ惟神々々  目玉飛出しましませよ
 アハヽヽハツハ アハヽヽヽ  最早ここらでやめておこ
 これから万公の番ぢやぞや  あゝ惟神々々
 息がつまつて出て来ない』  

 万公は負ぬ気になつて歌ひ出した。

『ウントコドツコイドツコイシヨ  五三公の奴めが悋気して
 何ぢやかンぢやと誂りよる  貴様の事ぢやあるまいし
 かもうておくれなホツトイテ  法界悋気もほどがある
 昔におうた古疵が  一寸物言うたばつかりだ
 これも一つの御愛嬌  昔はつまらぬ奴なれど
 今は立派な宣伝使  治国別の片腕だ
 ゴテゴテ言うて貰うまい  おれにはおれの権利ある
 松彦さンが偉うても  ウブスナ山の神様に
 許して貰うた事もなく  ホンの内証の宣伝使
 治国別の留守役だ  本当の事を云うたなら
 万公さまが宣伝使  臨事代理となる所だ
 コラコラ五三公アク公よ  タク、テク両人よつく聞け
 すべてこの世に大業を  なさうと思ふ人物は
 大きな影のあるものだ  それをばおかげといふのだぞ
 冷血漢の五三公が  どうして英雄豪傑の
 心裡が分つてたまらうか  子供は子供のやうにして
 沈黙してるが悧巧だぞ  モウこれからは万公も
 遠慮会釈はせぬほどに  正々堂々先に立ち
 治国別の代弁を  努めて見よう皆の奴
 おれの命令に反くのは  治国別の命令に
 つまり反くといふものだ  旭は照る共曇る共
 五三公はこける共辷る共  月は盈つ共虧くる共
 狐は啼く共吼えるとも  仮令大地は沈む共
 仮令五三公は平太る共  誠の力は世を救ふ
 曲津の五三公は世を紊す  この世を造りし神直日
 この山登る神の御子  心も広き大直日
 乞食上りの皆の奴  ただ何事も人の世は
 高い山路シトシトと  直日に見直せ聞直せ
 並ンでドシドシ登りゆけ  身の過ちは宣り直せ
 皆過つてふン伸びよ  三五教の宣伝使
 アブナイ教のセンチ虫  治国別に従ひて
 ハアハア山路分け登る  悪魔の征途に上りゆく
 飽迄つづくセンチ虫  あははツは アハヽヽヽ
 どうやら種が切れて来た  小北の山の真中で
 ババを垂れるかこきたない  たうとう俺もへこたれた
 ハーハー フーフー フースースー  

オイ皆の奴、ドウコイ、皆の立派なお方、万々ここで御休息なさつたらどうですか。歌のまづい松彦さまに、テクの下手なテク公、ゴータクの上手なタク公、悪運の強いアク公、東海道の五十三次、一つここらで、休まう……かい』
 松彦は吹き出し、
『ハハー、たうとう弱りよつたなア、川端ではいぢめられ、森の中ではおどかされ、また山路で苦められ、よくよく万の悪い男だなア。アハヽヽヽ、しかし何だか松彦も足が変になつて来た。幸ここにロハ台が並ンでゐる。全体とまれツ』
 この声の終るか終らぬに万公はドスンと腰をおろす。続いて一同は嬉し相に腰を下ろし休息する。

(大正一一・一二・九 旧一〇・二一 松村真澄録)
(昭和九・一二・二九 王仁校正)



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