出口王仁三郎 文献検索

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原著名出版年月表題作者その他
物語33-3-181922/09海洋万里申 神風清王仁三郎参照文献検索
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第一八章 神風清〔九三三〕

 秋山彦は東助、玉治別その他一同の集まる広間に現はれ、
『皆様、御苦労でございました。高姫様初め黒姫、鷹依姫、竜国別の御一行は漸く惟神の御経綸により、私の館までお帰り下さいまして、実にこれ位喜ばしい事はございませぬ。就いては言依別命様が責任を負うて、聖地をお立退きになりました大事件の根源たる麻邇の宝珠の所在が、高姫様以下御一同の熱誠によつて、判明致しましたに付いては、軈て近き内に麻邇の宝珠を持つてお帰りになることでございませう。皆様はどうぞ、これより聖地に帰り、歓迎の御準備を願ひます。国治立命様、豊国姫命様を初め、神々様の御仁慈は到底吾々の語り尽すべき所ではございませぬ』
と嬉し涙に湿つた声を張上げて挨拶をするのであつた。東助、玉治別その他の一同は、秋山彦の案に相違の言葉に驚きかつ怪しみながら、高姫以下のこの場より何処ともなく消えたるに拍子抜けしたる面色にて、急ぎ聖地を指して帰り行くのであつた。
 聖地の錦の宮の八尋殿には、玉照彦、玉照姫、英子姫は、紫姫と共に数多の幹部を従へ、一行の帰り来るを待ちつつあつた。東助は三人の神司の前に恭しく進み寄り、頭を下げ両手をつかへ、
東助『由良の港の秋山彦の館へ、高姫一行を迎へのため参りました所、竹島丸に乗込み、高砂島より一行八人お帰りになりました。それより秋山彦館にお迎へ致し、一夜を明かし、いろいろの款待に預り、無事の帰国を祝して居る際、黒姫もお帰りになり高姫一行四人の方々は麻邇の宝珠の所在が分つたとかで、ソツトどこかへ御出でになりました。就いては近日その玉を得て聖地へお帰りになるから、早く帰つて歓迎の準備をせよとの事でございました。何が何だか、私には一向要領を得ませぬが、是非なく此処まで帰つて参りました。如何致せばよろしいのでございませうか。紫姫様、どうぞあなたより三柱の神司へよろしく言上を願ひます』
と云つた。紫姫は『ハイ』と答へて高座にのぼり、三柱の前に額づき、東助の言葉を一々言上した。英子姫、玉照彦、玉照姫の三柱の神司はニコニコしながら、頭を縦に振つてゐられる。その様子がどこやらに深き確信あるものの如く見られた。三柱の神司は神前に向ひ、恭しく祝詞を奏上し終つて、一同の神司及び信徒に目礼を施しながら館の奥深く忍び入り給うた。
 紫姫は東助に向ひ、
『只今三柱の大神司より承はりますれば、高姫様は明日四人連れにてお帰りのはずでございますから、どうぞ歓迎の準備を遊ばして下さいませ』
東助『ハイ委細承知仕りました』
とこの場をさがり、歓迎の準備に全力を尽し、高姫の帰るを今や遅しと待ちつつあつた。
 明くれば九月八日、高姫、鷹依姫、黒姫、竜国別の四人は嬉々として、麻邇の宝珠を捧じ、錦の宮の八尋殿指して帰り来り、直に神殿の前に進み、各玉を捧持して、無言のまま控へて居る。紫姫はこの体を見て、直に三柱の大神司に奉告した。
 茲に玉照彦、玉照姫、英子姫、紫姫は礼装を調へ、四人の前に無言のまま現はれ、玉照彦は高姫の手より青色の麻邇の宝珠を受取り、玉照姫は黒姫の手より赤色の宝珠を受取り、英子姫は鷹依姫の手より白色の宝珠を受取り、紫姫は竜国別の手より黄色の麻邇の宝珠を受取り、頭上高く捧げながら悠々として錦の宮の神前に進み、案上に恭しく安置され、再び八尋殿に下り来り、高姫外三人の手を取り、殿内に導き感謝祈願の祝詞を共に奏上し、八人相伴ひて、教主殿の奥の間さして進み入り、互に歓を尽して、無事の帰国とその成功を祝し玉うたのである。
英子姫『皆様、随分御苦労でございましたなア。神界の御経綸は到底、人間共の量り知る所でございませぬ。ただ何事も神様の御命令に従ふより外に途はございませぬ』
高姫『ハイ、有難うございます。私も余り神様の御道を大事に思ふ余り、言依別命様の行方を見て、大神様の御経綸を妨害し、再び天の岩戸をとざす悪魔の所為と思ひつめ、いろいろ雑多と誤解を致し妨害のみ致して参りました。今日となつて顧みれば実に恥かしうございます。私の改心が遅れたばかりで、皆様にいろいろの御苦労をかけ騒がしました。言依別の教主様も、私のために大変な御艱難を遊ばし、実に申訳がございませぬ。大化者だとか、体主霊従の身魂だとか、世界悪の映像だとか、いろいろ雑多と云ひふらし、邪魔ばかり致して来ましたが、顧みれば私こそ悪神の虜となり、知らず識らずに体主霊従の行ひをなし、世界悪の根本を敢てしながら人の事ばかり喧しく申上げて来ました。私の迂愚迂濶、今更弁解の辞もございませぬ。大化者と云ふ事は、決して悪い意味ではございませなんだ。余り人物が大き過ぎて、吾々の身魂では測量することが出来なかつたために、訳の分らぬ教主だと思ひ、大化者だと云つて罵つたのでございました。仁慈の深き、到底吾々凡夫の知る所ではないことを、深く深く身に沁み渡つて感じましてございます。何程あせつても、身魂の因縁だけの事より出来るものではございませぬ。どうぞ今迄の不都合をお許し下さいまして、身魂相応の御用を仰せ付け下さいますれば、有難う存じます』
英子姫『そのお言葉を聞いて、妾も安心致しました。玉照彦様、玉照姫様、さぞお喜びでございませう。第一、国治立大神様の御化身国武彦命様、神素盞嗚大神様は貴女の御改心をお聞き遊ばして、さぞ御満足に思召すでございませう。貴女の御改心が出来て、身魂の御因縁が御了解になれば、三五教は上下一致して御神業に参加し、五六七神政の基礎が確実に築き上げられる事と喜びに堪へませぬ』
高姫『ハイ、何から何まで、御注意下さいまして有難う存じます』
黒姫『私は最早何にも申上げる事はございませぬ。ただ感謝より外に道はございませぬ。どうぞ万事よろしく、今後とても不都合なきやう、御注意を願ひます』
鷹依姫『私も高姫様に聖地を追ひ出され、いろいろと艱難苦労を致しまして、一時は高姫様をお恨み申したことさへございましたが、今となつて考へて見ますれば、何事も皆神様の御仕組で、曇つた魂を研いて、神界の御用に立ててやらうとの御取りなしであつたことを、今更の如く感じました。実に申上げやうもなき有難き瑞の御霊の思召し、言依別命様のお心遣ひ、お礼は口では申上げられませぬ』
と嬉し涙にかき暮れる。
竜国別『神恩の高き深き、感謝の外ございませぬ。どうぞ万事不束な者、よろしくお願ひ致します』
 玉照彦、玉照姫は四人に向ひ鎮魂を施し、悠々として我居間に帰り玉うた。高姫は初めて今迄の我を払拭し、青色の麻邇の宝珠の玉に対する神業に参加することを決意し、金剛不壊の如意宝珠の御用の吾身に添はざることを深く悟ることを得たのである。
   ○
 茲に金剛不壊の如意宝珠の御用を勤めたる初稚姫は初めて錦の宮の八尋殿の教主となり、紫色の宝玉の御用に仕へたる玉能姫は生田の森の神館において、若彦(後に国玉別と名を賜ふ)と夫婦相並びて、生田の森の神館に仕ふることとなつた。
 また黄金の玉の神業に奉仕したる言依別命は少名彦名神の神霊と共に斎苑の館を立出で、アーメニヤに渡り、エルサレムに現はれ、立派なる宮殿を造り、黄金の玉の威徳と琉の玉の威徳とを以て、普く神人を教化し玉ふこととなつた。
 また梅子姫は父大神のまします斎苑の館に帰り、紫の麻邇の玉の威徳によつてフサの国の斎苑館に仕へて神業に参加し、高姫は八尋殿に大神司を初め紫姫の部下となつて神妙に奉仕し、黒姫、鷹依姫、竜国別もそれぞれの身魂だけの神務に奉仕し、神政成就の基礎的活動を励む事となつたのである。
 此等の神々の舎身的活動の結果、いよいよ四尾山麓に時節到来して、国常立尊と現はれ、現幽神三界の修理固成を開始し玉ふことを得るに至つたのである。これが即ち大本の教を国祖国常立尊が変性男子の身魂、出口教祖に帰懸し玉ひて神宮本宮の坪の内より現はれ玉うた原因である。また言依別命の舎身的活動によつて黄金の玉の威霊より変性女子の身魂、高熊山の霊山を基点として現はれ、大本の教を輔助しかつ開くこととなつたのである。あゝ惟神霊幸倍坐世。

(大正一一・八・二九 旧七・七 松村真澄録)



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