出口王仁三郎 文献検索

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物語35-1-31922/09海洋万里戌 進隊詩王仁三郎参照文献検索
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第三章 進隊詩〔九六七〕

 虎公は谷道を辿りながら足拍子をとり、チヨコチヨコ走りのまま謡ひ出したり。

『「ウントコドツコイ」夜が明けた  向日の森が晴れて来た
 虎狼や獅子熊の  猛びの声も鎮まりて
 彼方此方に鳥が啼く  東の空は茜さし
 豊坂昇る日の神は  山道辿る吾々の
 一行の身をば照します  「ウントコドツコイ」足許に
 何れも気をつけなされませ  黒姫さまは老年だ
 別してお足が重からう  高い石奴がゴロゴロと
 この坂道に転げてる  ウツカリして居りや石車
 ガラガラガラリと乗り辷り  思はぬ怪我をせにやならぬ
 神を力に三五の  誠の道を杖として
 波布や蜈蚣の毒虫が  右往左往に這ひまはる
 草道分けて進み行く  あゝ惟神々々
 尊き神の御守りに  吾等一行九人連れ
 恙もなしに屋方村  大蛇の三公が構へたる
 館に無事に着かしめよ  吾家の留守に三公が
 数多の乾児を引率れて  押寄せ来り女房や
 妹のお梅を虐げて  深山の奥の森林に
 連れ行き無体の掛合を  やつて居るとは知らずして
 「ウントコドツコイ ドツコイシヨ」  建日の館にいでませし
 黒姫さまの後追うて  嶮しき坂道攀ぢ登り
 建国別の神様が  祝の席に招ぜられ
 生命の水の甘酒を  「ドツコイ」飽くまで振舞はれ
 酔がまはつてユラユラと  新、久、八を引きつれて
 坂道下り火の国の  深谷街道に来て見れば
 大蛇の乾児の六公が  数多の乾児を引きつれて
 棍棒や刀を携へつ  捩鉢巻をリンと締め
 裾をからげて「ドツコイシヨ」  仰々しくも待つてゐる
 流石の虎公も面喰ひ  心に神を祈りつつ
 悪胴据ゑて呶鳴り声  あり合ふ木片を拾ひあげ
 群がる敵の中心を  目蒐けて「ドツコイ」突き入れば
 「ヤツトコドツコイ」危いぞ  初めの勢何処へやら
 猫に追はれた「ドツコイシヨ」  鼠の如く「ウントコシヨ」
 縮み上つて六公が  一目散に逃げ出せば
 手下の奴は「ヤツトコシヨ」  度を失うて散乱し
 「ウントコドツコイ」蜘蛛の子を  散らすが如く逃げ失せぬ
 あゝ惟神々々  神の恵の深くして
 危き処を助けられ  後振り返り玉公や
 新、久、八の名を呼べば  木蔭に潜みし四人連れ
 蜘蛛の巣だらけの顔をして  足もワナワナ怖さうに
 現はれ来るぞ可笑しけれ  何はともあれ一時も
 早く吾家へ立ち帰り  お愛の安否を探らむと
 韋駄天走りに駆け出せば  勢余つて「ウントコシヨ」
 向日峠の山道に  思はず知らず突進し
 引返さむかと思へども  あゝ待てしばし三五の
 神の教にや退却の  「ウントコドツコイ」二字無しと
 教へられたる言の葉を  思ひ浮べて進行し
 見るも危き丸木橋  飛鳥の如く飛び越えて
 坂道登る折柄に  思ひも掛けぬ黒姫が
 お愛やお梅を労りて  孫公、兼公諸共に
 この場に来る不思議さよ  あゝ虎さまか黒姫か
 お愛かお梅か孫さまか  大蛇の乾児の兼公か
 虎公の身内の新公か  さては久公か八公か
 不思議な処で会うたもの  これも矢張神様の
 水も洩らさぬ御仕組  こんな目出度い事はない
 云ひつつ一同道の辺に  両手を合せて天地の
 神の御名をば称へつつ  感謝祈願の太祝詞
 唱ふる声は中天に  清く響きて夜が明けた
 あゝ惟神々々  神の御蔭を被りて
 三人男女が黒姫に  危き処を助けられ
 無事に帰つた嬉しさに  虎公さまも雀躍し
 尊き清き三五の  神の光を伏し拝む
 時しもあれや樹々の空  吾物顔に諸鳥の
 常世の春を歌ふ声  直日々々と聞え来る
 吾等は神に救はれて  この神徳を取りもぎに
 してはならぬと「ドツコイシヨ」  心を定めて「ウントコシヨ」
 大蛇の館に立ち向ひ  尊き神の御光を
 三公の頭に照さむと  一行九人潔く
 露道分けて進み行く  神が表に現はれて
 善と悪とを立て別ける  この世を造りし神直日
 心も広き大直日  ただ何事も人の世は
 直日に見直し聞直し  世の過ちは宣り直す
 三五教の神の道  歩む吾等は逸早く
 「ウントコドツコイ ドツコイシヨ」  大蛇の霊と聞えたる
 三公初め与三公や  その他の人々悉く
 誠の道を説き聞かし  高天原の神国の
 「ウントコドツコイ」住人と  救うてやらねばなるまいと
 生れついての侠客  心の駒の勇むまに
 鞭うち進む膝栗毛  進む吾こそ勇ましき
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましませよ』

と謡ひながら進み行く。
 黒姫は道々謡ひ出す、その歌。

『綾の聖地を後にして  老の年波押し寄する
 大海原を打ち渡り  波太平の洋を越え
 大小無数の島蔭を  右や左と潜りつつ
 孫、房、芳の三人に  棚なし船を操らせ
 漸く筑紫の神の島  熊襲の国に名も高き
 建日の港に安着し  高山峠を踏み越えて
 岩石起伏の坂道を  足を痛めて進み来る
 時しもあれや虎公が  建日の宮の神司
 建国別は捨児ぞと  宣る言霊に耳すませ
 高山彦のハズバンド  探ぬる途中を廻り道
 建日の館に行て見れば  頼みの綱も断れ果てて
 何と詮術なくばかり  館の夫婦に慇懃に
 表門まで見送られ  取つて返した坂の道
 火の国街道の山口で  数限りなき手長猿
 猿の奴に揶揄はれ  早速の神智を絞り出し
 漸く猿をば追ひ散らし  火の国都へ急がむと
 進む折しも惟神  神の仕組に操られ
 迷ひ込んだる丸木橋  神の化身に導かれ
 向日峠の山麓に  来る折しも乙女子が
 足もヒヨロヒヨロ進み来る  俄に憐れを催して
 背撫で擦り労りつ  様子如何にと尋ぬれば
 お愛の方の御遭難  高山彦も諸共に
 土中に深く埋められ  果てさせ給ふと聞くよりも
 心は忽ち顛倒し  胸に早鐘鳴り渡り
 矢さへ楯さへ堪らなく  心いらちて乙女子を
 背に負ひつつ樟樹の  森に漸く辿り着き
 三人の男女を救ひ上げ  此処迄進み来りたる
 黒姫司の嬉しさよ  天ケ下なる人草は
 互に睦び親しみて  助け導き神のため
 御国のために真心を  尽さにやならぬ神の宮
 お愛の方や虎さまの  二人の無事な顔を見て
 心も勇み身も勇み  大蛇の霊の三公を
 神の教の言霊に  言向け和すこの首途
 実にも尊き限りなり  あゝ惟神々々
 御霊幸はひましまして  吾等一行九人連れ
 協心尽力相結び  枉の砦に進撃し
 仁慈無限の大神の  尊き御稜威を現はさむ
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましませよ』

と謡ひながら心イソイソとして進み行く。

(大正一一・九・一五 旧七・二四 北村隆光録)



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