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物語44-2-81922/12舎身活躍未 光と熱王仁三郎参照文献検索
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第八章 光と熱〔一一七七〕

 天王星の精霊より  降り玉ひし自在天
 大国彦を主神とし  霊主体従の御教を
 普く宇内に輝かし  世人を救ひ守らむと
 計りて立てるバラモンの  教は元より悪からず
 さは去りながら現幽の  真理を知らず徒に
 軽生重死の道を説き  有言不実行に陥入りて
 地上の人は艱難に  耐へ忍びつつ生血をば
 出して神に供物  なす時や神の御心に
 叶ふものぞと誤解して  知らず知らずに曲つ神
 八岐大蛇に迷はされ  人を救はむそのために
 却て人を根の国や  底の国へとおとしゆく
 その惨状を憐みて  高天原の主の神と
 現はれ玉ふ厳御霊  国治立の大神は
 天上地上の別ちなく  大御宝の霊をば
 永遠無窮に救ひ上げ  慈愛と信仰の正道に
 導き恩頼をば  与へむものと日に夜に
 心を配らせ玉ふこそ  実に有難き次第なり
 常世彦神常世姫  これまた悪魔に魅せられて
 ウラルの教を建設し  盤古神王を主の神と
 仰いで世界を開き行く  その勢ひの凄じさ
 至仁至愛の大神は  いかでか許し玉はむや
 神の御子たる人草の  身魂を清く美はしく
 洗ひ清めて天国の  御苑を開かせ玉はむと
 厳の御霊の神柱  瑞の御霊の御柱を
 この世に降し玉ひつつ  いろいろ雑多に変化して
 埴安彦や埴安姫  神の命と現はれつ
 三五教を建設し  黄金山は云ふも更
 ウブスナ山や万寿山  コーカス山や霊鷲山
 自凝島に渡りては  綾の聖地に天国の
 姿を映し玉ひつつ  世人を誠の大道に
 救はせ玉ふぞ有難き  瑞の御霊とあれませる
 神素盞嗚の大神は  現幽神の三界の
 身魂を残らず救はむと  尊き御身を世に下し
 千座の置戸を負はせつつ  天が下をば隅もなく
 人の姿と現はれて  沐雨櫛風氷雪を
 凌ぎてこの世の熱となり  光ともなり塩となり
 みのりの花と現はれて  暗に迷へる諸々の
 身魂を救ひ玉ふこそ  実にも尊き限りなれ
 神の教の宣伝使  治国別の一行は
 厳の御言を蒙りて  元つ御神の祭りたる
 斎苑の館を後にして  荒風すさぶ荒野原
 険しき山坂乗越えて  祠の森に到着し
 玉国別の一行に  思ひ掛なく出会し
 茲に二夜を明かしつつ  別れてほど経し弟の
 松公その他に巡り会ひ  驚喜の涙抑へつつ
 またもや神の御宣示に  五人の伴を引きつれて
 河鹿峠の峻坂を  世にも目出度き宣伝歌
 歌ひてやうやう山口の  老樹茂れる森かげに
 安全無事に着きにけり  あゝ惟神々々
 神の御霊の幸はひて  治国別の一行は
 神の使命を恙なく  実行なして復り言
 神の御前に申すべく  守らせ玉へと瑞月が
 旭の光を浴びながら  竜宮館に横臥して
 東枕に述べ立つる  あゝ惟神々々
 尊き神の御恵に  この物語遅滞なく
 進ませ玉へ天地の  元つ御祖と現れませる
 国治立の大神や  豊国姫の大御神
 神素盞嗚の大神の  御前に謹み願ぎまつる。

 治国別一行は老樹鬱蒼たる河鹿山の南麓山口の森に黄昏時漸く到着し、昼猶暗きこの森に一夜を明かす事とはなりぬ。茲には古き社殿の跡が礎石ばかり残つてゐる。昔は山神の祠と云つて、大山祇神が祀られてあつた。自然の風雨に晒らされ荒廃に任され、乞食の焚き火のために祝融子の災にかかりしまま、再建するの機会もなく、また熱心なる信仰者もなく、憐れ果かなき残骸を止めてゐたのである。それ故にこの森は何神の祀られありしやを知る者は殆ンどなかつた。しかしながらこの森は相当に広く足を踏み入れた者はない。もし誤つて森林深く進み入りし者は、再び帰り来ることなきを以て、一名魔の森とも称へてゐた。何でも巨大なる蛇潜み居りて、人を呑むとさへ称へられ人々に恐れられてゐた。
 河鹿峠の祠の森は、実際は大自在天を祀つたものであるが、いつとはなしに山神の祠と称へらるるやうになつた。それはこの山口の森の神と混同されてしまつたのである。すべて古き神社の祭神の不明になるのは、右様の理由によるものが甚だ多いやうである。
 万公は鼻をつままれても分らぬやうな暗さに、空を打仰ぎ、梢をすかして星の半片だも見えざるやと、憧憬の心を以て、上方を眺めて居る。
『何とマア暗いと云つてもこれ位暗い森はありませぬなア。月も星も太陽も、一つも残らず、大蛇のやうに呑ンでしまつたと見えますワイ。此奴ア山口の森といふから、山位呑むのは何でもないと見える。天の星さへ一個も残らず呑ンでしまうといふ怪しい森だからなア。オイ、晴公、気をつけないと、この森の奴、俺達の身体も一緒に呑みよるか知れぬぞ。万公が気を付けるぞよ』
『ナアニ、曇つてゐるのだよ。やがてこの晴さまがお這入りになつたのだから、すぐに空が晴るるのは受合ひだ』
『そら何を言ふ。何程晴れたつて、この密樹の蔭をすかして、どうして人間の目で、天の星が見えるものかい』
『ナアニ松公さま、心配御無用だよ。晴公の生言霊の神力によりて、大蛇も悪魔も千里の外に卻け、天津御空を水晶の如く晴らして御覧に入れる、さうすればお前も疑を晴らすだろ』
『お前の言霊も怪しいものだ。先生の言霊はすぐに神力が現はれるが晴公の言霊と云つたら、ダミ声の皺枯れ声、晴れる所か俺達の心まで陰欝になり、耳が痛くつて、根底の国へ落ちるやうな気分がするよ、この万公さまにはよ』
『ナアニ、先生の言霊だつて、晴公さまの言霊だつて、言霊に違があるか、信仰に古い新しの区別がないと、神さまはおつしやるぢやないか』
『それなら一つ言霊を以て、万よくこの暗をチツとでも明かくしてみたらどうだ、それが現実の証拠だから、それ見た上で万公さまも満足するからナ』
『先生がアオウエイとおつしやる言葉も、晴公さまのアオウエイと云ふ言葉も別に違ひはないぢやないか、言霊といふものは円満清朗スラスラと楽に出さへすれば、天地の神明が感動遊ばすのだ、俺達は百遍位言霊を繰返してもチツとも苦しうないが、かう云ふと先生にお目玉を頂戴するか知らぬが、この間も先生がアオウエイの言霊を発射された時、ズツポリと汗をかき、半巾を以てソツと顔を拭いてゐらつしやつたぞ。年が老るとヤツパリ腹に力がないと見えるワイ。なア先生、さうでしたねエ』
『ウン、俺も若い時や、言霊の百遍や千遍言つた所で、チツともエライとも苦しいとも思はなかつたが、この頃はお前の言ふ通り年の為か、天津祝詞を一回奏上しても、身体中が厳寒の日でもビシヨぬれになるのだ。しかしながら、若い時の千遍よりも今の一遍の方が効能があるのだから、不思議だよ』
『オイ、晴公、お前の言霊は暗に鉄砲だ。的の方向も知らずに、安玉を乱射してゐるのだらう。一寸涼し相な浪花節のやうな声を出しよるが、根つから利いたことはないぢやないか、きくといふのは俺達の耳だけだ。チツトも言霊の功能が現はれて来ぬのだから、何と云つても、ヤツパリ木つ端武者は木つ端武者だよアツハヽヽ』
 晴公は躍気となり、少しく鼻息を荒くしながら、
『コレヤ万州、余り馬鹿にするない。人は見かけによらぬ者だ。どンな隠芸があるか分つたものぢやないぞ。待て待て一つ言霊の神力を現はして、万公の奴に万々々と驚異の歎声を連発さしてやらう。捻鉢巻をして頭のわれぬやうに、臍の宿替をせぬやうに、腹帯をしつかりしめて居れ。四十八珊の巨砲を打出したやうな言霊だから、聴音器を破損せぬやうに用意をしておけよ。サア、いよいよ言霊発射の筒開きだ。一二三ン』
と言ひながら、臍下丹田に息をつめ、左右の手で、帯のあたりをグツと握り、身体を直立になし、

『烏羽玉の暗打ち払ふ吾なるぞ
  御空を晴らせ天津神たち。

ウ…………ン』
『アハヽヽヽ。暗がりで雪隠へ行つたやうな按配式だ、何だウンウンと、きばり糞をたれるやうな、蛮声をこき出しよつて、チーツとも明かくならぬぢやないか。万公さまの目にはだんだん暗黒の度が増して来たやうだよ』
『天の神様にも準備がある。今いうて今といふ事があるかい。明かくなる前には一旦暗くなるものだ、光明の前の暗黒だ。ウラル教ぢやないが……一寸先や暗夜、暗の後には月が出るのだからマア二時ばかり待つてゐよ、さうすれば俺の言霊で月がパツと東天から輝いて来るワ、それを証拠に疑を晴らすのだよ』
『アハヽヽ今夜は十八日、四ツ時になれば月の上るのはきまつてゐるワイ。貴様の言ひ草は春になつたら花を咲かしてやろと云ふやうなものだ。サツパリ言霊戦も零敗だ。アハヽヽヽヽ、さすがの万公さまも呆れ返るよ』
『貴様が交つ返すものだから、晴公と思つた空が段々曇つて来る。余程神様の御機嫌を損ねたとみえるワイ。コレ見ろ、俺の言霊が逆に利いていよいよ益々暗くなつて来た、偉いものだろう、ともかくどちらなりと変化さへあれば言霊の利いた印だよ』
『先生、かうなつちやたまらぬぢやありませぬか、どうぞ貴郎の言霊で面影位見えるやうにして下さいな。暗くなつたばかりか、何となく陰鬱の気が漂ひ、鬼哭愁々墓場の如き感がするぢやありませぬか』
『さうだなア。余り言霊が利き過ぎたと見える。そンなら私が一つ神様に願つて見やうかな』
と云ひつつ恭しく拍手をなし、臍下丹田に水火をつめ、無我無心の境に入つて、音吐朗々と天津祝詞を奏上し終つて、

『面影も見分けかねたる暗の森を
  晴らさせ玉へ天地の神』

と歌ひ了はるや、真黒なる暗の帳はうすらいで朧月夜の如き明かりが漂ふた。治国別は再び神言を奏上し、吾言霊の神力の言下に現はれし事を神に向つて感謝した。
『何とマア黒白の違といふのはこの事だなア。先生、エヽ神さまの聖言に、初に道あり、道は神也、神は道と共にあり、万の物これによつて造らる云々と云ふことがありましたなア。実にことばといふものは不可思議力を持つたものですなア』
『ウン、道は万物の根元だ。造物主だよ』
『しかしながら先生、言葉で万物が出来るのならば、貴方が今茲で、人間一人生れよとおつしやつたら、茲に現はれ相なものですなア。それが現はれないことを思へば、どうも言葉の正体が万公には解しかねます。詳細の説明を承はりたいものですなア』
 治国別は歌を以てこれに答へける。

『高天原の天国に  住む天人は人の如
 智性と意志とを皆有す  智性的生涯を作り出す
 ものは天界の光なり  そはこの光は神真の
 中より出づる神智ぞや  その意志的生涯作り出す
 ものは天界の熱と知れ  そもこの熱は神の善
 これより神愛出る也  

   ○

 さて天人の生命は  神の善なる熱よりす
 生命の熱より来ることは  熱なきものは生命の
 亡ぶを見ても明けし  無愛の真と無善真
 これまた生命亡ぶべし  真は信真の光にて
 善は愛善の熱ぞかし  これ等の事物は神界の
 熱と光りに相応する  一定不変の力なり
 地上を守る熱または  光を見れば明瞭に
 これ等の道理を覚り得む  世間の熱は光と和し
 地上の万物を啓発し  残る隅無く成育す
 熱と光とが相和すは  春夏の両期に在るものぞ
 熱なき光は万物を  活動せしむることを得ず
 却て死滅に到らしむ  冬期は熱と光との和合なく
 光のみにて熱はなし  高天原の天界を
 楽園なりと唱ふるは  熱光の相応あればなり
 真と善とが相合し  信と愛との合するは
 地上の春期に当るとき  光熱和合する如し

   ○

 天地の太初に道あり  道は神と共にあり
 道は即ち神なるぞ  万物これにて造らるる
 造られたるもの一として  これに由らずして造られし
 ものは尠しもあらじかし  これには清き生命あり
 生命は人の光なり  かれ世に在まし世は彼に
 全く造り上げられぬ  蓋し道は肉体と
 なりて吾曹の間に宿る  吾その光栄を見たりてふ
 聖者の道は主の神の  力を意味するものぞかし
 如何となればそは道  肉体となれりと云ふに由る
 されど道は殊更に  何を表はすものなるか
 知るもの更に無かるべし  これより進むで亀彦は
 いと細やかに説示せむ  道といふは聖言ぞ
 聖言即ち神真ぞ  この神真は主の神に
 存し玉へば主神より  現はれ来る光なり
 光は主神の神真ぞ  高天原にて一切の
 力を有つは神真ぞ  神真なくば力無し
 故に一切の天人を  呼びて力と称ふなり
 実に天人は神力の  所受者なるのみならずして
 神力を収むべき器なり  如上の如く観ずれば
 天人即ち力なり  この神力を有つ故
 地獄界まで制裁し  それに反抗するものを
 全く制禦し得らる也  たとひ数万の叛敵の
 現はれ来る事あるも  高天原の神光と
 称へまつれる神真ゆ  かがやき来る一道の
 光明に遭ひしその時は  直に戦慄するものぞ
 以上の如く天人の  天人たるは神真を
 清けく摂受し得る故に  全天界の根元を
 組織するものは神真の  光に決して外ならず
 そは天界を組織する  ものは天人なればなり

   ○

 神真中にこの如く  偉大無限の神力の
 潜み居るとは現界の  真理を以てただ思想
 または言語に外なしと  思ふ学者の中々に
 信じ能はぬ所なり  思想や言語は自身にて
 力を有するものならず  主神の命に従ひて
 活動する時始めてぞ  力を生ずるものとなす
 されど神真はその中に  自らなる力ありて
 天界こそは造られぬ  地上の世界もその中の
 万物併せて悉く  これにて造られたるものぞ
 かくも尊き神力の  神真の中にあることは
 二個の茲に比証あり  即ち人間にある善と
 真との力その次に  世間よりする太陽の
 光と熱との力にて  神の稜威を明かに
 覚り得らるるものぞかし  アヽ惟神々々
 神のまにまに答へおく』  

『イヤどうも有難うございました。万公マンマン満足致しました』
『万公、お前、本当に私の云ふことが分つたのか』
『マンマン、半解位なものですなア。しかしながら半開の花はキツと満開します。与ふるに時間を以てして下さい。万公の了解した時が、即ち花の満開ですからなア。モウ少し、細かく分解的におつしやつて貰へますまいかナ』
『この事が略了解がついた上で、また教ることにしよう。この解決をお前達の兼題としておくから次が聞たくば、この歌を繰返し繰返し霊魂に浸み込ますが良い、読書百遍意自ら通ずと云ふからな、余り一時に餌を与へると霊魂が食傷し、腹痛下痢を起しちや、俺も厄介だから、モウチツとといふ所で止めておかう。腹に一杯与へては、折角の御馳走が御馳走にならぬからなア。アハヽヽヽ』
『サア、一同の方々、万公が導師でこれから天津祝詞を奏上致しませう』
『その次に天地の神、その次に神言の奏上といふ段取だな、オイ万公、人の真似ならこの晴公さまでも出来るよ。ウツフヽヽヽ』

(大正一一・一二・八 旧一〇・二〇 松村真澄録)
(昭和九・一二・二七 王仁校正)



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