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物語35-2-131922/09海洋万里戌 山颪王仁三郎参照文献検索
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第一三章 山颪〔九七七〕

 白山峠の絶頂で  普通選挙のその結果
 三五教の宣伝使  孫公別と名のりつつ
 意気揚々と勇み立ち  肩肱怒らし宣伝歌
 歌うて勇む折柄に  いづこともなく神の声
 われは玉治別司  一寸先の見えもせぬ
 凡夫の身にて宣伝使  選挙するとは何事ぞ
 早く心を直せよと  云はれて孫公は悄気かへり
 肩をすぼめてすたすたと  白山峠の峻坂を
 東北さして下りつつ  足の拍子を取りながら
 「ウントコドツコイ ドツコイシヨ」  倒けなよ倒けなよ気を付けよ
 言あげしながら下り行く。  

 孫公別は足許覚束なく爪先に力を入れながら、坂道を下りつつ歌ひ出したり。

『白山峠の絶頂で  「ウントコドツコイ 危ないぞ」
 言霊戦に出陣の  その統帥を得むものと
 虎、三、お愛の三人が  鳩首謀議のその結果
 「ウントコドツコイ」また辷る  俺をば尊い宣伝使
 神の使にしてくれた  世の諺にも云ふぢやないか
 「ウントコドツコイ」名は実の  賓ではなうて実の主と
 瑞の御霊の言の葉を  一同遵奉仕り
 互に心を合せあひ  選むだ処を「ウントコシヨ」
 「ドツコイ」頭の天辺から  玉治別だと云ひながら
 雷のやうなる声をして  「ドツコイ」叱りつけられた
 こりやまたどうした事だらう  大蛇の奴めが化けて来て
 俺等が肝を挫かうと  あんな狂言したのだらう
 虎、三、お愛の三人よ  必ず心配するでない
 曲津の神にだまされて  どうして御用が勤まろか
 悪の御霊と云ふものは  隅から隅まで気を配り
 水も漏らさぬ仕組して  手具脛引いて待つて居る
 其処の処を考へて  「ウントコドツコイ」軽々に
 進んで行つちやならないぞ  互に足許気をつけて
 大蛇の吐いた口車  石の車に乗らぬよに
 注意をせなくちやなるまいぞ  さはさりながら俺もまた
 何だか気分が悪なつて  「ウントコドツコイ」張合が
 サツパリコンとなくなつた  「ドツコイドツコイ」待てしばし
 これも矢張神様が  俺等の心をためすため
 あゝ云ふ手段を取られたか  凡夫の身では何ぢややら
 薩張り様子が分らない  ただ何事も人の世は
 神の心に任すのだ  任せきつたる暁は
 如何なる事かならざらむ  大蛇は如何に猛くとも
 三五教を守ります  仁慈無限の皇神の
 威力に敵する者はない  私は確信あるほどに
 皆さま心をシヤンと持て  「ドツコイシヨー ドツコイシヨー」
 思うたよりもきつい坂  「ガラガラガラガラ アイタツタ」
 あんまり喋つた天罰で  「ドツコイドツコイ ドツコイシヨ」
 すつてんころりと転倒し  強か背骨を打つたぞよ
 こいつは耐らぬ「ドツコイシヨ」  さはさりながら「ウントコセ」
 今から俺が屁古たれて  どうして成就するものか
 常住不断に信仰した  その神力の「ウントコシヨ」
 現はれ出づる今や時  神が表に現はれて
 善悪正邪を立て別ける  その御言葉が実ならば
 決して心配「ドツコイシヨ」  皆さま喜べ要らないぞ
 あゝ惟神々々  国魂神の純世姫
 月照彦の御前に  三五教の孫公が
 孫公別と現はれて  「ウントコドツコイ」選まれて
 今は尊き宣伝使  心を平に安らかに
 諾ひたまひて鼈の  湖水の大蛇を悉く
 言向け和す神力を  授けたまへよ惟神
 神の御前に誠心を  捧げて祈り奉る
 「ウントコドツコイ ドツコイシヨ」  レコード破りの風が吹く
 「ウントコドツコイ」散らされな  ウカウカしとると笠が飛ぶ
 笠ばつかりか体まで  木の葉のやうに散りさうだ
 「ウントコドツコイ」力瘤  体に一面「ウントコシヨ」
 神徳ばかりを充実し  この難関をやすやすと
 貫通さして下さんせ  偏に願ひ奉る
 畏み畏み願ぎまつる』  

と歌ひながら、風に吹かれつつ急坂を下り行く。
 お愛の方は声も静かに歌ひ出す。

『熊襲の国に名も高き  白山峠の峰よりも
 誉の高き三五の  道に仕ふる宣伝使
 黒姫さまの供となり  現はれ来ます孫公が
 皇大神の御心も  悟らせたまはず山の上
 上りつめたる慢心の  雲に包まれ自分より
 名さへめでたき宣伝使  孫公別と名乗りつつ
 意気揚々と勇み立ち  喜び給ふ折柄に
 天津御空に神の声  忽ち聞ゆる恐ろしさ
 名利の欲にかられたる  孫公さまは気が付かず
 宣伝使をば笠にきて  白山峠を下り行く
 あゝ惟神々々  三五教の孫公よ
 どうぞ心を取り直し  執着心を払拭し
 矢張元の孫公で  大蛇退治に行くがよい
 恋路の欲に離れたる  お前はまたもや宣伝の
 司の名誉に憧れて  天地の神の許さない
 雅号をたてに進み行く  その心根ぞいぢらしき
 あゝ惟神々々  お前の心が一時も
 早く誠にかへるよに  お愛が祈る胸の中
 ちつとは推量しておくれ  もうしもうし皆さまよ
 お足に気をつけなされませ  此処には蜈蚣が沢山居る
 あゝ惟神々々  神の許さぬ宣伝使
 大蛇の退治が何として  旨く出来るでございませう
 私は案じて耐らない  左様な野心を起すより
 今の間に改めて  元の心に立ち帰り
 天津御空に跼まり  大地に蹐なしながら
 謙遜りつつ三五の  道を歩むで下さんせ
 これぞお愛が孫公に  対する誠の親切よ
 悪うは思うて下さるな  あゝ惟神々々
 御霊幸はひましまして  吾等四人の一行が
 神の御前に功績を  太しく立てて故郷に
 一日も早く帰るべく  守らせたまへよ天津神
 国津神達百の神  国魂神の御前に
 誠心籠めて願ぎまつる』  

と歌ひつつ静に下り行く。
 三公は坂を下りつつ歌ひ出す。

『「ヤツトコドツコイウントコシヨ」  向ふに見える湖水は
 父と母とがその昔  八岐の大蛇の片割と
 人の怖るる曲神に  命を取られた「ドツコイシヨ」
 思ひ出深き仇の湖水  三五教の御教を
 聞いて心を取り直し  心平に安らかに
 敵を言向け和さむと  一たん心に決めたれど
 どうしてこれが「ウントコシヨ」  恨を晴らさで置かれうか
 熊襲の国に名を売つた  屋方の村の三公が
 顔にも係はる一大事  親の敵を前に見て
 無抵抗主義の御教が  どうして実行出来ようか
 思へば思へば腹が立つ  年が年中大蛇奴を
 亡ぼしくれむと思ひ詰め  大蛇々々と口癖に
 「ウントコドツコイ」云ひ通し  世界の奴らが「ドツコイシヨ」
 大蛇の三公と呼び出した  皆さま足許用心だ
 蜈蚣や蠑螈がのそのそと  其辺あたりを這うて来る
 孫公さまの宣伝使  何程神力あるとても
 何だか影が薄いよだ  こんな事なら黒姫を
 無理に頼んで「ドツコイシヨ」  来て貰つたらよかつたに
 後で気の付く「ドツコイシヨ」  癲癇病者の馬鹿思案
 後の祭ぢや仕方ない  もうこれからは俺達は
 天地の神を一心に  祈りて神の御守り
 「ウントコドツコイ」守られて  亡ぼすよりも道はない
 あゝ惟神々々  純世姫の御前に
 心を籠めて願ぎまつる  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  湖水の大蛇は猛ぶとも
 地震雷火の雨が  一度に襲ひ来るとも
 誠一つの言霊の  御息に大蛇を言向けて
 凱旋せなくちや「ドツコイシヨ」  数多の乾児に三公の
 男が立たない「ドツコイシヨ」  今まで作つた罪悪の
 報いは忽ち顕はれて  黒姫さまには見離され
 力の足らぬ孫公の  「ウントコドツコイ」手に余る
 勁敵前に控へつつ  進み行く身ぞ悲しけれ
 この世を造りし神直日  心も広き大直日
 今まで尽くせし身の咎を  直日に見直し聞直し
 「ウントコドツコイ」宣り直し  許させたまへや天津神
 国津神達国魂の  御前に願ひ奉る
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましませよ』

と歌ひながら下り行く。
 虎公はまたもや歌ひ出す。

『「ウントコドツコイ ドツコイシヨ」  この山道はちと酷い
 うつかりしとると谷底へ  転むで頭を割るほどに
 「ウントコドツコイ」気をつけよ  「アイタタタツタ」躓いた
 彼方此方に「ドツコイシヨ」  高い石奴がゴロゴロと
 遠慮もなしに転げてる  こんな手合に出遇つたら
 武野の村の侠客も  到底頭が上らない
 獅子狼や虎熊や  鬼や大蛇も恐れない
 この虎公も「ドツコイシヨ」  この坂道にや耐らない
 何時辷つて「ウントコシヨ」  真逆様に顛倒し
 頭を割るか分らない  孫公さまに神徳が
 十分に具はり居るならば  こんな心配ないけれど
 俄作りの宣伝使  「ウントコドツコイ」鼻糞で
 的張つたやうな心持  ま一つ安心出来難い
 あゝ惟神々々  師匠を杖につくでない
 人をば力に致さずに  誠の神を力とし
 「ウントコドツコイ」行くならば  どんな守護もしてやると
 大神様の神勅  俺はこれから「ドツコイシヨ」
 孫公さまの宣伝使  力になさず村肝の
 心の誠を発揮して  威猛り狂ふ曲神の
 陣屋に忽ち突進し  勝鬨あげて世の人の
 「ウントコドツコイ」禍を  根本的に除却して
 武野の村の侠客と  云はれた誉を弥高に
 筑紫の島に輝かし  三五教の道のため
 尽さにやおかぬわが願ひ  完美に委曲に聞し召し
 守らせ給へ天津神  国津神達八百万
 産土神の御前に  畏み畏み願ぎまつる
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましませよ』

と歌ひながら、漸くにして下り三里の山坂も、その日の真昼頃麓に下りつきにけり。

(大正一一・九・一六 旧七・二五 加藤明子録)



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