出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語36-1-81922/09海洋万里亥 悪現霊王仁三郎参照文献検索
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第八章 悪現霊〔九九六〕

 アナン、セールの一隊は館に向ひ、サール、ウインチはタールチン、キングス姫、ゼム、エール、シルレング、ユーズを救ひ出さむと、牢獄の方に猛進した。
 ベールは部下の獄卒と共に死力を竭して戦うたが、つひにコリヤ叶はぬと思ひしか雲を霞と姿を隠してしまつた。
 サール、ウインチは一同の忠臣を首尾よく救ひ出だし、次にアナン、セールの隊に合すべく王の館を指して進み行く。竜雲、ケールス姫は奥の間に顔の色を変へ、手鎗を小脇に抱へ、寄らば突かむと身構へしてゐる。
 真先に進んだアナン、セールを始め、シルレング、ユーズは不運にも、館の中の俄作りの深き陥穽におち込んでしまつた。
 サール、ウインチを始め、タールチン、キングス姫、ゼム、エールは、この上深入りするは如何なる羽目に陥るやも計り難しと、大事をふんで後へ引返し、表に出でて再び戦ひを継続しつつあつた。
 ケリヤ、ハルマは采配を打ふり打ふり、所在精鋭の武器を揃へて、命限りに防ぎ戦ひ寄せ手の人数は殆ど三分以上瞬く間に斬り倒されてしまつた。サール、ウインチは止むを得ず、タールチン、キングス姫、その他と共に一先づここを退却し、再び捲土重来の策を構ぜむと、バリーの館に軍を返した。
 竜雲は見方の将卒を集め、今日の防戦の偉勲を口を極めて賞揚し、城の外部を念入りに警護せしめた。そしてサガレン王を始め、信用し切つたるエームス、テーリスの姿の見えざるに驚き、再びケリヤ、ハルマに命じ、捕手を四方に遣はして、王、外二人の所在を厳しく捜索せしめた。しかしながら、王の行方は到底分らなくなつてしまつたのである。
 竜雲は部下の将卒を労ふべく、城の広庭に草蓆を布き、四方を警戒しながら、大祝宴を開いた。その席上にて竜雲は声高々と歌ふ。

『この世の御祖とあれませる  塩長彦大神の
 御稜威は今や輝きて  ウラルの教の世となりぬ
 大国彦の系統と  世に誇りたるサガレン王の
 醜の魔神は竜雲が  広大無辺の神徳に
 吹き払はれて影もなく  煙となつて消え失せぬ
 われはこれよりシロ島の  司となりて百司
 百人達を悉く  ウラルの神の御教に
 まつろひ合せ御恵の  露を普くうるほさむ
 あゝ惟神々々  塩長彦の御威勢は
 今に始めぬ事ながら  四方の草木も悉く
 片葉もとめず伏しなびく  かかる尊き大神の
 教にまつろふ竜雲は  天津神たち八百万
 国津神たち国魂の  神の力を身に受けて
 月日の如く永久に  輝きわたるわが御稜威
 称へまつれよ百司  ケールス姫を始めとし
 左守右守の神司  ケリヤ、ハルマは云ふも更
 ベールやメール、ヨールまで  吾神徳にまつろひて
 清く仕へよ吾前に  われはこの世を平けく
 治むる救ひの神なるぞ  このシロ島に竜雲の
 納まる限り鬼大蛇  いかなる曲津の攻め来共
 恐るる事はなきほどに  上と下とは睦び合ひ
 心を合せ力をば  一つになしてわが治らす
 この神国を守れかし  あゝ惟神々々
 神の御前に真心を  ささげて祈り奉る』

と悪にも三分の理屈があるとやら、一かどよい気になつて、臆面もなく大勢の前に厚かましくもその千枚張りの面の皮をさらし、得々としてゐる。
 ケールス姫はその尾に付けて機嫌よく自ら歌ひ、自ら舞ひ、竜雲の武運とその幸福を祈りたる、その歌。

『高天原に現れませる  塩長彦の大神の
 守り玉へるウラル教  神の司の竜雲師
 広大無辺の御神徳  現はれまして今ここに
 シロの島をば平けく  いと安らけく治めます
 聖の世とはなりにけり  喜び勇めよ百司
 国人達も諸共に  竜雲司の神徳を
 心の底より喜びて  称へまつれよ惟神
 神の力は目のあたり  心の弱きサガレン王の
 君の命は汚れたる  バラモン教を朝夕に
 命の如く崇めつつ  この世を紊し玉ひけり
 曲津の神の猛びにて  神地の城は日に月に
 衰へ行きて刈ごもの  乱れ果てたる有様を
 治むる由も泣きね入り  苦み切つたる折柄に
 ウラルの道の神司  神徳高き竜雲が
 天津御空の雲にのり  はるばる茲に下りまし
 千変万化の神力を  現はし玉ひて吾々を
 神の大道に導きつ  尊き神の御国に
 救ひ玉ふぞ尊けれ  あゝ惟神々々
 妾はいかなる仕合せか  今まで曇りし胸のやみ
 科戸の風に影もなく  吹き払はれて村肝の
 心の空に月は照り  星の光はキラキラと
 輝きわたる身となりぬ  ケリヤ、ハルマを始めとし
 その他の百の司たち  吾言霊を諾なひて
 今より先は真心の  限りを尽し身を尽し
 竜雲司の御教を  心に放さずよく守り
 天ケ下なる民草を  救ひ助けて永久に
 ゆるがぬ朽ちざる御世となし  天津誠の大道に
 まつろひまつれよ惟神  塩長彦の御前に
 ケールス姫が真心の  あらむ限りを打あけて
 つつしみ敬ひねぎまつる  あゝ惟神々々
 御霊幸はひましませよ』  

と陽気になつて歌ひ舞ひ納め、竜雲の手を曳いて、奥の間深く進み入る。
 ケリヤは一同の司及び雑役等に向つて、鼻高々と歌を以て宣り伝へた、その歌。

『げにも目出たき御世なるか  天の河原にさをさして
 あもりましたる竜雲師  広大無辺の神力を
 発揮し玉ひて今ここに  神地の都の君となり
 ケールス姫と諸共に  普く仁政を布かむとて
 言あげ玉ひし尊さよ  尊き君に見出だされ
 吾は左守神となり  この城内の一切は
 わが身一つに責任を  負はせ玉ひて天ケ下
 四方の民草撫で玉ふ  げに有難き珍の御代
 われ等は尊き御恵の  万分一に報いむと
 心の限りを尽しつつ  朝な夕なに大神と
 君の御前にいそしみて  仕へまつらむ覚悟なり
 右守神を始めとし  その外百の司たち
 青人草に至るまで  天より降りしこの君の
 御稜威を畏み敬ひて  ただ一言も叛くなよ
 さはさりながら腹黒き  タールチンやエームスや
 テーリス、ゼムやエール等が  再び軍を整へて
 攻め来らむも計られず  その時汝等一同は
 怯めず臆せず大神の  力を楯に君のため
 世人のために玉の緒の  命を惜しまず戦へよ
 仮令生命はすつる共  神の御ため君のため
 捨てし生命は天国の  神の御前に行きし時
 珍の宝座を与へられ  その魂は永久に
 安く楽しく喜びの  園に楽しく救はれむ
 あゝ惟神々々  神の御前に真心を
 捧げてケリヤが今ここに  心の丈を誓ひおく
 われと思はむ人々は  一日も早く村肝の
 心を研き体を練り  この土を守るつはものと
 なりて尽せよ惟神  神は汝を守りつつ
 千代に八千代に亡びなき  高きほまれを現はして
 栄えの身魂となさしめむ  ケリヤが今宣る言霊を
 心に刻みて片時も  決して忘るる事勿れ
 左守神が今茲に  竜雲司に成り代り
 一同に向つて述べておく  あゝ惟神々々
 御霊幸はひましませよ』  

と宣示し、悠々として座につく。
 右守神のハルマを始め、その他の人々の脱線的歌は沢山あれ共、余りくだくだしければ省略する事とする。

(大正一一・九・二一 旧八・一 松村真澄録)



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